世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


12月 5, 2016

2016年11月TOP500分析 その1 国内スパコンの状況

HPCwire Japan

恒例のTOP500がSC16で発表されてほぼ2週間が経過し、少し落ち着いてきたのでそろそろ恒例のTOP500の分析をしてみたいと思う。まずは日本の国内の状況からだ。前回日本は29エントリあったが今回は27エントリとなった。中国とアメリカがエントリ数を競いあっている状況からすると、まずまず健闘しているのではないだろうか。

まずは日本のエントリの状況を見てみよう。以下が一覧だ。すでに報道されているように、ついに「京」は国内1位の座を、東大と筑波大が共同で運営する最先端共同HPC施設基盤のOakforest-PACSに奪われた。ただその性能の差はあまり離れていない。興味深いのは2011年にデビューした計算機が5年間も国内首位に君臨したことだ。さらにはTOP500ではないが、他のベンチマーク指標である、HPCG、Graph500で今年も首位を獲得している。これはスパコン業界では非常に素晴らしい業績となったのではないだろうか。国の威信をかけて1200億円を超える費用で構築したスーパーコンピュータが、5年後に70億円強の費用でコモディティの部品のみで同じメーカーが製作したことも、この業界の特徴を強く表している。

順位 機関名 システム名 今回順位 前回順位 Rmax
1 最先端共同HPC施設基盤 Oakforest-PACS 6 新規 13,555
2 理化学研究所 京コンピュータ 7 6 10,510
3 JAXA SORA-MA (FX100) 30 23 3,157
4 京都大学 Comphor 2 (Cray XC40) 33 新規 3,057
5 名古屋大学情報基盤センター FX100 35 26 2,910
6 東京工業大学 TSUBAME2.5 40 31 2,785
7 核融合科学研究所 プラズマシミュレータ 48 38 2,376
8 日本原子力研究開発機構 SGI ICE X 54 43 1,929
9 IFERC Helios 82 70 1,237
10 東京大学物性研究所 Sekirei 86 72 1,178
11 東京大学情報基盤センター Oakleaf-FX 104 85 1,043
12 九州大学情報基盤研究開発センター QUARTETTO 108 88 1,018
13 理化学研究所情報基盤センター 菖蒲 116 94 1,001
14 理化学研究所情報基盤センター HOKUSAI GW 119 97 989
15 気象研究所 FX100 120 98 989
16 国立天文台 Aterui 157 119 801
17 東京大学物性研究所 Sekirei-ACC 163 123 777
18 筑波大学計算科学研究センター COMA 177 133 746
19 物質材料研究機構 数値材料シミュレータ 179 135 742
20 電力中央研究所 SGI ICE X 253 174 582
21 高エネルギー加速器研究機構 SAKURA 281 200 537
22 高エネルギー加速器研究機構 HIMAWARI 282 201 537
23 東京大学 Reedbush-U 361 新規 460
24 筑波大学計算科学研究センター HA-PACS 402 294 422
25 自動車会社 HP Apollo 435 325 403
26 京都大学学術情報メディアセンター Camellia 455 345 381
27 統計数理研究所 システム「i」 475 363 364

また新たに京都大学の新スパコンシステムも国内4位としてエントリしている。Comphor 2と名付けられたCray XC40システムだ。旧7帝大系の大型計算機センターで唯一の外資系システムを導入した京都大学は2世代目もCrayを導入することとなり、その基盤を確立しているようだ。

今回のTOP500リストでの最低Rmaxは349TFLOPSであったことから、前回より以下の5台のシステムが消えることとなった。

東京大学医科学研究所 Shirokane3
名古屋大学 富士通CX400
京都大学 Magnolia
民間重工業
理化学研究所宇宙物理研究室 皐月

来年6月のTOP500では恐らく国内の上位には変化はないと考えられる。期待されるのは東工大の次期スパコンであるが、レンタル開始が来年8月1日からとなっているため、恐らくTOP500に登場するのは1年後の2017年11月期でのTOP500となるだろう。また、エクサスケーラー社は次回のTOP500で新システムにより、Green500での上位を目指す予定だ。これもまたどのような結果になるか楽しみだ。