新HPCの歩み(第228回)-2005年(f)-
ブッシュ大統領はPITACを継続しなかった。計算科学がまさに花開こうとしている時点でのPITACの消滅に、サイエンティストからは批判の声が上がった。連邦議会では、「先端コンピューティング再活性化」を目指す法案が複数提出され、アメリカのリーダーシップを回復する方策が議論された。LLNLのフル構成のBlueGene/Lは280.6 TFlopsの性能を出した。 |
アメリカ政府の動き
1) PITAC第2期
アメリカの情報科学技術政策がどうあるべきかを大統領、議会、連邦政府機関などに勧告するPITAC (The President’s Information Technology Advisory Committee)は1997年に設置され、第1期が2001年まで続いた。第2期が2003年11月に始まり、2005年6月まで続いた。その後は置かれていない。
第2期の共同議長は、Marc R. Benoiff(Salesforce.comのCEO)とEdward D. Lazowska(Washington大学のthe Bill & Melinda Gates Chair教授)が2003年5月に任命された。委員は大学関係8名、産業界14名。HPC関係で目に付く委員は、David A. Patterson (UCB)、Daniel A. Reed (North Carolina大学)、Eugene H. Spafford(Purdue大学)といったところか。2005年までの会議は以下の通り。
2003年11月12日 |
「新しい医療:ITはアメリカの医療制度をどう変えるか」(報告書) |
2004年4月13日 |
「ネットワークと情報技術の研究開発へのアメリカ政府の投資」(議事) |
2004年6月17日 |
「ネットワークと情報技術の研究開発へのアメリカ政府の投資」(議事) |
2004年7月29日 |
「サイバーセキュリティの研究開発」に関するタウンホールミーティング(議事) |
2004年11月4日 |
「コンピュータ科学小委員会」(遠隔会議) |
2004年11月10日 |
「コンピュータ科学に対する国家的優先課題」に関するタウンホールミーティング(SC2004において)(議事) |
2004年11月19日 |
「サイバーセキュリティ小委員会の報告」(議事) |
2005年4月14日 |
「コンピュータ科学に関する報告書(案)」に関する議論(議事) |
2005年5月11日 |
「コンピュータ科学に関する報告書(案)」に関する議論(議事) |
この期のPITACは「ITによる医療の革新」(2004年6月)、「サイバーセキュリティ:優先順位付けの危機」(2005年2月)、「コンピュータ科学:アメリカの競争力を確保するために」(2005年6月)の3件の報告書を公開している。いずれもPITACのページからリンクされている。
2005年7月1日にBush大統領はPITACを消滅させた。計算科学がまさに花開こうとしている時点でのPITACの消滅に、サイエンティストからは批判の声が上がった。(HPCwire 2005/6/17) (HPCwire 2005/7/1) (HPCwire 2005/7/15)この記事の日付は2006となっているが、当時の記録から見ても、内容から見ても2005年である)
2) The Council on Competitiveness(報告書)
U.S. Council on Competitivenessは、企業のCEO、大学の学長、労働界のリーダ、国立研究所の所長などからなるNPOであり、日本やドイツが勃興してアメリカの優位性を脅かし始めた1986年に創立された。2004年7月13日にはWashington DCで “The First Annual HPC Users Conference―― the High Performance Computing Users Conference: Supercharging U.S. Innovation & Competitiveness”を開催し、200人以上の高いレベルの参加者を集めた。その報告書が2005年1月に公表された。(HPCwire 2005/1/14) なお、IDCなどが開催しているHPC User Forumとは別の会議である。
これによると、ビジネスの97%にとってHPCは不可欠であり、HPCの利用により製品開発サイクルの加速と市場展開への時間短縮により競争力が強化される。しかし、HPCへの投資によって得られる利益を正確に定量化できないという問題のために、HPCの推進が妨げられている。古いソフトウェアを更新するというような技術的また教育的障壁を乗り越え、計算科学者のプールを増やすには、政府、産業界、アカデミアのより協力な協力関係が必要である、と述べている。
今年ののHPC Users Conferenceは、2005年7月13日にWashington DCのCapital Hilton Hotelで開催された。(HPCwire 2005/4/15) 基調講演はDreamWorks Animation SKGの会長Roger Enricoで、HPCが世界の市場で大きなシェアを獲得する方法が議論された。(HPCwire 2005/6/24)(Conference HP)
3) High-Performance Computing Revitalization Act of 2005(議会)
