新HPCの歩み(第227回)-2005年(e)-
中野守氏がクレイ・ジャパンの社長に就任した。GGFは3回開催された。富士通、日立、日本電気の3社はグリッドミドルウェアの開発を進め、ユーザと連携した実証実験を実施した。世界のIT大手19社が共同で発足させたEGA (Enterprise Grid Alliance)も活動を続けた。GGFと合併するのは2006年。産業利用のためのGlobus Consortiumが設立される。 |
日本の企業の動き
1) 富士通(3 PFlops計画、演算機能付きスイッチ、PRIMEQUEST)
富士通は6月22日、2010年度末にPFlops(ペタフロップス)級の演算性能を持った次世代スーパーコンピュータを稼働させることを目標に、要素技術の研究開発を進めていくと発表した。2004年10月に富士通研究所に設置した「ペタスケールコンピューティング推進室」(木村康則室長)は、「ピーク性能で3 PFlops、実効性能で1 PFlops超を目標とする。要素技術のうちインターコネクトについて、富士通は九州大学、福岡県産業・科学技術振興財団、九州システム情報技術研究所との産学官連携によって、今後3年間で高性能かつ高機能なインターコネクト技術を研究開発する。この研究では演算機能を持たせたスイッチを開発して、10000ノード程度の接続を可能にしつつ総和計算の高速化と計算ノードの負荷低減を狙う。また接続に使う光ファイバーを波長多重技術によって広帯域化してケーブル数を減らすとともに、光パケット信号を電気信号に変換することなくそのままスイッチングする「光パケット技術」や、インターコネクトの性能を評価する技術も開発する。」と述べた。(ITmedia 2005/6/23)
ここで言及されている演算機能を持たせたスイッチは、FX1(2008年)の高機能スイッチや、「京」とその後継機のTofuインターコネクトに実装されている。例えばFX1の高速リダクション機能では、64bit浮動小数ではSUM、MAX、MIN演算が、整数ではSUM、MAX、MIN、BAND、BOR、BXOR演算が、CPUを使うことなくスイッチで実行できる。しかも、浮動小数では3要素まで、整数では128Bまで(32bitなら32要素)まで、1回の演算処理で実行可能である。集団通信は、ノードから1段目のスイッチを経由して高機能スイッチに送られ、結果が返される。FX1ではFPGAによって実装されている。
一般に浮動小数の加減算では、演算順序の違いにより丸め誤差の入り方が変化するので、総和の際ノード毎に演算結果がわずかに異なる。数値計算としては許容範囲であるが、並列処理では各ノードで厳密に同一の総和が得られないと収束判定が変わったりするなど不整合が起こる。一つの結果を全ノードに放送すればよいが、超並列では相当な遅れが生じる。
そこでFX1の高機能スイッチでは、BFP(Block Floating Point)形式を採用し、データを280をベースとし、符号部1 bit、指数部5 bit、仮数部154 bit合計160 bitに変換する。演算の中間結果は指数部が1異なるこの形式の2語の和として表す(一種のdouble-double形式)。加減算時に指数部が増加する(下位語を捨て、従来の上位語を下位語とし、新たに上位語を作る)ことは許すが、仮数部が小さくなっても指数部を減少させること(正規化)はしない。結果的に一種の固定小数演算と等価になり、スイッチでの演算では演算順序の違いによる丸め誤差の変動を防ぎ、放送なしにすべてのノードで同一の結果を保証している。
例えば通常の64 bit浮動小数演算では、
(2-1022+1)ー1 ≠ 2-1022+(1ー1) |
であるが、BFP方式では右辺の(1-1)の演算で結果が0となっても指数部は変えないので、両辺とも0となる。BFPは「京」などのTofuでも使われている。ただし1回の演算では1要素しか扱えない。
富士通は2005年、Intel Xeonを搭載した基幹サーバPRIMEQUESTを発表した。Windows ServerやLinuxが搭載でき、メインフレームOS(OSIV/XSP)やメインフレームOSで動作するソフトウェアやアプリケーションがそのまま動作可能である。
2) 日本電気(SX-6)
2005年6月、英国のSurrey大学が、SX-6/4Bシステムを設置したことが発表された。主として、TAC (Theory and Advanced Computation) groupが利用する。(HPCwire 2005/6/3)
3) 東芝(TX49 シリーズ)
東芝は、MIPSアーキテクチャの64ビットマイクロプロセッサTX49の新型TX4939XBG-400を発表した。サンプルは8月から出荷、10月からは量産体制に入る。(東芝プレスリリース2005/3/7)(HPCwire 2005/3/11)
4) 東芝・日本電気(45nmテクノロジ)
東芝とNECエレクトロニクスは11月9日、45 nmのシステムLSI製造技術を共同開発すると発表した。具体的には
