世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


3月 27, 2017

HPCの歩み50年(第115回)-2005年(a)-

小柳 義夫 (高度情報科学技術研究機構)

日本の次世代スーパーコンピュータ計画は「最先端・高性能汎用スーパーコンピュータ」として次第に具体化してきた。提示されたシステムイメージはベクトルとスカラと特定処理演算加速部のハイブリッドシステムであった。要素技術開発が始まり、本計画も次年度予算案に計上される。ブッシュ大統領はPITACを2期目で終了させた。BlueGene/Lが多数設置され、Top500の上位を占めた。

社会の動きとしては、1/12朝日新聞の記事で、安倍晋三らからNHKへの政治圧力が露呈、1/20ブッシュ2期目の米大統領就任、1/25 NHKの海老沢勝二会長辞任、2/16京都議定書発効、2/7中部国際空港開港、2/16茨城県南部地震、3/10島根県議会が「竹島の日」を制定、3/20福岡県西方沖地震、3/25愛知万博開幕(9/25まで)、3/28再びスマトラ島沖地震(M8.6)、4/1個人情報保護法全面施行、4/5名張毒ぶどう酒事件の再審開始、4/9北京で大規模な反日デモ、大使館襲撃、4/25尼崎市でJR福知山線脱線事故、5/5米軍基地内でコーラン冒涜事件、5/16靖国問題で日中対立激化、7/5郵政民営化法案は衆院で可決されたが、自民党の51人が造反し、反対か欠席、7/6~8英国グレンイーグルズで第31回サミット、7/7ロンドン同時爆破事件、7/26野口聡一が搭乗したDiscovery打ち上げ、8/8郵政民営化法案が参院で否決、小泉首相は衆院を解散、8/18新党大地結成、8/21新党日本結成、8/24つくばエクスプレス開業、8/26ハリケーン「カトリーナ」フロリダ州に上陸、ついでニューオーリンズに再上陸、9/11衆院選挙で自民圧勝、堀江貴文落選、9/12惑星探査機「はやぶさ」が小惑星イトカワへ到着(11/26岩石採取)、9/21布川事件の再審開始、9/30デンマークの新聞がムハンマドの風刺画を掲載し問題に、10/1バリ島で2002年に続いて同時爆弾テロ、10/14郵政民営化法案成立、11/15九州国立博物館開館、11/1東京証券取引所システム障害のため一時全取引停止、11/15ブッシュ米大統領来日、日米首脳会談、天皇の長女・紀宮清子結婚、11/17耐震強度構造計算書偽装事件(姉歯事件)、12/8米国産牛肉の輸入再開を決定(16日第1便到着)。

2005年は、Albert Einsteinが3つの重要な論文(光量子仮説、ブラウン運動の理論、特殊相対性理論)を発表した1905年から100周年ということで、IUPAPが世界物理年(World Year of Physics 2005)として制定し、世界中で様々な行事が行われた。オーストリアの物理学者が提唱した「物理の光で世界をつなぐ」イベントは、アメリカのPrincetonから光信号を発信し、ほぼ1日かけて地球を一周し、それに合わせて家の電気を消すなどして光の波を現出させる計画であった。韓国の一部で、光のリレーを竹島(韓国名独島)を通すアイデアが出され、日本側は当惑した。

私事ではあるが、2005年度は東大での最後の年となった。

次世代スーパーコンピュータ計画

2004年からペタスケールを狙う次世代スーパーコンピュータ計画が始まったが、2005年はいよいよ具体化が進められる。

1) 田中昭二先生
財団法人国際超電導産業技術センターの超電導工学研究所(東雲)から電話があり、所長の田中昭二先生(東大名誉教授、1927/9/19~2011/11/11)が会いたいということであった。2月23日、田中先生は東大の筆者の研究室を来訪された。お付きがぞろっと随行して来るのかと思ったら、なんとお一人であった。

田中先生「今度、日本でもペタフロップスの計算機を開発するということですが」
筆者「その通りです」
田中先生「当然、超電導ですよね!」
筆者「それがシリコンなんです。超伝導はその次でしょう」

