世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


8月 26, 2024

新HPCの歩み(第199回)-2003年(b)-

小柳 義夫 (高度情報科学技術研究機構)

1998年8月から計算科学技術を駆使した研究開発を推進してきたACT-JSTは終了し、「シミュレーション技術の革新と実用化基盤の構築」は2年目を迎えた。未来開拓「計算科学」とともに、計算科学の推進に力が入れられた。併せて、科研費特定領域(C)やCREST「情報社会を支える新しい高性能情報処理技術」も進んでいる。バイオグリッドシンポジウムin関西や“Asia Grid Symposium”などが開催された。

日本政府関係の動き(続き)

10) ITBL(シンポジウム、中間評価)
日本原子力研究所関西研究所(京都府木津川市)のITBL棟にスーパーコンピュータ(富士通PRIMEPOWER、128 CPU/node、4 nodes構成、ピーク1.2 TFlos)を導入したことは2001年に述べたが、Compaq製のProliantクラスタ(Pentium III×2のノードが36ノード、接続はMyrinet)も設置された。

2003年2月17日に日本科学未来館において、「第3回ITBL シンポジウム-仮想研究所の実現に向けて-」が開催された。主催は、旧科学技術庁関係の5研究所とJSTである。「ITBL計画の進捗状況」(原研 福田正大)、「ITBL基盤ソフトウェア」(原研 樋口健二)、「分散侵入検知とITBL-VPN」(理研 鶴岡信彦)、「仮想スーパーコンピュータセンタ利用環境GridLibとセキュリティ」(産総研 関口智嗣)などのほか、各応用分野からの報告があった。プログラムは以下の通り。

開会

10:30~10:35

開会

10:35~10:40

ITBL推進会議議長挨拶 (日本原子力研究所 加藤 義章 理事)

全体計画

10:40~10:55

ITBL計画の進捗状況(ITBL委員会委員長:日本原子力研究所 福田 正大 並列処理基本システム開発グループリーダー)

ITBL基盤技術

10:55~11:15

ITBL基盤ソフトウェア(日本原子力研究所 樋口 健二 並列処理基本システム開発グループ・サブリーダー)

11:15~11:35

分散侵入検知とITBL-VPN
(理化学研究所 鶴岡 信彦 情報基盤研究部情報環境室 研究員)

11:35~12:00

仮想スーパーコンピュータセンタ利用環境GridLibとセキュリティ
(独立行政法人 産業技術総合研究所 関口 智嗣 グリッド研究センター長)

12:00~13:00

休憩

ナノテク・材料分野におけるITBLアプリケーション

13:00~13:25

材料設計統合プラットフォームの開発とそのアプリケーション
(独立行政法人 物質・材料研究機構 二瓶 正俊 主席研究員)

13:25~13:40

分散データベース統合システムの開発
(科学技術振興事業団 真下 忠彰 データベース開発部 客員研究員)

13:40~14:05

計算機ナノマテリアルデザインの実際
(大阪大学 大学院理学研究科 赤井 久純 教授)

14:05~14:30

ITBLとスーパーSINETナノテク部会との連携実験
(東北大学 金属材料研究所 川添 良幸 教授)

航空宇宙分野におけるITBLアプリケーション

14:30~14:55

航空宇宙技術研究所におけるITBLへの取り組み(独立行政法人 航空宇宙技術研究所 山本 一臣 CFD技術開発センター シミュレーション環境技術グループリーダー)

14:55~15:20

SuperSINETを利用したIFS-NAL共同研究環境の構築
(東北大学 流体科学研究所 小原 拓 助教授)

15:20~15:35

休憩

ライフサイエンス分野におけるITBLアプリケーション

15:35~16:00

タンパク質高次情報検索システム:BAAQの開発
(日本原子力研究所 由良 敬 量子生命情報解析グループ 研究員)

16:00~16:25

並列分子動力学シミュレーションによる生体超分子研究
(日本原子力研究所 北尾 彰朗 量子生命情報解析グループ 研究員)

16:25~16:50

細胞フルシミュレーションに必要なシミュレーション技術
(理化学研究所 戎崎 俊一 情報基盤研究部長)

16:50~17:15

蛋白質の量子化学反応解析システムの開発
(株式会社富士総合研究所 小池 秀耀 上席執行役員)

防災・環境科学分野におけるITBLアプリケーション

17:15~17:30

実大三次元震動破壊実験シミュレーションシステム
(独立行政法人防災科学技術研究所 佐藤 一雄 主任研究員)

