世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


9月 12, 2016

HPCの歩み50年(第95回)-2003年(a)-

小柳 義夫 (高度情報科学技術研究機構)

地球シミュレータ登場後1年が経ち、ISCやSCではこれに対抗してHPCを今後どう発展させるべきかについて議論された。アメリカでは「最先端コンピューティング再生タスクフォース」など日本打倒を目指す国家政策策定が進んだ。64ビットプロセッサでは、Intel社がItanium2に精力をとられている間に、AMD社はx86と上位互換の64ビットアーキテクチャを打ち出した。Intelも結局この路線に乗ることになる。

社会の動きとしては、1/18天皇が東大病院で前立腺手術、1/20横綱貴乃花引退、1/29朝青龍が横綱昇進、2/1コロンビア号、大気圏突入で空中分解、2/18北京で日本人学校に脱北者駆け込み、2/18韓国で地下鉄放火事件、3/12 WHOがSARSについて世界規模の警報、3/5三浦ロス疑惑に関し日本での無罪確定、3/20米軍英軍、イラクに侵攻、4/14ヒトゲノム解読終了、公開、4/25六本木ヒルズオープン、4/28岐阜県に白装束の集団(パナウェーブ)が現れ林道占拠、5/9小惑星探査機「はやぶさ」打ち上げ(2010/6/13地球に帰還)、5/23個人情報保護法成立、6/6有事法成立、6/22カリフォルニア州の高速鉄道BARTがサンフランシスコ国際空港に乗り入れ、7/5最後まで台湾に出されていたSARSの感染地域指定解除、7/18辻本清美逮捕、7/20九州で集中豪雨、7/26イラク特措法成立、7/26宮城県北部地震、8/14北米で大停電、9/10外務審議官宅に発火物、9/16名古屋で立てこもり男がガソリンまき放火、9/26十勝沖地震、9/26自由党が民主党に合流、10/1東海道新幹線、品川駅開業、11/20マイケル・ジャクソン逮捕、11/29イラクで日本人外交官2人殺害、12/1地上デジタルテレビ放送、東京、大阪、名古屋で試験放送開始など。

SARSに明け暮れた1年であった。シンガポールから来た知人のセミナーが大学の命令でキャンセルされるなどの騒ぎもあった。FM電波の異常受信で地震が予知できるという串田嘉男氏の研究がマスコミに取り上げられ、9月半ばにM7クラスの地震が関東南部で起きる可能性があると報道された。有馬朗人氏と上田誠也氏が9月12日八ヶ岳で検討会を招集したので、「これは本当か」と色めき立った。9月20日、房総半島南部を震源とするM5.5(深さ80キロ)の地震があったが、それだったのか??

筆者も還暦「癸未(みずのと ひつじ)」を迎え、本来ならば年度末で定年であったが2年延びた。私事ではあるが珍事件があった。「小柳義夫」(コヤナギヨシオ)教授というエイズの研究者が当時東北大学医学部におられることは知っていたが、なんと、2003年に入ってから、東大から筆者に払われるべき旅費などがすべてコヤナギ先生の方に払い込まれていた。あちらが気づいて発覚した。東大のある部局が、コヤナギ先生に旅費を払うのに、筆者オヤナギの銀行口座データベースをコヤナギ先生の口座に書き換えて払ったようである。それで、何も知らない理学部から筆者へのすべての支払がredirectionされてしまったという次第。初歩的なミスである。

日本政府の動き

1) JAXA発足
2003年(平成15年)10月1日に航空宇宙技術研究所 (NAL)、文部科学省宇宙科学研究所(ISAS)、特殊法人宇宙開発事業団(NASDA)が統合され、独立行政法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)が発足し現在に至る。旧文部省と旧科学技術庁にまたがる組織再編であった。

2) 日本学術振興会
特殊法人日本学術振興会研究事業部は、2003年9月、地下鉄半蔵門駅近くの住友不動産一番町FSビルに移転した。2013年1月に麹町事務所に再統合した。

3) IMnet
1994年に国立研究所や関連の特殊法人などにおける研究のために省庁の枠を超えた研究情報基盤の共有化のために設立されたIMnet(Inter-Ministry netwoark、省際ネットワーク)は、JSTが運営していたが、2003年3月に大学等の情報基盤を担当するSINET2 (superSINET)と統合された。

