Jysoo Lee、韓国のスーパーコンピューティング計画を評価する
Steve Conway

韓国は2017年までにスーパーコンピューティングにおける上位7か国に入る計画で、近頃KISTI(科学技術情報研究院)内に発足した国立スーパーコンピューティング・ネットワーキング研究所(NISN)の所長であるJysoo Lee博士はこの目標を進める重要人物の一人だ。Lee博士はまた、韓国の科学技術大学のグリッドおよびスーパーコンピューティング・プログラムのチーフ教授としても活躍している。このQ&Aの中では、彼が取り組む韓国初の国家スーパーコンピューティング計画の確立と遂行の進捗状況について評価している。
HPCwire:国家スーパーコンピューティング・法成立以前の韓国におけるHPCについてお話しください。何故この法律が必要だったのでしょうか?
Lee:1988年に韓国は最初のスーパーコンピュータを導入しましたが、そのシステムは世界の先進国mのものからそんなに離れてはいませんでした。現在の韓国におけるHPCの採用レベルを先進国のものと比べると、そこには広く明らかなギャップがあるのです。例えば、2009年のTOP500リストには韓国のシステムはありませんでした。この出来事が目覚ましとなったのです。HPCが国の競争力を高めるための重要なツールであることは誰でも知っていますし、韓国が良い仕事をしていかなったのは明らかなのです。韓国にスーパーコンピュータが何台あるのか自体は問題ではなく、韓国がそれを国家の利益のためにどのように使っているのかが重要なのです。
HPCwire:法律への支援を集めるためにどのようはプロセスをとったのですか?
Lee: アプリケーション、インフラストラクチャ、および最大の効果のための人的資源を含んだバランスの取れたエコシステムを持つことがとても重要です。例えば、利用する少数の専門家しかいないのに、何台もスーパーコンピュータを持つことは賢明ではありません。その点では、この取り組みのリーダーとして、私は鍵となるコミュニティと一緒に働き、彼らの声を代表しようと努力しました。例えば、インフラストラクチャの意見は主に韓国スーパーコンピューティングセンター連合から収集し、韓国計算科学・エンジニアリング学会はアプリケーションに関する同様の役割を演じました。韓国の国会の人々はこれらコミュニティからの声を認識していたと思います。
HPCwire:いつ国家スーパーコンピューティング法は可決されたのでしょうか?
Lee:この法律は2009年9月に韓国の通常国会に提案されました。それからいくつかの委員会、小委員会および公聴会を経て、2011年4月の通常国会で可決しました。2011年6月に制定され、施行令や規制は年末までに確立されました。
HPCwire:この法律の概要を教えて頂けますか?
Lee:目標はスーパーコンピューティングを効率的に使うことによって、国民の生活品質の向上と国家の経済発展をすることです。この目標を達成するための鍵となるアクションは、韓国のスーパーコンピューティング・エコシステムの国家的計画を制定して施行することです。それは鍵となる問題に関する決定を下す国家スーパーコンピューティング委員会です。この委員会の委員長は科学ICT将来計画省大臣で、国防省、貿易産業エネルギー省などの9つの省の高官がメンバーとなっています。また、アカデミアおよび民間、公共部門のHPC専門家も何人か含まれています。
HPCwire:この法律には韓国における国家スーパーコンピューティングの計画の確立と実行が必要とおっしゃいました。この計画の概要を教えて頂けますか?
Lee:2013年から2017年における5ヵ年のマスタープランを作るのに2012年の殆どを費やしました。その目標は韓国が2017年までにスーパーコンピューティングにおける上位7か国に入ることです。計画では3つのキー領域にフォーカスします。アプリケーション、インフラストラクチャおよび技術ですこれらはさらに10のプログラムに分類されています。主な重点は、システムからソリューションまでの全体のワークフローにおけるすべての主要コンポーネントに対処するバランスの取れたエコシステムを構築することです。また、年毎の実施計画が確立れており2013年から実施されています。
HPCwire:この法律のひとつの結果はNISNの設立でした。これは何故重要で、どのようにできたのですか?
Lee:国家計画を遂行する全てのプロセスを通して、国家スーパーコンピューティング委員会に多くの手助けが必要なのは明らか、まさにこれが国家スーパーコンピューティングセンターが演じる役割なのです。実際に、その使命や機能はこの法律の中に明確に記述されています。政府は、KISTI、科学技術情報研究院にを国家センターの役割を想定することを指示し、計画を提案するように依頼してきました。KISTIはNISN、国立スーパーコンピューティング・ネットワーキング研究所を設立することで対応しました。NISNは25年以上国に奉仕してきたKISTIスーパーコンピューティング・センターをベースとしています。NISNは2013年に正式に運用を開始し、私は創立所長という栄誉に預かりました。
HPCwire:他に最近始まった新しいプロジェクトはありますか?
Lee:この数年間で始まったプロジェクトがいくつかありますが、規模的には小さいものです。マスタープランのプログラムに関する主要なプロジェクトを始めるには、詳細計画のような追加の作業が必要で、プロジェクトを開始するまでに通常数年掛かります。現在、3つの主要プロジェクトの詳細計画が完成しました。最初のものは国家スーパーコンピューティング基盤イニシアティブでXSEDEやPRACEに類似しています。2番目は国家スーパーコンピューティング教育およびトレーニング・フレームワークです。最後は「SuperKorea2020」で、PRACEのTier-0システムのような国家のリーダーシップとなるコンピューティング・システムの調達と韓国固有のスーパーコンピュータの開発を含んだ計画です。また、来年の夏までに完成予定のNISNの新データセンターの建設が進行中です。
HPCwire:世界では法律は通過しても資金は別途調達しなくてはならないことが多いです。韓国の状況はいかがですか?
Lee:韓国でも同じです。政府のマスタープランにプロジェクトが含まれている場合には、確かに簡単に始めることができますが、それは資金を保証するものではありません。予算表はマスタープランに含まれていますが、単に参照としてしか利用されません。前にも申し上げましたように、私たちのような大規模プロジェクトの資金は、さらなる努力が必要なのです。
HPCwire:法律が適切に資金供給されない場合、韓国のリスクは何でしょうか?
Lee:スーパーコンピューティングの上位7か国に入ると言う韓国のマスタープランの目標は非常に野心的であり、2017年までに達成するには失敗に対する猶予はありません。確かに非常に難しいですが、タイムリーな資金提供が無くても目標を達成するのは不可能ではありません。韓国政府および韓国のスーパーコンピューティング・コミュニティは頑張っていますが、進捗は比較的遅いです。私はこの目標が達成できることを信じていますが、手元にはあまり時間がないことも明らかです。