17:30~17:55

数値環境システムSPEEDI-MPの開発と適用研究
(日本原子力研究所 永井 晴康 環境科学研究部大気環境研究グループ 研究員)

閉会

17:55~18:00

閉会

 

3月にはITBL基盤ソフトウェアα版が完成した。

7月ごろ文部科学省の古西真氏から連絡があり、年末から年度末にかけてITBLの中間評価をするので評価委員をお願いしたいとのことであった。正式には、科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会 情報科学技術委員会 ITBL評価ワーキンググループ。主査は坂内正夫(情報研)、委員は浅野正一郎(情報研)、小池秀耀(富士総研)、古賀達蔵(通信放送機構)、菅原秀明(遺伝研)、土井正夫(名大)、中村道治(日立)、三浦謙一(富士通)と筆者、科学官として西尾章治郞(大阪大)であった。実際の評価は2004年に入ってから。

「第4回ITBLシンポジウム―新たな研究スタイルの萌芽―」が10月20日に日本科学未来館で開催された。プログラムは以下の通り。

10:30~10:35

開会

10:35~10:40

来賓挨拶
(文部科学省研究振興局情報課 古西 真 情報科学技術研究企画官)

10:40~10:45

 ITBL推進会議議長挨拶
(日本原子力研究所 加藤 義章 理事)

10:45~11:45

 ITBLの新しい展開に向けて
(ITBL委員会委員長:宇宙航空研究開発機構 福田 正大 情報化推進部参事)

 

11:45~13:00

 休憩(会議室3でITBL活用研究例デモンストレーション)

 

13:00~13:15

 CFD(Computational Fluid Dynamics)基盤ソフトウェアUPACSの開発と公開
(宇宙航空研究開発機構 山本 一臣 計算空力・最適化チームリーダー)

13:15~13:30

 UPACSの活用とITBLにおける利用計画
(石川島播磨重工業航空宇宙事業本部技術開発センター 児玉 秀和 数値解析グループ担当部長)

13:30~14:00

 CMD (Computational Materials Design)ワークショップの活動について
(大阪大学大学院基礎工学研究科 張 紀久夫 教授)

14:00~14:30

 ITBL環境上でのADVENTURE研究コミュニティの形成
(東京大学大学院新領域創成科学研究科 三村 泰成)

14:30~15:00

 細胞シミュレーターE-CELLの教育への展開とモデリング支援環境の開発
(理化学研究所 石川 直太 計算宇宙物理研究室研究員)

 

15:00~16:00

 休憩(会議室3でITBL活用研究例デモンストレーション)

 

16:00~16:30

 ITBLポータルサイトとソフト試用
(理化学研究所 福井 義成 情報基盤センター研究員)

16:30~16:50

 ITBL共同利用センターの活動状況
(日本原子力研究所 相川 裕史 ITBL利用推進室長)

16:50~17:20

 ITBLでの連携状況と新規参加の方法について
(ITBL委員会副委員長:理化学研究所 姫野 龍太郎 情報基盤センター長)

17:20~17:25

 閉会

 

11) Japan-US Computational Science Roundtable(Kona, Hawaii)
前に述べたように、US-Japan Performance Evaluation Workshopが、1991年8月にKauai島で、1994年9月にKona(Hawaii島)で、1995年8月に別府で(PERMEAN’95として)開催された。その後しばらく動きはなかったが、2002年12月頃、アメリカ側の座長であったGary Johnsonから関係者に連絡があり、US-Japan Computational Science Roundtableを1月12日晩~15日に第2回と同じHawaii島KonaのHilton Waikoloa Villageで開こうということになった。事務局はThe Krell Instituteであった。

これまでは性能評価が中心テーマであったが、今回のテーマは計算科学で、日本もアメリカも、大きな実験科学が幅を効かせている中で、どうやって計算科学を振興させようか、またそれに必要な計算リソースをどう確保しようか、ということを議論しようということであった。Garyによれば、“Promote and facilitate collaborative computational science research activities among researchers from our two countries”とまとめていた。当然のことながら「地球シミュレータ」の稼働がその背景にあり、「アメリカにも使わせてくれ」という雰囲気を感じた。直前の2002年暮れから動き始めたので、準備の時間が短く、日米とも参加者の確保に苦労した。