2004年には“H.R.4516 – Department of Energy High-End Computing Revitalization Act of 2004”が提出され、11月30日に成立した。これはDOEに限った法案であった。2005年にはJudy Biggert下院議員(共和党、Illinois州)が“H.R. 28, High-Performance Computing Revitalization Act of 2005”を提出した。これは、“the High-Performance Computing Act of 1991”を修正するもので、大統領にHPC研究開発プログラムの導入を指示している。ただし、新しい予算の増額は入っていない。他の4法案(地球に衝突する小惑星の発見、アメリカ鉄工業のエネルギー効率の向上、アフリカ系アメリカ人女性の科学上の貢献の称揚、メタンフェタミン中毒治療)とともに下院に提出され、下院の科学委員会の審議に掛けられた。この法案は、ホワイトハウス科学技術政策局(OSTP)に、
(1) 連邦政府のHPC研究開発やネットワーキング他の活動に対する目標および優先事項の設定;
(2) こうした目標を実施するプログラム別構成分野(Program Component Area)の設置およびプログラムで取り上げるべきグランドチャレンジの確認;
(3) HPCシステムのロードマップの策定等を行うよう義務付ける
ほか、HPCに関する基礎研究や応用研究を実施するNSF、NAS、DOE、NIST、NOAA、およびEPAの責任に関する条項をも改定する(NEDOワシントン事務所:デイリーレポート)。
この法案(H.R.28)は3月17日に下院の科学委員会を通過し(HPCwire 2005/3/25)、4月下旬に下院本会議でも可決された(HPCwire 2005/4/29)が、上院は通っていない(らしい)。
例の辛口の論客High-End Crusaderは、HPCが深刻な困難に直面していると指摘している。とくに、
(1) PCクラスタが主流となり、スーパーコンピュータ・アーキテクチャの研究が鈍化している
(2) MPIが支配しているので、並列プログラミング言語の進歩が鈍化している
(3) 不適当なプラットフォームやプログラミングの難しさのため、産業界は大規模な計算をしなくなり、計算工学の応用が鈍化してる
と指摘し、政府の大胆なリーダーシップを求めている。(HPCwire 2005/2/4)
またこの論客は、NSFがPACIを2004年9月末に終了させた後、計算科学への計算資源提供が十分でないこと、DARPAも基礎科学研究予算を減らしていることなど、政府がHPCへの投資に熱心でないことを批判している。(HPCwire 2005/4/15) (HPCwire 2005/4/29)
4) 議会公聴会
2005年5月、下院科学委員会(House Science Committee)は、公聴会を開催し、ACMのU.S. Public Policy Committee、CRA (Computer Research Associationや他のコンピュータ関連学会が陳述し、連邦政府の情報技術への投資が、長期的な基礎的研究から離れているとの懸念を表明した。委員長のSherwood Boehlert (R-NY)や委員のLincoln Davis (D-TN)は、IT技術の進歩はアメリカの生産性と健全な経済のために本質的であり、コンピュータ研究への連邦政府からの支援の減少に憂慮をしていることに理解を示した。(HPCwire 2005/5/13)
5) INCITE(DOE)
2004年のところに記したように、公募制のDOE大型資源提供プログラムINCITE (the Innovative and Novel Computational Impact on Theory and Experiment)は昨年6月から第2期の募集を行っていた。23件の応募があり、要求資源は2842万ノード時間であった。このうち65%はアメリカ国内の大学からのものであった。分野としては11の分野にまたがる。48%はDOE以外の機関から研究資金を得ていた。 2005年1月、DOE長官Spencer Abrahamは、この中から3件の科学研究プロジェクトに合計650万ノード時間を提供すると述べた。使う資源はNERSCのIBMのマシンである。NERSCのストレージも提供される。採択されたプロジェクトは以下の通り。(HPCwire 2005/1/7)
(1) 燃焼シミュレーション
“Direct Numerical Simulation of Turbulent Non-premixed Combustion – Fundamental Insights towards Predictive Modeling,” by Jacqueline Chen and Evatt Hawkes of Sandia National Laboratories in Livermore, Calif.(LLNLの隣にあるSNL第2キャンパス)
計算時間 250万ノード時間
(2) 天体物理
“Magneto-rotational instability and turbulent angular momentum transport,” by Fausto Cattaneo, University of Chicago.
