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世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


富士通  Cray  日本 
11月 20, 2017

HPCの歩み50年(第143回)-2007年(i)-

小柳 義夫 (神戸大学 特命教授)
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Seymour Cray Awardは、Goodyear社にいたKenneth E. Batcher氏に授与されたのでびっくりした。大昔の1ビットSIMD機であるSTARANやMPPを開発した。展示で「初めての商用量子コンピュータ」と銘打ってD-wave Systems社がデモを行い、われわれは眉につばをつけながらのぞき込んだ。

SC2007

1) 全体像
SC07: The International Conference for High Performance Computing, Networking, Storage and Analysisは、20回目の今年、カジノの街、ネヴァダ州RenoのReno-Sparks Convention Center で11月10日(土)から16日(金)まで開催された。今年は標語がなかったようである。会議名は昨年と同じで、”Analysis” を名乗っている。Renoは、第2回のSC’89 が開かれているので2回目である。筆者の報告も参照のこと。参加者は9200人、うちtechnical program登録は3737人、投稿論文の発表は54である。理化学研究所次世代スーパーコンピューティング・シンポジウム2007のポスターセッションで最優秀賞、優秀賞を受賞した3名がSC07レポータとして参加したので、彼らのレポートも参照してください。

2) 展示
今年の展示会場のブース面積合計は、132172 ft2=12300 m2=3700坪であった。企業展示が197件、研究展示が117件であった。このうち、73件は新規の参加である。

今年の珍事件は、13日(月曜日)の昼に会場が停電したことである。筆者はそのとき会場の隣の中華料理屋で食事をしていたが、突然照明が消えてしまった。程なく回復したので、店のブレーカーが飛んだとばかり思っていた。会場に戻ると大騒ぎで、照明、ネットワーク、無線LANなどが一斉に飛んでしまったとのことであった。つまり、会場で電気を使い過ぎて、会場を含む地域一帯が停電したようである。午後になって係員が各ブースを訪れ、致命的な障害がなかったか聞き回っていた。この時点では会議の本体は始まっておらず、チュートリアルや展示準備などが行われていただけであったので、被害は小規模にとどまった。

(a) アジアからの研究展示
日本からの研究展示は以下の22件である。

– Advanced Center for Computing and Communication RIKEN
– AIST
– Center for Computational Sciences, University of Tsukuba
– Doshisha University
– Ehime University and NiCT (復活)
– GRAPE Projects
– IIS – Institute of Industrial Science, University of Tokyo
– IST/CMC, Osaka University
– ITBL
– JAEA (Japan Atomic Energy Agency)
– JAXA (Japan Aerospace Exploration Agency)
– Kansai University (初参加)
– Kyushu University (復活)
– National Research Grid Initiative (NAREGI)
– [PC Cluster Consortium
– Research Organization for Information Science and Technology (RIST)
– Research Organization of Information and Systems Research (ISM)
– Saitama Institute of Technology
– Saitama University
– T2K Alliance (e-Society, the University of Tokyo)
– Tohoku University
– University of Tokyo (GRAPE-DR)

このほかアジア太平洋地区からは、オーストラリアを含め7件あった。

– Asian Technology Information Program (International)
– Institute of High Performance Computing (Singapore)
– Korea Institute of Science and Technology Information (KISTI) Supercomputing Center (Korea)
– National Center for High-Performance Computing (Taiwan)
– PSPACE, Inc. (Korea)
– Thai National Grid Center (Thailand)
– Victorian Partnership for Advanced Computing (VPAC)(Australia)

合計29件という数は、これまでの最高である。タイからは初めてだと思われる。

(b) 企業展示
企業展示で印象に残ったものは以下の通り。

(1) IBM社
Blue Gene/PやPOWER6を使ったサーバ(水冷)を展示していた。

(2) Cray社
CrayはXT5を発表した。最高20 PFlopsを実現するとのことである。今後2008年中には1 PFlops、2011年には20 PFlopsを狙う。また、XT5hの系列はh(ハイブリッド)を意味し、Opteronに加えて、XMT (multithread), XR1 (FPGA), X2 (vector)、SIO (accelerator)など他のアーキテクチャを付加する。ついに、Crayでさえベクトルプロセッサを付加プロセッサとして位置づけてしまったことは感慨深かった。

