世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


9月 3, 2026

新HPCの歩み(第293回)-2010年(a)-

小柳 義夫 (高度情報科学技術研究機構)

次世代スーパーコンピュータ戦略委員会は、2008年1月25日~2017年9年3月31日という長期の任期で任命されていた。2009年中には16回の会議を開いて次世代スーパーコンピュータ戦略プログラムとその実施機関を選定した。アメリカとの競争のため秘密とされて来たその委員会資料が公開され、昨年の議論の内容が明らかになった。

社会の動き

 
   

2010年(平成22年)の社会の動きとしては、1/1平城遷都1300年祭開幕(年末まで)、1/1日本年金機構発足、1/4ドバイの高層ビルBurj Khalifaオープン、1/12欧州委員会がギリシャ財政の統計上の不備を指摘、ギリシャ経済危機始まる、1/12ハイチ地震(M7.0)、1/19日本航空が会社更生法適用申請、2/2国土交通省が高速道路無料化社会実験の日時と路線を発表、2/4朝青龍、暴行問題で現役引退を表明、2/12バンクーバーオリンピック開幕(日本は銀3、銅2)(~28)、2/27チリ地震(M8.8)、日本にも津波警報、3/9北野武がフランス芸術文化勲章Commandeur章を受章、3/11茨城空港開港、3/26黄海で韓国の哨戒艦「天安」が沈没、3/29モスクワ地下鉄爆破テロ、4/2-10タイ全土でタクシン前首相支持派デモ、4/6名張毒ぶどう酒事件の審理差し戻し決定、4/10ポーランド空軍Tu-154墜落事故、4/14中国西部で青海地震(M7.1)、4/14アイスランドのEyjafjallajokull火山噴火、ヨーロッパ上空に火山灰、4/16スカイマーク、神戸・茨城線就航、4/20メキシコ湾BP原油流出事故、4/27日本で殺人罪などの公訴時効が廃止、5/1上海国際博覧会開幕(~10/31)、5/2ユーロゾーンとIMFはギリシャへの€110Bの財政支援合意、5/6イギリス下院総選挙、保守党勝利、5/6 Flash Crash(Dow平均株価がコンピュータ取引で急激に暴落)、5/10フィリピン大統領選挙、Benigno Aquino III当選、5/11イギリスでDavid Cameronが首相に、5/18宮崎県で流行している口蹄疫で東国原知事が非常事態宣言、5/19タイで反政府派デモ隊に治安部隊突入、5/21日本の金星探査機「あかつき」打ち上げ、6/2鳩山由紀夫総理が退陣を表明、6/4総辞職、6/8菅直人内閣発足、6/11 FIFA World Cup南アフリカ大会開幕(~7/11)、6/13小惑星探査機「はやぶさ」帰還、6/26-27 Torontoで第4回G20首脳会議、6/27 Anna Chapmanら10人のスパイがNew Yorkで検挙、6/28日本で高速道路無料化社会実験開始、7/9 Anna Chapmanら10人、アメリカのスパイとしてロシアで逮捕された4人のロシア人とWien空港で交換、7/11参院選、民主党惨敗、7/17京成成田空港線(成田スカイアクセス)開業、7/17日本で改正臓器移植法施行(15歳未満の子供の移植可能)、7/20金賢姫来日、7/25 Wikileaksがアフガニスタン戦争に関する秘密文書公開、8/4最高裁、重信房子の上告棄却、懲役20年確定(2022/5/28出所)、8/5チリのコピアポ鉱山落盤事故(10/13に33名全員救出された)、8/20スウェーデンでWikileaksのジュリアン・アサンジに逮捕状、9/7尖閣諸島中国漁船衝突事件、9/10村木厚子に大阪地裁が無罪の判決(9/21確定)、9/18 Münchenでオクトーバーフェスト200周年、9/21大阪地検主任検事を、村木厚子に関係した証拠のフロッピーディスクを改ざんした容疑で逮捕、10/2尖閣諸島抗議デモ、10/6ノーベル化学賞、根岸英一、鈴木章がRichard Heckとともに受賞と発表、10/21羽田空港のD滑走路と新国際線ターミナルが供用開始、10/22 Wikileaksがイラク戦争に関する機密文書漏出、10/29警視庁国際テロ捜査情報流出事件、11/2アメリカ中間選挙、民主党惨敗、11/4尖閣諸島中国漁船衝突事件の44分の映像が、YouTube上にsengoku38のアカウント名で公開、11/6京都でAPEC財相会合、11/9ミャンマーで20年ぶり総選挙、11/11-12ソウルで第5回G20首脳会議、11/13ミャンマーの民主化指導者Aung San Suu Kyi解放、11/13-14横浜でAPEC首脳会議、11/18新生GMがNYSEに上場、11/23延坪島砲撃事件勃発、11/29 Wikileaksがアメリカの外交公電を流出させる、12/4東北新幹線、新青森まで開通、12/7日本の金星探査機「あかつき」が金星到着、12/7ジュリアン・アサンジがロンドン警視庁に出頭し逮捕、12/16アサンジ保釈、など。(写真は、O2Himawariから。筆者撮影)