(1)CMOS基幹プロセスは東芝アドバンストマイクロエレクトロニクスセンターに技術者を集めて共同開発し、
(2)開発成果のプロセス技術は両社が生産拠点で展開する
との2点で合意した。
これにより、投資余力に勝る米Intelや韓国サムスン電子に対抗する。現在は各社が線幅90nmの製品を量産中で、次世代の65nmはIntelや松下電器産業が生産を始めたばかりである。東芝はその次の45 nmでソニーと共同開発を進めてきたが、業績悪化で単独での開発が難しくなったNECエレも取り込み、3社で量産での先行を目指すとのことである。(ITmedia 2005/11/9) (CNET Japan 2009/11/9)(日本経済新聞 2005/11/9))(Reuters 2005/11/10)(朝日新聞 2005/11/9)
5) 日立製作所(ITユーザ会)
また日立ITユーザ会は、第17回科学技術分科会を2005年12月15日、日立大森第2別館で開催した。プログラムは以下の通り。
「デジタルモックアップを目指すシミュレーション技術」 |
小松原 聖、アドバンスソフト |
「CADと一体化した粒子解析法と解析プログラムの自動生成」 |
吉田 康彦、サイテック |
「サイエンスグリッド事例紹介 - NAREGI - 」 |
熊洞 宏樹、日立製作所 |
6) クレイ・ジャパン(中野守社長、CAEカンファレンス)
1月25日、中野守氏がHewlett-Packard社を辞めてクレイ・ジャパン・インクの社長に就任したことが発表された。HPCS(1月18日~19日)でも噂になっていたようである。中野氏は元日本Digital Equipment社に所属していたが、DEC社がCompaqに吸収されてCompaqのテクニカルサポート本部兼HPTC推進部に所属していた。その後、Compaq社がHP社に合併され、米国HP社のAsia-Pacific LINUX&HPC General Managerとなった。SGIから独立後のCray Japanとしては初の専任社長とのことである。1月28日、東京国際フォーラムで、Cray HPC Leadership Forumと新社長の披露パーティが開催された。3分の祝辞を頼まれた。
7月12日に、刈谷市産業振興センターにおいて、第1回クレイCAEカンファレンスが、「衝突を中心にした大規模解析の将来像」をテーマに開催された。
10:00-10:05 |
挨拶 |
クレイ・ジャパン・インク 代表取締役社長 中野 守 |
+++ セッション1:衝突解析の将来像 +++ |
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10:05-11:00 |
「衝突解析の将来像:衝突解析のシームレス化と新たなる解析ニーズ」 |
アイジェニーインターナショナル株式会社 安藤 浩平 |
11:00-11:45 |
「Dynamic Load-Balancing:Crash Simulations on large Parallel Systems」 |
Cray Inc. Himanshu Misra |
11:45-12:30 |
「解析環境がドライブする衝突解析」 |
株式会社日本総合研究所林 公博 |
12:30-13:30 |
昼食 |
|
+++ セッション2:CAEベンダーアップデート +++ |
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13:30-14:00 |
「クレイドル製品の紹介とXD1導入・性能評価について」 |
株式会社ソフトウェアクレイドル 黒石 浩之 |
14:00-14:20 |
「TEC-ODM/CRASH及びTEC-PROM/CRASHについて」(DEMO) |
アイジェニーインターナショナル株式会社 中野 弘章 |
14:20-14:50 |
「汎用可視化ソフトAVSおよびEnSightの大規模データ対応」 |
株式会社ケイ・ジー・ティー 吉川 慈人 |
14:50-15:10 |
「Dual Core AMD Opteron(TM)プロセッサのアドバンテージ」 |
日本AMD株式会社 山野 洋幸 |
15:10-15:30 |
「CAEにおけるCray XD1システムの優位性」 |
クレイ・ジャパン・インク 三上 和徳 |
7月13日には、東京丸の内のコンファレンススクエア エムプラスにおいて、同じカンファレンスが開催された。
13:00-13:05 |
挨拶 |
クレイ・ジャパン・インク 代表取締役社長 中野 守 |
+++ セッション1:衝突解析の将来像 +++ |
||
13:05-13:55 |
「衝突解析の将来像:衝突解析のシームレス化と新たなる解析ニーズ」 |
アイジェニーインターナショナル株式会社 安藤 浩平 |
13:55-14:40 |
「Dynamic Load-Balancing:Crash Simulations on large Parallel Systems」 |
