新HPCの歩み(第261回)-2007年(n)-
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インドのTata財閥傘下のComputational Research Laboratoriesに設置されたEKAが、突然Top500の4位に登場したので度肝を抜かれた。中国は着々と独自プロセッサの開発を行っている。ロシアのT-Platforms社は、ロシア初のTFlopsマシンを建設した。D-Wave社はコンピュータ歴史博物館で16 qubitの量子アニーラの実演を行った。 |
アメリカの企業の動き(続き)
14) x86の将来
2007年1月始めにHPCwireに”The x86 Dynasty”という記事が出て、いったいいつまでx86アーキテクチャが続くのか、という問題提起を行っている。Intel 8086が登場したのは1978年であるから、すでに30年近い。だれも、おそらくIntelの開発者も、これほど長生きするとは思いもしなかったであろう。
最近の10年は、x86がHPC市場を飲み込みつつある。昨年AppleもPowerPCからIntelにプロセッサを変更した。もし、IBMがデスクトップの重要性を認識し、PowerPCの開発を早めていたら、歴史は違っていたかもしれない。問題はx86がいつかは首位を譲るのか、もしそうならどのように、ということである。2020年には、CMOS後のテクノロジで、x86に基づくterascaleプロセッサを使っている可能性はある。しかしどんな技術にも寿命があるので、terascaleの時代にはx86は残っていないかもしれない。命令セットがあまりにも複雑なので、32 nm以下のテクノロジには有利でない。
2015年から2020年までの間に、CMOSベースのシリコンデバイスは限界に達すると予想されている。それを克服するにはもっと効率のよいアーキテクチャが有利になる。そうなる前に、IntelやAMDはx86の遺産を捨てるかもしれない。IntelやAMDの技術者は優秀でワット当たりの性能を増大させているが、市場の要求はもっと大きい。
AMD社はATIを買収しCPU-GPUハイブリッドの方向に向かっている。これは厳密に言えばx86の互換性を破っている。汎用プロセッサにGPUコアを追加するという方向はCellも採用している。おそらく、x86に固執していては8コアが限界であろう。AMD社は2009年に投入予定のFUSIONプロセッサにおいて、GPUコアをCPUに統合し、同時に命令セットレベルでも統合しようとしているようである。
Intel社は、かつて2回もx86を超えようとした。1回はi860/i960チップ(Paragonなど)、もう1回はItaniumである。かつてのi860はうまくいかなかったし、Itaniumは可能性をまだ十分開花していないことを考えると、Intelでさえ自分の成功の犠牲者なのである。2006年に80コアのterascaleプロセッサを予告し、65 nmテクノロジで1億トランジスタを使い、98ワットで1 TFlopsのピーク性能を出すという。
Sun Microsystems社はUltraSPARC T1(コード名Niagara)により、単純化したプロセッサの方が汎用プロセッサよりずっと大きなスループットを実現できることを示した。T1プロセッサは、4-wayのマルチスレッドコアを8個搭載し、72ワットで32スレッドが動く。浮動小数演算は遅いのでHPC向きではないが。
2003年に設立されたSiCortex社は、HPC向けにMIPS64アーキテクチャのクラスタを製造している。MIPSアーキテクチャは単純なので、典型的なx86システムより2桁よいワット当たりの性能が出ると主張している。さらに、MIPS CPUは組み込みチップとして使われているが、組み込みシステムは多様性はあるが、それぞれ応用は限定されている。従ってかえってアグレッシブなマルチコア・マルチスレッド戦略をとることができる。
2007年中にx86王朝の終焉は来ないであろうが、その支配権を曇らせる動きは始まっている。10年もすれば、なんでこれまで単一のアーキテクチャに依存してきたかと不思議に思うようになるだろう。30年ものx86の支配は、コンピュータ技術の初期の歴史における異常な一時現象と見なされるであろう。(HPCwire 2007/1/5)
2025年の今でもHPCでのx86の支配は続いている。すでに50年近くである。SparcもMIPSもAlphaも主役の座を離れた。近い将来にARM王朝やRISC-V王朝への交代はあるだろうか?
