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5月 26, 2014

カーボンナノチューブによる放熱材料開発に期待

HPCwire Japan

 高輝度光科学研究センター(JASRI)、産業技術総合研究所(産総研)は共同で、「カーボンナノチューブの“森”」が高密度に成長する仕組みを大型放射光施設SPring-8で解明した。この成果は、情報機器を効率的に冷却するための放熱材料の開発を促進すると期待されている。

 情報機器の冷却には、機器内部で発生した熱を効率的に逃がすための放熱材料と呼ばれる材料が重要だ。カーボンナノチューブは、現在使われている放熱材料の一つであるインジウムに比べて30倍以上の熱伝導性を持つため、優れた放熱材料として期待されている。しかし、カーボンナノチューブの太さは1~数十 nm(nmはナノメートルと読み、1 nmは1 mmの100万分の1の長さ)しかないため、放熱材料として使うには多数のカーボンナノチューブがブラシ状にそろった束(カーボンナノチューブの“森”)が必要となる。しかし、従来の方法で成長した“森”は密度が低く、利用することができなかった。最近、産総研の研究グループは、従来の方法に比べて20倍の密度を持つ“森”を成長させる方法を開発した。しかし、なぜ“森”が高密度化するのか、その理由は分かっていなかった。“森”をさらに高密度化するためには、その理由を知る必要がある。そこで、今回、JASRIと産総研の研究グループは、SPring-8を用いて高密度化の理由の解明を試みた。木の森の成長に土の状態が影響するように、カーボンナノチューブの“森”の成長には土に相当する触媒の状態が影響すると考えられている。そこで、“森”の成長過程における触媒の状態を、3種類の測定法で精緻に分析した。その結果、従来よりも低温な環境での成長と、触媒の下地が、触媒を高密度な“森”の成長に適した状態にする役割を果たしていることが明らかになった。この結果をもとに、触媒とその下地をさらに改善することで、より高密度なカーボンナノチューブの“森”を成長させることができるようになる。今回の研究成果により、カーボンナノチューブを用いた放熱材料の早期実現が期待さる。


ソース:産業技術総合研究所