ExxonMobilとNCSA、クレイで油層シミュレーションを70万プロセッサ超にスケール
Doug Black

ExxonMobilの地球科学者は、複雑な石油・ガスの油層シミュレーションモデルを実行するために、717,000台のプロセッサ(22,000台の32プロセッサーコンピューター相当)を活用し、石油・ガス探査における飛躍的な発展を成し遂げたと報告している。
ExxonMobilによると、これはエネルギー探査のHPCにおいて使用されていたこれまでのプロセッ サー数の4倍以上である。これらの仕事はイリノイ大学シャンペーン・アーバナ校のNCSA(National Center for Supercomputing Applications)とNSCAに設置されているCray XE6 「Blue Watersシステム」によって実現された。
ExxonMobil Upstream Research Companyの油層機能マネージャーJohn D. Kuzan氏は、HPCwireの姉妹誌EnterpriseTechに次の様に語った。「油層シミュレーションはこれまで数千プロセッサーを越えてスケールアップする事は難しいとされていました。その時のスケールアップとは単純な問題で約50%の効率アップで良かったとしてもです。700,000以上にスケールアップできることは注目に値します。このことは、日々のシミュレーションにおいて数千のプロセッサを利用して効率的に実行できるという自信を与えてくれます。会社としては多数のシミュレーションが同時に実行されているのを知っていますから。」
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(出典:NCSA) | |
ExxonMobilの地球科学者とエンジニア達は、油層の構造と性質をより効率的に予測することにより、より良い、より多くの掘削の決定を行うことを目的としてスケールアップの努力は行っている。同社によると、石油・ガス業界の標準的な油層シミュレーションより数千倍も速くデータが得られ、利用されたプロセッサ数もエネルギー業界でこれまで報告された中でも最大のものだった。
ExxonMobilの科学者は、2008年以来様々なプロジェクトでNCSAと協力してきた。2015年からは、50万台を超えるプロセッサーのスケーリングを可能にする「50万台の課題」に取り組み始めた。NCSAのBlue Watersシステムは、世界で最も高速なスーパーコンピュータのひとつであり、科学者やエンジニアは、さまざまな工学的および科学的問題でそのシ ステムを使用している。数十万の計算コアを使用して、1秒あたり1.3京回を超える高速計算を実現し、1.5PB以上のメモリ、25PBのディスクストレージ、500PBのテープストレージを備えている。
Blue Watersの数十万個のプロセッサーを同時に使用する油層シミュレーションのベンチマークでは、数百万〜十億セルのモデルが使用された。このプロジェクトでは、入力/出力から数十万のプロセッサにわたる通信まで、油層シミュレータのすべての側面での最適化が必要だった。
「Blue Watersの『すべて』を使用する必要があったため、NCSAとのパートナーシップは重要でした。」とKuzan氏は語った。「マシンの能力をフルに活用しようとすると、運用管理が課題となります。たとえそれが1回の実行がわずか数分のジョブであっても他プロジェクトがジョブが走行すると、我々のマシンが無くなることを意味します。 NCSAはこれに対応するために、他のユーザーに混乱を与えないように非常に努力された。」
このシミュレーションは、まだ命名されていないが、「統合された油層モデリングとシミュレーション・プラットフォーム」と呼ばれているとKuzan氏が述べた、ExxonMobil独自のアプリケーションで実行された。
油層シミュレーション研究は、財務および環境コストを最小限に抑えるために、井戸の配置、施設の設計、運用戦略の策定などの決定を導くために使用される。油層内の油、水、天然ガスの流れに対して複雑なプロセスを正確にモデル化するために、シミュレーションソフトウェアは多数の複雑な方程式を解く必要がある。石油およびガス産業では、油層シミュレーションに時間がかかる事が油層管理において大きな障害となっている。
NCSAのディレクター代理であるBill Gropp氏は次のように述べている。「NCSAはペタスケール・システムのBlue Watersを運営し、オープン・サイエンスのコミュニティに大きな利益をもたらすとともに、産業界における超並列計算の障害を打ち破るサポートを行っています。」