世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


10月 17, 2017

さくらインターネットがHPCをクラウドに延長

HPCwire Japan

クラウド計算はかつて夢のようでした。しっかりした公共インターネットの出現により、 コンピューターの使用およびストレージクラウドが、遠隔地にあるプロバイダーから容易にアクセスできるようになり、手ごろな価格のオンデマンド・サービスが主要な資本支出に取って代わるようになりました。クラウドは、管理に人件費のかかる高価な設備により、団体組織にかかる財務負担を軽くすることをお約束します。

フォーブス誌の最近の「クラウド計算予測のまとめ 2017年」は、しっかりと確率されており、利点の多い国際市場の数を引用しており、今やそんな夢が現実となっています。ガートナー株式会社の予測によれば、 世界の公共クラウドサービス市場は2017年に2,468億ドルとなり、2016年の2,092億ドルから18%成長します。

しかしクラウドで高性能計算の夢がかなったといえるのでしょうか?

商業やIT市場でその存在を強めているものの、強力な計算機能、高性能なストレージ、迅速な相互接続が要となる、HPCの効果的な作動の実現可能性に関しては疑問が残ります。クラウド計算を科学的、技術的に適用するのは理にかなったことなのでしょうか?

日本のさくらインターネットの回答は自信をもってイエスです。

4月、さくらインターネットはクラウド・スーパーコンピューティング・システムを日本の一部の主要研究組織に提供するために、21億円(2,000万ドル)の契約を確保しました。この5つ星のプロジェクトは、クラウド内の高性能計算のモデルとなるかもしれません。

プロバイダー:さくらインターネット

日本の計算サービス主要プロバイダー、さくらインターネット株式会社は1996年に設立され、東京証券取引所に上場されています。そのビジネスは、サーバーに対してスペース、電源、ネットワークラインを提供するハウジングサービス、インターネット上でサーバー・リソースを提供するホスティングサービスで始まりました。

さくらインターネットの収益増加戦略は、独自のインフラを所有し、活用率を上げ、固定費のリスクを下げることにより競争的な価格を提供するというものです。このアプローチは、クラウド計算サービス、そして本分野におけるリーダーシップにおいて開花しました。

さくらインターネットが有する3つのデータセンターの1つである、北海道にある石狩データセンターは、クラウド計算と競争的価格の最適化のショーケースです。石狩は北海道の低い気温を生かしエネルギー効率を改善した解放型冷却システムを特徴としています。全体効率に関しては、設備から東京ドーム(55,000人を収容できるスポーツ会場)よりも大きい建屋そのものまで、モジュール式設計が施されています。

北海道にあるさくらインターネットの石狩データセンターは、600,000 以上のサーバーのオペレーションに合わせて調整する予定です。

 

東京と大阪にあるさくらインターネットのデータセンターと同様、石狩は10ギガビット以上の十分な構成に接続されています。大きい情報量が必要とされる場合、さくらインターネットはマルチライン接続で安定性を確保し、負荷を分配させます。 その高スピードな複合的ネットワークは、外部接続が702Gbpsである高容量のバックボーンと一体となっています。この構成ではネットワーク障害の可能性が0%に近く、高い有用性と提供能力を有します。

石狩の進化したインフラストラクチャーは、さくらインターネットの主要ホスティングサービスである、「さくらクラウド」を支えています。 仮想化技術により、このサービスは物理サーバー上に複数の仮想サーバーを創り出します。それぞれのバーチャルサーバーは専用のものとして機能し、専用サーバーまたはレンタルの物理サーバーと比較して、高いコストパフォーマンスと柔軟性を提供します。お客様は複数のサーバー、またどんなネットワーク構成でも使用することができます。

ユーザー:ADMATおよびAIST

高い有用性、安定性、手頃な価格での情報処理量は、どんなお客様にとっても理にかなっています。しかし、さくらインターネットの新しいクライアントは、単なるお客様ではありません。

ADMAT (先進機能材料の高情報処理量設計および開発研究協会)は素材技術でオペレーションを行う16社がR&Dを行う目的で形成された技術研究協会です。そのメンバーは多岐の業界に渡り、コニカミノルタ株式会社、日鉄住金科学株式会社、パナソニック株式会社、横浜ゴム株式会社といった主要製造社がその一部です。

Hi-Matは独自の計算設備を有していません。AISTと合同のR&D活動をサポートするために、さくらインターネットと契約を結んでいます。

産業技術総合研究所(AIST)は、日本の15の研究組織を統合する行政法人です。AISTは、日本における革新技術の発展と、世界における業界のイノベーション促進のためのプラットフォームとして機能します。 そのミッションは継続的に素晴らしい技術を創造し、それを社会にもたらすことです。

ADMATおよびAISTは、日本で最も大きな公共管理組織である新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託のもと計算科学を用います。NEDOのミッションの1つは、産業技術の向上です。

プロジェクト:先端技術の発展

Hi-MatおよびAISTは共通の基礎技術の開発のために合同研究を実施します。 目標は、絶縁体, 高性能ポリマー、超高性能触媒、エネルギー変換技術といった新しい機能材料を作るための所要時間を短くすることです。