手元の不正確な記録によると、参加者は以下の通り。事務局のKrell Instituteの方もおられたと思う。

日本側参加者

 関口智嗣(産総研),横川三津夫(産総研),松岡聡(東工大),岸本泰明(原研)、林隆也(核融合研)、小柳義夫(東大)、佐藤哲也(地球シミュレータ)

アメリカ側参加者

 Lawrence Buja (NCAR), Stephen C. Jardian (Princeton Plasma Physics Laboratory), Gary Johnson (DOE, Office of Science), Alan Laub (DOE, Office of Science), Bob Malone (LANL), Reinhold C. Mann (PNNL), Jeff Nichols (ORNL), C. E. Oliver (DOE, Office of Science), Horst Simon (LBNL), Michael Strayer (ORNL), James Tomkins (SNL)

 

ただ問題は、アメリカ側の出席者には Gary Johnson にしても、そのボスの Oliver にしても、政策や予算を動かす実力をもつ人物が いるのに対し、日本側は研究者ばかりで、多少政策決定や評価に関与するにせよ、彼らほどの政治力がないことである。だいたい、日本にはかれらのような研究者で政策的な力をもつという人物像がない。逆に文部省や学振やJSTのだれかを連れて行っても、どうであろうか。このアンバランスは、最初から分かっているが、本質的な問題である。

プログラムは大略以下の通りであった。

1月13日(月)

8:30

C. E. Oliver (DOE, OS)

開会挨拶

9:05

Gary Johnson (DOE, OS)

General Purpose

Reinhold C. Mann (PNNL)

Computational Science Projects in PNNL—A Summary

Horst Simon (LBNL)

NERSC Overview

Jeff Nichols (ORNL)

The DOE Center for Computational Sciences

James Tomkins and Bill Camp (SNL)

Sandia HPC Resources

10:45

Yoshio Oyanagi (U. Tokyo)

HPC Resources and Computational Sciences Projects in Japan

11:10

Tetsuya Sato (JAMSTEC, ES Center)

The Earth Simulator and International Collaboration

11:40

Satoshi Matsuoka (Titech)

Building a Plateau of Petascale Computing Infrastructure: A Proposal for Japanese University Supercomputer Centers

11:57

Satoshi Sekiguchi (AIST)

Grid Technology

14:00

Michael Strayer

Supernova Science

15:00

Yasuaki Kishimoto

NEXT (Numerical EXperiment of Tokamaks) activities at JAERI

15:32

Stephen Jardin (Princeton)

US/Japan Collaboration Opportunities in Computational Fusion Science

15:59

Takaya Hayashi (NIFS)

Large-scale Computer Simulation Research on Fusion Science and “Simulation Science” at NIFS

16:20

Bob Malone (LANL)

Ocean and Climate Modeling

16:45

Lawrence Buja (NCAR)

Computational and Data Infrastructure needs for Climate Simulation

 

14日(火)

8:00

Gary Johnson (DOE, CS)

The Applications Performance Matrix

8:40

Alan Laub (DOE, OS)

SciDAC: Scientific Discovery through Advanced Computing(何とOHP)

9:30

 

Collaboration talks

10:50

Jose Munoz

(映画)HPCS: High Productivity Computing Systems

午後

 

自由行動

 

15日(水)

8:00

 

報告書の作成、今後の進め方、ベンチマーク、資源の相互利用

9:55

 

報告書の議論、まずHPC Resourcesの総論を書き、あとは分野別(宇宙物理、核融合、気象など)

午後

 

自由行動

 

議論の中で、日本側から「なんで日本のマシンを買わないのか。すでに存在しているし、割引もするであろう。SciDACにも役立つのではないか。最初は日本のマシンを買って、そのうちにアメリカのマシンが育ったら次にはそれを買ったらいい。」などという上から目線の発言もあった。アメリカ側からは一言「$400Mは高いよ」。Simonは「NERSCの調達のときに日本の会社も考慮したが、NCARの例にあるようにpolitical costが高すぎる。」と発言。本音であろう。

アメリカ側の誰かから、「昔、DARPAが多くのアーキテクチャを育てたが皆死んでしまった。この轍を踏んではならない。」という発言もあった。CrayのベクトルやTMCのことなどを言っているのか。

両国の協力については、高エネルギー物理学や核融合のような正式の日米協力の枠組みを作る必要があるという話になったが、トップダウンで考えるかボトムアップで考えるか、両方の意見が出た。筆者はexpertiseの共有から始めるべきであると主張した。