TIME誌によると、2010年は「漏れ」の年だった。4月のメキシコ湾の”BP-leaks”、アイスランドの火山も灰を漏らし、”Wikileaks”までもれ続きである。日本では、Sengoku-leaksというか尖閣leaksや警視庁leaksもあった。

この年の流行語・話題語としては、「ゲゲゲの~」「いい質問ですねぇ」「イクメン」「AKB48」「女子会」「無縁社会」「ブブゼラ」など。

チューリング賞は、PAC 学習の理論、列挙と代数計算の複雑さ、並列分散コンピューティングの理論など、計算理論への革新的貢献に対してLeslie Gabriel Valiant(Harvard大学)に授与された。

エッカート・モークリー賞は、Stanford大学にいたWilliam James Dallyに授与された。2003年からNVIDIA社のコンサルタントを務め、2009年からフルタイムのchief scientistである。Dallyは、現在の相互接続網に関する多くの技術、デッドロック回避、ワームホールルーティング、仮想チャンネル、高Radixルータなどを開発した。Cray Research社のT3DやT3Eスーパーコンピュータの開発にも関与した。

ノーベル物理学賞は、二次元物質グラフェンに関する革新的実験に対して、Andre GeimとKonstantin Novoselovに授与された。日本が得意のカーボンナノチューブより先にグラフェンが受賞してしまいびっくりした。化学賞は、有機合成におけるパラジウム触媒クロスカップリングに対し、Richard Fred Heck、根岸英一、鈴木章の3名に授与された。生理学・医学賞は、体外授精技術の開発に対し、Robert G. Edwardsに授与された。

次世代スーパーコンピュータ開発

昨年11月の事業仕分けを切り抜け、いよいよ製造段階に進んだ。愛称「京」も決まり、HPCIの構築も進んでいる。1月第2週発売の週刊朝日のコラムで、ホリエモンこと堀江貴文が、「日本にスパコンは不要、使いたい人はアメリカに使いに行けばよい」というとんでもないことを書いていた。スパコンなしにロケットが飛ぶのであろうか。

1) 秘密開示(1/22)
2010年1月22日に、川端達夫文部科学大臣の記者会見において、「今まで世界一を目指すという意味で、スパコンを研究開発していくプロジェクトとして昨年7月に取りまとめた次世代スーパーコンピュータプロジェクト中間評価報告書というのがあるのですが、この中で、世界一を目指しているというのが、し烈な世界の競争でありますので、どういうスケジュールでどういう進ちょく状況になっているか等々の議論の部分、あるいは技術的なレベルの部分は一部非公開という形で、報告書を公開しない部分を設定してあったのですが、一定の方向も決まりまして、世界一を目指しつつも、ナンバーワンを目指しつつも、それにどうしてもこだわって加速するということをやめましたので、先ほど申し上げた幅広い議論を国民的にしていただけるためにということで、中間報告の取りまとめで発表していた非公開の部分を、改めて開示したいというふうに思っておりますので、この会見が終わった後で中身は開示したいと思います。」(文部科学大臣 記者会見テキスト版)と述べ、下記の発表があった。

