世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


7月 20, 2026

Green500、ワットあたり性能がHPCにおける新たな開発競争に

HPCwire Japan

オリジナル記事「Green500 Shows Performance per Watt Is Becoming HPC’s New Arms Race

HPC分野において、純粋な性能は長きにわたり成功の指標となってきた。しかし、AIやエクサスケールシステムの規模が拡大するにつれ、電力効率は速度と同等に重要になってきている。今日では、単に高速なスーパーコンピュータを構築するだけでなく、エネルギー効率も求められる。

エネルギー効率への注目が高まっていることは、ISC 2026でTOP500リストと併せて発表された最新のGreen500ランキングにも反映されている。

中国の「LineShine」が世界最速のスーパーコンピュータの座を獲得した。DKRZの「KAIROS」、「ROMEO」、および「Levante」といったGPU拡張システムは、Green500のトップ3の座を堅守した。これは、エネルギー効率に優れたHPC分野における欧州のリーダーシップを裏付けるものだ。

Green500は歴史的に、TOP500リストよりも順位変動が激しい。TOP500では、たった1台のフラッグシップシステムの登場だけでランキングが劇的に変わることもあるからだ。

その理由の一つは、ベンダー各社が電力消費量あたりの性能向上に継続的に取り組んでいることだ。これは、洗練されたプロセッサアーキテクチャや新しいシステム設計によってもたらされる可能性がある。

また、冷却技術やインターコネクト技術の最新の進歩を踏まえると、2025年11月の前回発表時からランキングが変動するものと予想されるかもしれない。しかし、トップ10のシステムはいずれも順位を譲らなかった。これは、現在のトップシステムが、エネルギー効率に優れたスーパーコンピュータにおいて、依然として圧倒的なベンチマークを打ち立て続けていることを示唆している。

 
   

Green500の安定性について、ローレンス・バークレー国立研究所の上級科学者であり、TOP500ランキングの共同創設者でもあるエリック・ストロマイヤー氏は次のように述べた。「Green500において、トップ10が変動しなかったことはかつてなかったと思う。なぜなら、Green500は規模ではなく技術に焦点を当てているからだ……トップ3だけでなく、実際、Green500のトップ10全体が変動しなかったのだ。」

KAIROSは73.28ギガフロップス/ワットのエネルギー効率を実現し、HPLベンチマークで3.046ペタフロップス/秒を記録した。ROMEOは、70.91ギガフロップス/ワットの効率で、HPLベンチマークにおいて9.863ペタフロップス/秒の性能を発揮した。Levante GPU拡張モジュールは、6.747ペタフロップス/秒のHPL性能と、69.43ギガフロップス/ワットの効率を達成した。

上位3つのシステムはすべて、ある程度のアーキテクチャの一貫性を持っている。1位のトゥールーズ大学CALMIPが運用する「KAIROS」と、2位のランス・シャンパーニュ=アルデンヌ大学にある「ROMEO」は、いずれもEviden社がBullSequana XH3000プラットフォーム上で構築し、エヌビディア GH200 Grace Hopperスーパーチップを搭載している。

ドイツの3位である「Levante GPU Extension」も同様のアプローチを採用しており、HPE Cray EXインフラストラクチャとエヌビディア Grace Hopperプロセッサを組み合わせている。

ワットあたりの性能でトップクラスとなるには、単一の画期的な技術だけでは不十分であり、システムのあらゆる層を最適化する必要がある。

トップ3のシステムは、それぞれ異なる機関やワークロードに対応しているが、密接に統合されたCPU-GPUアーキテクチャ、高帯域幅メモリ、直接液体冷却、最適化されたソフトウェアスタックなど、多くの共通した設計原則を共有している。

ワットあたりの性能がますます重視されるようになったことは、HPC業界全体で起きているより広範な変化も反映している。AIのトレーニング、推論、大規模な科学シミュレーションが、ますます大規模なコンピューティングシステムの需要を牽引していることは疑いようがないが、電力は業界にとって最も重要な制約要因の一つとなっている。

次世代のスーパーコンピュータを構築することは、もはや単にプロセッサやアクセラレータを増設するだけの問題ではなく、十分な電力容量、冷却インフラ、そして運用予算も必要となる。

 
(Matveev Aleksandr/Shutterstock)  
   

その結果、エネルギー効率は単なるベンチマーク指標の域をはるかに超える存在となった。ワットあたりの性能は、調達決定、システムアーキテクチャ、そして長期的な運用コストをますます左右するようになっている。かつては主にTOP500の補完的な存在と見なされていたGreen500は、将来のリーダーシップクラスのシステムがどのように設計されるかを示す、ますます重要な指標となりつつある。

エヌビディアはまた、HPCにおけるアクセラレーテッド・コンピューティングの役割が拡大していることを指摘し、最新のランキングに付随するブログ記事の中で、「アクセラレーテッド・コンピューティングは、AI for Scienceや科学の分野を問わず、世界で最も負荷の高い作業を担うシステムの基盤になりつつある」と記している。最新のGreen500はこの見解を裏付けるものであり、Grace Hopperベースのシステムが上位のいくつかを占めている。

TOP500は今後も業界における純粋な演算性能の決定的な指標であり続けるだろうが、Green500は、そうしたシステムがどのように構築され、評価されているかを示す重要な指標として台頭しつつある。

大規模な科学計算のワークロードが増え続ける中、単にプロセッサやアクセラレータを追加するだけではもはや不十分だ。将来のシステムでは、利用可能な電力や冷却リソースをより有効に活用することも求められるだろう。