Cray Inc. Himanshu Misra |
14:40-15:20 |
「解析環境がドライブする衝突解析」 |
株式会社日本総合研究所 林 公博 |
15:20-15:30 |
休憩 |
|
+++ セッション2:CAEベンダーアップデート +++ |
||
15:30-16:00 |
「クレイドル製品の紹介とXD1導入・製品評価について」 |
株式会社ソフトウェアクレイドル 黒石 浩之 |
16:00-16:00 |
「TEC-ODM/CRASH及びTEC-PROM/CRASHについて」(DEMO) |
アイジェニーインターナショナル株式会社 中野 弘章 |
16:20-16:50 |
「汎用可視化ソフトAVSおよびEnSightの大規模データ対応」 |
株式会社ケイ・ジー・ティー 吉川 慈人 |
16:50-17:10 |
「Dual Core AMD Opteron(TM)プロセッサのアドバンテージ」 |
日本AMD株式会社 吉田 友二 |
17:10-17:30 |
「CAEにおけるCray XD1システムの優位性」 |
クレイ・ジャパン・インク 三上 和徳 |
10月4日には大手町サンケイプラザにおいて第二回Cray HPCカンファレンスが開かれた。
09:30-09:50 |
挨拶 |
クレイ・ジャパン・インク 代表取締役社長 中野 守 |
Session 1:FPGAなど、専用プロセッサーによるアプリケーションの高速化とアプリケーション開発のパラダイム・シフト |
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09:50-10:20 |
『FPGAによる大規模三次元FFTアプリケーションの高速化』 |
株式会社アプリオリ・マイクロシステムズ 佐々木 徹 |
10:20-10:50 |
『小規模FPGAシステムによる高速化の可能性とその限界』 |
筑波大学 丸山 勉 |
10:50-11:00 |
Break |
|
11:00-11:30 |
『FPGAの適用事例:A New Smith-Waterman Core for the Cray XD1』 |
Cray Inc., Steve Margerm |
11:30-12:00 |
『FPGAを用いた音楽向け電子透かしのリアルタイム検出とインターネットにおける健全なファイル交換』 |
北陸先端技術大学院大学 井口 寧 |
12:00-12:30 |
『A Software for Many-Body Simulations with FPGAs.』 |
理化学研究所 濱田 剛 |
12:30-13:30 |
昼食 |
|
Session 2: パッケージングとクーリング、インターコネクト、低電力LSI、ペタスケールのシステムのためのシステム・ソフト等の超並列システムにおいてペタスケールのアプリケーション・パフォーマンスを実現するための新技術開発 |
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13:30-13:50 |
『Beyond Linpack: Beuilding supercomputers that Deliver Petaflops Application performance』 |
Cray Inc., CEO and President Peter J. Ungaro |
13:50-14:20 |
『理研におけるペタフロップス・HPCシステムの開発計画』 |
理化学研究所 姫野 龍太郎 |
14:20-14:50 |
『次世代HPCシステムのためのインタコネクト技術開発』 |
九州大学 村上 和彰 |
14:50-15:20 |
『低消費電力技術が支える次世代超並列計算機~over-PFLOPSのためのパラダイムシフト~』 |
筑波大学 朴 泰祐 |
15:20-15:35 |
Break |
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15:35-15:55 |
『企業における大規模HPCへのニーズ』 |
ソニー株式会社 阿部 譲司 |
15:55-16:25 |
『After Red Storm: Taking the Cray XT3 to Petaflops Performance』 |
Cray Inc., Jeff Brooks |
16:25-16:45 |
『High-Performance-Low-Electricity-Consumption-Computing; Processor Technology Development at AMD』 |
日本AMD株式会社 |
17:00-19:00 |
懇親会 |
7) ソニー(スパイウェア)