次世代スーパーコンピュータプロジェクト中間評価報告書の公開について

平成22年1月22日

 

 次世代スーパーコンピュータプロジェクト中間評価報告書(平成21年7月 科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会 情報科学技術委員会 次世代スーパーコンピュータプロジェクト中間評価作業部会)については、国家的な目標の実現(世界最速達成)等のため、中間評価作業部会で秘密情報の取扱いを決定した上で、これまで部分的に非公開としていました(別紙1、2参照)。一方、次世代スーパーコンピュータプロジェクトについては、平成22年度予算案編成過程において、利用者側視点で多様なユーザーニーズに応える「革新的ハイパフォーマンスコンピューティング・インフラ」を構築する計画に進化・発展させることとしたところです。また、当該計画変更の際には、10ペタFLOPS級の達成時期についても見直すとともに達成時期を公表しました。これに伴い、中間評価報告書の非公開部分についても公開することとしましたのでお知らせします。

 

公開する事項

 

 次世代スーパーコンピュータプロジェクト中間評価報告書において、国家的な目標の実現(世界最速達成)等のため、これまで非公開としていました以下の項目について公開します。

 

・システム開発の進捗状況(平成21年7月時点)

・米国のスパコン開発状況

・システム構成再検討の要請

・開発スケジュール

・システム構成に係る意見等

 

(注)本報告書は、昨年7月時点のものであり、昨年12月の次世代スーパーコンピュータプロジェクトの計画変更については、反映しておりません。

[以下はリンク]

次世代スーパーコンピュータプロジェクト中間評価作業部会報告書  (PDF:1348KB)

 

■別紙1 次世代スーパーコンピュータプロジェクト中間評価作業部会における秘密情報の取扱い及び会議の非公開について

 

別紙2 秘密情報の取扱いについて

 

 

この発表そのもののweb pageは現在残っていないが、報告書及び別紙2件は上記のリンクの通りWARPに保存されている。この秘密開示は、昨年からの経緯に関連して記者から情報公開の要請があっただけでなく、2010年度予算案に係る関係大臣折衝で、予算措置の条件として「説明責任を果たすこと」が課せられたことによるものである。これまで非公表とされた部分では、経費の追加などがなければ「世界一」は達成できないと書かれ、昨年の仕分けとの関連が明示された。なお、この段階でも企業秘密に関係する部分は黒塗りになっている。

2) 公開情報への各紙の分析(1/23)
翌1月23日の各紙は、公開された情報の分析を掲載している。例えば毎日新聞は、奥野淳史の署名記事で、「次世代スパコン:文科省、機密を公表 『競争に勝てない』――NEC撤退前に」との見出しの下に、「同事業では昨年5月、開発に参加していたNECなどが撤退。業績悪化が理由とされたが、今回の報告書では、撤退以前に当時の日本の計画では「米国との競争に勝つのは困難」と同省作業部会が指摘し、NEC担当部分の開発縮小、廃止の検討を求めていたことが分かった。事業を統括する理化学研究所は競争に勝つため、110億円を予算追加し11年に完成させる新計画を提示。しかし事業仕分けを経て追加予算は削減、完成時期も当初予定の12年中に戻された。」と述べている。

朝日新聞は、「仕分け前に『世界一は困難』次世代スパコンで文科省」との見出しの下に、行方史郎の署名記事で、「計画では、当初、富士通とNEC・日立の両グループのシステムを組み合わせる方式で設計が進み、2011年6月に毎秒5千兆回の計算速度を実現すれば、『世界一』になるはずだった。ところが、昨年4月の段階では、計画を評価する委員の大半が、意見集約で『計画が遅れている』と答え、『現行計画では世界一の奪取は困難』との結論を出していた。その約1か月後にNECと日立が撤退を表明した。」とある。(朝日新聞 2010/1/23

