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12月 23, 2019

山形大学とIBM、AIで隠されたナスカの地上絵を発見

HPCwire Japan

Oliver Peckham

数千年前に遡るペルー南部の地球にある巨大で神秘的なデザインの集まりであるナスカの地上絵は、1920年代に再発見されて以来、探検家や研究者を惑わせてきた。動物、形、植物などを描いた線は太陽の至点に関連していると考える人や、神へのオマージュであると考える人もいる。現在、IBM Researchは、山形大学がAIツールを導入しさらなるナスカの地上絵の発見を支援していること、そしてすでに新たな絵が発見されていることを発表した。

空から眺めるのが最も良いとされているナスカの地上絵でも、一見してすべてがはっきり確認できるわけではない。山形大学の研究者は、過去13年間に100個以上もの地上絵を発見した。これまでの調査は主に、ナスカの地上絵が占める500平方キロメートルのエリアで、衛星またはドローンベースのハイパースペクトルセンシングと画像を通じて行われてきた。しかしこれらを駆使しても、地上絵をを囲む道路や洪水の跡である「ホワイトノイズ」によってあいまいになっており、関連するフォーメーションの識別が困難になっている。

2月に発売されたIBMのPAIRS GeoscopeプラットフォームはクラウドベースのAIテクノロジーであり、研究者は作物の識別や灌漑管理などのタスクのために、地理空間分析を大規模で複雑なデータセットに拡張することができる。IBM Researchは山形大学と協力し、この技術を活用してナスカの地上絵をより深く理解し、新しいものを発見できることを期待している。

PAIRSは、ナスカの地上絵を描写する、LiDAR標高データやドローン画像、衛星画像や調査情報などのさまざまなデータセットを集約、分析している。 「従来のアプローチを使用すると、これらのタイプのデータボリュームを統合するのに非常に長い時間が必要になり、検出プロセスに数か月かかる可能性がありました」とIBM Researchは述べている。「PAIRSでは、これらの同じタスクと分析に、数分しかかからないと予想されているのです。」

 
 

ナスカの地上絵のエリアで新たに発見された地上絵。

画像提供、山形大学

   

IBM Researchと山形大学が、このパートナーシップで調査をする現場を実際に目にすることはない。コラボレーションに取り組む前に、彼らはディープニューラルネットワークを訓練し、それらを識別することにより、ナスカの地上絵を評価する方法をテストした。その後、より多くの画像の処理を行い、アルゴリズムで研究者が検出できない地上絵を検出できるかどうかの確認を行った。そして実際、それは可能だった。このモデルはナスカの地上絵のエリアで新しい人型の地上絵を再発見することができたのだ。

現在チームは、ナスカの地上絵のさらなる分析を支援するためにPAIRSを使用することを「楽しみにしている」と述べている。そして、これらの大量のユニークで非構造化された情報でAIとディープラーニングモデルをトレーニングすることにより、ナスカの地上絵周辺のより大きな発見と情報につながる貴重な洞察力を得られることが、彼らの望みであると述べている。

この記事はDatanamiに掲載されたものです。