世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


2月 2, 2015

CAEシリーズ:第4回 CAE利用の流れ

岩田進吉(有限会社イワタシステムサポート代表取締役/中部CAE懇話会幹事)

今回はCAE利用の流れについてお話をさせて頂きます。CAEによる解析業務を行うには幾つかのステップがありますので、そのステップについて基本的な説明を行います。

 

CAE利用の全体の流れ

CAE利用の全体の流れは下記の図の通りです。 大まかに

  1. モデル作成
  2. プリ処理 / Meshの作成、境界条件の設定
  3. 解析(計算)処理
  4. ポスト処理と結果の評価
  5. 報告書作成

となります。

cae-20150202-1

 

モデルの作成(製品形状の作成)

モデルは3次元CADが一般的になった現在では、設計部門で作成したモデルを利用できる事が多くなっております。しかし設計部門で作成するモデルはCAEを意識したモデル(形状)ではない為に、そのままでは利用できない場合があります。この場合はCAE部門で修正する必要があります。修正が必要な理由とは

  • 隣接する面が閉じた面になっていない。

離れていたり、重なっていたりするとメッシュの作成ができません。

  • 計算負荷やMeshの品質を考えて小さな突起や小さな穴を削除する。

等の理由があります。

また設計でモデルを作成しない場合、あるいは設計で作成したモデルがない場合等はCAE部門でモデルを作成する必要があります。 この場合は、簡易なものであればCAEソフトウェアに備わったモデル作成機能で作成することもできますが、複雑な形状の場合はモデル作成に適したツールもあります。

cae-20150202-2

モデル作成の例:

Salome-Mecaにサンプルで付属しているモデル

 

プリ処理(Mesh作成、境界条件の設定)

【Mesh作成】


CAEにおいて3次元解析をする場合は、製品モデルを細かい4面体(テトラ要素)あるいは六面体(ヘキサ要素)に分割する必要があります。このテトラやヘキサ要素の単純形状に分割することにより、複雑な形状を単純化して計算処理も単純な計算に置換えて、製品の各部分にかかる力や変位等を求める事ができます。



【境界条件の設定】


解析対象の製品は、その材料の使い方により

  • どこが拘束(不動部分)されているか
  • どこがどのような拘束条件(回転や移動)のもとに動くか
  • どこに、どれだけの力が働くのか
  • この材料はどのような材質でできているか

等を与える必要があります。 これは製品の使う時の条件によっても大きく異なりますので注意が必要です。

cae-20150202-3

メッシュを作成した例:

テトラメッシュで構成、メッシュの数は9,000程度

 

解析処理(計算処理)

境界条件とMesh分割した情報を用いて計算に必要なマトリックスを作成します。 このマトリックスを解くことにより解析計算が行われる事になります。 計算は単純な計算であれば数分程度で終了しますが、複雑な非線形計算では数日を要するような計算になります。 最近はコンピュータの計算能力が高くなりましたが、それにつれて精度を向上するためにモデルのMesh規模が非常に大きくなり、計算時間は短くなっていないのが現状です。複雑な解析ではかえって計算時間が長くなっております。 CAEの結果がどのくらいの時間で欲しいかを考慮して、モデルの作成やコンピュータ資源を決める必要があります。

 

 

ポスト処理(結果の処理と判断)

解析処理により最終的に求めたい変位、応力分布、応力集中等のカラーマップ、そしてグラフや必要な数値の結果を得ることができます。 この結果を見て

  • モデル(製品)が要求された仕様(変位や応力)を満たすか
  • 過剰品質な設計になっていないか
  • 与えた境界条件が間違っていないか(異常な結果が出ていないか)

等について検討することになります。 検討結果に応じて再検討が必要な場合は

  • モデルの作成(製品形状の修正)
  • プリ処理(Mesh修正、境界条件の修正)

に戻って必要な修正を施して再計算をすることになります。 結果が良ければ報告書作成になります。

cae-20150202-4

ポスト処理の例:

変位のコンタ図で変位量の倍率を大きくして表示

 

報告書作成処理

CAEのポスト処理の結果が製品開発、あるいは故障解析に関して正しく解析を行っている。あるいは必要な情報を提供できると判断できたら、報告書を作成し社内、あるいは社外の関係者に提出あるいは説明を行います。

 

***** CAEを利用する上での注意点 *****

一連の解析を行っても与えるパラメータや物性、あるいは選択する解析手法によっては正しいと思われる結果が出ても、正しい結果とは異なる可能性があります。この点については類似製品で経験のある解析であれば問題が発生する可能性は低いですが、新しい解析対象(製品)や1回限りの解析では気づかない間違いをおかす可能性があります。このような場合は同僚や上司等の第3者のコメントを得て確認をする必要があります。


次回は「構造解析関連ソフトウェア」という内容で書かせて頂ければと考えております。