(3) Sun Microsystems社
巨大なInfiniband switchのMagnum SwitchをつかったTACC (Texas Advanced Computer Center) のRanger (peak 500 TFlops) はTop500に出てこなかった。トップを取るとすれば今回だと言われていたので残念であった。

(4) SGI
ニュー・メキシコ州のComputing Application Centerに導入したAltix ICEがTop500の3位にランクされた。来年には1 PFlopsのスパコンを提供すると豪語した。

(5) 富士通
自社製のCPUとしてSPARC系列のSPARC64 VII (quad-core)を展示していた。データバスにかなりの物量を投入し、メモリバンド幅を確保しているもよう。次世代スパコン(スカラー部分)の一歩前の製品と思われる。もう一つ、4個のBarcelona chip (Opteron) を載せたボードも展示していた。T2Kのボードであろう。ネットワークとしては、10 GbEを展示していた。

(6) 日本電気
日本電気は次期SX-9用の新しいベクトルチップを紹介していた。地球シミュレータのアップグレードに使われることになろう。これも次世代スパコン(ベクトル部分)の一歩手前の製品と思われる。[結果的には日本電気は次世代スパコンから撤退した。]

(7) 日立
BladeSymphonyを展示していた。POWER6チップを用いたSR11000の後継機を発表した。富士通と同様、quad-core Opteronを搭載した製品計画を発表した。

(8) ClearSpeed社
新しい1 TFlopsのサーバをデモするとともに、アプリの広さを強調していた。

(9) AMD社
FireStream9170を展示。これは合併したATI社の系統の技術で、当時では初の倍精度浮動小数点演算能力をもつストリームプロセッサである。メモリも2 GB積んでいる。2008年第1四半期発売とのことである。

(10) Microsoft社
マイクロソフト社は、MS Compute Server 2003の後継に当たるWindows HPC Server 2008のベータ版を発表した。

(11) D-wave Systems社
これにはびっくりした。史上初の商用量子コンピュータと自称し、28 qubitを実現したと説明していた。実物はカナダ(ブリティッシュコロンビア)の本社にあり、ネットワークでつないでいるとのことである。皆で眉に唾を付けながら展示を見ていたが、よく分からない。ニュースによると、Googleの科学者もデモに参加したとのことである。その後理解したことであるが、David Deutschが提唱した量子チューリングマシン(1985)ではなく、最適化問題に特化したコンピュータであり、この手法は量子アニーリングと呼ばれる。最適化計算にありがちな局所最小値(最大値)からトンネル効果で脱出するしかけのようである。これも後に知ったことであるが、これを最初に(1998)提唱したのは西森秀稔(東工大)で、西森氏とは日本物理学会の理事としてご一緒したことがある。

(12) Nortel社
HPCとは関係ないが、Nortel社がいわゆる100ドルPCを出展していた。これはOLPC (One Laptop per Child)プロジェクトの成果である。CNNニュースによると、この「100ドルPC」は、米マサチューセッツ工科大(MIT)の研究者らが提案したアイデア。途上国での使用を想定して手回し式の発電装置をつけ、ハードディスクの代わりにフラッシュメモリーを搭載する。OSはLinux (Fedora)。ディスプレーは、バックライトなしでも見ることができるが、その場合は白黒となる。量産は台湾のメーカー、Quanta Computer(広達電脳)に委託し、各国政府を通して子どもたちに配布する予定。先進国では倍の値段で売り、1台売る毎に、もう1台を途上国に寄付するとのことである。下記の写真はWikimediaから。

3) IEEE Awards
SC会議ではいくつかの価値ある表彰がなされる。

(1) Sidney Fernbach Award
これは、応用分野で顕著な業績を上げたものに与えられる。今年の受賞者はDavid E. Keyes (Columbia)で、表彰理由は、

For outstanding contributions to the development of scalable numerical algorithms for the solution of nonlinear partial differential equations and exceptional leadership in high-performance computation.

である。授賞式の直前に、彼とIJHPCA (International Journal for HPC Applications)誌の編集委員会で一緒だったが、なんとかれはKAUST (King Abdulah University of Science and Technology、サウジアラビア)に転職するとのことであった。

(2) Seymour Cray Award
この賞は、Seymour Crayのようなアーキテクチャ上の貢献に対して与えられる。今年の受賞者はKenneth E. Batcher (former Goodyear)であった。表彰理由は、

For fundamental theoretical and practical contributions to massively parallel computation, including parallel sorting algorithms, interconnection networks, and pioneering designs of the STARAN and MPP computers.