読売新聞は、「次世代スパコン、仕分け前に『世界一困難』評価」との見出しの下に、「昨年7月に公表された表向きの報告書では、そこに書かれた世界一への戦略は伏せたまま、必要経費を2010年度の概算要求に盛り込んだ。同省が22日、発表した。同省の担当者は『海外に手の内を明かしてしまえば世界一にはなれず、やむを得なかった』と話している。」と書かれている。

筆者ら委員も会議資料は持ち帰れず、記憶は不正確であったが、この連載ではこれら2010年に公開された情報も使って来た。

3) 技術諮問委員会(1/20)
昨年設置された理化学研究所次世代スーパーコンピュータ技術諮問委員会は1月20日に臨時第1回会議をいつもの丸の内大会議室で開催した。議題は、政府予算案の報告と、予算案を踏まえたシステム開発スケジュールの見直しであった。システム製造に係る経費(国庫債務負担行為)は、概算要求時には2010年度197.5億円、2011年度402.5億円(合計600億円)であったが、変更後は2010年度165.0億円、2011年度285.0億円、2012年度40.0億円となり、110億円減額となり、しかも1年延びている。  第3回の技術諮問委員会は、4月15日に理研東京事務所で、第4回は8月18日に神戸の理研AICSで開かれた(後述)。ハードウェアやシステムソフトウェアの開発状況、アプリケーションのチューニング状況などについての報告があり、技術的な議論を行った。

 
   

4) 施設公開(2/3)
さて、独立行政法人・理化学研究所は、2010年2月3日、神戸市中央区のポートアイランドに建設中の施設を報道陣に初めて公開した。神戸港の人工島の2ヘクタールの敷地に地下1階、地上3階建ての「計算機棟」と、冷却用の「熱源機械棟」、100人以上の研究者が常駐する6階建ての「研究棟」などを建設中で、工事の進み具合は8割程度という。総工費は193億円。計算機棟は地上3階、地下1階建てで、ソフトウェアを含めると1千億円近くを投じるスパコンは3階に入る。熱源機械棟では、スパコンを冷やす水や空気を循環させる大型機械が設置されていた。本格稼働が、事業仕分けの予算削減騒動の影響で約ハードウェアの導入時期が予定していた平成23年11月から半年遅れの24年6月になるため、その間に米国のスパコンが完成するために「世界一」を逃す見通しであるとした記事もあった。(産経新聞 2010/2/3)(共同通信 2010/2/3)(朝日新聞 2010/2/3)(讀賣新聞2010/2/4)(神戸新聞 2010/2/4)

5) 工場見学(3/31)
3月31日に、次世代スーパーコンピュータ技術諮問委員会のメンバーで、次世代スーパーコンピュータをテスト中の富士通沼津工場を見学した。内田工場長のご挨拶のあと、井上愛一郎常務理事から開発状況の紹介があり、新庄統括部長の案内で次世代スパコンシステム試験場を見学した。数台の筐体が稼働していた。最後に池田記念室を見学の後、急ぎ新幹線で帰った。実は、2018年7月に、同じ富士通沼津工場にポスト「京」の開発状況を見学に行ったが、8年前のことを思い出した。

6) 技術諮問委員会(4/15)
 4月15日には、第3回の次世代スーパーコンピュータ技術諮問委員会を東京事務所で開催した。開発状況、システム整備スケジュール、アプリケーション性能評価、レビュー結果、次世代スパコンの愛称などについて議論した。

5月31日には施設が竣工した。写真は2011年1月13日に、ポートライナーの線路わきから南向きに撮ったもの。右側は「計算科学センタービル」とその奥に「計算科学研究機構」、左側の小さなビルは「神戸大学統合研究拠点(第1期)」。左端は「ポートアイランド南駅」(その後「京コンピュータ前駅」、現在「計算科学センター」駅)。

7) 戦略プログラム(1/22発表)
次世代スーパーコンピュータ戦略委員会は、2008年1月25日~2017年9年3月31日という長期の任期で任命されていた。2009年中には16回の会議を開いて次世代スーパーコンピュータ戦略プログラム(正確にはそのFS、つまり実施可能性調査)とその実施機関を選定した。昨年の事業仕分けとその後の計画変更で、戦略委員会はいったん休止となったようである。