恐らく、HTMT(1999年頃のTom Sterlingが提案した超伝導を含むコンピュータシステム)のことが頭にあったのであろう。田中先生はガクッと肩を落とされ、とぼとぼと帰っていかれた。このご縁で、超電導工学研究所や田中先生とその後多少のおつきあいをした。超伝導素子技術はこの年のSC|05で若干議論され、日本の寄与も大きいようである(後述)。しかしエクサでも超伝導は聞こえない。余談であるが、「超伝導」は強相関現象そのものを視野に入れた物理の用語、「超電導」は電気抵抗が0となることに重点を置く工学の用語である。

2) 計算科学技術推進ワーキンググループ
前年8月から始まった、文部科学省 科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会 情報科学技術委員会の計算科学技術推進ワーキンググループは、月に1回程度の会議を精力的に行い、8月には2006年度概算要求を念頭に第2次中間報告書を公表した。2005年2月から、大島まり(東大生研)、鷹野景子(お茶大)、中野達也(医薬品食品衛生研究所)、横川三津夫(産総研)が委員に加わっている。

この間に総合科学技術会議の評価があり、理研が開発主体になるなどの動きが並行して進んでいた。会議の回数には議事録をリンクしてある。2007年7月以前に終了した部会等の情報にポータルがある。

会議 日付 主な議事
第6回 2005年1月27日(木) 平成16年度報告(案)について。性能目標は数値だけでよいか、質的な変化も重要との指摘。(配付資料
第7回 2005年3月8日(火) 将来のペタフロップス級スーパーコンピュータとの連携について(根元、下條、村上プレゼン)。
第8回 2005年4月26日(火) 地球シミュレータの経緯と、ペタフロップス超級コンピュータ開発プロジェクトへの提言(横川、松岡浩プレゼン)。グランドチャレンジとなるアプリケーションと必要とされるシステム要件。
第9回 2005年6月3日(金) 将来の研究目標(竹内郁雄、姫野、松岡、渡邉、横川プレゼン)。グランドチャレンジ、OSやDB、システム開発計画、第2次中間報告骨子について。(配付資料
第10回 2005年7月15日(金) バイオサイエンス(郷信広プレゼン)、第2次中間報告案、概算要求について。(配付資料
第11回 2005年8月10日(水) 超並列方式(朴泰祐プレゼン)、「最先端・高性能汎用スーパーコンピュータの開発利用」プロジェクトにむけて、第2次中間報告案。(配付資料
  2005年8月24日 第2次中間報告書
第12回 2005年10月11日(火) 津波防災(今村プレゼン)、可視化(小野プレゼン)、理研を整備主体候補として選定。
第13回 2005年10月18日(火) 提言(谷啓二プレゼン)、開発体制の整備について(配付資料
第14回 2005年12月2日(月) ナノテク(寺倉プレゼン)、生命(中村春木プレゼン)、共用について(配付資料

 

中間報告書にあるとおり、これらの会議で、科学技術や産業を牽引する力、学際的な波及効果や意義に着目してアプリケーションの分析を行い、次世代スーパーコンピュータのターゲットにふさわしいグランドチャレンジとして以下の8分野に整理した。すなわち、(1) 物質・材料(ナノテクノロジーなど)、(2) ライフサイエンス、(3) ものづくり、(4) 防災、(5) 地球環境、(6) 原子力、(7) 航空・宇宙、(8) 天文・宇宙物理である。後述する、総合科学技術会議の評価部会に提出された資料では、この(1)と(2)にあたる2分野がグランドチャレンジの例として挙げられている。この2つは、NAREGIでもグランドチャレンジと位置づけられて来たが、なぜこの2つだけが取り上げられたかは不明である。2006年にはこの2分野のアプリケーション開発が始まっている。

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当時想定されていた応用分野。後述の総合科学技術会議の資料から。

