世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


3月 25, 2024

新HPCの歩み(第179回)-2001年(d)-

小柳 義夫 (高度情報科学技術研究機構)

日本電気は、地球シミュレータの技術で新しいベクトルコンピュータSX-6を発表した。富士通はSPARC V9に基づくPRIMEPOWER 2000を発表した。日米3社が協力してCellプロセッサの開発が始まった。また世界中のGrid関係者を集めたGGFが開催された

日本の企業の動き

1) 日本電気(Express5800/1000、SX-6、SX-6i、日本SGI子会社化)
日本電気は2001年6月、2種類の新しいサーバを発表した。”Express5800/1000 Series”はExpress5800製品の最上位に位置するもので、Itaniumを16個まで搭載し科学技術計算市場を狙う。”TX7/AzusA Series”は、HP-UX OSに基づく新しいTX7ファミリに一つでありビジネス市場を狙う。

2月16日、日本電気は国立天文台野辺山太陽電波観測所からスーパーコンピュータ「SX-5/2Cf」とサーバ群から構成される電波へリオグラフ電子計算機システム一式を受注したと発表した。

 
   

2001年10月3日、新しいベクトルコンピュータSX-6を発表した。地球シミュレータのノードを改良したもので、ノード当たりCPUは8個(64 GFlops)まで、地球シミュレータよりメモリ容量が倍増され、64 GBまで。1998年のところに書いたように、地球シミュレータの主記憶には富士通が開発製造したFPL (Full PipeLine) memoryという128 Mbの高速DRAMを採用したが、これを通常のSDRAMメモリに変更したのであろう。FPL memoryは内部の動作をパイプライン化し、8バンクそれぞれが独立の3段のパイプラインとして動作するという特殊なものであった。SX-6の写真は日本電気のページから。

Top500リストによると、主要な設置先は以下の通り。

設置場所

型番

Rmax

Rpeak

初出と順位

DKRZ(ドイツ気象庁)

192N24

1482.0

1536.0

2003/6 33位

日本電気府中工場

128M16

982.0

1024.0

2002/6 25位

英国気象庁(2台)

120M15

927.6

960.0

2003/11 138位tie

カナダ気象庁

80M10

616.9

640.0

2003/6 250位

国立環境研究所(日本)

64M8

495.2

512.0

2002/6 87位tie

航空宇宙研究所(日本)

64M8

495.2

512.0

2002/6 87位tie

気象研究所(デンマーク)

64M8

495.2

512.0

2003/6 179位tie

DKRZ(ドイツ気象庁)

64M8

495.2

512.0

2002/6 87位tie

 

この他、大阪ガス、日産自動車、ドイツ・ライプニッツ大気物理研究所、チェコ気象庁、イタリアCASPUR、カナダのオラノスコンソーシアム、カナダビクトリア大学、スズキなどにも納入された。スーパーコンピュータに関するCray社との合意については、「日米貿易摩擦」のところで述べる。

同社は11月28日、デスクサイドモデルの小型スーパーコンピュータSX-6iを発表し、同日付で販売を開始した。これは、SX-6のアーキテクチャを採用し、小型化と低価格化を図ったものである。CPUは1個でメモリは8 GBまで。最大ベクトル性能は8 GFlopsである。(ASCII.jp 2001/11/28) 翌年2月にはヨーロッパでも販売を開始する(HPCwire 2002/2/22)。

2001年10月26日、日本電気は日本SGI(社長、和泉法夫)を子会社化すると発表した。米国SGI社は業績が悪化しており、日本法人の売却を日本電気に打診していた。日本電気とNECソフトは、日本SGIの発行済み株式の5割強(数十億円)を、年内を目途に取得する。これで、日本電気はCray社と提携した上、SGI日本法人を子会社化したことになる。

2) 日立(EP8000 690)
日立は、2001年3月に米IBM社と提携協定を締結し、これに基づき10月4日最大32個のPOWER4プロセサ搭載するUNIXサーバ「EP8000 690」を発表した。これは米IBMからOEM供給を受けた製品であるが、搭載するL3キャッシュは日立製作所が独自に開発した。EP8000 690は、1.1 GHzまたは1.3 GHz駆動のPOWER4プロセサを8個~32個、最大256 GBのメイン・メモリー、最大582 GBのHDDが搭載可能。OSはAIX 5L。また、ハードウェアを論理的に最大16分割できる「論理分割機能(LPAR)」を搭載。

