世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


9月 20, 2016

HPCの歩み50年(第96回)-2003年(b)-

小柳 義夫 (高度情報科学技術研究機構)
fujitsu_primepower_hpc2500

日本の学界ではグリッド関係の動きが目立つ。“Grid Symposium in Kansai 2003”や“Asia Grid Symposium” 「高エネルギー物理データグリット研究会」「つくばWANシンポジウム」など。富士通はPRIMEPOWER HPC2500を、日立はSR11000を発売した。ルネサス社が発足し、エルピーダ社が日本で唯一のDRAMメーカとなったが今後どうなるのか?

日本の学界の動き

1) HPCS 2003
第2回に当たるHPCS2003(2003年ハイパフォーマンスコンピューティングと計算科学シンポジウム)が、1月20日(月)~21日(火)に、東京台場の日本科学未来館 みらいCANホールで開催された。主催は情報処理学会HPC研究会。招待講演としては奥田洋司(東京大学)「GeoFEM開発の経験から」と、Charlie Catlett(ANL)「TeraGrid: A Case Study Customer for Global Grid Forum」があった。Catlett氏はGGFのChairでもある。実行委員長は関口智嗣(産総研)、副実行委員長は佐藤三久(筑波大)、プログラム委員長は福井義成(理研)、副プログラム委員長は須田礼仁(名大)であった。筆者は2003年~2008年のHPCSアドバイザリ委員を務めた。計算科学(computational sciences)と計算機科学(computer science)の交流を目指すシンポジウムなので、論文募集に際して以下のような注意を記した。

  • 「本シンポジウムは「高性能計算」をキーワードの要と位置付け,計算科学と応用分野との間でのニーズ・シーズの情報交換や応用分野間での計算機利用技術の情報交換などを目的としております.論文を記述する際には以下の各点にご注意下さい.
  • 応用分野での成果に関する論文では,実装手法や評価条件(ハードウェア・ソフトウェア)について明確に記述して下さい.
  • 計算機科学に関する論文では,アプリケーションへの適用可能性や有用性について明確にして下さい.」

2) Hokke 2003
Hokke 2003(第10回「ハイパフォーマンスコンピューティングとアーキテクチャの評価」 に関する北海道ワークショップ)は、北海道大学キャンパスの北隣にある科学技術振興事業団研究成果活用プラザ北海道「イノベーションプラザ北海道」セミナー室を会場として、2003年3月10日(月)~12日(水)に開催された。この会場は筆者が見つけてきたもので、タダの上設備はよかったが収容人員がイスを足しても120人で不足であった。懇親会は、中島公園のキリンビール園。

これまでのHokkeではHPC研究会とARC研究会の合同発表会という形を取っていたが、発表申し込みが予想外に多く、部屋も狭いので、開催期間を1日延長し、両研究会の連続開催という形を取った。すなわち、3月10日9:00から3月11日13:00は第144回計算機アーキテクチャ研究会(発表27件)、3月11日(火)14:00から12日(水)18:25は第93回ハイパフォーマンスコンピューティング研究会(発表29件)となった。この間、札幌では最高気温が零下の日もあり寒かった。

3) SACSIS 2003
これまでのJSPP(1989年~2002年)に代わって2003年から新しいシンポジウム SACSIS (Symposium on Advanced Computing Systems and Infrastructures) が開催された。第1回のSACSIS 2003は2003年5月28日(水)から30日(金)まで、国立情報研と同じビルの、学術総合センター会議場で開催された。主催は、情報処理学会からは計算機アーキテクチャ研究会、システムソフトウェアとオペレーティングシステム研究会 、ハイパフォーマンスコンピューティング研究会 、プログラミング研究会 、アルゴリズム研究会、電子情報通信学会からはコンピュータシステム研究専門委員会とデータ工学研究専門委員会、協賛は電子情報通信学会のディペンダブルコンピューティング研究専門委員会であった。組織委員長は中島浩(豊橋技科大)、副委員長は木村 康則(富士通研)、総務委員長は竹房あつ子(お茶の水)、プログラム委員長は横川三津夫(産総研)であった。

基調講演は、萩谷 昌巳(東大)「分子コンピューティング─計算機科学者から見たナノテクノロジーと分子エレクトロニクス─」、招待講演はTim Kindberg (HP Lab.)「The next 700 billion smart physical objects」であった。チュートリアルは高田 広章(名大)「組込みシステム開発の現状と課題」と丸山 宏(日本IBM)「XMLとWebサービスにおけるセキュリティの最新動向」であった。口頭発表42件と、ポスター発表29件があった。ポスター発表のうちの5件はデモンストレーション付きで発表された。