今回筆者は家内を同伴したが、車でキラウェア火山まで足をのばしたり、すばる望遠鏡を見に行ったりした。実は国立天文台の友人小笠原隆亮氏がすばるで働いていて行けば案内してくれるという話だったのだが、直前に日本に出かけており、やむを得ず有料で業者のツアーに参加した。おきまりのコースで、まずマウナケアの中腹にあるOnizuka Visitor Center(標高2800m)で体を慣らし、防寒服に身を固めて標高4200mの頂上近くの望遠鏡の建物を外側から見た。友人の案内なら中まで入れた所であった、残念。寒い上に風が強く、空気も薄いので立っているのがやっとであった。すぐ下まで降り、標高1000mぐらいのところで反射望遠鏡で天体観測をした。土星や木星がきれいに見えた。案内のハワイ人が日本語ぺらぺらで、「皆さん、宇宙人はいると思いますか?」と質問。参加者「‥‥」。案内「僕はいると思います。われわれが宇宙人です。」

12) JSTシミュレーション技術の革新と実用化基盤の構築
昨年から始まったJSTシミュレーション技術の革新と実用化基盤の構築(CREST型とさきがけ型の混合)の第2年目の採択課題が9月19日公表された。CREST型は、以下の6件。

代表者

課題

穴井宏和

数値/数式ハイブリッド計算に基づくロバスト最適化プラットフォームの構築

石井清仁

材料の組織・特性設計総合化システムの開発

佐々木節

高度放射線医療のためのシミュレーション基盤の構築

高野直樹

生体骨医療を目指したマルチプロフェッショナル・シミュレータ

長嶋雲兵

グリッド技術を用いた大規模分子シミュレーションプログラムの開発

久田俊明

医療・創薬のためのマルチスケール・マルチフィジックス心臓シミュレータの開発

 

さきがけ型は、以下の4件であった。

代表者

課題

川野聡恭

DNAナノデバイス創製におけるシミュレーション技術の確立

久保百司

量子分子動力学法に基づく化学反応対応型連成現象シミュレータの開発

立川仁典

水素量子シミュレーション技術の構築

渡邉孝信

ダイナミックボンド型大規模分子動力学法の開発

 

13) JST CREST「情報社会を支える新しい高性能情報処理技術」
JSTは、2001年、新しいCREST「情報社会を支える新しい高性能情報処理技術」(研究総括 田中英彦東大情報理工学系研究科長)を発足させた。3年目の課題として、以下の3件が採択された。

代表者

課題

加藤和彦

自律連合型基盤システムの構築

松井俊浩

ヒューマノイドのための実時間分散情報処理

横井治夫

ディペンダブルで高性能な先進ストレージシステム

 

14) ACT-JST(報告会)
JSTが物質・材料、生命・生体、環境・安全、地球・宇宙観測という重要な科学技術分野において、1998年8月から計算科学技術を駆使した研究開発を推進してきた「計算科学技術活用型特定研究開発推進事業(ACT-JST)」の2000年採択課題は2003年3月末で研究開発を終了した。2003年1月29日(水)、日本科学未来館で終了シンポジウムが開催された。

15) 未来開拓「計算科学」(終了)
日本学術振興会の未来開拓事業「計算科学」の6つの課題のうち、1998年度に開始した「第一原理からのタンパク質の立体構造予測シミュレーション法の開発」(岡本祐幸)だけは、2003年3月まで継続した。3月末ですべての課題が終了した。

16) 科研費特定領域(C)
2001年4月に発足した科研費特定領域(C)「ITの深化を拓く情報学研究」は、1月22日に国立情報学研究所で成果報告会を行った。SDSC所長のFran Berman女史の招待講演があった。

17) 総合科学技術会議が「基礎研究を軽視」
日本物理学会、日本天文学会、日本地質学会の3学会は、2003年11月4日付けで「政府の総合科学技術会議が進める政策は、速効的な技術革新に重点が置かれ、科学技術の根底を支える基盤的経費が軽視されかねない状況だ」と共同声明を発表し批判した。総合科学技術会議が10月に実施した科学技術分野の優先順位付けで、高速増殖炉「もんじゅ」の改造工事や、国際熱核融合実験炉(ITER)計画の推進などは高く評価されたが、素粒子ニュートリノ実験の前倒し計画は最低の評価だった。基礎科学の推進をうたう科学技術基本計画の精神に反すると指摘している。総合科学技術会議事務局は、評価は準備状況などに基づいたもので、基礎科学を軽視している訳ではない、と反論している。(毎日新聞11月7日号)