2001年1月17日号の日経システムプロバイダ誌の報道によれば、日立とIBM社は、大型メインフレームの共同開発プロジェクトの交渉がまとまり、日立がIBM zシリーズ・エンタープライズ・サーバを分担生産することになったとのことである。共同開発機は32ビットマシンである。1994年から1999年までIBM社はS/390のCMOSプロセッサを日立に提供していたが、性能が低かったため、日立とAmdahl社はbipolarで高性能なメインフレームを製造し世界中に販売していた。しかしS/390の第5世代からCMOSの性能がbipolarを超えたため、日立は2000年に北米のメインフレーム市場から撤退した。これを受けての共同開発である。なお、2000年からS/390はzSeriesと名称変更している。

またメインフレームのMPシリーズで動作するLinux環境「Linux for MP Series」製品群を2001年4月2日に発売した。出荷は同年7月から。同Linux環境はメインフレームOSと最大14個のLinuxカーネルの同時動作を実現する。このLinux環境はMPシリーズが備えるプロセッサ資源分割管理機構(PRMF)を利用し、MPシリーズ搭載OS「VOS3/FS」とLinuxカーネルの同時動作を行う。

このころから日立の売り上げの中でのストレージの比率が増える傾向にある。7月Sun Microsystems社はストレージの供給について日立と合意した。それまでのストレージのトップはEMCであった。

 
 

FUJITSU PROMEPOWER 2000
出典:一般社団法人 情報処理学会Web サイト「コンピュータ博物館

   

3) 富士通(PRIMEPOWER 2000)
7月、SPARC V9に準拠したSPARC64 GPプロセッサ(675 / 788MHz)を最大128個搭載できる並列サーバPRIMEPOWER 2000を発表した(写真は情報処理学会コンピュータ博物館から)。OSはSolaris Operating Environment。TPC-Cベンチマークで高い性能を出している。2002年3月7日にはSPECjbb 2000ベンチマークで世界トップの性能を達成した。また、6月27日には、並列処理ツールのParallelnaviとの組み合わせで、SPEC OMP2001ベンチマーックにおいて世界トップの性能を達成し、SPECに登録した。(HPCwire 2001/7/20) UltraSparc III を用いたサーバを発売しているSun Microsystems社は、富士通と協力関係にある一方、手強い競争相手として認識し始めたようである。(HPCwire 2001/3/23)

同社はまたVPPの後継機となるスカラ型スーパーコンピュータ(後のPRIMEPOWER HPC)を開発していることも報道されている。この頃、富士通がベクトルコンピュータの開発から手を引くのではないかという噂が出ていたが、関係者は断固として否定していた。撤退が表明されたのは2002年1月5日であった。

2001年10月29日、PRIMERGY TS225を16台2.5 Gp/sのInfiniBandで接続し動作させることに成功したと発表した。PRIMERGY TS225は933 MHzのPentium III×2、メモリ512 MBを搭載したシステムである。クラスタソフトウェアはRWCPで開発されたSCore、アプリはAMBER(分子動力学)であった。

4) 東芝(DRAM撤退、人員削減)
東芝は、1985年に1 Mb DRAMの製造により、メモリ分野で世界のトップとなり、2001年会計年度に600億円の利益を予想していたが、8月、半導体不況により1150億円の損失となるとが予想された。日本国内の21工場のうち6工場を閉鎖または併合によって減らし、国内で18800人の従業員を削減すると発表した。これは全従業員の10%に当たる。この再建策は1200億円の特別支出を必要とする。競争相手である日本電気や富士通も、すでに大幅な人員削減と厳しい収支予想を発表している。(HPCwire 2001/8/31)