2005年11月21日、アメリカのテキサス州司法長官は、Sony BMG Music Entertainment社をスパイウェア規制法違反で提訴したと発表した。訴訟によれば、Sony BMG社は、何百万枚もの音楽CDのコピーコントロールのためのソフトに、システムを危険にさらすスパイウェアrootkitが忍び込んでいたとのことである。問題の発覚を受け、同社は問題のCDのリコールを発表しているが、まだ小売店で売られているとの報道もあった。(ITmedia 2005/11/22)(Wikipedia:「ソニーBMG製CD XCP問題」)
Cellについては、「アメリカ企業の動き」2) IBM (Cell) に記す。
8) 日本IBM(BlueGene/L、天城セミナー)
2004年のところに書いたように、産総研(産業技術総合研究所、AIST)生命情報科学研究センターは、東京・お台場の「バイオ・IT融合研究棟」内に、たんぱく質の構造解析による新薬の開発などのために、BlueGene/Lを2005年2月に導入した。4ラックで8192コア。2005年6月のTop500リストでは、Rmax=18.665 TFlops、Rpeak=22.9376 TFlopsで8位であった。
9月28日、日本IBM社は、KEK高エネルギー加速器研究機構にBlueGene/Lを10ラック導入すると発表した。POWER5ベースのHITACHI SR11000と共に、日立製作所が主契約社(プライムコントラクター)として受注した。稼動予定は2006年3月。
日本IBM社は天城山に天城ホームステッドという温泉付の豪華なセミナー施設をもっているが、そこでアカデミアや産業界の研究者を集めて、多くのセミナーを開催した。
第14回IBMライフサイエンス天城セミナーは2005年3月25日~27日に開催された。今年のテーマは「医療と創薬の新時代」である。
「新しい創薬設計基盤: タンパク質丸ごと量子化学計算の現状と将来」 |
佐藤 文俊 東京大学 生産技術研究所 |
「創薬のための基盤構築の試み : リバース・プロテオミクス研究所の経験から」 |
永島 廉平 (株) リバース・プロテオミクス研究所 |
「統計学とライフサイエンスとの遭遇」 |
田村 義保 統計数理研究所 |
「複雑系としての脳」 |
中田 力 新潟大学 脳研究所 |
第15回IBMライフサイエンス天城セミナーは2005年6月17日~19日に開催された。
「医薬品安全性評価における新しいテクノロジーの展開とその有用性」 |
堀井 郁夫 ファイザー(株)中央研究所安全性研究統括部長 |
「行政の側から見たライフサイエンスへの課題」 |
石塚 正敏 国立国際医療センター 運営局 局長 |
「システムバイオロジーの国際動向」 |
八尾 徹 理化学研究所(兼)産業技術総合研究所 |
「Systems Biology in IBM Research」 |
Gustavo A. Stolovitzky, Ph.D. Manager, Functional Genomics & Systems Biology IBM T.J. Watson Research Center |
「動的で複雑な生命現象のシステム生物学」 |
上田 泰己 理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター |
「バイオベンチャーの挑戦 (仮題)」 |
村井 深 株式会社 ポストゲノム研究所 |
「物質と生命の分水嶺を超えて」 |
和田 昭允 理研ゲノム科学総合研究センタ- 特別顧問、」 横浜こども科学館 館長、東京大学名誉教授 お茶の水女子大理事 |
第16回IBMライフサイエンス天城セミナー「Pharco Genomics / Clinical Genomics」は2005年9月16日~18日に開催された。
「テーラーメード医療とそのためのゲノム創薬」 |
辻本 豪三 京都大学大学院 薬学研究科 |
「Micro Array Today and Challenge in the Future」 |
Bob Blalock Affymetrix Japan K.K. |
「薬効ゲノム情報に基づく個別化医療に向けて」 |
東 純一 大阪大学大学院 薬学研究科 |
「IBM におけるPGx/CG への取り組み」 |
Dr. Michael Hehenberger IBM Healthcare & Life Sciences |
「Business Implications of PGx – Current Status and Future」 |
藤田 芳司 株式会社サイトパスファインダー |
「年齢軸と生命」 |
倉地 幸徳 産業技術総合研究所 年齢軸生命工学研究センター |
「画像医学の進歩: (1)脳加齢の画像医学、(2)PETによる癌診断-開発研究と臨床応用」 |
福田 寛 東北大学加齢医学研究所 |
IBM HPC天城セミナーが2005年12月3日~5日に開催された。
「IBMにおけるディープコンピューティング・システムの研究」 |