前年の2002年12月9日にも、日本学術会議天文学研連は、「日本の科学を疲弊させるトップダウン政策の見直しを」という声明を出していた(天文月報 2003年2月号

18) 科学技術振興調整費「新興分野人材養成」
讀賣新聞2003年5月5日によると、パソコン720台を司令塔無しで連携させ、高度な処理をさせる実験に、東大の大学院生が成功したとのことである。これは、2001年に始まった科学技術振興調整費「新興分野人材養成」の中で東大情報理工学系研究科が採択された「戦略ソフトウェア創造」人材養成プログラムの一環である。実験は、学生のアイデアを実用化まで応援しようという、東大の教育事業の一環である。教育用のPCを集めて実験したようである。

2003年の「新興分野人材養成」(追加公募)では50件応募のなかから12件採択された(文部科学省2003/6/19)。この中に「セキュアシステム設計技術者の育成」(工学院大学)があった。工学院大学はこれまで産業界とコンソーシアムを作り、インターネットセキュリティの社会人教育を企業とともに推進してきていた。前年まで審査委員長であった筆者が、ぜひこのプロジェクトに応募するよう薦めたものである。人材養成の振興調整費において、単科の私立大学としてははじめてであった。筆者はアドバイザリボードの座長を依頼された。

19) 大阪大学バイオグリッド・プロジェクト
2002年、新世紀重点研究創生プラン(RR2002)の「eサイエンス」実現プロジェクトの一環として、下條真司(大阪大学サイバーメディアセンター)を中心にバイオインフォマティックス向けのグリッドを構築するプロジェクトが採択されたことはすでに述べた。「バイオグリッド」と命名した。2003年3月3日には、東京台場の日本科学未来館でバイオグリッドシンポジウムを開催した。6月頃外部助言委員会を作ることになり、筆者も委員を委嘱された。委員は以下の通り。

明野吉成

文部科学省研究振興局情報課課長

松原謙一

大阪大学名誉教授、DNAチップ研究所社長

郷信広

日本原子力研究所計算科学技術推進センター量子生命情報解析グループリーダー

牛島和夫

(財)九州システム情報技術研究所所長

西川 伸一

理化学研究所発生・再生科学総合研究センター副センター長

小柳義夫

東京大学情報理工学系研究科

清水富尚

大日本製薬相談役、近畿バイオインダストリー会議会長

尾崎智行

元松下ソフトリサーチ社長

 

第1回が12月1日午後に千里ライフサイエンスセンター8階で開催された。プログラムは以下の通り。

13:00

挨 拶

大阪大学サイバーメディアセンター 下條 真司

13:30

「BioPfuga:生体シミュレーションのためのグリッド上での連成技術」

大阪大学蛋白質研究所 中村 春木

14:00

「HTC:グリッドによる大規模高速計算技術を用いた蛋白質構造予測」

奈良先端科学技術大学院大学 藤川和利

14:20

「DataGrid:グリッド技術によるバイオデータベースの連携」

大阪大学大学院情報科学研究科 松田 秀雄

14:50

coffee break

15:05

「TeleScience:Spring8、超高圧電子顕微鏡のグリッドネットワークへの接続」

大阪大学サイバーメディアセンター 秋山 豊和

15:25

「CoreGrid:ライフサイエンス分野へのグリッド基盤技術の応用

大阪大学大学院情報科学研究科  伊達進

15:55

「NPO法人バイオグリッドセンター関西設立について」

大阪大学サイバーメディアセンター  坂田 恒昭

16:15

デモ&ディスカッション(バイオグリッドR&Dセンター会議室にて)

 

12月8日には、同プロジェクトの主催で、千里ライフサイエンスセンター5階において「バイオグリッドシンポジウムin関西BioGrid2003 」が、翌12月9日には文部科学省振興調整費「アジアグリッドイニシアチブ」の主催でアジアグリッドシンポジウムが連続で開催された。

2004年から特定非営利法人「バイオグリッドセンター関西」となる。

次回は大学などの計算センターや日本の学界の動き、国内会議など。これまでのJSPP(1989年~2002年)に代わって新しいシンポジウム SACSISが始まった。

 

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