4) SWoPP2003
SWoPP松江2003(2003年並列/分散/協調処理に関する『松江』サマー・ワークショップ)は、2003年8月4日(月)から6日(水)まで松江テルサを会場に開催された。主催は、電子情報通信学会のコンピュータシステム研究会,ディペンダブルコンピューティング研究会、情報処理学会の計算機アーキテクチャ研究会、システムソフトウェアとオペレーティングシステム研究会、ハイパフォーマンスコンピューティング研究会、プログラミング研究会、システム評価研究会である。初日8月4日の前日には、松江の夏のイベント『水郷祭』の一環として、宍道湖上で6,000発の花火が打ち上げられ、38万人の人出で賑わった。船からの移動水中花火や、200本の手筒花火など見事であった。

5) コンピュータシステムシンポジウム
情報処理学会システムソフトウェアとオペレーティングシステム研究会主催の「第15回コンピュータシステムシンポジウム」が、筑波国際会議場で12月11日~12日に開催された。基調講演は「次世代ITインフラストラクチャーとオートノミックコンピューティング」(岩野和生、日本アイ・ビー・エム)、招待講演は「VMwareの仮想化技術とユーティリティ・コンピューティング」(Lance Berc, VMware Inc.)であった。

6) 数値解析シンポジウム
第32回の数値解析シンポジウムは5月21日~23日に箱根ホテル小涌園で開催された。担当は東京理科大学矢部研究室で、参加者は107名。

7) 数理解析研究所
京都大学では1969年から毎年数値解析関係の研究集会を行っている。2003年は12月8日~10日に「数値解析と新しい情報技術」という課題で開催された。代表者は筆者、キーパーソンは須田、西田、佐藤(東大)。講演内容は講究録:No. 1362に収録されている。

8) 大阪大学バイオグリッド・プロジェクト
2002年、新世紀重点研究創生プラン(RR2002)の「eサイエンス」実現プロジェクトの一環として、下條真司(大阪大学サイバーメディアセンター)を中心にバイオインフォマティックス向けのグリッドを構築するプロジェクトが採択されたことはすでに述べた。「バイオグリッド」と命名した。2003年3月3日には、東京台場の日本科学未来館でバイオグリッドシンポジウムを開催した。6月頃外部助言委員会を作ることになり、筆者も委員を委嘱された。他の構成メンバーは明野吉成(研究振興局情報課課長)、松原謙一(大阪大学名誉教授)、郷信広(日本原子力研究所)、牛島和夫((財)九州システム情報技術研究所)、西川 伸一 (理化学研究所)、清水富尚(大日本製薬相談役)、尾崎智行(元松下ソフトリサーチ社長)であった。第1回が12月1日午後に千里ライフサイエンスセンター8階で開催された。

12月8日には、同プロジェクトの主催で、千里ライフサイエンスセンター5階において「バイオグリッドシンポジウムin関西BioGrid2003 」が、翌12月9日には文部科学省振興調整費「アジアグリッドイニシアチブ」の主催でアジアグリッドシンポジウムが連続で開催された。

2004年から特定非営利法人「バイオグリッドセンター関西」となった。

9) Gfarm
産業技術総合研究所の建部修見らが開発した広域ファイルシステムGfarm version 1.0 b1がオープンソフトウェアとして4月26日公開された。PCクラスタのローカルディスクを利用して広域ファイルシステムを構築し,グリッドにおける大規模データ処理環境を提供する。Gfarmシステムは,耐故障性向上,負荷分散のためにファイル複製をサポートし、さらに,長距離高速ファイル転送をサポートしている。2002年の SC2002 国際会議において米国から日本へ,それぞれ 4ノードを利用して,理論最大性能 893 Mbps のところ 741 Mbps のファイル転送性能(当時世界最高)を達成した.