2001年12月18日、汎用DRAMメモリの製造と販売からの撤退というニュースが報道された。ドイツのInfineon社との提携交渉を断念し、バージニア州のDRAMプラントをMicron社に2002年1月末までに売却する。(HPCwire 2001/12/21) また、半導体メモリの組立拠点(後工程)については、海外を含む外部企業への製造委託を積極的に進め、コスト改善を図るとしている。主に汎用DRAMの後工程製造を行っている「四日市東芝エレクトロニクス株式会社」については、2002年6月末を目処に解散を含めた体制の見直しを行なう。(PC Watch 2001/12/18)

5) 日本SGI(米国SGIから独立)
SGIの日本法人は、1987年にアメリカのSGIの100%子会社「日本シリコングラフィックス」として設立されたが、1996年のCray Research社とSGI社との合併に伴い、1997年に日本クレイと合併し、「日本シリコングラフィックス・クレイ」に社名を変更した。1998年に日本シリコングラフィックスに社名を戻した。2000年にアメリカのSGIがCray部門をTera社に売却した後、2001年10月に日本電気は同社の株式の40%を取得し、アメリカのSGIから独立した。なお2011年3月10日にアメリカのSGIの100%子会社に戻る。

6) 日本IBM
2001年7月13日~15日に日本IBMの天城ホームステッドにおいて、天城エグゼクティブ・セミナー「ライフ・サイエンス/ナノテクノロジーとIT」が開催された。主な講演は以下の通り。

「ゲノム情報解析とバイオインフォマティクス」

八尾 徹(理研)

「ナノテクノロジーの最新動向とITの役割」

寺倉清之(産業技術融合領域研究所)

「カギを握るハイ・パフォーマンス・コンピューティングの動向と将来」

小柳 義夫(東大)

「I B M におけるライフ・サイエンス/ ナノテクノロジー研究」

W. R Pulleyblank (IBM)

「バイオ・ナノテクノロジーについて」

陶山 明(東大)

「ベンチャー企業によるバイオ・ビジネスへの挑戦」

土居 洋文(セレスター・レキシコ・サイエンシズ)

「バイオ企業を支援、IBM ライフサイエンス・ビジネス戦略」

P. Morrissey (IBM)

 

この時お呼びした海外講師を中心に、2001年7月17日に東京の日本IBM箱崎事業所で、7月18日には日本IBM大阪事業所で、IBM HPC Forumを開催した。

2001年7月17日 東京会場

9:30

オープニング

東京大学情報 小柳 義夫

9:45

「ライフ・サイエンス/ナノテクノロジー研究の最新動向」(逐次通訳)

IBM Watson Lab., Director, Deep Coputing Institute, Dr.W.R. Pulleyblank

11:15

「バイオ企業を支援するIBM ライフ・サイエンス・ビジネス戦略」(逐次通訳)

IBM Life Science Division,

P.Morrissey

12:30

昼休み

13:30

「HPC の動向とIBMのHPC製品戦略」(逐次通訳)

IBM Server Group P.Ungaro

15:00

「Linux スーパークラスター「ロスロボス」とゲノム研究」(逐次通訳)

U. of New Mexico, Albuquerque HPC Center, Dr.Susan Atlas

16:30

「ナノテクノロジーとHPC」

東京大学工 奥田洋司

17:30

終了

2001年7月18日 大阪会場

9:30

オープニング

日本IBM  理事 山岡 喜紹

9:45

「ライフ・サイエンス/ナノテクノロジー研究の最新動向」(逐次通訳)

IBM Watson Lab., Director, Deep Coputing Institute, Dr.W.R. Pulleyblank

11:15

「バイオ企業を支援するIBM ライフ・サイエンス・ビジネス戦略」(逐次通訳)

IBM Life Science Division,

P.Morrissey

12:30

昼休み

13:30

「HPC の動向とIBMのHPC製品戦略」(逐次通訳)

IBM Server Group P.Ungaro

15:00

「Linux スーパークラスター「ロスロボス」とゲノム研究」(逐次通訳)

U. of New Mexico, Albuquerque HPC Center, Dr.Susan Atlas

16:30

「クラスターコンピューティングにおける並列分散遺伝的アルゴリズム- 理論、実装および応用」

同志社大学工 三木光範

 
   