15) Sun Microsystems社(Intelとの提携)
2007年1月22日、Sun Microsystems社とIntel社と広範な戦略連携に合意したと発表した。Intel社がSolarisを基幹OSに採用し、OEMする、Sun社はXeonを使ったサーバを開発する。Sun社はTSUBAMEに見るように、これまでAMD Opteronサーバは作ってきたが、Intelプロセッサも使うということである。
Sun社はプロセッサにはXeon、OSにはSolaris、Windows、Linuxを搭載したサーバとワークステーションを提供していく計画である。また両社はSolaris向けに最適化した、4プロセッサ以上のシステムを共同開発する予定という。
提携の一環として、Intel社はSolarisのOEM契約に合意、Solaris OSを顧客に販売、サポートしていく。また独立系ソフトウェアベンダ(ISV)やシステムプロバイダーに対し、Solaris搭載Intelシステム向けソフトウェアの開発を呼び掛ける。(HPCwire 2007/1/22) (Intel News Release 2007/1/22)
このニュースに対してHPCwireのMichael Feldmanは、Sun社は8ソケットのXeonサーバを作るので、これまでのOpteronベースのSun Fireは売れなくなるであろうという見方を示した。HP社は、Itaniumを搭載したIntegrityサーバと衝突するので、8ソケットのXeonサーバを作るとは考えられない。Dellも参入しそうもない。Intel社はうまい戦略を立てた。AMD社は、ATI社を買収したため昨年第4四半期に$574Mの損失を出した。AMD社が土に帰る日も近い。(HPCwire 2007/1/26)
2007年8月16日、IBM社とSun Microsystems社とはx86上のSolarisについて合意ができたと発表した。すなわち、IBM社はx86-basedのIBM System x serverやBladeCenter server上に、Solaris OSを搭載するとのことである。これにより、顧客がx86-basedのSolarisに移行するための支援を行う。
AMD製プロセッサを搭載したコンピュータの生産も継続する予定ではあるが、AMD社にとって痛手ではないかという見方が有力であった。この直後の9月10日、Sun Microsystems社はquad-core Opteronを搭載したSun Blade X8440 Serverを発表している。
16) Sun Microsystems社(Rock、Niagara 2)
Sun Microsystem社は、2007年1月にハイエンド用の次期UltraSPARCであるプロセッサ(コード名Rock)。がテープアウトの段階まで来たこと、最大で16コアを搭載し、2008年後半に提供予定であることが公表された(HPCwire 2007/1/21)。2008年2月19日には、UltraSPARCの45ナノのファブリケーションをTSMSに委託すると発表した(TSMC News Release 2008/2/19)。2008年2月のISSCC 2008では、16コアで最大32スレッドを並行実行し、アウト・オブ・オーダーを採用し、動作周波数2.3 GHzを実現するとされたが、提供時期は最適化のために2009年以降へ延期が発表された。結局開発は2010年に中止された。
2007年4月、Sun Microsystems社と富士通は、共同開発したSPARC Enterpriseを共同で販売していると発表した。プロセッサはSPARC64 VIで、90 nmテクノロジにより2.4 GHzで動作し、2コア、マルチスレッドを採用する。OS はSolaris 10を搭載する。
2007年6月12日、Sun Microsystems社は、Solaris Express Developer Editionを発表し、マルチコア上での性能を向上させたと発表した。これは、Mozilla Firefox 2.0, Mozilla Thunderbird 2.0 beta 2, and StarOffice 8 update 6 softwareなどを含む。(HPCwire 2007/6/12)(InfoWorld 2007/6/12)
同社は2007年8月7日、UltraSPARC T2(コード名Niagara 2)を開発したと発表した。8コアを搭載し、コア当たり8スレッド実行できる。UltraSPARC T2のSPECint/fp_rate2006が発表された。特に、1 wayでは、Xeon X5355,Itanium 2 9040、POWER6、Opteron 2222などと比較しSPECint/fp_rate2006のレコードを実現したと主張している。電力当たりの性能もかなり高い。(日本経済新聞 2007/8/9)(日経エレクトロニクス 2007/8/8)(ITmedia 2007/8/8) (Wikipedia:UltraAPARC T2)
ただ、経営状態は苦しいらしく、人員整理の発表もあった。
17) Sun Microsystem社 (Constellation)