10) 高エネルギー物理学研究所
高エネルギー物理学研究所では、2003年3月10日~11日に「高エネルギー物理データグリット研究会」を開催した。CERNなどの例からも分かるように、高エネルギー物理学はグリッドのheavy userである。Hokke 2003と重なっていたが、松岡聡(東工大)、建部修見(産総研)らも長時間の発表(講義)を行った。

11) つくばWANシンポジウム
3月13日、エポカルつつくばにおいて「第3回つくばWANシンポジウム」が開催された。

12) 応用離散数学シンポジウム
東大情報理工学系研究科では、2002年に採択された21世紀COEプログラム「情報科学技術戦略コア」では、2003年1月21日~24日に東大山上会館において、 「応用離散数学シンポジウム — ロバスト最適化に向けて」を開催した。

2月28日~3月2日には、IPC生産性国際交流センター(神奈川県葉山町湘南国際村)において、国際シンポジウムWRSC2003: Workshop on Robust Software Constructionを開催した。

13) 河川情報シンポジウム
何の縁か、財団法人河川情報センターから12月5日の河川情報シンポジウムでグリッドについて講演して欲しいと頼まれ「グリッドのめざすもの」と題して講演した。センサグリッドが洪水予測に使えるのではないか、などと指摘した。

14) アドバンスト並列化コンパイラ技術プロジェクト
笠原博徳早稲田大学教授は、2000年9月から行っていたアドバンスト並列化コンパイラ(APC)技術プロジェクトを2003年3月に終了した。これは官民共同研究ミレニアムプロジェクトIT21の一部として、新エネルギー・産業技術総合機構(NEDO)からの委託により、財団法人日本情報処理開発協会(JIPDEC)がアドバンスト並列化コンパイラ技術研究体を組織して進めてきたものである。3月20日に早稲田大学理工学部で終了シンポジウムが開催された。

15) 科学技術振興調整費「新興分野人材養成」
讀賣新聞2003年5月5日号によると、パソコン720台を司令塔無しで連携させ、高度な処理をさせる実験に、東大の大学院生が成功したとのことである。これは、2001年に始まった科学技術振興調整費「新興分野人材養成」の中で東大情報理工学系研究科が採択された「戦略ソフトウェア創造」人材養成プログラムの一環である。実験は、学生のアイデアを実用化まで応援しようという、東大の教育事業の一環である。研究科から学生・院生に貸与するPCを、貸与前に集めて実験したようである。

2003年の「新興分野人材養成」では12件採択された。この中に「セキュアシステム設計技術者の育成」(工学院大学)があった。工学院大学はこれまで産業界とコンソーシアムを作り、インターネットセキュリティの社会人教育を企業とともに推進してきていた。前年まで審査委員長であった筆者が、ぜひこのプロジェクトに応募するよう薦めたものである。人材養成の振興調整費において、単科の私立大学としてははじめてであった。筆者はアドバイザリボードの座長を依頼された。

16) Tron
4月15日21:15からのNHK番組でTronの坂村健氏が取り上げられた。地球シミュレータ番組は教育テレビであったが、これは総合テレビのProject-Xであった。坂村氏がアメリカの圧力をはねのけてTronを組み込みOSとして再興した英雄として描かれていた。

17) IBMメインフレーム互換機
「情報処理」の2003年4月号に掲載された『プラグコンパティブル・メインフレームの盛衰(2)』(高橋茂)には、例のIBM産業スパイ事件(1982年6月22日)が触れられていた。日立は悪辣なおとりにひっかった被害者だという論調であった。ちょっとビックリしたのは、日立を裏切ってIBM社に通報したPalyn社の社名は、社長のPaleyと副社長のFlynnの名前を組み合わせたものだということである。あの「Flynnの分類」のMichael Flynn教授であった。

18) 『磁力と重力の発見』
大学の研究室の先輩である山本義隆氏が科学史に関する3巻にわたる大著『磁力と重力の発見』をみすず書房から5月に出版し、パピルス賞と毎日出版文化賞の両方を受賞した。11日15日、研究室関係者が「つきじ植村」で受賞記念のパーティーを開いた。万有引力の法則というと今なら小学生でも知っているが、離れた物体の間に力が働くなんて「魔術」だ、というのがニュートン当時の常識であった。ニュートンが、当時唯一知られていた遠隔力である磁力とのアナロジーから万有引力の概念を構築する過程を、原典に即して記述している。

19) 東京工業大学
HPCwireの11月14日号によると、東工大の松岡研究室はVoltaire社のInfiniBandを用いたPCクラスタPresto IIIを構築した。日本では初めて。

日本の企業の動き

1) 富士通
富士通は10月16日、京都大学の学術情報メディアセンターにスーパーコンピュータシステムを納入すると発表した。同システムは、ベクトルコンピュータVPP800の後継で、計算ノードとして対称型マルチプロセッサ(SMP)構成で128 CPU(1.56 GHz)を搭載したFUJITSU PRIMEPOWER HPC2500(2002年発表)を11台と、I/Oノードとして64 CPUを搭載した同装置1台を高速接続する。スカラSMP型のスーパーコンピュータが国立大学に納入されるのは初めて。Linpack測定ではI/Oノードを含めすべてを計算ノードとして用い、4.552 TFlopsを記録した。初登場の2004年6月のTop500では24位。

