世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


10月 23, 2014

地震シミュレーション、8.6ペタフロップス!

HPCwire Japan

Tiffany Trader

インテル研究所のビジョン戦略家であるDivya Kolarはいかにスーパーコンピューティングが社会における地震への備えを支援しているか説明している。現在の地震の早期警戒システムは非常に限定的であり、基本的に地震が始まった後のアラーム音だけだ。典型的なシナリオにおいては、影響を受ける住民は地域の地形と震源地からの距離によって、数十秒から1分程度のリードタイムを持つことである。震度が大きければ長めの警告期間が必要だが、完全な避難戦略のためにはまだ十分な長さではない。

建築基準法や避難訓練は地震への備えに対する解決策のひとつであるが、完全な答えは地震破壊と分枝断層の現象を理解することだ、とKolarは書いている。最終目標は、これら猛烈な自然災害に対する予測リードタイムを増やすことだが、大規模の地震事象をシミュレーションするには数ペタフロップス以上の強力なスーパーコンピュータを必要とする。

インテルの研究者とミュンヘン工科大学とルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘン校の科学者達は、さらに現実的なシミュレーションを容易にすることに向けて熱心に取り組んでいる。研究の鍵は地震シミュレーション・コードSeisSolで、数万行のC/C++とFortranコードで書かれた複雑で現実世界のアプリケーションだ。

インテル研究所と並列コンピューティング研究所との共同研究によって、ドイツの科学者達は高解像、高次のリアルな3D地震シミュレーションを作成するために、SuperMUC、StampedeおよびTianhe-2スーパーコンピュータをSeisSolと組み合わせて利用した。アーキテクチャを意識した最適化を行うことで、このチームはコード性能をこれまでにないレベルまでスケールすることができており、Tianhe-2スーパーコンピュータの半分(チームに割り当てられた部分全体)を活かして持続性能で8.6ペタフロップス(倍精度)を達成した。このチームの性能モデルはフルTianhe-2マシンの潜在能力においては18-20倍精度ペタフロップスに相当する。

「この値はどのスーパーコンピューティング・プラットフォームにおいても持続アプリケーションで最大レベルの性能です。」とKolarは見ている。「同様に注目すべきなのはTianhe-2システムで使われているIntel Xeon Phiコプロセッサの力によって全体の計算時間が押し上げられたことです。SuperMUCとTianhe-2スーパーコンピュータは相当するサイズを持っています:Tianhe-2ではIntel Xeon Phiを搭載したIntel Xeonが8,192ノードであり、SuperMUCではIntel Xeonが9,216ノードです。約8倍のピーク性能を持つTianhe-2マシンが、1992年のLanders地震のシミュレーションシナリオにおける全体の計算時間を約2.7倍に改善しました。」

「シミュレーションから集められた識見は、社会が地震のような自然災害に備えることに役立つ科学的および産業的アプリケーションに高く関連したものです。」

この論文「Petascale High Order Dynamic Rupture Earthquake Simulations on Heterogeneous Supercomputers」は傑出した現実世界のHPCアプリケーションに授与されるACMゴードンベル賞に考慮されている。この研究はSC14において発表される