計算時間 200万ノード時間
(3) 生命科学
“Molecular Dynameomics” by Valerie Daggett of the University of Washington
計算時間 200万ノード時間
8月にANLとIBMは、IBMのT.J. Watson Research Center (Yorktown Heights, N.Y.)のBlue Gene (BGW)をINCITEに提供する協定を結んだと発表した。(HPCwire 2005/8/19)
DOEは、U.S. Council on Competitivenessの勧告に従い、2006年のINCITE募集において、企業からの提案も受け付けると発表した。(HPCwire 2005/5/27)
6) ESnet
ESnet (Energy Science Network)はDOEが運営するエネルギー科学のためのネットワークで、DOEの研究所同士のみならず他のネットワークや機関をつないである。2005年3月、DOEは、ESnetのバックボーンとしてNLR (National LambdaRail) を採用することを決定したと発表した。
2005年7月、Internet2はNLRと合併する協議を始めたとの報道があったが、Wikipediaによると2004-2006に合併の可能性について踏み込んだ協議を行ったが、2007年秋には方針の違いから合併できないとの結論になったとのことである。
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7) LLNL (BlueGene/L)
LLNL (Lawrence Livermore National Laboratory)のBlueGene/Lは、2004年11月のTop500で、地球シミュレータとNASAのColumbiaを抜いてRmax=70.720 TFlopsでトップの座に輝いた。その後、BlueGene/Lの規模を16ラックから32ラックに倍増したところ、2005年3月23日(米国時間)、135.5 TFlopsのLinpack性能を記録したと発表した。これは想定内であったが、Car-Parrinello第一原理分子動力学が動いているというニュースには感心した。(HPCwire 2005/3/25)(ZDNET Japan 2005/10/28) 後述するように、2005年6月のTop500ではRmax=136.8 TFlopsで堂々の1位を獲得した。(写真はLLNLの歴史ページから)
BlueGene/Lはラックに1024個のプロセッサが搭載され、各プロセッサはdual coreである。通常は一方のコアは通信やI/Oなどを専用に司るが、Linpack測定では両方とも計算に用いている。
10月27日(米国時間)に、LLNLとIBMはフル構成の(64ラック)BlueGene/LがRmax=280.6 TFlopsの性能を出したと発表した。
8) LLNL (ASC Purple)
1995年に始まったDOEのASCI (Accelerated Strategic Computing Initiative)計画は、ASCI Red, ASCI Blue Pacific/Mountain, ASCI White, ASCI Q, ASCI Red Stormと開発されたが、当初予定の10年間が経過した2004年にASC (Advanced Simulation and Computing Program)と名称変更されて継続された。
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100 TFlops超級を目指すASC Purpleは、2002年の発表とは違い、IBMがPOWER5(1.9 GHz)×8からなるIBM eServer p5-p575がノードで、全体は1568ノードの設計であった。サーバのp575は、POWER5プロセッサを使いながら、dual coreの一方のコアを無効にしてキャッシュやメモリのバンド幅を独占している。したがって浮動小数演算のピーク性能は1.9×4×8=60.8 GFlopsで、システム全体では、95.3 TFlopsとなる。(大原雄介 2015/3/2)
IBMは7月22日(米国時間)に、8月納入を前にしてIBM社内で事前テストを行い111 teraFlopsを達成したと発表した。ピーク性能を越えており、数字が合わないと思っていたら、このteraFlopsなる指標は、ピーク速度とその30%以上のtwo Marquee codesの実アプリの性能とを足したもののようである。これで101を越えることが条件であった。8月にLLNLに設置(写真)、10月に検収テストを行った。2010年11月10日に稼働を終了する。
2005年11月のTop500では、コア数10240、Rmax=63.39 TFlops、Rpeak=77.82 TFlopsで3位となった。全体では1568ノードのシステムであるが、公開エリアにあるのは一部(4%)で、大部分は非公開エリアに置かれている。(HPCwire 2005/11/4)
9) LANL(運営形態変更)
LANL (Los Alamos National Laboratory)は、創設以来California大学が運営してきたが、これまでセキュリティー上の問題や不正疑惑等不祥事が続いていた。1999年には、研究所所属の科学者だった台湾出身のWen Ho Lee(李文和)氏が中国のスパイではないかとの容疑で拘束されるという事件があり、政府とLANLを震撼させた。スパイ容疑は不十分なもので、Lee氏は機密情報の管理ミスだけで有罪を認め、連邦裁判官から謝罪を受けて釈放された。
