世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


12月 2, 2016

国内最速のスパコンが運用開始

HPCwire Japan

筑波大学 朴泰祐教授が「森林をイメージしながら、それが電子回路で構成されている」と自慢する特徴的なデザインに装飾された世界6位のスーパーコンピュータシステムが、2ヶ月の試験走行を終え12月1日から正式に運用が開始された。

東京大学と筑波大学が共同で運営する最先端共同HPC基盤施設のOakforest-PACSスーパーコンピュータシステムは、先月11月に発表された世界のスパコンを掲載する最新のTOP500リストおいて世界6位に位置づけされており、これまで国内首位であった「京」コンピュータを性能で超え、LIPACK性能で13.55PFLOPS、ピーク性能で25 PFLOPSを誇るシステムだ。また別のベンチマーク指標であるHPCGにおいては世界第3位を獲得している。

今回、東京大学と筑波大学のように複数の機関が共同でスーパーコンピュータを運営する試みは国内で初めてだ。東京大学と筑波大学の両者の関係は2008年に行われたT2K Open Supercomputer Allianceに始まっている。この際は共通の基本アーキテクチャを持つスーパーコンピュータをそれぞれが導入し、クラスタ型HPCプラットフォームの共通化の試みが行われた。今回はその関係をさらに発展させたものだ。運用開始にあたり施設長である東京大学情報基盤センターの中村宏センター長と、副施設長の筑波大学計算科学研究センターの梅村雅之センター長は、1大学ではできなことを2大学ならできるような1+1が3になるような協力関係を期待している、と話す。

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施設長 東京大学情報基盤センター 中村宏センター長(左)、副施設長 筑波大学計算科学研究センター 梅村雅之センター長(右)

Oakforest-PACSシステムは、米国Intel社による超高性能メニーコア型プロセッサである次世代Xeon PhiTMプロセッサ(コードネーム Knights Landing)と、同社による新型の相互結合ネットワークであるOmni Pathを搭載した計算ノードを、8208台搭載した超並列クラスタ型スーパーコンピュータであり、同プロセッサを搭載した大規模クラスタ型システムとしては国内初となる。システム製作は富士通が行い、同社のPRIMERGY CX1640MLサーバが計算ノードして採用されている。

さらに共有ファイルシステムとして米国DataDirect Networks社製26 PByteの並列ファイルシステム、940 TByteの高速ファイルキャッシュシステム等が設置され、総ピーク演算性能として「京」コンピュータの約2.2倍の超高性能システムとなる。また、新システムの大規模並列ファイルシステムは、全ての計算ノードから自由に全てのファイルデータを高速アクセスできるだけでなく、ファイル入出力性能が1TByte/秒以上という、世界最高レベル性能の高速ファイルキャッシュシステム(バーストバッファ)により、ファイル入出力性能を求めるアプリケーション性能を飛躍的に高めることが期待されている。

新スーパーコンピュータシステムは、今後2017年3月末まで実験的運用と特別プログラムによる利用が行われ、2017年4月よりHPCIを始めとする各種共同利用・共同研究プログラムに供される予定である。本システムは国内最高性能スーパーコンピュータとして各種最先端科学技術計算を支える重要なインフラとなるだけでなく、日本における次世代スーパーコンピュータであるポスト「京」コンピュータの稼働開始までの重要なスーパーコンピュータ資源となると推測されている。

Oakforest-PACS 諸元

ノード数 8,208ノード
総コア数 558,144コア
総メモリ容量 897 TiByte
CPU Intel Xeon PhiTM 7250
L2キャッシュ容量/ノード 2コア当たり1MB
ピーク性能/ノード 3.046 TFLOPS
メモリ容量/ノード 高バンド幅メモリ 16GB
低バンド幅メモリ 96GB
メモリバンド幅/ノード 高バンド幅メモリ  490 GB/sec以上(MCDRAM実測値)
低バンド幅メモリ 115.2 GB/sec (DDR4-2400 X6 )
インターコネクト Omni-Path, Fat Tree, FBB 100Gbps
オペレーティングシステム フロントエンド:Red Hat Enterprise Linux
計算ノード:CentOS