7) ソニー・コンピュータエンタテインメント社(PS2用Linux)
2001年4月26日、同社は、PlayStation 2用のLinuxキット(β版)を、日本国内のLinuxコミュニティに向けて6月からリリースすると発表した。PS2の発売以来、Linuxの公開を求めるweb上の署名活動が活発に行われていた。PS2用Linuxキット(β版)は、高速ネットワーク・インターフェース(100BASE-TXイーサネット)を有する外付型HDDユニット(40 GB)と、 Linuxβ版インストールディスク(DVD-ROM)、PS2の映像信号をコンピュータディスプレイに表示するためのVGAアダプタ、USBキーボード、USBマウスなどで構成されている。5月9日に予約注文が始まった。価格は25000円。写真はWikipediaから。

2003年にIllinois大学のNCSAおよびDepartment of Computer Scienceは、2003年5月30日、NSFの援助により70台のPlayStation 2を結合したLinuxクラスタを構築することに成功したと発表する。(Gigazine 2021/12/30

8) Cellプロセッサ(共同開発)
3月9日(日本時間)、ソニー・コンピュータエンタテインメント、IBM社、東芝の3社は、次世代のブロードバンド・ネットワークの基盤となる、汎用プロセッサのアーキテクチャの研究・開発に着手する合意ができたことが発表された。3社は共同で米国テキサス州AustinのIBM施設内に、共同研究・開発センターを設立することとなった。新しいプロセッサのコード名はCellと名付けられた。Supercomputer-on-a-chipではないかという観測もあった。(HPCwire 2001/3/16)

9) Sun Microsystems社
2001年6月12日には、山王パークタワーにおいてSun Bioinformaticsセミナーが開催された。プログラムは以下の通り。

10:00

「ご挨拶」

サン・マイクロシステムズ社 木村裕之

10:10

基調講演「ゲノム情報の津波とバイオインフォマティクス」

ヒュービット ジェノミクス社 村松正明

11:00

「SunにおけるBioinformaticsへの取り組み」

サン・マイクロシステムズ社 スティーブ・ペレノ

13:00

「ゲノム創薬にむけた情報基盤―ヒトゲノムデータベースとハイスループットアノテーション」

日立 中江裕樹

14:00

「完全長ゲノム比較による遺伝子機能予測システム~GeneData社ソリューション」および「Bioinformatics Accelerators~TimeLogic社DeCypher」のご紹介

インフォコム株式会社 仁村幹彦

14:50

「バイオインフォマティクスのためのシステムインテグレーション」

日立ソフトウェアエンジニアリング株式会社 吉井淳治 

16:00

「ヒトゲノムドラフト配列データからの遺伝子発見」

東京大学医科学研究所 矢田哲士

17:00

「比較ゲノム情報におけるデータベース」

国立遺伝学研究所 池尾一穂

 

2001年10月5日、早稲田・リーガロイヤルホテルにおいてJapan ERC (Japan Education and Research Conference) 2001が開催された。プログラムは以下の通り。

9:30

ご挨拶

サン・マイクロシステムズ細井洋一

9:35

Follow with Vision & Overview

Kim Jones, VP, Sun Microsystems Inc.

10:00

Sun Open Network Environment (SunONE)

James Simon, Sun Microsystems Inc.

10:30

SunONE in Science and Engineering – Grid Computing

Heinz Jeorg Schwarz, Sun Microsystems Inc.

10:50

休憩

 

11:00

基調講演

Jay Puri, VP, Sun Microsystems Inc.

12:00

昼食

 

 

<K12/Edu-SPトラック>

13:00

WebCTの現状と高等教育用情報基盤の今後

梶田将司 名古屋大学

13:50

K12 Trend and Technology

Dinesh Bahal, Sun Microsystems Inc.

14:30

「NPO-KIUとその取り組み」

柏インターネットユニオン西田光昭

15:15

休憩

 

15:30

韓国先進ブロードバンド事情と教育ポータル

Mr.H.Y.Kim, Korea Mediopia Technology Co., LTD

16:15

大学向けスクールエクステンション&e-Learning Business

山内康義、竹内白 、日本スクールシステム機構

16:45

Worldwide E-learning Through Blackboard

Mr.Matt Baker, AsiaPacific Blackboard Inc.