また、京都大学宙空電波科学研究センター(2004年4月からは生存圏研究所)もPRIMEPOWERを2004年1月から導入予定。

2) 日立
日立は、SR8000の後継機として、Hitachi SR110000を開発し、5月28日から販売開始することを発表した。CPUとしてはIBM社のPOWERシリーズプロセッサを採用し、SR8000のように日立でチップを独自開発したものではない。したがってCPU内の疑似ベクトル機構はない。しかし、SR8000と同様に、日立が独自に開発したプロセッサ間高速同期機構を組み込んでおり、ショートベクトル機能を改善している。自動並列化技術機能を含むコンパイラも自主開発である。OSはIBM社のAIXである。

ハードウェアプリフェッチは、ハードウェアが自動的に主記憶データのアクセスパターンを検出し、あらかじめキャッシュにデータを取り込む。ソフトウェアプリフェッチは、コンパイル時に生成したプリフェッチ命令により実効的なメモリレイテンシを削減する。CP-PACSからの流れをたどると、SR8000では、連続アクセスはキャッシュプリフェッチで対応し、ストライドアクセスは疑似ベクトルが働くようになっていたが、今度はIBM製のCPUそのものを使っているので、何処までベクトル性能が出るかが鍵であろう。

1ノードに16コア搭載するSMPであり、ノード間は3段(までの)クロスバで結合している。1筐体には最大8ノード格納できる。プロセッサはモデルによって異なる。筆者の知るモデルは表の通り。ネットワーク速度(単方向)が3種類書かれているが、クロスバの次元数によるものと思われる。

モデル H1 J1 J2 K1
CPU (dual core) POWER4+ POWER5 POWER5+ POWER5+
クロック 1.7 GHz 1.9 GHz 2.3 GHz 2.1 GHz
ノード性能 108.8 121.6 147.2 134.4
ネットワーク 4/8/12 GB/s×2 4/8/12 GB/s×2 4/8/12 GB/s×2
発表年月 2003年5月 2004年10月 2005年11月

2006年6月のTop500からSR1100の設置状況は以下の通り。Top500ではSR11000のノードをコアと呼んでいる。

順位 設置場所 モデル・ノード数 Rmax Rpeak
45(2台) 気象庁 SR11000-K1/80 9.036 10.752
92 気象庁 SR11000-J1/50 4.993 6.080
110 北海道大学 SR11000-K1/40 4.596 5.376
235 物質・材料研究機構 SR11000-H1/56 3.319 6.093
237 分子科学研究所 SR11000-H1/50 3.296 5.440

このうち最後の2件は2004年の設置であり、当初は2桁の順位に入っていた。東大情報基盤センターに最大性能のSR11000が設置された2007年6月のTop500では以下の通り。

順位 設置場所 モデル・ノード数 Rmax Rpeak
51 東京大学 SR11000-J2/128 15.811 18.8416
103(2台) 気象庁 SR11000-K1/80 9.036 10.752
201 東北大学金材研 SR11000-K2/50 6.272 7.361
329 気象庁 SR11000-J1/50 4.993 6.080
402 北海道大学 SR11000-K1/40 4.596 5.376

北海道大学のマシンは、1年の間に110位から402位まで落ちている。K2モデルは上の表にないが、2.3 GHzのCPUと思われる。

日立は2001年からPOWERを搭載したエンタープライズサーバEP8000を発売しているが、これはIBM社のRegatta (pSeries)のOEMである。EP8000 690(p690相当)では32個まで、EP8000 670(p670相当)は16個までのPOWER4を搭載できる。2003年5月にはPOWER4+搭載のモデルを発表した。

3) 日本電気
日本電気は2003年1月、これまでのEuropean Supercomputer Systems (ESS) divisionを独立させ、NEC High Performance Computing Europe GmbHとしたと発表した。本社はドイツのDüsseldorfに置く。

HPCwireの9月26日号によると、2003年9月7日~11日に、NCARの主催するCAS2K3 WorkshopがImperial Palace Hotel(Annecy, France)で開催され、世界中から気象学者とHPCの専門家90人が参加した。アメリカからの発表はほとんどIBMのシステムによるものであったが、ヨーロッパからは大規模なNEC SX-6を持つサイトからの発表もあった。NCARのDr. Richard Loft(2001年のGordon Bell賞受賞者)は、気象シミュレーションについて、地球シミュレータとIBM p690 (POWER4)とを比較すると、マシンの価格についても、電気代についても、前者の方が2倍優れていると結論した。これは、NCARの計算はバンド幅制約であり、POWER4のようなチップでは性能が出ないからである。「コモディティチップの方が安い」というのは神話に過ぎない。