4) NAREGIプロジェクト
NAREGIは、国立情報学研究所が推進する最先端学術情報基盤(CSI:Cyber Science Infrastructure)整備の一つとして、広域分散型の最先端研究教育用大規模計算環境(サイエンスグリッド)を実現することを目的としている。 NAREGIは2003年4月から文部科学省の委託研究としてグリッドミドルウェアを研究開発するプロジェクト「超高速コンピュータ網形成プロジェクト(National Research Grid Initiative:通称NAREGI)」としてスタートし、2006年度から 2007年度までは「最先端・高性能汎用スーパーコンピュータの開発利用プロジェクトNAREGIプログラム」として推進された。2008年度にはNAREGIミドルウェアVer.1.0が公開された。

2003年7月1日、学士会館において「グリッド研究開発推進拠点(NAREGI)」の開所式,記念講演会,内覧会及び祝賀会が開催された。産学官の関係者が出席し、末松安晴国立情報学研究所所長からの式辞の後、石川文部科学省研究振興局長及び藤崎富士通(株)取締役CTOから挨拶を受け、その後、三浦謙一プロジェクトリーダーによるプロジェクトの概要説明が行われた。続いて、グリッドコンピューティング研究で著名なNASA Information Powergrid Project leaserのWilliam E. Johnston博士を迎え、今注目を集めている新技術であるグリッドコンピューティングについて記念講演が行われた。

NAREGIプロジェクトでは、研究用グリッド基盤の確立から、グリッド技術の標準化、産業界へのグリッド環境の普及、グリッド分野における人材育成などを目的とした展開を行なっていく。

岡崎国立共同研究機構 分子科学研究所では12月に日立のSR11000/M1と409台のHA8000/110Wからなるシステムを発注したが、これが「NAREGIのインフラ」として報道された。運用は2004年3月から。

文部科学省でNAREGIを推進していた古西真氏は、発足前の3月4日~6日に新宿京王プラザホテルで開催されたGGF7において、ドイツで開発されEurogridの基盤となっているUNICORE (Uniform Interfaces to Computing Resources) がNAREGIのグリッド・ミドルウェアになるであろうと述べ、ヨーロッパからは注目された。

同氏は2003年12月に何かの会合において、「次世代のスーパーコンピュータ開発の必要性に関する検討」という文書を示し、情報通信分野推進戦略(平成13年9月)においては、「スーパーコンピュータの高速化については、各分野の需要に応じて推進する」(つまり国家プロジェクトとはしない)こととされているが、地球シミュレータを越える規模のスーパーコンピュータを国家的に開発する必要はないか、と問い、もしyesならば、どの程度の規模のものを、何を目的として、どのような体制で整備するのがよいか、と問題提起している。筆者の知る限り、「京」コンピュータに向かう動きの発端であった。この直後の2004年1月5日付けで、岩崎洋一筑波大学教授は「我が国におけるスーパーコンピュータの開発の必要性について」という文書を公表した。これは2004年のところで詳しく述べる。

5) 産総研グリッド研究センター
電子ジャーナルGRIDtoday誌の2月3日号に、「あの有名な関口智嗣とのインタビュー」という記事が出た。SC2002で捕まえたものらしい。関口センター長を“visionary leader” として紹介している(「夢想的リーダー」か「先見的リーダー」か?)。センターの主要な目的として、Ninf, ApGrid, Gfarmなどについて述べるとともに、国内の他のグリッドセンターとの連携についても語っている。

2002年4月に発足した産総研グリッド研究センターは、産総研本部の評価部からの評価を受けることになり、筆者もレビューボード委員を頼まれた(他には、後藤敏(早稲田)、下條真司(大阪大)、近山隆(東大)、坪田知己(日経新聞)、姫野龍太郎(理研))。2002年8月のプレ評価に続いて、2003年12月22日の午後2時からグリッド研究センターの上野オフィス(住友不動産上野ビル8号館)で成果ヒアリング評価委員会が開催された。