同社は2007年6月25日、Constellation Systemと呼ばれるシステムを発表した。これはブレードサーバをMagnumという開発コード名のInfiniBand switchで結合したものである。MagnumはFat Treeで接続され、通常のスイッチより多い3456ポートも接続可能である。開発責任者はSun社の創立者の一人であるAndy Bechtolsheimである。ブレードサーバのプロセッサはAMDのOpteronチップでも、SunのUltraSPARCでも、IntelのXeonでもよい。
テキサス大学のTACC (Texas Advance Computing Center)は昨年NSFのTrack 2のシステムの予算を取ったが、Constellation Systemを構築している。ピーク性能は500 TFlopsで、11月のTop500に間に合えばトップが取れるかもしれないと「取らぬ狸」で盛り上がっていた。6月のドレスデンでのISC2007でMagnumが展示されていたが、あまりの巨大さにびっくりしたことを覚えている。問題はAMDから十分な数のBercelonaプロセッサを調達できるかどうかのようである。(CNET News 2007/6/27)
18) Sun Microsystems(その他)
同社は2007年6月12日、新しいSolaris Express Developer Editionを発表した。これはコンパイラと開発ツールを含む。Sun Studio 12と組み合わせて使う。
米Sun Microsystemsは2007年9月12日、米Cluster File Systems(CFS)のIPおよび資産の大半を買収すると発表した。CFSの代表的な製品であるオープンソースファイルシステム「Lustre File System」も含まれる。Sun社は、自社のHPCシステムにLustreを搭載するとともに、Lustren技術をSun社のZFSファイルシステムやSolaris OSの開発に活用する。(HPCwire 2007/10/12)
2010年にOracle社はSun社を買収するが、2010年12月、Oracle社はLustre 2.xの開発を中止し、Lustre 1.8を保守だけのサポートとしたため、ファイルシステムを開発するためのいくつかの組織が生まれた。
2007年8月23日、Sun Microsystems社はNASDAQ株式市場におけるticker symbolを、従来のSUNWからJAVAに変更すると発表した。27日の取引から使われる。
19) SGI社
昨年、連邦破産法第11章から脱出したSGI社はHPC分野での新しい開発を始めた。Linux NetworxのCEOであったBo Ewaldが4月にSGIに戻りCEOとなった。かれは1990年代にSGI社の副社長やCOOであった。でも会社はそのころと比べるとすっかり様変わりしている。買収の噂の絶えないこの会社とどう運営していくのか。(HPCwire 2007/4/13)
8月、Arizona大学はSGI Altix 4700を導入したが、これは2個のFPGAを載せたSGI RASC RC100ブレードを搭載している。SGI社は2005年には既にFPGAの利用を始めているが、とくにバイオインフォマティクスのBLASTを高速化するのに有効だったとのことである。11月にはRC200ブレードを発表した。業界紙によると、BLAST-nによる検索で、68-nodeのOpteron搭載クラスタで3週間掛かる仕事が、70個のFPGAを搭載したスーパーコンピュータでは33分で完了したとのことである。900倍の高速化である。(Proquest 2007/12/1)(Design&Reuse 2007/12/10)
11月のTop500では、NMCC (the New Mexico Computing Applications Center)に納入した14336コア、28 TBのICEシステムが、3位を占めた。この勢いを2008年につなげることができるか。4月にSGI社に戻ったBo Ewald CEOは2008年には4つの分野に集中すると述べた。「防衛と諜報」「産業デザインと製造」「研究」「ビジネス」である。ビジネスにおける大規模データベースの解析は需要が多いが、SGIにとっては新分野である。SGIはNUMAflex共有メモリアーキテクチャは最適であると信じている。Altix 450システムは最近Oracle Application Standardベンチマークの記録を破った。でもビジネスになるのか。(HPCwire 2007/11/30)
20) NVIDIA社(CUDA、Quadro)
前年11月、NVIDIA社はGPU向けの統合環境CUDA (Compute Unified Deveice Architecture)の構想を発表したが、2007年2月16日、NVIDIA CUDA Software Developer Kit (SDK)および C-compilerのベータ版を公開した。CUDA技術は、GeForce 8800以降のNVIDIA Quadro Professional Graphics solutionsで利用できる。
2007年3月5日、同社は高度なグラフィックスのための、NVIDIA Quadro FX 4600, Quadro FX 5600, and NVIDIA Quadro Plex VCS Model IVを発売した。3月22日、NextComputing社は、dual-core Opteronを搭載する自社のパーソナル・スーパーコンピュータNextDimensionに、PTY Technoligies社の技術により、NVIDIA Quadro FX 4600を付加したと発表した。
