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10月 23, 2015

フォーミュラーワン、CFDのみの未来を考える

HPCwire Japan

Tiffany Trader

フォーミュラーワンのレースにおいてデジタル設計は中心的なものとなったが、いまだ風洞は排除できていない。これは最近のF1戦略グループ会議で出てきたメッセージだ。このグループはこのスポーツの運営組織であるFIAを構成しており、Bernie Ecclestoneと上位6チームにより運営されるスポーツの商業アームである。

世界最速の車を担当する関係者らは風洞試験を禁止する動きを検討しているが、この提案は、CFD技術が現実の風洞試験を不要にする程にはまだ成熟していないと考えるチームリーダーやファンからの抵抗に会っている。McLaren、Red BullやForce Indiaは様々な程度のサポートを表明する一方で、Ferrari、Mercedes、Williamsのリーダー達は特に懐疑的であった。

F1チームは通常、何も実際に製作すること無しに短時間で多くの設計変数を実験できるようになるので、設計と試験プロセスを計算流体力学(CFD)から開始する。2番目のステップは物理スケールのモデルを製作してそれを風洞に入れ、チームは車の空力効率の評価を含む更なる試験を行うのだ。車が作られたら、次はトラック試験だ。

実際には、トラック試験、風洞試験、およびCFDシミュレーション作業はすべて、このスポーツの運営組織によって規制されている。2015年には、チームに割り当てられた風洞時間は週当たり80時間から65時間に、風時間は週30時間から25時間に落とされたのだ。計算流体力学(CFD)の利用は週30テラフロップスから25テラフロップスに縮小された。トラック試験もまた削減されている。プリシーズンの試験は3から2セッションになり、インシーズンの試験は完全にカットされるようになったのだ。これらの変更はコスト削減策として制定されたのだが、何人かはこのスポーツを後退させるものと感じている。

「このテラフロップス制限は通常、エンジニアが規制の制限一杯まで行かせることとなり、我々は基本的に古いチップを使わなくてはならなかったのです。」とMcLarenレーシングのディレクターであるEric Boullierが語ったとAutosportがレポートしている。「この結果、我々は計算の面では最新技術を使わなかったのです。」

「10年前の技術を使うのはフォーミュラーワンにとって良いこととは思えません。我々はトップにいなければなりません。いくつかの議論がこの規制の変更を検討しており、テラフロップスの話からエネルギー帯域幅制御にしようとしています。これですと、チームにとって何を計算機で行うかもっと自由度がありますが、まだ規制されているのはFIAと同じです。これはF1にとって正しいので、我々は非常に好ましく思っているものです。」

「風洞については、CFDでの開発が許せば、いつの日か風洞は時代遅れとなるかもしれません。我々はできるだけ早く最新技術を取りれたいと思っています。」

一般的には、仮想風洞は現実世界や風洞試験のように正確ではありません。しかし、これはより速く、より安く、実際にそれらのパーツのすべてを製造しないでも、多くの異なる設計を短時間で処理できます。CFD、風洞およびトラック試験との組み合わせは、チームにとって効率を最大化させることができますが、この制限は進歩を妨げるいるのだろうか?彼らはこのスポーツから少し抜けているのだろうか?そしてコストファクターは?

「実際に我々は風洞の運用に関するコストと、もし閉鎖した場合どのくらい実際にコストをセーブできるかについて深い解析を行っており、数字に相関する数字は現在回覧されています。」とWilliamのチーム長代理であるClaire Williamsは語っている。「セーブする量は最小限です。もう一度、補償要素とは、あなたがF1チームとしてどこかでセーブするお金、どこかでセーブするお金、どこかに行って使うお金なのです。」

「我々は絶対にフォーミュラーワンにおける風洞の禁止に投票することはありませんし、今後もないでしょう。」と、チームが2台の風洞を持つWilliamsは語っている。「空気力学の最高のツールのひとつを使わないで、いかにモータースポーツの最高峰を運営できるでしょうか? これは我々には何の意味もありません。」

MercedesのチーフであるToto Wolffは次のように付け加えた:「風洞は現在、車を路上に置き、CFDで何を行い、何の相関関係を得るか確認する必要があります。」

ファンに関しては、あらゆるところで議論が起きている。何人かは少ないCFDや風洞の制限から起きる航空学的発展を見たいと熱望している。また他は、低予算のチームにも競争できる余地を与えるような活躍の場を提供することで、このスポーツがもっと興味深くなることを考えている。

また、CFDにF1の力をつぎ込むために作られる有無を言わさぬ技術の議論もある。

一人の熱烈なレーシンングファンであるJavierは次のように語っている:「完全にCFDに依存するフォーミュラーはエキサイティングなはずです; 空気エンジニアが10年や20年でどのようになるか見るチャンスです。F1は技術移転の重要性についてずっと話してきていますので、そのためハイブリッドのパワーユニットを導入したのです。もし彼らが真剣であるならば、純粋なCFDへの移行は優れた選択となるでしょう。」