世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


4月 17, 2017

HPCの歩み50年(第118回)-2005年(d)-

小柳 義夫 (高度情報科学技術研究機構)

第一世代のCellの技術概要が発表された。中野守氏が日本クレイの社長に就任した。産総研に続き、KEKがBlueGene/Lを10ラック導入すると発表した。7月ブッシュ大統領はPITACを継続しなかった。計算科学がまさに花開こうとしている時点でのPITACの消滅に、サイエンティストからは批判の声が上がった。フル構成の(64ラック)BlueGene/Lは280.6 TFlopsの性能を出した。

日本の企業の動き

1) 富士通
富士通は6月22日、2010年度末にPFlops(ペタフロップス)級の演算性能を持った次世代スーパーコンピュータを稼働させることを目標に、要素技術の研究開発を進めていくと発表した。2004年10月に富士通研究所に設置した「ペタスケールコンピューティング推進室」(木村康則室長)は、「ピーク性能で3 PFlops、実効性能で1 PFlops超を目標とする。要素技術のうちインターコネクトについて、富士通は九州大学、福岡県産業・科学技術振興財団、九州システム情報技術研究所との産学官連携によって、今後3年間で高性能かつ高機能なインターコネクト技術を研究開発する。この研究では演算機能を持たせたスイッチを開発して、10000ノード程度の接続を可能にしつつ総和計算の高速化と計算ノードの負荷低減を狙う。また接続に使う光ファイバーを波長多重技術によって広帯域化してケーブル数を減らすとともに、光パケット信号を電気信号に変換することなくそのままスイッチングする「光パケット技術」や、インターコネクトの性能を評価する技術も開発する。」と述べた。

2) 日本電気
7月12日に、NEC本社ビル地下にて、第20回NEC・HPC研究会が開催された。「超電導SFQ素子はCMOS素子の後継となるか」(超電導工学研究所、田中昭二)、「不揮発性メモリMRAMの最新動」(NEC、田原修一)、「地球シミュレータを使ったテラヘルツ発振」(RIST、立木昌)、「量子コンピュータ実現に向けた超伝導デバイスの現状と展望」(NEC、蔡兆申)、「エレクトロニクスの限界を打破するSiナノフォトニクス」(NEC、大橋啓之)などの講演があった。

11月9日には芝パークホテルにおいて、第21回NEC・HPC研究会が開催された。“Advanced Supercomputing Concepts and Applications in Science and Engineering at HLRS”(HLRS、Dr. Uwe Kuester)、「ペタフロップス時代の情報基盤センターの役割と東北大学情報シナジーセンターでの取り組み」(東北大、小林広明)、「次世代スーパーコンピュータ構想と生命・生体シミュレーションへの挑戦」(理研、姫野龍太郎)、「地球シミュレータを活用した自動車性能シミュレーションの研究及びペタフロップスコンピュータへの期待について」(日本自動車工業会、梅谷浩之)、「材料シミュレーション分野からの期待」(東大、杉野修)、「ペタコンに向けたNECの取り組み」(NEC、野口孝行)などの講演があった。

2005年6月、英国のSurrey大学が、SX-6/4Bシステムを設置したことが発表された。主として、TAC (Theory and Advanced Computation) groupが利用する。

3) 東芝・日本電気
東芝とNECエレクトロニクスは11月9日、45 nmのシステムLSI製造技術を共同開発すると発表した。具体的には(1)CMOS基幹プロセスは東芝アドバンストマイクロエレクトロニクスセンターに技術者を集めて共同開発し、(2)開発成果のプロセス技術は両社が生産拠点で展開するとの2点で合意した。

これにより、投資余力に勝る米Intelや韓国サムスン電子に対抗する。現在は各社が線幅90nmの製品を量産中で、次世代の65nmはIntelや松下電器産業が生産を始めたばかりである。東芝はその次の45 nmでソニーと共同開発を進めてきたが、業績悪化で単独での開発が難しくなったNECエレも取り込み、3社で量産での先行を目指すとのことである。

4) クレイ・ジャパン社
1月25日、中野守氏がHewlett-Packardを辞めてクレイ・ジャパン・インクの社長に就任したことが発表された。中野氏は元日本Digital Equipment社に所属していたが、DEC社がCompaqに吸収されてCompaqのテクニカルサポート本部兼HPTC推進部に所属していた。その後、Compaq社がHP社に合併され、米国HP社のAsia-Pacific LINUX&HPC General Managerを務めていた。SGIから独立後のCray Japanとしては初の専任社長とのことである。

5) Cellプロセッサ
Cellについては、「アメリカ企業の動き」2) IBM (Cell) に記す。

6) 日本IBM社
2004年のところに書いたように、産総研(産業技術総合研究所、AIST)生命情報科学研究センターは、東京・お台場の「バイオ・IT融合研究棟」内に、たんぱく質の構造解析による新薬の開発などのために、BlueGene/Lを2005年2月に導入した。4ラックで8192コア。2005年6月のTop500リストでは、Rmax=18.665 TFlops、Rpeak=22.9376 TFlopsで8位であった。

