世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


8月 26, 2013

太陽風に備える

HPCwire Japan

Tiffanyy Trader

太陽がなかったら生命は存在しない。3番目の惑星に適切な量の熱と光を供給していることに加えて、太陽は、24時間周期の活動やビタミンDと光合成をもたらす。しかしながら、この生命に満ちた球体は深刻な破壊の可能性にも直面している。太陽風と呼ばれる現象により、太陽はあらゆる方向に時速百万マイルの速度で、陽子、電子、イオン化された原子の海を放出している。もしこれらの粒子が地球に到達すると、その放射線が人体の健康に脅威をもたらし、大量の荷電粒子の襲来により、電力網、ネットワークや電子機器が破壊されてしまう。

20130826-S2

地球の磁気圏の3Dグローバル・ハイブリッド・シミュレーション。磁力線がその始点から終点まで色づけされている。

H. Karimabadi と B. Loringの好意による

情報ソース:NICS(国立計算科学研究機関)

 

太陽風は、地球に近い宇宙空間での環境条件に関する宇宙気象の一種といっていい。太陽の表面で起こる爆発である太陽フレアは、1千万個もの火山噴火に等しい凶暴さを持ったエネルギーで、荷電粒子の塊を噴出させる。太陽風やフレアよりは頻度は少ないけれども、より危険なのは、コロナガス噴出、略してCMEである。太陽コロナの内部から噴出するプラズマが、磁気嵐と呼ばれる宇宙気象を引き起こし、我が地球の居住者と技術に猛威を振るうのである。

自然の防御壁

この 止むことのない襲来は、磁気圏と呼ばれる磁場でできた自然の防御壁によって守られている。地球の持つ磁極から生ずるこの磁場は37,000マイルの大きさで空間を覆っているのだ。磁気圏は、荷電粒子が地球大気圏に突入するのをほぼ防いでいるが、それだけではすべて解決したことにはならない。かなりの太陽風粒子がこの磁場を通過し、電力網やネットワーク、生命体に深刻な影響をもたらしてしまうことがあるのだ。

スーパーコンピュータによる救援

サンディエゴ、カリフォルニア大学のHoma Karimabadに率いられた研究者グループは、磁気圏に関する宇宙気象の効果を調査している。「地球の磁場は防護繭を形成しています。しかし、強烈な太陽風には破られてしまうのです。」と、Karimabadiは説明する。

Karimabadiは、ローレンス・バークレー国立研究所 (LBNL) の可視化技術専門家Burlen Loringとチームを組み、国立計算科学研究機関 (NICS)のスーパーコンピュータを使って磁気圏の位相マップ (topomap) を作成した。

「topomapは、地球の磁場から、あるいは太陽風による磁場からの元を区別して、磁力線の位置を見つける助けをしてくれるんです。」と、Karimabadiは述べる。

今のところ、研究者らは磁気嵐を追跡することはできるが、 予測する道具立てを持っていない。その種で初めてのプロジェクトとして、磁気圏と宇宙気象的効果の動的なシミュレーションを実施するためにこのマップを活用することになるだろう。

このシミュレーションは、計算集約かつ、データ集約でもある。一回の計算で、100,000個のCPUを使って、48時間以上かかるかもしれない。このような複雑な現象が解明され始めたのは、Jaguar, NautilusやKrakenといったペタ・スケールのスーパーコンピュータの出現により可能になったのである。さらに、Karimabadiによれば、この時代の最速のコンピュータをもってしても、まだ遠く足りないのである。明らかにペタ・スケールの問題だと、彼は言う

「シミュレーションから吐き出される膨大なデータを処理し分析するのは、極めて大変なのです。LBNLの可視化部門グループと組むことで、データを分析するツールを開発することができたのです。」と、Karimabadiは言う。

宇宙気象現象に備えて準備しておくためには、予測技術を改良していくことが不可欠である。研究記録に関する特別記事に寄れば、「宇宙気象が磁気圏にどのような効果を与えるかをよりよく理解することで、我が惑星への太陽活動からの影響をより正確に予測できるようになる。」

去る7月に、CME(コロナガス噴出)が発生したが、その規模がはっきりとわかるほどの激しい嵐はかろうじて回避された。もしその嵐が数日早く起きていたら、広範囲に重大な結果が生じていたと思われる。そういう規模の嵐は、一国あるいは国をまたがった電力網を破壊してしまう可能性があるのだ。

1859年と1989年に起きた出来事は、危険が現実のものになることを教えてくれる。「正確な気象モデルが至急必要とされています。」と、Karimabadiは主張する。「深刻な宇宙気象の影響になると、悲惨な財政的、国家安全保障上の結果をもたらし、人類がかつて経験したことのないような規模で日常生活に破綻を来たすことでしょう。」