おおむね高い評価がなされたが、いくつかの指摘事項があった。ビジネスグリッドへの貢献の明確化に対しては、産業界への貢献として、同センターで開発した技術およびソフトウェアのビジネス展開、およびビジネスグリッドコンピューティングプロジェクトへの参画が示され、Grid ASPなどのアウトソーシングをビジネスモデルとして設定していることを了承した。アプリケーションに対するグリッド技術の優位性の実証としては、グリッド環境に適した分子動力学シミュレーションについてのツールキットを開発したことが示され、今後適用例を増やしていくことが報告された。また、世界標準化達成への戦略として、Ninf-GやGfarmなどの普及とde facto標準化を目指していることが述べられた。

6) アジアグリッドイニシアチブ
昨年のところで述べたように、2002年の文部科学省振興調整費に応募して採択された。文部科学省から推進委員会の設置を指示され、4名の外部有識者(姫野龍太郎(理研)、小西和憲(KDD)、合田憲人(東工大)、筆者)と、課題の研究分担者(後藤滋樹(早稲田)、下條真司(大阪大)、岡村耕二(九大)、小林克志(情報通信研究機構)、関口智嗣(産総研))で設置した。日本でのGGF開催、PRAGMA開催、テストベッド整備などについて、当初の業務計画からの変更が必要になり、推進委員会として了承した。

2003年度に入って、4月9日に産総研上野オフィスで推進委員会を開催し、2002年度研究報告および2003年度研究計画について議論した。また、12月17日には第2回推進委員会を開き、2003年度上半期活動・成果報告について議論した。

7) ビジネスグリッドコンピューティングプロジェクト
報道によると、2003年度には、経済産業省が進める「ビジネスグリッドコンピューティングプロジェクト」に28億円の予算がつき、国内企業が連携してグリッドソフトウェアの世界標準化に向けた技術開発競争に加わる計画である。2003年7月15日、村岡洋一(早稲田大)を委員長に第1回推進委員会を開催した。市場創造に向けた民間各社の取り組みが活発化し、日本電気や富士通は自社の研究所やデータセンターにグリッド環境を構築し、ユーザーが自由に検証実験できるようにした。日本IBM は2003年1月から、世界共通カリキュラムを導入し、他国の実績・人材を活用して、システムデザインからコスト効果まで幅広く提案していくという。(『情報処理』2006年9月号に特集がある)

8) ITBL
日本原子力研究所関西研究所のITBL棟にスーパーコンピュータ(富士通PRIMEPOWER、128 CPU/node、4 nodes構成、ピーク1.2 TFlos)を導入したことは2001年に述べたが、Compaq製のProliantクラスタ(Pentium III×2のノードが36ノード、接続はMyrinet)も設置された。

2003年2月17日に日本科学未来館において、「第3回ITBL シンポジウム-仮想研究所の実現に向けて-」が開催された。主催は、旧科学技術庁関係の5研究所とJSTである。「ITBL計画の進捗状況」(原研 福田正大)、「ITBL基盤ソフトウェア」(原研 樋口健二)、「分散侵入検知とITBL-VPN」(理研 鶴岡信彦)、「仮想スーパーコンピュータセンタ利用環境GridLibとセキュリティ」(産総研 関口智嗣)などのほか、各応用分野からの報告があった。

3月にはITBL基盤ソフトウェアα版が完成した。

7月ごろ文部科学省の古西真氏から連絡があり、年末から年度末にかけてITBLの中間評価をするので評価委員をお願いしたいとのことであった。正式には、科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会 情報科学技術委員会 ITBL評価ワーキンググループ。主査は坂内正夫(情報研)、委員は浅野正一郎(情報研)、小池秀耀(富士総研)、古賀達蔵(通信放送機構)、菅原秀明(遺伝研)、土井正夫(名大)、中村道治(日立)、三浦謙一(富士通)と筆者、科学官として西尾章治郞(大阪大)であった。実際の評価は2004年に入ってから。