2004年には、核開発の秘密が書かれた2枚のディスクが行方不明になったとして、2004年7 月16日(金)に研究所の活動を一日停止して、所員は一日中その捜索を行った。ところが、2005年に入り、DOEは、1月28日に、この2枚のディスクはそもそも存在しなかったと発表した。バーコードは登録されているが、現物のディスクは作成されなかったとのことである。締まらない話である。報告書は「この事件が暴露した研究所の弱点は致命的で、修復しなくてはならない」と書いている。 処罰として、DOEはCalifornia大学に払っている管理費$8.7Mを1/3にカットし、$2.9Mとした(一年分か一月分か四半期分か不明)。国立研究所に課された罰金としては最大のものである。(NBC News 2005/1/29) (HPCwire 2005/2/11)
研究所は、ほかにもセキュリティー上の問題やクレジットカードの濫用、備品の盗難などといった管理の不手際が続出して揺れつづけた。
これを受けてDOEは63年前の研究所創設以来初めて、研究所の運営契約を入札で決めることととした。応札したのは、California大学とエンジニアリング大手のBechtel Corp.など4組織の連合と、Texas大学と軍需大手のLockheed Martin社の連合の2者であった。DOEは12月21日(米国時間)、LANLの運営権を前者に与えると発表した。7年の契約で$512Mであるが、最大20年まで延長できる。California大学が継続する形となったが、DOEのSamuel W. Bodman長官は「これは新しいチームとの新しい契約で、ロスアラモス国立研究所の運営に対する新しいアプローチだ。これまでの契約の単なる延長ではない」と強調した。(The New York Times 2005/12/22)
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10) NERSC(Jacquard)
NERSC (National Energy Research Scientific Computing Center)は、2005年8月、722プロセッサのLinux Networx社のEvolocityクラスタを導入しJacquardと命名した。ノードは2個の2.2 GHz AMD Opteronプロセッサが搭載されたModel 248であり、722個のうち640個が計算に、残りはI/OやTSSサービスなどに用いられる。相互接続はInfinibandである。ピーク性能は3.1 TFlopsである。(HPCwire 2005/8/19) 2005年11月のTop500においては、コア数620、Rmax=2.12 TFlops、Rpeak=2.77 TFlopsで、306位tieにランクしている。写真はNERSC Historical Timelineから。
11) TeraGrid(NCSA、予算)
2005年1月、NCSA (the National Center for Supercomputing Applications, University of Illinois, Urbana-Champaign)は、SGI社のSMP (Symmetric Multi-Processor) Altixにより6.5 TFlopsの計算能力を増強したと発表した。このシステムはCobaltと名付けられ、Teragridにおける最大のSMPシステムである。Cobaltは1024個のItanium 2を搭載し、Linux OSで走る。すべてのプロセッサからアクセスできる3 TBのメモリを持ち、NCSAの他の計算資源からもアクセスできる370 TBのSGI InfiniteStorageファイルシステムを持つ。SMPは、AMF (adaptive mesh refinement)など規則性のない多くの科学技術計算にとって有利性があり、データマイニングや可視化にも有効である。3月からはユーザに公開される。(HPCwire 2005/1/14)
2005年8月、NSFはTeraGrid(正式名称はExtensible Terascale Facility)に対し、5年間で総計$150Mの予算を付けたことを発表した。このうち$48Mは、Charlie Catlett (TeraGridプロジェクトのリーダーであり、前GGF会長)の指導の下にシカゴ大学が担当し、全体的なアーキテクチャ、ソフトウェア統合、ユーザサポート調整などに使われる。残りの$100Mは、TereGridの8カ所の資源提供機関の運用管理やユーザサポートに使われる。
Catlettはこう述べている。「TeraGridはこれまでの経験から、信頼性が高く維持可能なサーバーインフラストラクチャを構築するには、計算資源を提供しグリッド技術によりアクセス可能にしている組織の間の密接な協力とともに、全体の運営に責任をもつ人の数があるクリティカル・マスを越えることが重要である。」(GRIDtoday 2005/8/17)
12) NSF(計算資源提供)
HPCwireはNSF傘下のスーパーコンピュータセンターの資源を、3か月毎、公募により提供していることを報道している。2004年9月末にPACIが終了し、TeraGridが始まったが、それと並行しているようである。この募集はNSFスーパーコンピュータセンター(1985年から)やPACIの時から続いている。今回は、公募の中から審査により90課題に対して計3400万ノード時間を提供した。3件の課題はそれぞれ600万ノード時間以上が割り当てられ、6課題は100万ノード時間以上である。