である。ちなみに、GoodyearのSTARAN (1972)は一種のArray Processorで、聯想メモリを持つ1ビットプロセッサを、4×256に配置したものである。GoodyearのMPP(1983)は128×128の1ビットプロセッサである。いずれもSIMDとして動作。MPPの開発は1979から行われたが、1983年にNASA Goddard Space Flight Centerに出荷され、1985年から1991まで使用された。Goddardでは、MPPの後継機としてMasParのMP-1とCray T3Dが設置された。

4) Gordon Bell賞
これもIEEEの賞であるが、Gordon Bell氏が毎年10000ドルを供出して、応用上意味のある高性能計算の成果を出したグループに与えられる。今年のFinalistsは以下の通り。日本から2件が残ったが、いずれも受賞しなかった。受賞は(c)であった。

(a) MDGRAPE-3によるX線タンパク構造解析で281TFLOPSの性能を示した理化学研究所のYousuke Ohno氏等のチーム
(b) 地球シミュレーター上で第一原理シミュレーション・コード PHASEを使い大規模半導体系を解き、14.6 TFLOPS(理論ピーク性能の59%)を達成した物質・材料研究機構のTakahisa Ohno氏等のチーム
(c)BlueGene/Lを使ってケルビン-ヘルムホルツ不安定性の最初のミクロン・スケールの計算で54.4TFLOPSを示したLawrence Livermore National Laboratory(LLNL)のJames N. Glosli氏等のチーム(受賞)
(d) LLNLのBlueGene/Lで数値気象予報の中でも高分解能なWeather Research and Forecast (WRF) モデルを計算したUniversity Consortium for Atmospheric ResearchのJohn Michalakes氏等のチーム

5) その他の賞
Best Paper, Best Student Paper, Best Poster ACM/IEEE Computer Society HPC Ph.D. Fellowship Award が発表されたが、メモが取れなかった。

6) Challenge賞

(1) Cluster Challenge
今年からできたコンテストで、学生数人と先生1人でチームを作り、SC会場の一角で48時間以内にクラスタを組み立て、LINPACKを走らせる。クラスタの材料はチーム毎にベンダから提供される。今年の参加者と優勝者は以下の通り。

(a) Stony Brook University + Dell
(b) National Tsing Hua University (Taiwan) + ASUSTek
(c) University of Colorado + Aspen Systems
(d) University of Alberta (Canada) + SGI (受賞)
(e) Indiana University + Apple
(f) Purdue University + HP

(2) Analytics Challenge
昨年あたりからできたコンテストで、解析を競う。参加者と受賞者は、

(a) Angle: Detecting Anomalies and Emergent Behavior from Distributed Data in Near Real Time (UIUC) (受賞)
(b) Cognitive Methodology-based Data Analysis System for Large-scale Data, Yoshio Suzuki, Chiaki Kino, Noriyuki Kushida, Norihiro Nakajima(JAEA)

(3) Bandwidth Challenge
通信のバンド幅を競うコンテスト。参加者と受賞者は以下の通り。

(a)iWarp-based Remote Interactive Scientific Visualization (佳作)
(b) Streaming Uncompressed 4k Video
(c) Distributed Data Processing over Wide Area Networks
(d) Phoebus
(e) A Virtual Earth TV Set via Real-time Data Transfer from a Supercomputer (Ken T. Murata, Yasuichi Kitamura, Eizen Kimura, Keiichiro Fukazawa, Ehime-NICT)
(f) Using the Data Capacitor for Remote Data Collection, Analysis, and Visualization (受賞)
(g) TeraGrid Data Movement with GPFS-WAN and Parallel NFS

(4) Storage Challenge
ディスクからの読み出しや書き込みの速度を競う.参加者と受賞者は下記の通り。

(a) ParaMEDIC: A Parallel Meta-data Environment for Distributed I/O and Computing(Large Systemで受賞)
(b) Zest: The Maximum Reliable TBytes/sec/$ for Petascale Systems (PSC)
(c) Astronomical Data Analysis with Commodity Components (LANL)(Small Systemで受賞)
(d) Grid-oriented Storage: Parallel Streaming Data Access to Accelerate Distributed Bioinformatics Data Mining

Top500などは次回に。

(画像:SC07ロゴ)

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