第4回ITBLシンポジウムが10月20日に日本科学未来館で開催された。

9) JSTシミュレーション技術の革新と実用化基盤の構築
昨年から始まったJSTシミュレーション技術の革新と実用化基盤の構築(CREST型とさきがけ型の混合)の第2年目の採択課題が9月19日公表された。CREST型は、「数値/数式ハイブリッド計算に基づくロバスト最適化プラットフォームの構築」(穴井宏和)、「材料の組織・特性設計総合化システムの開発」(石井清仁)、「高度放射線医療のためのシミュレーション基盤の構築」(佐々木節)、「生体骨医療を目指したマルチプロフェッショナル・シミュレータ」(高野直樹)、「グリッド技術を用いた大規模分子シミュレーションプログラムの開発」(長嶋雲平)、「医療・創薬のためのマルチスケール・マルチフィジックス心臓シミュレータの開発」(久田俊明)の6件、さきがけ型は、「DNAナノデバイス創製におけるシミュレーション技術の確立」(川野聡恭)、「量子分子動力学法に基づく化学反応対応型連成現象シミュレータの開発」(久保百司)、「水素量子シミュレーション技術の構築」(立川仁典)、「ダイナミックボンド型大規模分子動力学法の開発」(渡邉孝信)の5件であった。

10) ACT-JST
物質・材料、生命・生体、環境・安全、地球・宇宙観測という重要な科学技術分野において、1998年8月から計算科学技術を駆使した研究開発を推進してきた「計算科学技術活用型特定研究開発推進事業(ACT-JST)」は2003年3月末ですべての研究開発を終了した。2003年1月29日(水)、日本科学未来館で終了シンポジウムが開催された。

11) 科研費特定領域(C)
2001年4月に発足した科研費特定領域(C)「ITの深化を拓く情報学研究」は、1月22日に国立情報学研究所で成果報告会を行った。SDSC所長のFran Berman女史に招待講演をしていただいた。

12) 総合科学技術会議が「基礎研究を軽視」
日本物理学会、日本天文学会、日本地質学会の3学会は、2003年11月4日付けで「政府の総合科学技術会議が進める政策は、速効的な技術革新に重点が置かれ、科学技術の根底を支える基盤的経費が軽視されかねない状況だ」と共同声明を発表し批判した。総合科学技術会議が10月に実施した科学技術分野の優先順位付けで、高速増殖炉「もんじゅ」の改造工事や、国際熱核融合実験炉(ITER)計画の推進などは高く評価されたが、素粒子ニュートリノ実験の前倒し計画は最低の評価だった。基礎科学の推進をうたう科学技術基本計画の精神に反すると指摘している。総合科学技術会議事務局は、評価は準備状況などに基づいたもので、基礎科学を軽視している訳ではない、と反論している。(毎日新聞11月7日号)

13) 地球シミュレータ番組
筆者は2月8日(土)20:00 ~20:45、NHK教育テレビのETVスペシャル サイエンスワールド『 “地球シミュレーター”で未来の環境を予測する』のメインプレゼンタとして出演した。シミュレーションの基本原理、ベクトルとスカラの違いなど、できるだけ分かり安く説明した。ベクトルをエスカレーターに、スカラをエレベーターに例えた。

話は前年の10月ごろからあり、NHKではSC2002に出かけたり、日本やアメリカのスーパーコンピュータの歴史や気象シミュレーションの歴史などをかなり取材したりしたようである。「三好甫氏が並列とベクトルを合わせることを発明した」というので、「それは正しくない。流体力学や気象のためにこの二つを合わせて使うことを提唱した」に変えてくださいと頼んだ。

クロマキーを使うため配色がうるさく、靴も靴下もズボンもシャツも着るものは全部NHKで用意するので、「身一つで来てください」とのことであった。そのためサイズを通知した。収録は1月21日(HPCS2003の日)であったが、昼過ぎから夜8時過ぎまで掛かった(出演料は7万円)。メークさんが付きっきりというのは新体験で、タレントにでもなったような気分がした。担当者から「『プロジェクトX』ではないですから」と何度も念を押された。同じNHKでもチャンネルが違うと仲が悪いらしい。台本はもらっていたが、覚えるものだとはつゆ知らず(覚えろと言われても老化気味の筆者には無理だが)、適当にしゃべった。司会男性はアナウンサーの高市佳明氏、司会女性はサイエンスアイの司会をしていたタレントの中森友香さんであった。中森さんで感心したのは、半導体チップか何かを見せられて驚く場面で、リハーサルのときと、本番のときと、まったく同じように驚いていたことである。さすがプロ、と感心した。よく考えたら当たり前であるが。故三好甫氏の業績がたくさん紹介され、よい供養になった。2月23日(日)15:00~15:45に再放送。

