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7月 24, 2025

AMD EPYC™で革新する河川解析 ― 東京建設コンサルタントの取り組み

HPCwire Japan

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社内河川部門で解析を内製化 先進の解析・開発環境で業界をリード

 “次の時代、次の世代に受け継がれる社会資本整備に貢献する” という事業方針を掲げる株式会社東京建設コンサルタント。1960 年設立以来、国や自治体の大規模公共工事における調査・計画、設計が事業の中心です。全国に 6 支社展開し、地域に密着したサービスを提供し、先進技術集団として業界をリードしています。」

 近年、集中豪雨、台風、地震など自然災害が頻発する中、同社の果たすべき役割は大きく、河川部門は業界随一の実績と技術を有します。全国でリアルタイムに実施されている洪水予測システムはもとより、流域・地域の視点で河川整備計画、リスクマップ(浸水想定)などの重要業務に携わっています。その強みの 1 つが、河川部門で解析を内製化していることです。

 「他社は、河川分野において業務単位でリースやクラウドなどを使って解析しているケースが多いと思います。当社の河川部門は、昔から自分たちでプログラムを書いてサーバーを導入し解析してきました。充実した解析・開発環境を用いて他社では提案が難しい内容も対応できると自負しています」と、東京建設コンサルタント 環境防災研究所上席研究員 小島崇氏は話します。

他社製 CPU は並列化性能の頭打ちが課題に第 4 世代 AMD EPYC™ プロセッサは性能がスケールし計算処理を高速化

 同社の河川部門において、解析・開発環境を支えるサーバーに求められるのがメモリ帯域です。従来、競合他社の CPU 搭載サーバーを使っていましたが、OpenMP(Open Multi-Processing)性能がスケールしないことが社内で問題になっていました。それを解決するべく AMD EPYC™ の第 3 世代にあたる AMD EPYC™ 7003 シリーズプロセッサに切り替えたと小島氏は振り返ります。

 「OpenMP では、キャッシュ共有とシングルスレッド性能が並列化性能を決定します。ベンチマークした結果、第 3 世代 EPYC™ プロセッサは同世代の競合他社 CPU に比べ高い性能を発揮しました。また、他社製は第 3 世代 EPYC™ プロセッサよりもメモリ帯域が狭く、メモリアクセスが多い社内コードの実行性能でも差が出ました。切り替えでは、解析結果に関して懸念する声もあがったのですが、解析結果を示すことで社内の理解を得ました。第 3 世代 EPYC™ プロセッサへの切り替えにより社内コードの性能は飛躍的に向上しました。」

 河川部門では、解析・開発環境のハードウェアに関して定期的にリプレイスを行い、性能向上を図っています。第 4 世代 AMD EPYC™ プロセッサ搭載サーバーを採用した理由について小島氏は説明します。「競合他社 CPU も新しい製品を出していたのですが、OpenMP において性能が頭打ちになる課題は解決されていませんでした。RRI (降雨流出氾濫) モデルのベンチマークで第 4 世代 AMD EPYC™ プロセッサは 8 並列までスケールしました。OpenMP 並列による高速化はキャッシュの利用が重要なポイントとなります。また NUMA コアの利用・制御により、計算性能が他のプロセスに影響を受けにくい点も採用理由の 1 つです。」

河川分野の様々な解析で実力を発揮、次期リプレイスにも AMD 製 CPU に大きな期待

 第 4 世代 AMD EPYC™ プロセッサを利用した解析は、利用者から高く評価する声が寄せられています。水害リスクマップ (ハザードマップ) は、1つのマップを作製するために数百から数千ケース程度の計算が必要となります。また 1 ケースの計算に数日を要することもあり、一度に大量のケースを実行可能なサーバーが求められます。

 「従来、数百台のワークステーションを並べて計算を行っていました。第 4 世代 AMD EPYC™ プロセッサなら数台で済みます。100 ケースを流しても性能低下が少ない点も好評です。また低コスト、省スペース、管理も容易など運用面のメリットも大きいです。」(小島氏) 河川の水理解析は、メモリアクセスの速度が全体の処理時間に影響を及ぼします。第 4 世代 AMD EPYC™ プロセッサはキャッシュが大きくかつメモリ帯域が広いため、水理解析に適しています。洪水予測は、粒子フィルタを用いて観測値とシミュレーションモデルを組み合わせて精度向上を図ります。粒子フィルタは同時に 30 ~ 50 ケースを計算。1 回に複数ケースを同時に実行することで、計算時間の短縮が可能となります。
「192 コア/ノードの第 4 世代 AMD EPYC™ プロセッサは1台で複数の洪水予測を実装でき、機器の集約、消費電力削減にも役立っています。」(小島氏)

 河川分野では、ネットワークカメラと AI を組み合わせた解析が行われています。精度向上のためには、画像調整などの前処理が欠かせません。また、複数台のカメラに合わせてチューニングされたAIモデルを、1 台のサーバー上で実行するため多くのメモリを必要とします。「AI の推論時間が数秒程度であるのに対し、前処理、結果の整理やアンサンブル処理などの後処理は数十秒かかります。AI 推論に GPU を利用しても全体の計算処理にはあまり影響がないことから、処理時間短縮では前処理・後処理を行う CPU 処理の高速化が求められます。また豊富なCPU コア数によりカメラ台数の増加も可能となり、1 台のサーバーで多様なニーズに対応できます。最大 96 コアの第 4 世代 AMD EPYC™ プロセッサは、ネットワークカメラと AI を組み合わせた解析にも適しています」(小島氏)

 同社河川部門の解析ニーズに応える第 4 世代 AMD EPYC™ プロセッサ搭載サーバー。導入支援したビジュアルテクノロジーは、研究開発用途の HPC分野で豊富な実績があります。「期待する性能に対し、サーバーの仕様などを適切かつ丁寧に説明してもらい、納得して導入しています。また、運用段階においても円滑に利用できるように対応してもらっており、とても感謝しています。」と小島氏は評価します。

今後の展望

 今後の展望について小島氏は話します。「2027 年は第 3 世代 EPYC™ プロセッサ搭載サーバーの更新時期になります。AMD 製 CPU は、社内コードを速く走らせることができること、今後ニーズが増える AI による解析への適用など、当社河川部門の解析・開発業務にフィットしており、大いに期待しています。CPU の性能向上によりこれまで難しかった解析が可能となることから、さらなる充実を図っていきます。」

 

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