世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


7月 11, 2014

BULL、ビッグデータでなくスーパーコンピューティングに先制攻撃

HPCwire Japan

Nicole Hemsoth

いろいろな意味において、BULLは大西洋を跨いだクレイを映し出したような企業だ。一方で、両方の企業は特に強い大陸をベースとして、スーパーコンピューティングに深い根を張っている。逆に、ビッグデータ現象の出現は、両社が厳格なスーパーコンピューティングの提携から自由になり、ハイエンド、ハイパフォーマンスシステムを全く新しく急速な潜在的企業ユーザクラスへ提供する新しい道筋を見つける機会と位置づけられている。彼らは正確に「HPC」で何をすべきか考えていないが、バニラ・サーバやデータベースアプローチが取り組むことができない重要な計算やデータ駆動型のニーズを持っている。

クレイ、SGIおよびその他のHPC指向の企業は、より大規模なビッグデータ市場に向けたアプライアンスに向かうことにフォーカスしている。(例えばクレイのUrikaアプライアンス) BULLは、ヨーロッパにおいて同じ機会を見ており(全体の事業の85%)、よりメインストリームのエンタープライズのビッグデータ問題を狙う新製品に向けた、科学と産業のスーパーコンピューティング用の大規模なコンピューティングの企業の評価を固めるための、同じようなステップを取っている。彼らの「OneBull」ビジョンは、今年初めに登場してきたが、トッププライオリティとしてビッグデータやクラウドコンピューティング周辺の新ビジネスを統合する狙いであり、総収入の6%を研究開発に投資している。HPCとセキュリティを一緒に適合させている。

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セクター毎のBULLの事業内訳は85%が

ヨーロッパで、55%が本国フランスだ。

この新しく重み付けされたエクストリームスケール市場(スーパーコンピューティングと大規模エンタープライズの両方を含めることができる)へのアプローチを代表したものがBullの本日の新しいサーバラインの発表だ。Bullion Sと呼ばれており、ビッグデータとクラウド用にさらに設計されている。新しいサーバは、最大240台までのXeon E7ベースノードと、最大24テラバイトのメモリで構成され、インメモリでデータ集約型でかなりの計算量を必要とするワークロードに適合するようになっている。今年初めにこの企業は、他のHPC企業がリアルタイム検索会社Sinequaと一緒にビッグデータに向けて顧客ベースをメインストリームのエンタープライズ市場に拡大するのに何をしているのか繰り返した。

BULLは狭義のスーパーコンピューティングの区別から自由に振る舞う方向に動いているが、エンタープライズのビッグデータの中にあるHPCセグメントから離れる訳ではない。BULLはドイツ、ライプチヒのISCにおいても将来のスーパーコンピュータに統合する斬新な展開と新技術に関するニュースで強い存在感を示していた。未だTop500ではBULLは合計17システムを持っている。トップサイトはCEA(26位)で1台を除いて全てヨーロッパ内のシステムだ。(例外は国際核融合エネルギー研究センターのHelios) これはBULLにとっては改善であり、2011年のTop500では10システム、2009年ではたった5システムだった。

今後のTop500の成長における新規追加の中で、フランス国立ハイパフォーマンスコンピューティング機構GENCIは、BULLより2,106ノードのウォームウォーター冷却システムを購入する予定で、広範囲の研究プロジェクトを後押しする。この新しいスーパーコンピュータは2015年1月に稼働予定であり、OCCIGENと呼ばれモンペリエのCINESに設置される予定だ。システムはBULLが「新世代Xeonプロセッサ」と呼んでいるものが装備される予定だが、論理的に仮定してもどのプロセッサを彼らが参照しているのか未確認である。本当の次世代のHPC用Xeon (Knight’s Landing)は2015年に予定される初期システムで登場する予定だからだ。これはXeon E7 v2またはXeon Phiを意味するのか?BULLは今の時点では単にこのシステムが「ハイブリッド技術を採用」して設計されているとしか語っていない。

2ペタフロップスのOCCIGENマシンは200テラバイトのメモリを誇っており、大規模科学シミュレーションおよびデータ集約型研究の要求に応える100GB/s以上でデータをタスクに送ることができるIOシステムを備えている。ウォームウォーターシステムのコールドプレートはコンポーネントレベルの冷却ができるように設計され、システムのPUE*を1.1程度にするだろう。
(訳注)*PUE: Power Usage Effectiveness
データセンターのエネルギー効率を示す値、PUE = データセンター全体の消費電力 / IT機器の消費電力。理想は1.0。

ヨーロッパのトップ遺伝子研究拠点の一つであるバルセロナの国立遺伝子解析センターもまたBULLの新しいシステムを選んで、大規模なゲノムシーケンスプロジェクトをターゲットとしている。購入したノード数やシステムの型の詳細は非公表だが、センターのディレクターは彼らの問題は、過去に頼らなければならなかった「従来のコンピューティング」以上の要求があると語っている。「解決策はシーケンサーの数を増やすことではありませんでした。鍵はシーケンシングとHPCのバランスにあります。新しくハードウェアを購入することで単にシーケンシングの容量を増加するだけでなく、計算基盤を設計し適切にすることです。ゲノムプロジェクトとペースを保っていくことを制限すること無しに拡張できる柔軟なアーキテクチャを選ぶことが重要です。」と彼は述べている。

ISCの週に我々が学んだユーザの話に追加して、BULLはまた、最近買収した企業との戦略的パートナーシップの発表を行った。これにより、BULLはXyratex社(現在はSeagateの子会社)のClusterStorを将来のシステムの一部として再販できる。この取引はドイツのDeutsches Klimarechenzentrum (DKRZ)の契約における2社間の技術協力のニュースとして発表された。この契約では、BULLは1TB/sの性能を持った45ペタバイトのClusterStor CS9000並列ストレージを装備した3ペタフロップスのBullx B720スーパーコンピュータを設計しインストールする。このシステムは拡大するデータ量をより良く扱えるように、気候シミュレーション施設を支援する。

「OneBull」計画が開始され、エンタープライズのビッグデータとクラウドコンピューティングにもっぱら焦点を当てているある企業による最近の買収と共に、スーパーコンピューティングに対するこの企業の投資がどのように持続するのか見ていくのは面白い。ISCにおいては投資を減らすような兆候は見られなかったし、新しい成功のニュースはいまだに大規模HPCサイトを追求する価値があることを示している。