世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


11月 6, 2017

誰もが自由に活用できるベンチマークがスゴイ

島田 佳代子
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2016年9月に総額670億ドル(約8兆円)で旧EMCとの経営統合を完了し、2016年にはサーバ市場に参入して以来21年目で初めてとなるx86サーバ出荷台数世界1位を記録したDell EMCが、検証済みのソリューション提供にも力を入れるためにHPC専用の検証ラボである「Dell EMC HPC イノベーションラボ」をフル活用して情報発信している。同ラボは、2015年11月に1,200平方メートル(=約365坪)の広さにまで拡張され、同社のHPC分野への並々ならぬ投資とコミットが伺える。同ラボでどのような取り組みが行われているのか、Dell EMCのHPCビジネス開発マネージャー 山崎拓也氏に話を聞いた。

―Dell EMC HPC イノベーションラボについて教えてください

このラボではインテルが新プロセッサを発表後2週間程度という早さでインテルやNVIDIAも含めたISV(ソフトウェアベンダー様)とIHV(ハードウェアベンダー様)との密な連携のもと、全インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサー (Skylake)ラインナップのLinpack (HPL)、SPEC CPU2006、STREAM-Triadといったベンチマークを公開しています。これらのデータはどなたでも無償でご参照頂くことができます。また、このベンチマークリソースは、リモートからVPNでの接続してのご利用が可能です。

以前、「SPECfp_rate_baseだと実際の性能を見ることができないから、Linpackはないですか?」と探しているお客様がいらっしゃり、お見せしたところ驚いて頂くことができました。Dell EMCでは、プロセッサ毎にLinpackを標準ベンチマークとして取り、公開しています。これは他ベンダーのサイトではまず見つけることはできません。

この独自システムは2017年6月のISC17で発表されたTOP500で373位に入りましたが、現在全インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサー (Skylake)に切り替えているため、2018年のISCでは順位が上がることも予想されています。

アメリカのオースティンにあり、1200平方メートルという広さに1,300を超すサーバ、10PBという大容量を備えている。

 

お客様に使って頂けるものがふたつ合わせて約700ノードと、ここまでの台数規模で持っているベンダーは他にはないと思います。VPNで利用できることも大きいですね。Xeon Phi、GPU、大容量メモリモデルもあります。ISVライセンスは、基本的にはお客様にご用意して頂くのですが、ご相談にのることも可能です。

共有メモリ並列なのか分散メモリ並列なのか、分散も独立プロセスなのか、通信プロセスなのか、レイテンシーが必要だとか、帯域もデータのやり取りがどの程度必要か。CPUのメモリ帯域が必要ならCPUのコア数の選択も必要ではないか。ひとつの例として、メモリの構成もBroadwell時は1CPUあたり4枚か8枚で構成、Skylakeになったら6枚で構成する必要があります。また、メモリにはデュアルランクとシングルランクがあり、10‐15%位の性能差が出てきてしまうので、出来る限りデュアルランクで組んだ方がいいなど、弊社は細かいところまでしっかり考えています。

スケーラビリティの評価、コア数性能が必要なのか、クロックよりもコア数の方が重要なのか、メモリ帯域とかI/Oといった解析別の分析も行っています。じつはこれらをあてはめて、お客様のニーズに合った推奨構成を調べることができる「システムビルダー」というWebサービスがあります。

ユーザーのニーズに合ったHPCシステムの作成が可能

―システムビルダーでは具体的にどういったことが可能でしょうか?

現時点では全てが日本語ではなく英語となりますが、単純に要求事項を入れるだけではなく、修正も可能です。必要なノード数、フロップス数、ストレージ量、またLustreは必要かなど選択することで推奨構成が出ます。Lustreの場合はIntel Lustreがベースになります。Knights LandingやGPUも入っています。あくまでも推奨構成となり、全てがこれに当てはまるわけではありませんが、ご活用頂けたらと思います。

このように様々なベンチマークを出し、リファレンスを用意し、それぞれの特性もお見せし、細かいところまで考えてお客様に提案しますというスタンスが弊社の形です。

―これらの取り組みには多額の予算が必要になるかと思いますが、Dell EMCがここまでラボに投資する理由はなんでしょうか?

理由はいくつかありますが、ひとつはボリュームが大きくなってきていること。データセンター(IDC)でも、AIでもHPCへの需要が増えてきていることがあります。また、HPCの分野では後発となるDellの取り組みを知ってもらうこともあります。

そして創業者であるマイケル・デルの「我々は次なる技術革新の最先端に立っています。今こそ、これらの技術革新をよりシンプルに、より安価に、そしてより手にしやすくすることにより、これまで以上に多くの人がこれらの力を手にできるようにする時が来たのです。という言葉から分かるように経営コンセプトが「オープンソース」であることも大きいかと思います。

HPCへの需要が増す中で始められたDell EMCの他にはない取り組みだが、SC17にて新たな発表もあるようだ。

山崎拓也
インフラストラクチャ・ソリューションズ事業統括
ソリューション本部 HPCビジネス開発マネージャー