戦略プログラムの当初の計画は、2010年度の準備研究に数億円/分野、2011年度以降の本格実施に毎年5億円/分野で5年間というものであったが、事業仕分けと政治主導の見直しにより、今回の予算編成の結果、準備研究のための予算は、0.6億円/分野の計上となった。また、2011年度以降の予算獲得についても大変厳しい状況にある。このため、2010年1月18日17時30分から旧戦略委員会委員による戦略打ち合わせ会が開かれ、本格実施のタイミングを当初計画どおり2011年度からとすることの是非について議論した。

その結果、準備研究の予算規模は縮減されたものの、次世代スーパーコンピュータの完成に合わせて早急に成果創出を図っていくとの方針に何ら変更がないことから、2009年度のフィージビリティスタディ(FS)による実施計画づくり(実施事項のプライオリティー付けは必須)を進め、2010年度当初に評価を行い、2010年度の準備研究(FS評価結果によっては引き続きFSの実施)を経て、当初計画どおり、2011年度から「HPCI戦略プログラムとして」本格実施を行うこととなった。

2009年度に実施するFSについては、1月18日に契約締結を行い、22日(中間評価作業部会報告書の非公開部分の公開発表と同じ日)に正式にプレス発表を行った。

8) 戦略プログラム分野2
戦略プログラム分野2「計算物質科学」FSでは、1月22日に東大理学部で準備会合を開催し、戦略機関の組織、運営方法の概要、各種小委員会の設置を決めるとともに、2月20日のシンポジウムについて議論した。

9) 戦略プログラム分野3
戦略プログラム分野3「防災・減災に資する地球環境変動」実施可能性調査、計算科学技術体制構築・計算機環境にかかるワーキンググループが2010年2月25日に東京京橋の会議室で開催され、アドバイザとして出席した。

10) 戦略プログラム分野4
戦略プログラム分野4の研究開発課題検討会が、2010年3月24日に東大生産研で開催された。

16:00

(1) 出席者紹介

(2) 課題検討会 主旨説明

 

(3) 各課題に関する検討

    生研、JAEA、JAXA、外部有識者との質疑・応答

16:15~16:35

①次世代半導体集積素子におけるナノスケール配線製造プロセスシミュレーショ

ンに関する研究開発(物材研、企業コンソーシアム)

16:35~16:55

②乱流の直接計算に基づく次世代流体設計システムの研究開発

16:55~17:15

③輸送機器・流体機器の流体制御による革新的高効率化・低騒音化に関する研究

開発

17:15~17:35

④多目的設計探査による設計手法の革新に関する研究開発(JAXA、東北大、企業

コンソーシアム)

17:35~17:55

⑤原子力施設の次世代耐震シミュレーションに関する研究開発(JAEA、東大、

JAXA、他)

17:55~18:15

⑥核融合施設の次世代健全性評価シミュレーションに関する研究開発(NIFS、

JAEA、京大、電中研、他)  

18:15~18:30

⑦全体質疑

18:30~18:40

(4)その他(今後のスケジュール)

 

11) 戦略プログラム分野5
戦略プログラム分野5「物質と宇宙の起源と構造」は、科研費新学術領域研究「素核宇宙融合による計算科学に基づいた重層的物質構造の解明」との合同シンポジウム「次世代スーパーコンピュータでせまる物質と宇宙の起源と構造」を、3月15日~16日に東京ステーションコンファレンス(15日)と東大理学部(16日)で開催した。プログラムは以下の通り。

3月15日 (月) 『戦略機関が目指すもの』 

場所: 東京ステーションコンファレンス605 A+B+C

10:00-10:10

開会あいさつ

文部科学省 審議官(研究振興局担当) 倉持 隆雄

10:10-10:30

「分野5『物質と宇宙の起源と構造』について」

統括責任者  青木 慎也(筑波大学)

10:30-11:00

「研究開発課題(素粒子分野)の紹介」

藏増 嘉伸(筑波大学)

11:00-11:30

「研究開発課題(原子核分野)の紹介」

大塚 孝治(東京大学)

