世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


9月 15, 2015

メモリスタパズルの最後のピース

HPCwire Japan

Tiffany Trader

アダプティブコンピューティングのKnowm社は、IBMやHPを含む金持ちの競合を窮地においやる実用的な人工ニューラルネットワーク(ANN)チップの研究において、大きな技術的ハードルをクリアしたと述べた。双方向の増分学習能力を持ったメモリスタを開発した最初の企業として、ニューメキシコ州サンタフェ・ベースのスタートアップ企業は、そのANNチップ・アーキテクチャ、高度な機械学習の新世代のために意図された基質、および人工知能アプリケーションで前に進むことができるのだ。

同社のCEOで共同創業者のAlex Nugentによると、その「熱力学RAM」(kT-RAM)汎用シナプス・プロセッサ・アーキテクチャは、通常のデジタル回路でのシミュレートされたアプローチで2つの主要なメリットを付与するという。

  • メモリと処理のマージで、データを移動する必要性を回避する。データは計算する場所を同じところに配置されることができる。
  • 各kT-RAMメモリスタは6-9ビットの情報を保持する。単純なON-OFFスイッチよりも、メモリスタは広範囲で抵抗を変化させることができ、多くの情報を保持する。

20150909-F1-Knowm-AHaH-diagram

kT-RAMプロセッサの仕様は、NugentとTim Molter率いるソフトウェア開発によって開発された自然風のアプローチである「反ヘブとヘブ」(AHaH)コンピューティングの理論をベースとしている。kT-RAMは、汎用オンチップ・シナプスの統合と機械学習操作のための学習リソースを提供するとNugentは説明している。この技術は、シナプス統合とアナログのメモリスタ回路操作への適応を削減し、デジタル計算方法よりも桁違いに効率的である。

しかし、AHaH理論の確約を満たす前に、Knowm社はいくつかの特性の組み合わせでメモリスタを必要としたのだ。それらは次を含んでいる。

  • バックエンドライン(BEOL) CMOS互換性
  • 適応の低いしきい値
  • 抵抗は~100kΩから~100MΩの範囲
  • 多くの中間抵抗状態、約100個が理想的
  • 不揮発性
  • 電圧依存
  • 双方向の増分操作

メモリスタの専門家であるボイジー州立大学のKris Campbell博士は、より高い抵抗状態と双方向増分特性を除いて、彼女の前職時代にこれらすべての要件を示していた。米国空軍研究所のSTTRプログラムを通して、Knowm社のCEOは1年ちょっと前にCambell博士が欠けている部分を埋めてくれるのではないかと彼女にアプローチしたのだ。

20150909-F1-Knowm-bidirectional-incremental-current

「暫くの間、メモリスタは片方向増分操作を示しており、これはデバイス全体に電圧を掛けて単一方向に徐々に増加することができますが、電圧を逆転すると得られる電圧はオールオアナッシングに変化するというものだと言えます。」とNugentはHPCwireに説明した。「これでは動かないので、我々は徐々にステップアップもしくはダウンすることができるものが必要なのです。両方が必要です。しかしこの突然消える特性は扱うのが非常に難しく、他の多くのグループがこれに苦しんでいるのです。」

カルコゲナイド化合物を用いることで、Cambell博士はメモリスタを単一でなく双方向で抵抗を漸増的に調整可能にできるブレークスルーを裏付けた。

「学習が増分操作であるので、この電圧依存の双方向増分特性は、我々がメモリスタを機械学習とを組み合わせた結果なのです。」とNugentは語った。「これは我々が”重りを動かす”と呼んでいるものです。これをプラス方向に動かしたり、マイナス方向に動かしたりします。電圧を上げると、もっと動かすことができます。電圧を逆転すると方向を逆転することができます。学習アルゴリズムは重りの周りで動く方法を見つけることとなるのです。」

Campbell博士はユニークな方法でそれを作ることができるとNugentは語り、彼女のアプローチを「他の皆は陽で彼女は陰」であると説明した。

「我々は、必要とする範囲の正確な抵抗値で驚異的な双方向増分操作を実証しました。」とNugentは続けた。「なので私が知る限り、これは最後の部分です。今や我々はAHaHコンピューティングに絶対に理想的なデバイスを持っています。学習はアナログのハードウェアの操作に削減することができるのです。」

Knowm社の個々のメモリスタ、エミュレータキット、および今年早々に利用可能なCMOSプラスメモリスタ・サービスに続いてさらに前進が続く。新しい評価チップは、16ピンのセラミックDIPパッケージ内に8個の別々ののメモリスタを搭載している。価格はユニット当たり220ドルからで、ボリューム注文には自動的に値引きが適用される。同様にダイごとの提供も可能だ。

Knowm社の計画では、従来の計算アーキテクチャよりも10桁のオーダーで電力効率が上がる潜在性をもった世界で最初の新の適応型neuromemristiveプロセッサを構築することだ。

「我々が閉じようとしている効率のギャップは、脳の効率性であり、生物学と同等の上にコンピューティングを持ってこようとする効率なのです。」とNugentは語った。