 

<Higer Educationトラック>

13:00

ITチャレンジ in 北見~地方都市からの世界への挑戦~

厚谷郁夫 北見工業大学 学長ほか

14:00

グリッドが変える計算センターの将来像

関口 智嗣 産業技術総合研究所

15:00-

休憩

 

15:15

Internet SOAの構築~大学におけるe-learning Solution~

野部 栄  聖徳大学ほか

16:00-

Trends in High Performance Computing

Dr.Simon See, Sun Microsystems Inc.

16:45

WebCT

Mr.Stavros Cademenos, Vice President, WebCT

18:00

懇親会

 

 

基調講演はScott McNealy会長兼CEOを予定していたが、9.11により来日が不可能になり、Jay Puriに変更された。

標準化

1) GGF
2000年10月にアメリカ、ヨーロッパ、アジア太平洋の3つのグリッド組織が連携して結成されたGGF (Global Grid Forum)は、その第1回の会議GGF1を2001年3月4日~7日にオランダのAmsterdamで開催した。28カ国の200の組織から350人が参加した。10個のWorking Groupsが活動した。(HPCwire 2001/3/9) 参加者の話では、アメリカはコンピュータ科学を軸としているのに対し、ヨーロッパはCERNのLHC (Large Hadron Collider)実験を見据えたdata gridが牽引役となっている点が対照的だったとのことである。年3回の開催が計画されている。

第2回GGF2は、6月15日~18日に米国 Washington, D.C.近郊のSheraton Premiere at Tysons Cornerで開催され300人が参加した。Steering GroupおよびArea Director制をつくり、日本からは関口智嗣と松岡聡がArea Directorsに就任した。

第3回GGF3は10月7日~10日にイタリアのRoma近郊のFrascati(白ワインで有名、INFN National Laboratory of Frascati (LNF)がある)で開催された。日曜日の夕方オリエンテーションがあり、月曜からは3つのトラックが並行して開催された。

(1) Information & Updates:一般的な講演やグリッドアプリ、テクノロジ、テストベッドなどに関するパネルが開催された。
(2) Tutorials:まずグリッドについて導入のあと、多くのテーマに分かれた。
(3) Workshops:4件のワークショップが行われた。

火曜の晩にはLe Ville Tuscolaneでディナーが行われた。

2) HyperTransport
HyperTransport Technology Consortiumは、広帯域、低遅延のコンピュータバスを開発するために、AMD社を中心とする40社が集まったコンソーシアムである。2001年4月2日、コンソーシアムはプレス発表を行った。この技術は、x86アーキテクチャではAMDとTransmeta、MIPSアーキテクチャではPMC-Sierra, Broadcom, Raza Microelectronicsなど、PCチップセットではAMD、NVIDIA、VIA、SiS、ULi/Ali、HPなど、サーバではHP、Sun Microsystems、IBM、IWillなどが用いている。(Wikipedia

3) 3GIO (PCI Express)
Intel社はPCIやPCI-Xの欠点を克服するために3GIO (3rd Generation I/O)を開発し2001年8月27日~30日にSan Joseで開催されたIDF (Intel Developer Forum) Fall 2001において発表した。その後、PCIの標準化団体であるPCI-SIGに提出し、次世代のPCIの標準規格として承認された。この規格はPCI Expressと命名され、2002年7月にBase Specification Revision 1.0が発表される。(ASCII.JP 2011/7/19)

AMD社を中心とするHyperTransportと、Intel社を中心とするPCI Expressのどちらがシステム接続の主導権をとるか注目された。

4) MPICH2
1998年ごろMPI-2の規格の最終版ができたが、規格化にエネルギーを取られてしまいなかなか実装が行われなかった。MPICHはChameleonをベースとしたMPI-1の実装であり、広く使われてきたが、2001年頃、MPI-2に基づくMPICH2の開発が始まった。MPICH2は、2005年The Chicago Tribune紙が授与するR&D100賞を受賞するので、そのころまでに公開されたものと思われる。