さくらインターネットは独自のサーバーを作成し、ラック内最大160セットまで対応します。

機械的性質(例えば強さ、硬さ、伸びやすさ)に用いられる構造的素材とは異なり、機能材料は電子的、磁気的、科学的、光学的特徴を有し、負荷耐性以外の機能も発揮します。

マールブルク大学が述べているとおり、「機能材料は我々の現代社会でますますその役割を強めています。機能材料は幅広い技術の基礎を形成しています。コンピューテーション、通信、ストレージや情報の表示は機能材料には作動しません。 機能材料という単語は、 ポリマーおよび分子結晶の半導体からナノ粒子まで幅広く異なる素材階級をカバーします。その特別な電気的、光学的、磁気的性質が機能材料の重要性をぐっと高めています。

機能材料は日本経済の伝統的な強みです。国際的な競争力を維持し、向上していくために、NEDOは「超進化素材 超高速開発 インフラストラクチャー・エンジニアリング・プロジェクト」を開始しました。革新的素材を創造する新しい方法を開発していきます。

プロジェクトでは2つの関連する問題を解決します。1つ目は機能材料の構造は複雑になっているということです。2つ目は、素材が複雑になったため、従来のR&D方法では以前よりも時間がかかるということです。

過去に、技術士が発見の積み重ねからくる直観と経験をもとに仮説をたて、実験を通して機能材料の最適な構成物質と構造を確認しました。機能材料を開発するのに必要な時間をぐっと短くし、同時に高い機能性を達成するために、NEDOは新しい方法論を作ろうとしています。AISTの研究機関おおび ADMATの業界メンバーは、計算科学、処理技術、測定技術の3つの主要領域で合同研究を実施します。

本研究では、ナノ単位からマクロ単位にスムーズに移行できるよう、 第1原理計算、分子動力学方法論, 有限要素方法論、AIST機能材料計算設計研究センターで開発されるその他の技術を利用します。

さくらクラウドは高い信頼性をもって、機能を予測するのに必要な スーパーコンピューティングのサポートを提供します。高精度な原型を作るための、迅速な試作品作りや処理技術は、次世代のナノ構造設計から産業製品まで幅広い領域に適用されます。研究作業には、非破壊的またはその場測定の環境において、構造、構成物質、機能を測定するための進化したナノメトロロジー評価技術の開発が含まれます。

そこから、プロジェクトは基本技術の構築へと進みます。進化した機能予測モジュール (例えば最適条件予測)、最新自動化による高速度な試作品作成プロセス、より迅速な測定技術、人工知能を用いた素材開発確認を論証する計画です。

製造で必要とされる試作品の数を大きく削減する新しい技術を開発することにより、AISTおよびADMATは革新的な機能材料の商業化を進めることを期待しています。

セットアップ

この高度な作業では、研究機関やそのロケーション(筑波と中部のAIST研究センター)中どこでも利用可能な高性能な計算が必要となります。

オンプレミス計算も可能ではありますが、金銭的に実現可能ではありません。プロジェクト中の5年間、電力消費と資源を管理するコストはNEDOの予算を超えてしまいます。

さくらインターネット、石狩データセンターの「高火力」計算プラットフォーム・サービスはその代わりとなる実行可能なオプションを提供しています。

電力消費効率またはPUE(グリーングリッド・コンソーシアムが開発した基準)に関していえば、石狩は外気冷却のみで 1.11、夏のエアコン作動時で1.21というすばらしい数値です。対照的に、都市エリアのデータセンターでは通常1.5から2.0の数値です。また、石狩はCO2排出を削減できます。

ADMATおよびAISTは、32,768 コアを有するHPCシステムと、1.153 PFLOPSの理論計算性能を用いる予定です。それは、100Gbps InfiniBand EDR (サイバーセキュリティのためのエンドポイント発見および対応)を通して接続される1,024ノードのデュアルソケット Intel Xeon E5-2697Aベースを特徴としています。Direct Data NetworksのDDN SFA14K技術に基づくA 1-ペタバイト・ストレージシステムは、サーバーノードと接続しています。

さくらクラウド・サービスは、32,768 CPUコア、メモリー162テラバイト のシステムをサポートします。

今後

さくらインターネットおよびIntelは、計算リソースを高めるために、IaaS(Internet as a Service)といった技術に取り組んでまいりました。HPCの需要が拡大するにつれ、 非常にスケーラブルで容易に仮想化できる側面をもつIntelの最新ハードウェアが、大容量のバックボーンであり高速度なサービスを手頃な価格で提供する、さくらインターネットのコンピューティングを完全なものにしています。

さくらインターネットは、世界レベルでHPCの需要を支える計画です。日本でADMATおよびAISTが今後5年間で学ぶことは、クラウドサービスが開花し続け、クラウド内のHPCという目標を夢から現実に変えていくのに役立つはずです。

終わりに
本記事は、最新技術によりHPCコミュニティにより駆動される最新科学、研究、イノベーションをハイライトするという目的で、IntelのHPC社説プログラムの一部として作成されました。 本内容の出版者が最終的な編集権を有し、どのような記事を出版するかを決定します。