21) NVIDIA社(Tesla)
2007年6月20日、同社はGeForce 8 (G8x)アーキテクチャのTeslaを発表し、HPCを直接に目指すことを発表した。これまでGeForceやQuadro製品をCUDAによりHPCのために利用することはできたが、本来PCやワークステーション上の可視化を目的としているので、HPCクラスタにスケールできるかは明らかでなかった。(HPCwire 2007/6/22)
これによりNVIDIAは3本の製品ラインをもつことになった。GeForceはコンシューマおよび娯楽の可視化を、Quadroはプロの設計および創作を、そしてTeslaは伝統的なHPC応用を目指している。1Uラック型のTesla GPU Serveは、最大4個のG8xアーキテクチャのGPUを搭載し、最高で2 TFlops(単精度)の性能を提供する。ただしG8xベースのTeslaは32bit浮動小数のみに対応している。次のG9x世代では、1チップでTFlopsの性能(32 bit)を実現し64bit浮動小数演算もサポートするという。これは2009年11月6日に発表されたFermiアーキテクチャのC20xxで実現した。
2007年7月12日、Teslaの発売にあわせて、NVIDIA CUDA 1.0を正式に公開した。これはCコンパイラを含み、またCUDA BLASやFFTライブラリを搭載している。
7月16日には、MATLABのためのプラグインを公開した。
22) SiCortex社
2003年にMIPS64アーキテクチャに基づく省電力スーパーコンピュータ製造のために設立されたSiCortex社は、2007年1月5日元Cray社CEOであったJohn Rollwagenを取締役会長に迎えた(HPCwire 2007/1/5)。6個のMIPSコアが入るチップをSC06で展示していたが、勝算はあるのか。Rollwagenのネームバリューで資金集めに成功しているようである。
2007年8月1日、同社はQLogic CorpからPathScaleコンパイラ部門を買収し、コンパイラを自作するとのことである。コンピュータシステムのベンダは多いが、自分でコンパイラを開発するところは少ない。(HPCwire 2007/8/3)
10月、同社はMEGAWARE社と協定を結び、ヨーロッパ市場に参入すると発表した。(elEconnomiscta 2007/10/2)
この会社は2009年5月に廃業する。
23) Tilera社
Tilera社は、2007年8月20日、64コアを持つTILE64プロセッサチップをStanford大学で開催されていたHOT CHIPS 19で発表した。同社は、MITのAnant Agarwal博士の研究成果を商品化するために2004年に創立された会社である。いくつかのベンチャーキャピタルなど(NTTを含む)から$100M以上の資金を調達した。(The New Zealand Herald 2007/8/21) 同社は2014年、EZchip Semiconductorに買収された。
24) LSI Logic社
2007年4月2日、ルーセント・テクノロジーの流れを汲む、通信やストレージ向け半導体大手のAgere Systemsとの合併を完了し、LSIロジックからLSIコーポレーションへと社名を変えた。
25) Cavium Networks社
2001年にArmベースやMIPSベースのプロセッサに特化したファブレスの半導体企業として創業したCavium Networks社は、2007年5月、NASDAQに上場した。
26) GPU Computingの幕開け
画像処理用に発展してきたGPUを汎用計算に用いるというアイデア(GPGPU)は、HPCコミュニティーに広がってきたが、Intel社、NVIDIA社、AMD社はそれぞれ違う計画を立てている。
Intel社は、2007年春のIDF (Intel Developer Forum)において、GPGPUのアイデアを批判し、開発中のLarrabeeで行くと述べた。NVIDIA社は、TeslaプロセッサとCUDA C原語によりGPU計算をHPC市場に売り込もうとしている。AMD社も、2006年7月にATI社を買収し、“Stream Computing”と言う戦略を立てた。最初の製品は、PCIeで接続したATI R580 GPUであったが、どれだけ売れたかは不明である。今後GPUとGPUを統合したFusionプロセッサを市場に出してくるものと思われる。情勢は混とんとしているが、GPU計算の第二場の幕が上がったことは間違いない。(HPCwire 2007/10/26)
27) FPGAの発展
Ross FreemanらがXilinxを創業したのは1984年であるが、その後多くの競合企業が成長した。ゲートアレイより開発期間が短く、後から変更もできることから多くの目的に使われてきたが、動作速度に限界がありHPC分野では周辺機器に使われることが多かった。