Tilak Agerwala, Vice President, Systems, IBM Research |
「産総研CBRCにおける生命情報科学 研究とBlue Proteinシステム」 |
秋山 泰、産業技術総合研究所生命情報科学研究センター長 |
「常識を破る ―原子操作による錬金術―」 |
川添 良幸 東北大学金属材料研究所 東北大学情報シナジーセンター長 |
「スーパークラスタとグリッドビジネス」(仮題) |
関口 智嗣 産業技術総合研究所グリッド研究センター長 |
「ペタFLOPSシステムへの挑戦: GRAPE-DR」 |
平木 敬 東京大学大学院情報理工学系 |
「低消費電力技術が支える次世代超並列システム」 |
佐藤 三久 (*) /朴 泰祐 筑波大学計算科学研究センター *)発表者 |
「最近のHPC事情」 |
小柳 義夫 東京大学大学院情報理工学系 |
「Blue Geneアーキテクチャと格子QCDプログラムの超並列化」 |
清水 茂則、 日本IBM Deep Computing Development Lab.、土井 淳、 東京基礎研究所 |
9) サン・マイクロシステムズ(JERC)
第11回Japan Education & Research Conferenceが、2005年11月8日、東京国際フォーラムで開催された。出席したがプログラムが残っていない。記録によると、筑波大学発ベンチャー企業ソフトイーザ株式会社(2004年に登大遊(のぼり・だいゆう)が設立)は、『大学発ベンチャーとしての SoftEther VPN の開発 ~日本から世界に通用するインターネット技術を生み出すために~』という講演を行った。
10) 日本AMD(Opteronクラスタ・カンファレンス)
同社は、AMD Opteron クラスタ・カンファレンス 2005「AMD64の最大パフォーマンスを引き出すために」を、2005年5月31日ヒルトン東京(西新宿)で開催した。
10:00-10:15 |
開会のご挨拶 |
日本AMD (株) |
10:15-10:45 |
AMD Opteron-プロセッサの紹介とテクノロジアップデート |
日本AMD (株) |
10:45-11:30 |
Fluent |
フルーエント・アジア・パシフィック(株) |
11:30-12:00 |
NAGware |
日本ニューメリカルアルゴリズムグループ(株) |
12:00-13:00 |
昼食 & 展示会 |
|
13:00-13:45 |
SCRYU/Tetra |
株)ソフトウェア クレイドル |
13:45-14:15 |
PathScaleプロダクトによるクラスタパフォーマンスの向上 |
住商エレクトロニクス(株) 林 裕之 |
14:15-15:00 |
“Opteronサーバーを使用したLS-DYNA大規模解析” |
(株)日本総合研究所 宮地岳彦 |
15:00-15:15 |
休憩 & 展示会 |
|
15:15-15:45 |
PGIコンパイラ |
(株)ベストシステムズ |
15:45-16:15 |
PowerCockpit- |
マウンテンビューデータ(株) |
16:15-16:30 |
AMD ASIA Cluster Labの紹介と使用申し込み方法について |
日本AMD(株) |
16:30-16:45 |
質疑応答 |
|
11) ビジネスグリッド
富士通、日立、日本電気の3社は、2003年7月から経済産業省のグリッドコンピューティングプロジェクトにおいてグリッドミドルウェアの開発を進め、ユーザと連携した実証実験を実施することを2004年10月に発表していたが、3社は2005年6月20日から実証実験を行った。この実験では、富士通のプラットフォーム・ソリューション・センターと、日立のハーモニアス・コンペテンス・センターと、日本電気のiBestSolution Centerとをネットワークで結合し、グリッド技術がビジネスに有効であることを実証する予定である。(HPwire 2005/5/16)
12) NTT西日本(遊休グリッド)
NTT西日本(西日本電信電話株式会社)は、遺伝子の構造解析や気象予測など高速で大規模な計算処理を必要とする顧客に対し、2005年12月22日から。グリッド技術を利用した計算処理の受託業務を提供する。このサービスは、フレッツユーザから提供されるPCをIPv6網で結び、遊休能力を活用するもの。利用料金は、100台分のCPU能力を1ヶ月利用する場合約130万円である。NTT西日本は、2004年2月~4月に、国立遺伝学研究所とグリッドの共同実験を行ってきた。(NTT西日本 News Release 2005/12/21)
13) ベストシステムズ社(平成電電破産)
同社は2005年5月31日の取締役会で、平成電電傘下のドリームテクノロジー社の子会社となることを決定し、6月30日の臨時株主総会で正式決定した。株式交換は8月2日。ドリームテクノロジー社は同時に他の3社も買収した。