これに対し、NERSCのBill Kramerは、「超新星爆発」「加速器科学」「電磁波プラズマ相互作用」「QCD」「宇宙背景放射データ解析」などのアプリではIBMのPOWER3マシンはよい効率を出していると反論した。

記事を書いているChristopher Lazouは、日本電気が、ベクトルとともにItaniumを用いたTX7サーバを販売しており、相手に合わせて最適な組み合わせを提案できるという利点を指摘した。その一例がDKRZ(ドイツ気象計算センター)への導入である。

9月、日本電気はクロックの高速化やメモリ増強により、SX-6の価格性能比を30%改善したと発表した。、CPU当たりの性能を8 GFlopsから9 GFlopsに、ノード当たりのメモリを64 GBから128 GBに倍増させた。出荷は10月から。

4) 東芝
東芝は5月、組み込み用のMIPS-baseのRISCプロセッサTMPR4955CFG-400(32ビット) とTMPR4956CXBG-400(64ビット)を発表した。90nmテクノロジーで製造。クロックは400 MHzで消費電力は0.6 Wである。

5) 日本SGI社
日本SGI社は、11月6日「第5回日本SGI HPC Open Forum」を開催したが、パネルディスカッション 『HPC の未来を展望する』のコーディネータを頼まれた。

6) エルピーダメモリ社
エルピーダメモリ社は2003年4月1日、三菱電機よりDRAM事業を譲り受けた。エルピーダ社は1999年12月20日、日本電気と日立製作所の対等出資により「NEC日立メモリ株式会社」が設立されたのが始まりである。2001年9月28日に、統合ブランド「エルピーダ」が発表されるとともに、商号をエルピーダメモリに変更した。東芝や富士通は汎用DRAMから撤退を決めており、2003年4月からはエルピーダが日本で唯一のDRAMメーカとなった。その後リーマン危機等により経営困難に陥り、2013年、マイクロンメモリジャパンとして、世界的な半導体メーカであるマイクロン・テクノロジの子会社となった。

7) ルネサステクノロジ社
2002年3月18日には基本合意ができていたが、2003年4月、日立製作所と三菱電機のシステムLSI事業を分社・統合してルネサステクノロジ(ReNaissancE Semiconductor for Advanced Solutions)が設立された。世界第3のチップメーカになると報道された。2010年4月にはNECエレクトロニクスと合併してルネサスエレクトロニクスに商号を変更した。

8) Cell Computing(NTTデータ)
前年12月20日からNTTデータ社によって始められた日本で初めての商用グリッドの大規模実験が注目されていた。SETI@homeのように参加者がボランティアとして資源提供するのではなく、何らかの対価を受け取る前提である。今回は実験であり、Tシャツやストラップのような景品をもらえるだけであるが、将来的にはポイントや通信料金の割引などの形で対価を払い、NTTデータは仲介役としてマージンを取るというビジネスモデルである。今回のこのグリッドで動かすソフトは2つあり、遺伝子病を治療するためのBOLEROと、光コンピュータを実現するためにOPALである。この実験は3月20日までのわずか3ヶ月となっている。

9) ベストシステムズ社
5月19日の報道によると、ベストシステムズ社はスペインのGridSystems社と契約を結び、GridSystems社が開発したInnerGrid Softwareを日本国内に販売する権利をベストシステムズ社の子会社であるグリッド総合研究所(2002年3月15日設立)に与えることとなった。

10) UDDI実証実験
NTT、NTTコミュニケーションズ、富士写真フイルム、富士通など9社は2003年1月から、複数のWebサービスを組み合わせて、音楽アーティスト「喜多郎」のファン向けWebサイトの運用実験を開始した。大きな特徴は「UDDIレジストリ」を使うことで、実際のビジネスに利用することを想定して実施する本格的な実証実験は珍しい(日経コンピュータ IT pro)。

次はアメリカ政府の動き。Computenic Shockのあと、アメリカがHPCにおいてリーダーシップをとるためにいかなる政策を進めるべきかの議論が盛んに行われた。

(タイトル画像: FUJITSU PRIPOWER HPC2500 出典:富士通カタログより)

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