3) 科学技術学術審議会
2004年9月2日に設置された科学技術・学術審議会基本計画特別委員会で、2005年4月8日中間とりまとめをおこない、国家基幹技術~国の持続的発展の基盤であって長期的な国家戦略を持って取り組むべき重要な技術の例としてペタフロップス超級スーパーコンピュータを提示した。

4) 情報科学技術委員会
文部科学省 科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会 情報科学技術委員会は頻繁に開かれている。

第20回 2005年1月14日(金) 第3期科学技術基本計画策定に向けて(配付資料
第21回 2005年1月26日(水) 計算科学技術推進ワーキンググループ平成16年度報告について(配付資料
第22回 2005年3月8日(火) NAREGI中間評価について(配付資料
第23回 2005年4月19日(火) NAREGI中間評価について、平成18年度に重点的に推進すべき研究開発について(HPC、Gridなど)(配付資料
第24回 2005年5月31日(火) 「次世代IT基盤構築のための研究開発」の課題の選定結果について(スーパーコンピュータ要素技術開発4件、革新的シミュレーションソフトウェアの研究開発1件など)(配付資料
第25回 2005年6月30日(木) e-Society基盤ソフトウェアの総合開発 中間成果報告会(配付資料
第26回 2005年7月11日(月) NAREGI中間報告会(三浦、松岡、関口、宇佐見、下條、青柳、平田、岡崎、永瀬、前川、高山、寺倉らが報告)(配付資料
第27回 2005年7月21日(木) NAREGI中間報告について、平成18年度予算概算要求について(ベクトルを入れるかどうかで議論)(配付資料
第28回 2005年8月24日(水) e-Society中間評価、NAREGI中間評価、計算科学技術推進ワーキンググループ第2次中間報告など(配付資料
第29回 2005年10月24日(月) 京速計算機システムの整備主体について(配付資料

 

2005年5月31日の情報科学技術委員会(第24回)では、将来のスーパーコンピューティングのための要素技術の研究開発プロジェクト(次世代IT基盤構築のための研究開発)(2005年度~2007年度)が議論され、3名のPCの審査により4件採択されたことが了承された。

5) 自由民主党の動き
自由民主党でもいろいろ動きがあった。昨年のところに書いたように、前年2004年7月26日、自由民主党にスーパーコンピュータ推進議員連盟が発足している。

2005年4月5日には自民党政調「科学技術創造立国推進調査会」に理化学研究所情報基盤センター長の姫野龍太郎が招かれ、「『次世代スーパーコンピュータ』について」という講演を行い、とくに国家基幹技術として推進することの意義を強調した。

5月には、自由民主党文部科学部会で「科学技術創造立国の実現に向けて取り組むべき重要政策について(中間報告)」が出され、国家基幹技術として、スーパーコンピュータや光計測システムなどが上げられた。また、6月、自由民主党科学技術創造立国推進調査会において、次世代スーパーコンピューティング、宇宙システムなどの国家重要技術は国が責任をもって推進することとなった。

7月19日、自由民主党のスーパーコンピュータ推進議員連盟が初会合を行った。会長の尾身幸次・元科学技術担当大臣が「これからはスーパーコンピューターが、世界の科学技術の中で非常に大きな役割を果たすことになると思うので、日本がその性能で世界のトップをめざすことは欠かせない」と述べた。これを受けて出席した議員から「アメリカをしのぐような世界一の性能を持つスーパーコンピューターを作るべきだ」という意見や、「大学院を整備するなどして、人材育成を急ぐ必要がある」といった意見が出され、来月13日までの今の国会の会期中に政府に対する提言をまとめることを確認した。次に述べるように、文部科学省はこのあと7月25日に「京速計算機システム」の開発計画をマスコミにリークした。

7月27日16時から自由民主党本部に川添良幸(東北大学 情報シナジーセンター長)及び姫野龍太郎(理化学研究所 情報基盤センター長)が招聘され、議連においてスーパーコンピュータの現状と未来についてプレゼンを行った。内閣府、文部科学省、総務省、経済産業省の関係者も出席した。