標準化

1) GGF7
アジア太平洋地域では初となるGGF7 (The Seventh Global Grid Forum)が、2003年3月4日~7日に新宿の京王プラザホテルで“Grids Around the World”のテーマの下に開催され、約800人が参加した。プログラム委員長は、Sangsan Lee (KISTI)と関口智嗣(産総研)であった。今回はWG (working group)やRG (research group)の他にPlenary Programやチュートリアルが設けられた。

基調講演は、Ian Foster (ANL/ Chicago大学)の“Building an Open Grid”と、Eng Lim Goh (SGI)の“A Grid Technology Producer Perspective”であった。

5日には、「”The State of the Grid: Hype Versus Reality”(グリッドの現状、詐欺か現実か)」というroundtable(専門的なパネル討論会)が計画され、熱い議論がなされた。モデレータはTom Tabor (GRIDtoday/HPCwire)、パネリストはPaul Messina (ANL), Tony Hey (U. Southampton), Charlie Catlett (Chair of GGF/ANL), Tom Hawk (IBM), Ian Baird (Platform Computing), 三浦謙一(富士通/NAREGI)、Andrew Grimshaw (Avaki)であった。筆者は参加しなかったのでどんな議論になったかは不明。

夜のイベントのスポンサーはIBM Grid Computing、Qwest Communication, Hewlett Packard, NTTデータ、日本電気、Oracleであった。

2) GGF8
第8回目のGGF8は、2003年6月24日~27日にワシントン州のSeattleにおいて、“Building Grids – Obstacles & Opportunities”というテーマで開催され、約700人が参加した。HPDC-12との合同開催であった。

基調講演はJohn Gage (Sun), Shane Robinson (HP) “Creating Enterprise Value”、三浦謙一(富士通/NAREGI)“National Research Grid Initiative (NAREGI) Project”、Gordon Bell (Microsoft) “Grid Challenges”、Luis Rodriques=Rosello (EC) “GRID Technology Research – Shaping the eInfrastructure in Europe”であった。

3) GGF9
第9回のGGF9は、2003年10月5日~8日にシカゴのSheraton Chicago Hotel & Towersで開催された。GGF6と同様に総合講演やチュートリアルはなくWGとRGだけの会議であったが、450人以上が参加した。JPGridの総括参加報告を参照してください。

4) Globus Alliance
グリッドソフトウェアの事実上の標準であるGlobus Toolkit開発のために1995年に始まったGlobus Projectは、2003年9月、Globus Allianceというコンソーシアムとして正式に設立された。これに先立つ7月、Globus Toolkit 3.0が公開された。これはOGSA (Opne Grid Software Architecture)のOGSI (Open Grid Services Infrastructure) ver. 1.0に準拠する初めてのフルスケールの実装である。

5) Grid標準化
前に述べたように、2002年10月からINSTAC(日本規格協会情報技術標準化研究センター)において、グリッドコンピューティングについて標準化の調査研究が始まった。2002年度の活動として、企業所属の方へのwebアンケートを実施した。報告書にはグリッド用語集を付けた。

6) Linux
2003年1月、Linusの創始者で最高責任者のLinus Torvaldsは、NUMA (Non-Uniform Memory Architecture)のための最適化機能をLinux 2.5に導入することを承認した。これにより、Linuxが他のUnixやMicrosoft Windows (Server 2003)より優位に立てることを期待している。IBMや日本電気やSGIなどの大規模なサーバでは、メモリを物理的に分割する必要があり、ノードやノード群のメモリを別々に管理する必要がある。

1998年の記事に書いたように、2003年3月7日にSCO社(正確にいうと、SCOから名前ごと買ったCaldera Systems社が社名変更した会社)はIBM社を訴え、IBM社がSCOのコードを勝手に使ってLinuxを開発したと主張した。Gartnerグループは、5月、この訴訟が決着するまでは、Linuxの採用を最小限にすべきであると警告した。その後2006年11月30日に、裁判所はこの訴えの大半を却下した。(日本語Wikipedia、『Project Monterey』『SCO』参照)

7) fortran 2003
Fortranの改訂が進んでいたが、Fortran 2003は2004年にISO/IEC 1539-1:2004として公開されることになる。

次回は日本の学界や企業の動き。これまでのJSPP(1989年~2002年)に代わって新しいシンポジウム SACSISが始まった。

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