11:30-12:00

「研究開発課題(天文・宇宙分野)の紹介」

梅村雅之(筑波大学)、松元亮治(千葉大学)

12:00-12:10

「分野5における科学技術推進体制の構築」

橋本 省二(高エネルギー加速器研究機構)

12:10-14:00

昼休憩

14:00-14:50

招待講演「計算物質科学の拠点形成を目指して ~『新物質・エネルギーの創成』戦略機関(FS)の取り組み」

常行 真司(東京大学物性研究所、分野2「新物質・エネルギーの創成」統括責任者)

14:50-15:20

コーヒーブレーク

15:20-17:30

パネル討論「次世代スーパーコンピューターとその後に来るもの」

      司会:青木 慎也(筑波大学)

      パネリスト:

         飯嶋 徹(名古屋大学)

         中務 孝(理化学研究所)

         朴 泰祐(筑波大学)

         牧野 淳一郎(国立天文台)

         横川 三津夫(理化学研究所)

17:30-17:40

 総括

平尾 公彦(理化学研究所)

18:00-

懇親会 (東京ステーションコンファレンス 402 B+C+D)

 

3月16日 (火) 『素核宇宙分野融合に向けて』 

場所: 東京大学(本郷) 理学部一号館 小柴ホール

午前I 総合講演 (9:00-10:45)

09:00-09:15

はじめに

青木慎也(筑波大)

09:15-10:00

数値一般相対論の現状と展望

柴田大(基研)

10:00-10:45

量子多体系と計算物性物理学

今田正俊(東大)

10:45-11:00

コーヒーブレーク

午前II 計画研究・公募研究報告 (11:00-12:20)

11:00-11:20

A03 クォーク力学・原子核構造に基づく爆発的天体現象と元素合成

鈴木英之(理科大)

11:20-11:40

数値相対論で探る連星中性子星の合体とショートガンマ線バースト

関口 雄一郎 (国立天文台)

11:40-12:00

ガンマ線バースト・極超新星に於ける爆発的元素合成

長滝 重博(基研)

12:00-12:20

超新星爆発後期の原始中性子星進化におけるQCD相転移の役割

安武 伸俊 (国立天文台)

12:20-13:30

昼休憩

午後I 計画研究・公募研究報告 (13:30-15:10)

13:30-13:50

A01 量子色力学にもとづく真空構造とクォーク力学

大野木哲也(阪大)

13:50-14:10

格子電弱統一模型の数値的応用

菊川 芳夫(東大)

14:10-14:30

格子QCDによるπK間相互作用の研究

佐々木 潔(東工大)

14:30-14:50

チャーモニウム原子核の可能性を探る

佐々木 勝一(東大)

14:50-15:10

核力と超弦理論

橋本 幸士(理研)

15:10-15:30

コーヒーブレーク

午後II 計画研究・公募研究報告 (15:30-17:10)

15:30-15:50

A02 クォーク力学に基づく原子核構造

初田哲男(東大)

15:50-16:10

軽い原子核における芯のないモンテカルロ殻模型による第一原理計算

阿部 喬(東大)

16:10-16:30

連続領域での光・ニュートリノ核応答: 元素合成素過程への核子多体論アプローチ

松尾 正之(新潟大)

16:30-16:50

A04 分野横断アルゴリズムと計算機シミュレーション

松古栄夫(KEK)

16:50-17:10

高次補正計算の専用化のための研究

石川 正(KEK)

午後III 総合討論 (17:10-17:40)

17:10-17:40

総合討論 

 

 
   

筆者はどちらにも参加していないようである。16日は、後に述べるJST「シミュレーション技術の革新と実用化基盤の構築」(CRESTプログラム、さきがけプログラムの混合型領域)の最終領域評価と重なった。