プレゼンでの概要は以下の通り。日本のTop500のシェアが、1993年の21%から2004年には6%と激減する一方、中国等が伸びてきている。日本が伸びないのは市場の50%以上を占めるアメリカで日本のスパコンが売れないことが一因である。スパコンを開発し、新材料設計などを推進するとともに、開発したスパコン用のソフトウェアを開発し、それを産業界に使用させることが重要。そのためには、産学官の連携でソフトウエアの開発が必要であり、ソフトウエア開発者の教育も重要である。

最後に尾身幸次会長から、次回は役所側からの意見を聞きたいとのことで、議事は終了した。

8月、議員連盟は政府に勧告を提出した。

6) 省間連携
1990年前後まではコンピュータといえば旧通産省の「縄張り」であり、筑波大学が1987年にQCDPAXを開発するときも、「並列コンピュータ」ではなく「並列シミュレータ」であることを強調した。次世代スーパーコンピュータ開発においても、各省庁のスーパーコンピュータ利用技術との連携が強調されている。経済産業省では、サーバ、ストレージ、自動車、大規模プラント、航空産業など、厚生労働省とは医薬品・医療など、国土交通省とは気象予報などへの寄与が標榜されている。

漏れ聞くところでは、経済産業省としては、文科省がすべてのHPCを担当することになって、それ以外のプロジェクトが立てにくくなるのではないか、本当に産業に使えるようなcost-effectiveなマシンができるのかどうかなどの懸念がささやかれているとのことであった。

7) 要素技術開発プロジェクト
文部科学省は2005年5月31日の情報科学技術委員会の決定を受けて、6月、次世代IT基盤構築のための研究開発のひとつとして、「将来のスーパーコンピューティングのための要素技術の研究開発プロジェクト」を開始した。2005年度~2007年度までの3年間。4件が採択されている。いずれも大学と産業界との合同チームである。2004年の概算要求段階では3件程度ということであった。

○ペタスケール・システムインターコネクト技術の開発(研究代表者:九州大学村上和彰教授;九大、富士通)
○並列コンピュータ内相互結合網IP化による実行効率最適化方式の開発(研究代表者:東京大学平木敬教授;東大、慶応大、アラクサラネットワークス)
○低電力高速デバイス・回路技術・論理方式の研究開発(研究代表者:㈱日立製作所笠井憲一室長;日立、筑波大学、東京大学)
○超高速コンピュータ用光インターコネクションの研究開発(研究代表者:日本電気㈱野口孝行室長;日本電気、東工大)

HPCwire紙6月3日号は早速、「日本がBlueGene/Lを打倒すべく、2011年春までに3 PFlopsのスーパーコンピュータの開発を始めた」と報じている(3 PFlopsの根拠は不明だが、富士通は設置した「ペタスケールコンピューティング推進室」の目標値として3 PFlopsを示している)。

12月19日に、九州大学を中心とするPSI (PetaScale Initiative)プロジェクトは、日本科学未来館みらいCANホールにおいて「PSIシンポジウム2005~ペタスケールへのブレークスルーはここから生まれる」を開催した。他のプロジェクトもシンポジウムなどを開催したと思われる。

8) システムイメージ
次世代スーパーコンピュータの概念設計が始まるのは2006年度からであるが、要素技術開発と並行して次世代スーパーコンピュータのイメージ策定が始まった。この段階では、筆者は完全に蚊帳の外だったので詳細は不明。WGの理研関係者を中心にまとめられたようである。日本経済新聞5月30日朝刊では、「世界最速の次世代スーパーコンを産官学で開発へ」と題して、我が国が1000億円を投資して「1秒当たり1京回の計算速度(つまり10 PFlops)」を目標にスーパーコンピュータを開発すると報じた。この数字が一人歩きを始めた。