5) JAHPF/HPF推進協議会
1997年に発足したJAHPF(HPF合同検討会)は、第24回合同検討会を、2001年1月23日に地球シミュレータ研究開発センター(浜松町)会議室で開催した。JAHPFの活動は、この検討会をもって終了した。

この成果の上に、2001年6月11日に、高性能Fortran推進協議会(会長津田孝夫)を発足させ、7月9日、地球シミュレータ研究開発センターにおいて設立総会を開催した。

6) Linux
Linux OSは1999年頃から急速に世界のコンピュータ大手が採用するようになった。1月にはLinux 2.4.0が公開された(HPCwire 2001/3/30)。詳しくは国際会議の章で述べるが、1月30日~2月2日にフランスで開催されたLinuxWorld & Expoにおいて、IBM社はLinuxを用いた商用e-businessソリューションの導入や立ち上げを支援すると発表した。

日本でも遅ればせながら同様の動きがあった。日経BP(5月30日号)によると、米IBM社、日本電気、日立、富士通の4社は、2001年5月30日、Linuxの機能強化に関して共同開発を実施し、開発成果をLinuxのオープン・ソース・コミュニティに対して共同で提案することに合意したと発表した。4社では2003年までに、Linuxを企業の基幹系システム用OSとして利用できるよう、商用UNIXレベルまで信頼性と可用性を強化するとしている。(HPCwire 2001/6/1)

9月には、Linuxに対抗するMicrosoft社のCEOであるSteve Ballmerが「Linuxに気をつけよ。Linuxが地歩を占めないようがんばれ」と従業員に檄を飛ばしたことが報じられている。(HPCwire 2001/9/7)

Red Hat Linuxに感染するvirus Ramenがロシアで報告された。コンピュータウィルスの専門家であるSylvia Dennis(Kaspersky Lab)は、Red Hat Linux 6.2- or 7.0-based systemsの3つのsecurity flawを駆使して侵入すると述べた。(HPCwire 2001/1/26)Ramenは、麺類のラーメンからとった名称といわれている。感染すると、デフォルトページを「RameN Crew – Hackers looooooooooooove noodles.」と書き換える。(ScanNetSecurity 2001/1/19)

7) XML標準化調査
2000年7月から始まった日本規格協会INSTACのXML関連標準化調査委員会(筆者が委員長)は、3月に100ページに及ぶ2000年度の報告書「わが国におけるXML標準化への提言」を完成させた。草案では電子政府についてかなり厳しい批判を書いたのだが、最終版では多少軟化させた。「現状の電子政府やe-commerceなどの根本原理を忘れてはならない。紙の様式をそのまま電子化したって意味ない、受益者である国民、市民の観点から、ワークフローモデルそのものを変革しなくては。」などと書いた。

4月からも月1回の頻度で委員会を開催した。2001年度は電子政府への提言やビジネスプロトコル標準化検討に重点を置くこととした。

8) 汎用JPドメイン名
これまでインターネットの.jpのドメイン名は第2レベルに.acや.coなどの組織種別や地域(県名)を表示していたが、このころ第2レベルを直接指定する「汎用JPドメイン名」が解禁された。これは法人格を持つかどうかに関係なく早い者勝ちで登録でき、しかも1組織から何種も申請できる。既にドメイン名を持っている組織は3月23日までに優先登録を申請できることとなった。同じ文字列のドメイン名に複数の申請が行われた場合は抽選によって決定する。2001年5月7日から、先着順で登録申請の受付が開始された。

ネットワーク

1) QAZワーム
昨年10月にMicrosoft社の社内ネットワークに侵入して、パスワードや秘密情報をメールで送出していたことが発見されたQAZワームは、送出先のアカウントが中国の北京にあることが判明した。ただし、そこに攻撃者がいたかどうか不明である。(HPCwire 2001/1/26

次回は、アメリカ政府の動き、日米貿易摩擦の行方、ヨーロッパの政府関係の動き、ロシア・中国・シンガポール・韓国の動きなど。DOEはSciDACを開始し、51課題を採択する。

 

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