また、分野5の作業部会メンバーを、佐藤勝彦、川合光、相原博昭、坂田文彦、海老沢研、岡真、延與 秀人の7人にお願いした。

12) 戦略プログラム全体会議(2/24, 5/26)
2月24日には、5つのFS実施機関と、計算科学研究機構の代表者が集まる「第1回戦略プログラム全体会議」が文部科学省内の会議室で開かれた。この会合においてFS実施機関からは、「実施計画の作成のため、戦略機関(分野)に割り当てられる次世代スパコンの計算資源量について目安を示して欲しい」との意向が示された。これに対し文部科学省からは、「各戦略機関に割り当てる計算資源量(CPUと時間の積で表示)の目安はとしてはどうかとの線が出された。筆者は、「基本的に賛成であるが、これは既得権ではなく、今後の評価等をふまえて改めて決定されることを明記した方がいいと」述べた。

この会議において、4月9日までに「実績報告書」(事務的内容)を、5月28日までに「成果報告書」を提出することが求められた。成果報告書では、「FS実施内容(成果)」として、平成22年度~27年度における実施計画を、戦略委員会や文部科学省からの留意事項への対応を含めて、分かりやすく記載するよう求められた。

2010年5月26日に第17回となる次世代スーパーコンピュータ戦略委員会が文部科学省内で開催された(当初予定は24日)。メンバーは変わっていない。しかし、これも戦略委員会ではなく「打ち合わせ会」とされ、議事録等は文部科学省のwebには残っていない。この会議では、

(a) 戦略プログラムFS (Feasibility Study)の評価方式について
(b) 今後のスケジュールについて
(c) 補助金ついて
(d) HPCIコンソーシアムのグランドデザインについて

等の議論を行った。

13) 戦略プログラムFS評価(6/23, 6/30、7/5)
FSの成果報告書が5月28日に提出され、評価ヒアリングは6月23日(分野1~4)と6月30日(分野5)に行われた。分野1については、7月5日に再ヒアリングが行われた。戦略プログラムは、「革新的なブレークスルーをもたらす研究成果」と「分野中核拠点としての機能の整備」の2つを狙っているが、研究者は前者に傾斜する傾向がある。しかし、「良い成果」が出る程度の課題は、科研費やJSTの研究費でも実現可能であり、次世代スーパーコンピュータの一般利用でも可能である。これまでの個別の取り組みで行われてきた研究の単なる延長ではなく、戦略プログラムを契機に融合・発展したような課題となることが望ましい。また、後者においても、研究支援機能が十分考慮されていないとの指摘があった。

評価の結果が7月16日付で通知された。5分野ともFS実施機関の戦略機関としての適格性を認めたものの、今後の実施計画見直しの必要性を強く指示した。7月28日に「次世代スーパーコンピュータ戦略プログラム」の戦略機関を正式に決定した。

その後も、計算科学推進体制をどう構築するかについて議論が進められた。当初の予定では、戦略分野の支援要員を神戸の計算科学研究機構に集結させて分野間の連携を推進するという構想であったが、予算の削減により十分実現しなかった。

14) HPCI戦略プログラム推進委員会発足(12/22)
2010年12月22日に「HPCI戦略プログラム推進委員会」を、研究振興局長の私的諮問機関として設置した。これは、従来の戦略委員会が次世代スーパーコンピュータに関する施策全般を統括するものであったのと異なり、5分野の戦略機関から提出された実施計画を審議し、進捗状況を把握するためのものである。また、計算資源配分、予算配分なども行う。メンバーはプログラムマネージャ(PM)1名と、5分野からの分野マネージャ(FM)各1名、および理化学研究所計算科学研究機構長の合計7名からなる。任期は2016年9月30日までとなっている。

委員は以下の通り。

○プログラムマネージャ

土居 範久

中央大学研究開発機構教授

○分野マネージャ

(分野1)中村 春木

大阪大学蛋白質研究所附属プロテオミクス総合研究センター長

(分野2)寺倉 清之

北陸先端科学技術大学院大学特別招聘教授

(分野3)矢川 元基

東洋大学計算力学研究センター長

(分野4)小林 敏雄

財団法人日本自動車研究所長

(分野5)小柳 義夫

工学院大学情報学部長

○計算科学研究機構長

平尾 公彦

理化学研究所計算科学研究機構長

 