FPGAが90 nmテクノロジに達すると、真のHPCカーネルを収容するに十分なゲートとメモリを構成することができるようになった。Xilinx社のVirtex-4やAltera社のStratix IIはその一つである。さらに最近では65 nmテクノロジを使ったFPGA(Virtex-5やStratix III)も登場し、FPGAを使った再構成可能なコンピュータが現実的なものとなった。DRC Computer社、XtremeData社、Celoxica Holdings plc、 Nallatech社、Mitrionics AB、Impulse Accelerated Technologies社などがHPC市場を伺っている。2007年9月、Celoxica社のXilinx Virtex-4のFPGAボードを搭載したHewlett-Packard社のProLiant DL145サーバが登場した。詳細はHPCwire 2007/9/21のFeldmanの記事を参照。
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28) Microsoft社(Vista)
Microsoft Windows Vista(コード名Longhorn)は、遅れに遅れて、2006年11月30日にボリュームライセンス契約者に提供が開始され、2007年1月30日には全世界で発売された。2007年1月15日、コンピューターメーカー18社はMicrosoft Windows Vista対応機種を発表した。
1月25日Microsoft社は、当初Microsoft Windows Vista発売から2年後にサポート打ち切りを予定していたMicrosoft Windows XP Home Editionについて、サポート提供を2014年4月まで延長することを発表した。Vistaの評判がよくないと予想していたのであろうか。写真はWindows Vistaのスクリーンショット(Wikipedia:Windows Vista)
29) 3Com社
前年の2006年に華為技術との合弁を解消したばかりであるが、2007年9月、Private Equity FundであるBain Capital LLCと華為技術とからの出資を合わせて、$2.2Bで3Com社を買収する計画が明らかになった。米国議会の有力メンバーらが、これにより華為技術が3Com社の技術を入手することができるようになり、華為を通して中国軍に流れる恐れがあると懸念を表明し、政府機関の「外国投資委員会 (CFIUS)」による特別審査を求めた。10月にはこれに反対する決議案が米国下院に提出された。2008年初めにこの計画は解消された。結局、2009年Hewlett-Packard社が3Comを買収する。
30) Apple社
Apple Computer社は、2007年1月9日にApple社(Apple Inc.)と改称した。同社は2007年10月26日 に、 Mac OS X v10.5 (Leopard) を発売した。300以上もの新機能が搭載された。
31) Etnus社
TotalViewの開発元であるEtnus社は、2007年4月1日からTotalView Technologies社に社名変更した。社名のEtnusより製品のTotalViewの方があまりにも有名なために社名を変更するそうである。
32) D-Wave Systems社
2007年2月13日、カナダのD-Wave社はカリフォルニア州マウンテンビューのコンピュータ歴史博物館で3つの異なるアプリケーションを走らせたオリオンシステムを披露した。これは16 qubitの量子アニーラである。これはおそらく量子コンピュータおよび関連する機器に関する初の公開実演であった。(HPCwire 2007/2/16)このニュースは当時気が付かなかった。知っていればSC07のデモで驚くことはなかったかもしれない。(Wikipedia: D-Wave Systems)この量子アニーラは、社名の由来であるD波超伝導体とは無関係である。
既述のように、2007年11月12日にSC07において、28 qubitの量子アニーラを披露した。これらのチップは、カリフォルニア州PasadenaにあるNASA JPL (Jet Propulsion Laboratory)のMicrodevices Labにおいて製造された。(Wikipedia:D-Wave System)
33) CDC社創立50周年
CDC社 (Control Data Corporation)は、1957年Minneapolisで設立された。今年はちょうど50周年である。しかし、すでにCDC社そのものは15年前に業界から姿を消している。
2007年10月12日、Minneapolis Convention CenterにおいてCDC社創立50周年の記念式典が行われ、なんと700人が参加した。創立者William C. Norrisはこう述べた。「我々は1957年にCDCのドアを開いた。これはとんでもない賭けであった。はるかに豊富な資源をもつ競争相手との勝負になった。しかし、われわれは驚くほどの成功を収めた。」
1963年8月23日に、IBM社のT. J. Watson, Jr.会長は幹部7人をこう叱責したほどである。(Computer History Museum)
