スイスのハイブリッド・ペタフロップス・マシンが公開

Tiffany Trader

2013年のNVIDIA GPU Technology Conference開催中に、スイス国立スーパーコンピューティングセンター(CSCS)は、Cray XC30 「Piz Daint」スーパーコンピュータがヨーロッパ最初のGPU加速器付数値演算専用コンピュータとなって軌道に乗り、Intel XeonプロセッサとNVIDIA GPUを搭載した最初のクレイマシンであると公表した。それから1年、リビジョンアップされたPiz Daintは正式に研究用に承認された。

3月21日、ETH理事長のFritz Schiesser、ETHチューリッヒの学長のRalph Eichler、および研究、政治および産業界の著名人らがルガノに集まり、アップグレードされたフラグシップ・スイス・スーパーコンピュータであるPiz Daintの落成式を行った。

Ralph Eichler教授、Thomas Schulthess教授、Fritz Schiesser博士

スイスアルプスで最も高い山の一つにちなんで名づけられたPiz Daintは、スイス国立スーパーコンピューティングセンター（ CSCS ）によって構築され、気候科学、地球科学、化学、物理学などの分野の多種多様な学問用のエクストリーム・スケールな計算資源を研究者に提供している。センターでは、特に天候や気候モデリングへの貢献を期待していると強調している。

CSCSのディレクターであるThomas Schulthessによると、新しく改良したPiz Daintは前身であるCPUのみの「Monte Rosa」と比べて、気象予測のアプリケーションにおいて、3倍高速で1/7のエネルギーで実行できるとのことだ。ハイブリッドのPiz Daintでは、GPU無しの場合と比べて3倍程度のエネルギー効率の改善を期待している。

Piz Daintは2013年11月に最新TOP500とGreen500リストが発表されるのに間に合うように、2013年の秋に構築された。Piz Daintは、これらのリストの各10位以内に現れる唯一のマシンである。それぞれ、6番目の最強で4番目の最大エネルギー効率。この二重の名誉に加えて、Piz Daintはまた、Green500のTop 10の中で2台しかないペタフロップスマシンのひとつだ。

このアップグレードでは、Piz Daintは12台のコンピュータ・キャビネットから28台に膨らみ、Intel Xeon E5プロセッサとNVIDIA Tesla K20X GPUがミックスして詰まっている。演算ノード数は2,256から5,272に増加し、CrayのAriesインターコネクトで結合されている。このシステムはLINPACKベンチマークの計測で6.2ペタフロップスを予測しており、理論最大性能で7.8ペタフロップスに達する。

エネルギー効率の面では、Piz Daintは3.2ギガフロップス/ワットとなり、3ギガフロップス/ワットの障壁を破壊する最初のペタスケール・クラスのシステムとなった。GPUとCPUの組み合わせは、Piz Daintがペタフロップ・クラブの中で、最もエネルギー効率の良いスーパーコンピュータとなることを助けたのだ。

製造業者であるCrayの承認を確保するために、改装されたPiz Daintはそのペースで置かれている。

「ハードウェアの生産者、研究者およびCSCSのスタッフの間の密接で献身的なコラボレーションのおかげで、我々は、アップグレード後に記録的な速さで“Piz Daint”を研究用に開放することに成功しました。」とSchulthessは声明で述べている。

すべての分野の科学者が通常のCSCSユーザプログラムを通して、半年ごとにPiz Daintの計算時間を申請することができる。大規模なプロジェクトの場合は、CHRONOSが提案の募集を行っている。計算時間は独立した専門家委員会で割り当てられる。

Schulthessは、自然科学者はよりパワフルなスーパーコンピュータでも満足できないという事実があり、コンピュータアルゴリズムとソフトウェアを前進させるための投資が必要であると、強調した。このため、高性能・高生産性コンピューティング(HP2C)用のプラットフォームが打ち上げられた。このプログラムの下で、アプリケーション開発者は、さらに効率的なシミュレーション・システムを作るために、応用数学者とコンピュータ科学者と協力して4年間を過ごしてきた。

Piz Daintは
この共同研究の成果である。
「CSCSでは初めて、新しいスーパーコンピュータシステムがキーの科学アプリケーションコードと一緒にコデザインで設計されました。」とSchulthessは述べている。「ハイブリッドの”Piz Daint”スーパーコンピュータをこのように短い期間で構築できたのはCray、NVIDIA、そしてスイス大学のアプリケーション科学者との素晴らしいコラボレーションのおかがです。」