ところが10月3日、平成電電が民事再生法の適用申請を行ったので筆者らは心配した。12月12日、ドリームテクノロジー社がM&Aコンサルティング社(村上ファンド)の支援を得て再生スポンサーとして立候補した。ところが2006年4月16日支援打ち切りを決定し、平成電電は破産する。6月16日、事業は日本テレコムに譲渡された。某誌にはクソミソに書かれたが、結局ベストシステムズ社には大きな影響はなかったようである。2007年3月5日、平成電電元社長の佐藤賢治ら計5名が詐欺容疑で警視庁に逮捕される。
14) 堀義和氏退職慰労会
1987年から日本クレイ社長を務め、SGIとの合併後1997年4月に日本コダック社長に転任した堀義和氏は、2004年10月社長職を小島佑介副社長に譲り、会長となった。2005年6月30日にコダックを退職したのを記念して、8月1日に帝国ホテル本館2階「蘭の間」で盛大な記念パーティーが開催された。
標準化
1) OpenMP
OpenMPの規格は1997年10月にFortran版が公開されたのが最初であるが、2005年にはC/C++/Fortran統合版OpenMP version 2.5が公開された。
2) 高性能Fortran推進協議会
高性能Fortran推進協議会は、2005年9月7日、奈良県新公会堂で開催されたHiWEP2005に引き続き、同所で第3回総会を開催した。
3) Globus Consortium
グリッドソフトウェアの事実上の標準であるGlobus Toolkit開発のために1995年に始まったGlobus Projectは、2003年9月、Globus Allianceというコンソーシアムとして正式に設立された。ところが、2005年1月24日、Hewlett-Packard社、IBM社、Intel社、Sun Microsystems社はGlobus Consortiumを形成したことを発表した。分派活動かと思ったが、これはGGFのような標準化団体ではなく、Globus Toolkitの産業利用を推進しようとするものだそうである。Globus Consortiumの理事にはなんとIan FosterとSteve Tueckeが入っている。(HPCwire 2005/1/31)(Enterprise Watch 2005/1/25)
2005年4月、Glubus Toolkit version 4.0が公開された。
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4) GGF13(ソウル)
2005年も3回のGGF (Global Grid Forum)が開催された。GGF13は、2005年3月14日~17日に韓国ソウルのLotte Hotelで開催され、26カ国から475人が参加した(アジアから半数以上)。グリッド協議会での報告および総括報告を参照。写真は報告から。58のWG/RGが開かれ標準化について議論した他、6件のBoF、5件のWorkshopおよび2件のチュートリアルが開催された。14日の総会では、OASIS Talk (Patrick Gannon)、The EU Grid Initiatives、Grid Activities in Asia、Panel Discussionなどがあった。15日の総会では、Business Grid Round Tableがあり、各国から報告があった。OGSA (Open Grid Services Architecture)の議論が進む一方、産業関連ではこれに対応したWeb services標準の議論が行われた。前回のBrusselsでのGGF12以来、GGFでは10週間掛け40人にインタビューするなど長期方針の評価を行い、その結果をGGF13で報告した。
5) GGF14(Chicago)
GGF14は、2005年6月26日~30日、アメリカ合衆国ChicagoのWestin Michigan Ave Hotelで開催された。グリッド協議会での総括報告および報告集も参照。OpeningとTown HallとClosing以外プレナリがなかったので、参加者は350人と少なかった。78のWG/RGが開催されたほかOGSAに関連する新しいBofやWGが多数登場した。組織改革後初のGGFであり、エリアを再編成し、標準化活動とコミュニティ活動を分離した。
6) GGF15(Boston)
GGF15はGridWorld (IDG)との合同開催で、2005年10月3日~6日にBoston Park Plaza Hotelで開催された。参加者は460人。グリッド協議会での総括報告および報告集を参照。60件以上のWG/RG/BoFセッション、17件のcommunity program(9件のWorkshop、3件のチュートリアルなど)、16件のpractical Enterprise Programが開催された。Leadership awardがWalter StewartとGeoffrey Foxに授与された。
7) EGA