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先週、CDCは記者会見を開いて6600システムを発表した。このシステムを開発した部門の人員は”掃除夫まで含めても”たったの34人である。その内、エンジニアは14人、プログラマは4人で、博士号を持っているのは1人だけである。その博士も、比較的初級のプログラマである。外部から見ると、この開発部門はコスト意識が高く、ハードに働く、強い動機をもったチームであると考えられる。 この控えめなサイズの開発を、わが社の巨大な開発と比較すると、世界最強のコンピュータを他社が提供し、業界のリーダーシップを奪われるということは理解しがたい。我々のやり方の何が悪かったのかを議論し、ただちに、それを変えることが急務である。 |
1970年代、まだグリーンが緑色しか意味しなかったころ、CDC社はソーラーエネルギーや風力発電を支援した。元CEOのRobert M. Priceによれば「CDC社はあの時代のApple Computerだったのだ。100社ものスピンオフがある。」
式典では以下の4件のパネルがあった。
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テーマ |
モデレータ |
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Innovation in Products and Services |
Charles T. Casale, an early member of the legendary Seymour Cray’s design teams |
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Innovation in Management Practices |
James R. Morris |
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Nurturing Innovation through Spin-Offs and Small Business Formation |
Mike P. Moore |
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An Innovative Role in Industry and Society |
Albert Eisele |
(IEEE Annals of the History of Computing 2008/1)
その他の企業
1) ClearSpeed社
ClearSpeed Technology社は2007年2月にロンドン証券取引所のAIM市場に上場し、£20Mの投資を受けた(Wikipedia:ClearSpeed)。
2007年5月1日、ハードウェアおよびソフトウェアの新版を発表した。とくに、CSXLライブラリの2.50版は、Microsoft Windows上で動く。
2007年9月には、防衛・航空業界のBAE Systems社と協定を結び、ClearSpeedの次世代のプロセッサ技術をBAE社の衛星システムに応用することになった。BAE社はClearSpeed社のソフトウェア技術にもアクセスできる。(HPCwire 2007/9/7)
2007年9月26日、同社は韓国のTao Computing社と契約を結び、韓国の国立研究所や主要大学や主要企業に販売を進めると発表した。
また同日、同社の加速ボードがSun Microsystems社の価格表に加わったと発表した。
2) T-Platforms
2002年にモスクワで創業されたT-Platforms社は、2007年2月にロシア初のTFlopsマシンをTomsk State Universityに建設した。566個の2.67 GHzのdual-core Xeon 5150でOSはSUSE Linux Enterprise Server 9であるが、その下でWindows CCS 2003 も稼働する。283ノードで構成されている。メモリは1128 GB電力は90 kW。外部ストレージは10 TBしかなく、バランスを欠いている印象である。ピーク12 TFlops, Linpack 7.8 TFlopsとのことである。(HPCwire 2007/1/5) 2007年6月のTop500では、Core=1128、Rmax=9.01 TFlops、Rpeak=12.002 TFlopsで105位にランクされている。1ノードは動かなかったようである。愛称はSKIF-Cyberia。(HPCwire 2007/2/12) T-Platforms社は後に2011年11月に33072プロセッサのLomonosovを製造し、Top500では18位であった。
3) 聯想集団(Lenovo)
2007年7月17日、Lenovo社は英国OxfordshireにAT&T Willimasのためにスーパーコンピュータを設置したことを発表した。これは英国におけるFormula Oneのための風洞シミュレーションを目的としている。ピーク性能は8 TFlops。(HPCwire 2007/7/17) IBM社がIBM System xやIBM BladeCenterを含むサーバビジネスをLenovo社に売却するのは2014年である。
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4) Tata Group
