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12月 28, 2016

2016年11月TOP500 国別比較 その2

西 克也

2016年が終わる前に最後に恒例となったTOP500の国別対抗分析をやってみたい。前回は中国の大量エントリと、SUNWAY TaihuLightの衝撃的な登場で興奮を覚えたが、今回はかなり落ち着いて見ることができる。

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中国とアメリカがタイに — 国別エントリ数

前回大量にシステムをエントリさせてた中国は相変わらず大きなシェアを占めている。だがアメリカも黙ってはいなかった、今回はアメリカが前回から6システム追加して中国とタイになったのだ。前回エントリ数で3位だった日本はドイツに追い越されて4位に落ちてしまった。

順位 国名 2016/11 増減
1 中国 171 +4
1 アメリカ 171 +6
3 ドイツ 31 +5
4 日本 27 -2
5 フランス 20 +2
6 イギリス 13 +1
7 ポーランド 7 +1
8 イタリア 6 +1
9 インド 5 -4
9 ロシア 5 -2
9 サウジアラビア 5 0

国別エントリ数上位

エントリ数が上位の中国とアメリカは良いとして、エントリ数が少ないが増加している国に着目してみよう。まずドイツだ。ドイツは今回6システムを増やしているが、実は新たなシステムとしては10システム追加している。これら10システムはさほど上位のシステムでなく、最上位のものでも159位、一番下では375位となっている。またどこか特殊な研究機関やメーカーに偏っているわけでもなさそうである。単純にエントリ数が増えたようだ。

さらにフランスも2システム増加させている。実際に新しく追加されたのは5システムだ。この追加で目新しいのはフランス気象局のシステムで51位にエントリしたBeaufix2だ。これは50位にエントリしている同じくフランス気象局のProlix2と同じ構成のシステムのようだ。性能もほぼ同じだ。ただ少し興味をそそるのは、50位のProlix2は2014年インストールとなっているのに、今回新たに加わったBeaufix2は同じ構成なのにインストール年が2016年になっている。2年経過しているにも関わらず同じ構成で同じ性能のものが加わったのは予備機としての位置付けなのだろうか?

イギリスも1システム増えているが、実際には4システム新たに加わっており、イギリス最大のスパコンも今回追加された。イギリス最大のスパコンはイギリス気象庁のCrayシステムで11位に入っており、惜しくもトップ10に入ることができなかった。

他にも、ポーランドが+1、イタリア+1、スイス+1、ニュージーランド+2となっている。特にイタリアの新システムもイタリアで最高速のスパコンであり、CINECAのクラスタで12位となっている。

全体の半分がペタフロップスマシンに — ペタフロップスマシン台数

ピーク性能がペタフロップスを超えるペタフロップスマシンは全体で前回の183台から248台となり、全体のほぼ半分がペタフロップスマシンとなった。前回から65台増加したこととなる。また、ペタフロップスマシン保有国は22カ国となっている。ここでも1位は中国だ。

国名 2016/11 2016/06 増減
中国 86 63 +23
アメリカ 79 48 +31
日本 18 16 +2
ドイツ 14 11 +3
フランス 12 10 +2
イギリス 8 7 +1
イタリア 5 4 +1
全体合計 248 183 +65

国別ペタフロップスマシン保有数

ついに合計ピーク性能が1エクサフロップスに

今回は大物のシステムが登場しなかったのでコア数の伸びは落ち着いている。しかし、今回初めてピーク性能の合計がついに1エクサフロップスを超えた。これは500台の性能をすべて足し合わせた値だが、人類は2020年代に1台のシステムでこの性能を出そうとしている。

項目 2016/11 2016/6 伸び率 ()内は前回
コア数 43,993,346 40,997,937 +7.3%(+40.2%)
アクセラレータコア数 6,903,890 7,064,193 -2.3%(-0.2%)
実行性能合計(GFLOPS) 672,112,377 566,799,567 +18.6%(+35.5%)
ピーク性能合計(GFLOPS) 1,015,242,880 844,836,905 +20.2%(+32.3%)

全体コア数と合計性能

国別に見ると次のようになっている。

ピーク性能合計(GFLOPS) 実行性能合計(GFLOPS)
中国 394,013,392 (+7.3%) 223,571,136 (+5.9%)
アメリカ 327,303,955 (+32.8%) 228,032,809 (+31.6%)
日本 77,371,577 (+58.8%) 54,486,820 (+39.7%)
ドイツ 45,628,388 (+16.4%) 36,501,435 (+16.5%)
フランス 31,727,765 (+15.3%) 25,398,803 (+15.7%)

上位5か国の性能合計値 ()内前回比

ピーク性能においてはアメリカは急激に中国に追いつき、前回は1.5倍あった差が、今回は1.2倍程度まで縮めてきた。また、日本はJCAHPCのOakforest-PACSのおかげで前回から約6割近くも性能アップしている。

平均性能では日本は首位 – システム当たりの平均性能

平均ピーク性能(GFLOPS) 平均実行性能(GFLOPS)
中国 2,304,172 1,307,434
アメリカ 1,914,058 1,333,525
日本 2,865,614 2,018,030
ドイツ 1,471,883 1,177,466
フランス 1,586,388 1,269,940

上位5か国の1システム当たりの平均性能

これを見ると驚異的に日本のシステムが優れていることが分かる。逆に言うと日本のシステムは上位にあるものが多いということで、優れたシステムしかエントリさせてないことになる。アメリカや中国はエントリ数は多いが性能がそれ程高くないシステムも多く、平均的な性能が低くなっている。ただ中国は平均ピーク性能は高い。やはりずば抜けた1位と2位のシステムを擁しているためだ。

平均実行効率はイギリスが首位

国毎の平均実行効率は次の通りであった。今回、日本が大きく平均効率を下げたが、これはアクセラレータが原因だ。アクセラレータを搭載したスパコンの実行効率は低い。例えばアクセラレータを使ったシステムのTianhe-2の実行効率は61.7%、Titanは64.9%、Oakforest-PACSは54.4%だ。それに比べてアクセラレータを使わないシステムは90%を超えるのも珍しくない。今回の日本はこれが影響している。

国名 平均実行効率
イギリス 87.1% (-1.3)
ドイツ 80.0% (+0.7)
フランス 80.0% (+0.2)
日本 70.4% (-9.7)
アメリカ 69.7% (-0.6)
中国 56.7% (-0.8)

国別平均実効効率

鍵は民間システムのエントリ数の違い

国毎に比較するとその国の特色が浮かび上がってくる。ただ各国によってTOP500への対応は異なっている。以下に産業別のエントリ数を示してみる。アメリカと中国を除いては民間のシステムはほとんど入っていない。この民間とその他を除いたエントリ数は、アメリカ90、中国39、日本27、ドイツ24、フランス16とアメリカを除けばあまり大きな差はないように見られる。

国名 アカデミック 官公庁 民間 研究所 その他
中国 5 23 130 11 2
アメリカ 22 17 85 41 6
ドイツ 14 0 6 10 1
日本 14 0 1 12 0
フランス 3 0 6 7 4

産業別エントリ数

スパコンは国家の科学および産業競争力の要となってきている。スパコン無しでは明日の日本はあり得ない。その中でTOP500は国家のスパコンに対する意識を示すバロメータのひとつだ。ここでの首位の争奪や、エントリ数などで一喜一憂する必要はないだろうが、スパコン大国の1国としての日本の位置付けが変わってはならない。