2004年4月20日、NEC、富士通、インテルなど世界のIT大手19社が共同で発足させたEGA (Enterprise Grid Alliance)は企業向けグリッド・ソリューションの開発および推進に焦点をあてたオープンなコンソーシアムを目指している。2005年7月にはGrid Security Working Group がEGA参照モデルに基づくセキュリティ文書Enterprise Grid Security Requirements documentを公表した。(HPCwire 205/7/25) 2006年6月26日、GGFとEGAは合併してOGF (Open Grid Forum)を設立する。
8) グリッド標準化調査研究(ガイドライン)
日本規格協会のINSTAC (情報技術標準化研究センター)では2002年度からグリッドコンピューティング標準化調査研究員会(委員長筆者)を設け、グリッド関連技術標準化の調査、日本に於ける標準化活動の調査、ガイドラインの提案、グリッド用語集の作成などを行ってきたが、2004年度はその最終年度で、2005年3月には平成16 年度 グリッドコンピューティングに関する標準化調査研究 成果報告書を公開した。
それに引き続き、産業技術総合研究所グリッド研究センターが、経済産業省情報電気標準化推進室及び日本規格協会情報技術標準化研究センター(INSTAC)から、3年の予定でグリッド技術のガイドライン標準化調査研究活動の委託事業を受けることになり、「グリッドコンピューティング標準化調査研究委員会」を立ち上げ、筆者が再び委員長を仰せつかった。幹事は産総研の伊藤智氏、委員は産業界を中心に委託し、7月からほぼ月1回のペースで委員会を開催した。初年度として、ガイドラインの精密化のための議論を行った。生のビジネスの現場から事例を収集することは現実には困難であるので、われわれは多くの事例に適用可能なモデルを構築することに力を注いだ。アカデミアで考えているグリッドと、ビジネスでのグリッドとの違いを痛感した。
グリッド・コンポーネントを第1層から第4層に分けた。第1層(物理環境)、第2層(OE/動作環境)、第3層(PF/プラットフォーム)、第4層(BP/サービス)とした。各層の提供物の定義、提供物の具体例、ライフサイクルの状態定義、およびそれらの間の遷移、という形でグリッドを定義することとした。我々のオリジナルのつもりであったが、実は、言葉は違うようであるが、EGAのグリッドコンポーネントのライフサイクルとモデル的にはほぼ等価だという指摘があった。しかも、EGAのモデルは全4層全てに当てはまるように(つまり言葉などは抽象的に)検討がされているということで、これを横目で見ながら議論を進めた。
9) グリッドとライセンス
アメリカの調査会社451 Groupは、2005年3月17日に調査結果を発表し、グリッド・コンピューティングの大きな問題点は、従来の使用コンセプトに基づいて規定されている現行のライセンス・モデルであり、「グリッド向けのソフトウエア・ライセンスでは、事業目標に応じてソフトウエア・ライセンスを事前に管理する機能が必要となる」と指摘した。(日経ITpro 2005/3/19)
10) 二進接頭辞(IEC)
IEC (International Electrotechnical Commission、国際電気標準会議)は1999年1月に発行されたIEC 60027-2の第2次改訂で、Ki (Kibi, 210)からEi (Exbi, 260)までの6つの二進接頭辞を制定したが、2005年8月15日の第3版でZi (Zebi, 270)とYi (Yobi, 280)が追加された。なお、二進接頭辞が使われるのはデータ量だけで、通信速度(kb/sなど)、演算速度(GFlopsなど)、周波数(MHzなど)では10のべき乗のSI接頭辞を使う。従って、1 Gibのデータを1 Gb/sで転送すると1.074秒掛かる。
11) XBRL(JIS化)
HPCとは関係がないが、日本規格協会のINSTAC (情報技術標準化研究センター)では2000年からXML (eXtensible Markup Language)のJIS標準化の可能性を考えるため調査研究を行うことになり、筆者が委員長になって3年間調査研究を行った。その成果の一つとして、XBRL 2.1仕様が、JISX7206 規格名称 「拡張可能な事業報告言語(XBRL)2.1」として2005年7月に制定された。このJISはXBRL Japan開発委員会が原規定を翻訳し、本調査研究委員会の分科会がJIS原案を作成したものである。
次回はアメリカやヨーロッパの政府の動きである。アメリカがHPCでリーダーシップを回復する方策が色々なレベルで議論された。ASCIの当初計画の最終機ASCI PurpleはRmax=63.39 TFlopsを達成し、Top500で3位となった。
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