インドのTata財閥傘下のComputational Research Laboratories(Dr. Narendra Karmarkarが創立)は、2007年10月Hewlett-Packard社と共同でスーパーコンピュータEKAを建設した。EKAはEmbedded Karmarkar Algorithmに由来し、同時にサンスクリット語で「1」を意味する接頭辞だそうである。EKAはIntelのquad-core Xeon X5365 (3 GHz)を3588個搭載し、Infiniband 4x DDRで接続している。2007年11月のTop500では、Core=14240(3560 CPU)、Rmax=117.9 TFlops、Rpeak=170.88 TFlopsで4位にランクしている。インドのコンピュータが1桁に入ったのは初めてであった。(Tata Newsroom 2021/10) (Wikipedia:EKA(Supercompuer))写真はTataのページから。
5) 2007年の総括
HPCwireのMichael Feldmanは、HPC業界の2007年の動きを短くまとめている。(HPCwire 2007/12/21)
(a) Intel社はギア最高、AMD社は牽引力を失う
(b) Sun Microsystems社がConstellationでHPCに帰って来た
(c) 量子のよろめき(D-Wave社のデモ)
(d) クラスタのツールを開発していたPeakStream社がGoogleに飲み込まれた
(e) 次世代スーパーの登場(IBM、Cray、NEC、Sun)
(f) GPGPUが人気番組に
(g) FPGA準備完了
(h) ClearSoeedがアクセラレータを使いやすくする
(i) 銅線から光ファイバーへ
(j) InfiniBandの実用化
(k) Top500に異変あり(Top5のうち3件はアメリカ以外)
(l) HPCの成長はまだ続く
(m) Manycoreへの懸念
DODのJohn E. West氏のinside storyも面白い(HPCwire 2007/12/21)
企業の終焉
1) Parsytec社
同社は、1985年、ドイツのAachenでFalk-Dietrich Küblerによりtransputerを用いた並列コンピュータを開発するために政府の補助金を受けて設立された。社名はPARallel SYstem TECnologyに由来する。1988年から1994年の間に、64個から16384個までのtransputerを用いた様々な Parsytec GigaClusterを製造した。T9000が出荷されなかったので1994年にT800とPowerPC601を用いてPowerXplorerを出荷したりしていた。2006年4月30日、創業者のFalk-D. Küblerが会社を去り、2007年7月、Parsytec AGの株の52.6%がISRA VISION AGに買収され、12月には株式市場から姿を消した。
2) Cluster File Systems社(Lustre file system)
2001年、Cluster File Systems Inc.はCarnegie Mellon大学にいたPeter J. Braamによって設立された。かれらは1999年から研究プロジェクトとして分散ファイルシステムLustre file systemを開発していた。LustreはASI Path Forwardプルジェクトの資金で開発された。LustreはLinuxとclusterの合成語である。2007年9月12日、Sun Microsystems社はCluster File Systems社の知的財産(Lustreなど)や大部分の事業資産を買収した。Sunは今回の買収により、Lustre向けのSolarisのサポートを強化し、Linux およびSolarisを搭載した複数のベンダが提供するハードウェアプラットフォーム上で、Lustreが機能するよう努めていくという。Sunは、Lustreの技術をZFS file systemやSolaris OSに導入する方針である。SunはZFS file systemがNetApp (Network Appliance)の特許を侵害しているとして9月5日に訴訟を受けたところであったが、Sunは今回の買収は訴訟問題とは無関係と述べた。(ITpro 2007/9/13)(Japan Internet 2007/9/13)
2008年11月にBraamがSun Microsystems社を去り、Eric Barton とAndreas Dilgerがプロジェクトを引き継いだ。しかし、2010年SunがOracle社の買収されたが、2010年12月、Oracle社はLustre 2.xの開発を中止し、Lustre 1.8を(開発をやめて)保守だけを行うと発表した。この発表を受けて、いくつかの組織がオープンなソフトとして開発を続けることになった。
3) United Devices
1999年にAustin, Texasで設立された分散コンピューティングの会社United Devicesは、2007年9月17日、Univa社と合併し、Univa UDとして活動を続けると発表した。ほどなく(2011年までに)、UDを外し、元のUniva Corporationに戻った。
次はLehman shockの2008年である。筑波大学、東京大学、京都大学のT2Kオープンスパコンが稼働する。
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