資源を提供するセンターは、SDSC、NCSA、PSCの3センターの他、6か所のTereGrid参加センター(TACC、ACR Caltech、ANL、Purdue大学、Indiana大学、ORNL)である。(HPCwire 2005/5/6)
NSFは9月27日、「科学技術のための、ペタスケール計算環境に向けてのHigh Performance Computing System Acquisition」を発表し、提案を公募した。最初の締め切りは2006年2月10日で、その後は2006年11月30日、2007年12月5日、2008年11月28日と年一回の締め切りが設定されている。これは、その後のTrack 2に対応する公募と思われる。
13) NCAR(IBM BlueGene/L)
2005年3月25日、NCAR (The National Center for Atmospheric Research)はColorado大学と協力して、大気海洋のシミュレーションのためにIBM BlueGene/Lを導入し、Frostと命名した。当初は1ラック(1024プロセッサ、ピーク5.7 TFlops)である。Blue Geneで気象のシミュレーションを行うということでビックリした。その後、4ラック(4086プロセッサ、8192コア)ピーク22.94 TFlopsに増強した。2012年5月31日撤去。(NCAR History) 2005年6月のTop500では、コア数2048、Rmax=4.71 TFlops、Rpeak=5.73 TFlopsで、58位tieにランクしている。
14) カトリーナ対応
8月26日にフロリダ半島に上陸したハリケーン・カトリーナはメキシコ湾岸地方に甚大な被害をもたらしたが、DOE傘下のLBNL (Lawrence Berekeley National Laboratory)は、カトリーナで閉鎖されたり損傷を受けた研究機関の研究者に対し、施設や研究資源を提供すると発表した。(HPCwire 2005/9/16) 他の多くの機関も援助を申し出た。(HPCwire 2005/10/7)
ヨーロッパの政府関係の動き
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1) スペイン(Barcelona Supercomputer Center)
スペインのカタルーニャ州Barcelonaの、カタルーニャ工科大学(Universitat Politècnica de Catalunya)の敷地内に、Torre Girona と呼ばれたかつてのチャペルを改造して、2005年4月1日に開設された(写真はWikipediaから)。センターは、スペイン教育科学省(60%)、カタルーニャ州政府(30%)、カタルーニャ工科大学(10%)からなるコンソーシアムによって運営されている。センター開設前の2004年に建設されたMare Nostrumが設置されている。これは、IBM社製のeServer BladeCenter JS20で、PowerPC 970 (2.2GHz)が搭載されている。IPv6でアクセスできる世界初のスーパーコンピュータセンターである。2005年6月9日、Internet Global Congressにおいて開所式をおこなった。(BSC 2005/6/9)(HPCwire 2005/6/17)
2004年11月のTop500では、コア数3564、Rmax=20.53 TFlops、Rpeak=31.363 TFlopsで、4位にランクしている。ちなみにMare Nostrumはラテン語で、直訳すれば「我々の海」すなわち地中海のことである。
2) アイルランド(スーパーコンピュータセンター)
アイルランドは2005年、SFI(Science Foundation Ireland)とHEA (Higher Education Authority)からの出資により、Irish Centre for High-End Computingを、西部のGalway(ゴールウェイ)に設置した。NUI (the National University of Ireland), Galway が運営する。首都Dublinにもオフィスを持つ。初代所長はDr Andy Shearer (NUI Galway)である。
最初に導入したのはWalton (IBM eServer, Opteron 2.6 GHz, GigEthernet)で、コア数968、Rmax=2.8 TFlops、Rpeak=4.646 TFlopsで、2005年11月のTop500で205位にランクされている。同時に共有メモリのHamilton (Bull NovaScale NS6320 32 Itanium 2 @1.5GHz, Rmax=166 GFlops)も導入した。
3) European Bioinformatics Grid
GRIDtoday (2005/2/7)の報道によると、EUはFP6 (Sixth Framwork Program)の中でEMBRACEコンソーシアムに€8.3Mの補助金提供を決めた。これは健康のための生命科学、ゲノミックスおよびバイオテクノロジーのために使われる。このコンソーシアムは11カ国の17機関の計算生物学者により構成されている。
次は世界の学界の動きと国際会議である。LANLのWu-chun FengがGreen500を提唱する。HPC User Forumが初めて日本で開かれた。OpenMPに関する国際会議IWOMPが始まる。
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