各分野は、それぞれ作業部会を設置し、助言を行うことになった。筆者は分野5の作業部会のメンバーを定め、2011年の初めから何度か部会を開いた。各分野担当委員がPO (Program Officer)、土居マネージャーがPD (Program Director)ということになった。

第1回のHPCI戦略プログラム推進委員会は暮れも押し詰まった2010年12月28日に開催された。各分野マネージャが、担当分野の取り組みの状況および今後の計画について発表した。

15) HPCIフォーラム(3/5, 3/12)
文部科学省は、2010年2月17日、以下の発表を行った。

事業仕分けの指摘等を踏まえ、次世代スーパーコンピュータ計画を開発者視点から利用者視点の施策に転換し、革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラを構築する施策としました。今般、この取組方針や必要性などを一般の方々にわかりやすく解説し、理解を深めていただくことを目的として、本フォーラムを開催することとしました。

 

3月5日に文部科学省第二講堂(旧文部省庁舎6階)において、「革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ(HPCI)フォーラム」が開催された。プログラムは以下のとおり。

13:00-13:05

開会挨拶

 

13:05-13:25

イントロダクション

吉川 弘之

13:25-13:45

政策講演

 

13:45-14:10

基調講演[1]「スパコンの発展と計算科学のフロンティア」

岩崎 洋一

14:10-14:35

基調講演[2]「気象・気候変動予測」

住 明正

14:35-15:00

基調講演[3]「バイオインフォマティクス」

秋山 泰

15:10-16:40

パネルディスカッション

○モデレータ

滝 順一(日本経済新聞社論説委員 兼 科学技術部編集委員)

○研究機関メンバー

宇川 彰(筑波大学副学長)

渡邉國彦(海洋研究開発機構地球シミュレータセンター長)

平尾公彦(理化学研究所特任顧問)

小林広明(東北大学サイバーサイエンスセンター長)

○民間メンバー

西島和三(東北大学未来科学技術共同研究センター客員教授、持田製薬医薬開発本部専任主事)

伊藤 聡(東芝研究開発センター研究主幹)

16:40-16:45

全体統括

 

16:45

閉会

 

 

また、3月8日~12日に東京大学本郷キャンパスで開かれた、情報処理学会創立50周年記念全国大会のポストイベント(12日)として、文部科学省および理化学研究所の共催で、「スパコンフォーラム」が開催された。題して、「「計算科学技術と次世代スーパーコンピューティング基盤」~革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラの構築~」。基調講演に立花隆、招待講演にRick Stevens (ANL)とThomas Lippert (RZJ)を招き、豪華なフォーラムであった。プログラムは以下のとおり。

9:30~9:35

主催者挨拶

喜連川 優

9:35~9:50

政策講演:(仮題)革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラの構築に向けて

文部科学省

9:50~10:40

基調講演:スパコンを活用した計算科学技術の意義について

立花 隆

10:50~11:30

招待講演(1):The U.S. approach to enabling Exascale Science and Engineering

Rick Stevens

11:30~12:10

招待講演(2):欧州のハイエンドスーパーコンピューティングインフラについて

Thomas Lippert

13:10~13:50

次世代スパコン紹介(1):次世代スパコン開発の現状

横川 三津夫

13:50~14:10

次世代スパコン紹介(2):次世代スパコンのプロセッサSPARC64(TM) VIIIfx

井上 愛一郎

14:10~14:30

次世代スパコン紹介(3):次世代スーパーコンピュータでの超並列プログラミング環境

堀田 耕一郎

14:30~14:50

次世代スパコン紹介(4):次世代スパコンの高速化手法

南 一生

14:50~15:10

次世代スパコン紹介(5):e-サイエンス・プロジェクトと高生産・高性能並列プログラミング言語XcalableMP

佐藤 三久

15:20~16:00

 聴衆も含めたディスカッション

 

 

次回は、理化学研究所計算科学研究機構(AICS)の設立、HPCIコンソーシアムの設立など。次世代スーパーコンピュータ戦略委員会に代わって、国として必要な事項等を検討するため、HPCI計画推進委員会が構成され、HPCの舵取りを行うこととなった。

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