6月5日頃筆者に聞こえてきた噂は「ベクトル 0.5 PFlops、スカラ 0.5 PFlops、GRAPE-DR改良版20 PFlops (peak)」というシステム構成案であった。予算は500億円とか。他方、日本のお家芸のベクトルだけで作ろうという意見も強力なようであった。曰く、「市場原理で開発できないベクトルこそ、国家プロジェクトで作るべきである」と。某新聞社が取材に来たので、「システムから応用まで見通せるアーキテクトがリーダーシップを取れる体制でなければいい機械は出来ない。スパコン大プロの10 GFlopsのPHIマシン(1990)や、RWC-1(1998)や、JUMP-1(1999)は、研究としてはともかく、使えるマシンにはならなかった。(手前味噌ではあるが)CP-PACS(1996)は、今や往年のトップの栄光はないとはいえ、まだちゃんと動いて物理の結果を出している。わたしはベクトルは好きだし、優れた技術だとは思うが、次期マシンの中心的アーキテクチャには無理」というようなことを述べた。記事にはならなかった。「“地球シミュレータの夢よもう一度”などというのは、真珠湾で勝利して、大本営発表状態で、戦艦大和を建造しているようなものだ」と酷評する仲間もいた。

7月8日付けのReuters電は、文部科学省一高官の7月4日の発言として、「日本は、2011年3月までに毎秒1京回の(浮動小数)演算のできるスーパーコンピュータを開発することを目指している」と伝えている。これはその時点でのLLNLのBluleGene/Lより100倍近い性能である。このReuters電は、今やスーパーコンピュータ競争は、国の技術の優位性を争う代理戦争となっていると説明している。

7月25日、国内国外のメディアは、文部科学省の職員が匿名を条件に、毎秒1京回の計算のできる次世代スーパーコンピュータ「京速計算機システム」の設計、開発に着手すると語ったと一斉に報じた。「京速」の名称がメディアに出たのはこのときからであろう。総事業費は800億~1000億円で、2006年度予算概算要求に数十億円を盛り込む予定だが、プロジェクトの正式決定(8月末を予定)以前であるということで、この数字については正式に認めていない。完成は2010年度の予定。また、運用を担う「先端計算科学技術センター(仮称)」の設立方法や建設場所について調査研究も始める。マスコミの興味は「世界最速」の座が奪還できるかどうかということで、具体的なアーキテクチャは問題になっていない。また、このスーパーコンピュータでどんな応用を走らせるかについては、自然災害予測や、銀河形成や、薬剤と人体の相互作用など概念的にしか報じていない。NERSCの某氏は筆者に、「どんな計算機になるか興味を持って見ている。いずれにせよ、アメリカでHPCにもっと予算を出せ、という理由に利用されるであろう。」というメールをくれた。

讀賣新聞8月7日号でも、「京速計算機システム」という名前とともに、「世界最速スパコン開発へ、1秒間に1京回の計算」と報じている。来年度予算の概算要求には、研究開発費や設計費として30億~40億円を盛り込み、総事業費1000億円で2010年度完成を目標。スパコンを置く研究拠点として先端計算科学技術センター」(仮称)を新設する。立地は未定、としている。「京速計算機で、単純計算能力で世界1位を奪還するとともに、実際の研究で求められる複雑な計算をこなす実効性能でも世界最高を目指す。」という微妙な書き方をしている。

もし噂のようにベクトル、スカラ、専用計算機の異種構成だとすると、アプリをどう走らせるかが問題になる。おそらく、LinpackはGrape-DRのような専用計算機で走らせて10 PFlopsを出すのであろうが、本当に出るのかが問題となる。また種々の応用はどのアーキテクチャ(または組み合わせ)の上で走るのかも疑問になった。専用計算機は、銀河やMD(Molecular Dynamics、分子動力学)などの限られた応用でしか高い性能が出ないのではないか。とすると、多くの応用は1 PFlops程度のベクトルやスカラ計算機で実行するのに、Linpack性能10 PFlopsのチャンピオンデータだけを専用計算機で実現するのでは「1京回の計算速度」という趣旨とは違うのではないか、など仲間内で議論した。

その後の動きは次回。早くも北海道が候補地に名乗りを上げた。

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