9月28日、日本IBM社は、KEK高エネルギー加速器研究機構にBlueGene/Lを10ラック導入すると発表した。POWER5ベースのHITACHI SR11000と共に、日立製作所が主契約社(プライムコントラクター)として受注した。稼動予定は2006年3月。

日本IBM社は天城山に天城ホームステッドという温泉付の豪華なセミナー施設をもっているが、そこでアカデミアや産業界の研究者を集めて、多くのセミナーを開催した。

・第14回IBMライフサイエンス天城セミナー(2005年3月25日~27日)
・第15回IBMライフサイエンス天城セミナー「医療と創薬の新時代」(2005年6月17日~19日)
・第16回IBMライフサイエンス天城セミナー「Pharco Genomics / Clinical Genomics」(2005年9月16日~18日)
・IBM HPC天城セミナー(2005年12月3日~5日)

HPCセミナーでは「最近のHPC事情」という講演を行った。

7) ビジネスグリッド
富士通、日立、日本電気の3社は、2003年7月から経済産業省のグリッドコンピューティングプロジェクトにおいてグリッドミドルウェアの開発を進め、ユーザと連携した実証実験を実施することを2004年10月に発表していたが、3社は2005年6月20日から実証実験を行った。この実験では、富士通のプラットフォーム・ソリューション・センターと、日立のハーモニアス・コンペテンス・センターと、日本電気のiBestSolution Centerとをネットワークで結合し、グリッド技術がビジネスに有効であることを実証する予定である。

8) NTT西日本
NTT西日本(西日本電信電話株式会社)は、遺伝子の構造解析や気象予測など高速で大規模な計算処理を必要とする顧客に対し、2005年12月22日から。グリッド技術を利用した計算処理の受託業務を提供する。このサービスは、フレッツユーザから提供されるPCをIPv6網で結び、遊休能力を活用するもの。利用料金は、100台分のCPU能力を1ヶ月利用する場合約130万円である。NTT西日本は、2004年2月~4月に、国立遺伝学研究所とグリッドの共同実験を行ってきた。

9) ベストシステムズ社
同社は2005年5月31日の取締役会で、平成電電傘下のドリームテクノロジー社の子会社となることを決定し、6月30日の臨時株主総会で正式決定した。ところが10月3日、平成電電が民事再生法の適用申請を行ったので筆者らは心配した。12月12日、ドリームテクノロジー社がM&Aコンサルティング社(村上ファンド)の支援を得て再生スポンサーとして立候補した。ところが2006年4月16日支援打ち切りを決定し、平成電電は破産した。6月16日、事業は日本テレコムに譲渡された。某誌にはくそみそに書かれたが、結局ベストシステムズ社には大きな影響はなかったようである。2007年3月5日、平成電電元社長の佐藤賢治ら計5名が詐欺容疑で警視庁に逮捕された。

10) 堀義和氏退職パーティー
1987年から日本クレイ社長を務め、SGIとの合併後1997年4月に日本コダック社長に転任した堀義和氏は、2004年10月社長職を小島佑介副社長に譲り、会長となった。2005年6月30日にコダックを退職したのを記念して、8月1日に帝国ホテルで盛大な記念パーティーが開催された。

アメリカ政府の動き

1) PITAC第2期
アメリカの情報科学技術政策がどうあるべきかを大統領、議会、連邦政府機関などに勧告するPITAC(The President’s Information Technology Advisory Committee)は1997年に設置され、第1期が2001年まで続いた。第2期が2003年11月に始まり、2005年6月まで続いた。その後は置かれていない。

第2期の共同議長は、Marc R. Benoiff(Salesforce.comのCEO)とEdward D. Lazowska(Washington大学のthe Bill & Melinda Gates Chair教授)が5月に任命された。委員は大学関係8名、産業界14名。HPC関係で目に付く委員は、David A. Patterson (UCB)、Daniel A. Reed (North Carolina大学)、Eugene H. Spafford(Purdue大学)といったところか。2005年までの会議は以下の通り。

2003年11月12日 「新しい医療:ITはアメリカの医療制度をどう変えるか」
2004年4月13日 「ネットワークと情報技術の研究開発へのアメリカ政府の投資」
2004年6月17日 「ネットワークと情報技術の研究開発へのアメリカ政府の投資」
2004年7月29日 「サイバーセキュリティの研究開発」に関するタウンホールミーティング
2004年11月4日 コンピュータ科学小委員会」(遠隔会議)
2004年11月10日 「コンピュータ科学に対する国家的優先課題」に関するタウンホールミーティング(SC2004において)
2004年11月19日 「サイバーセキュリティ小委員会の報告」
2005年4月14日 「コンピュータ科学に関する報告書(案)」に関する議論
2005年5月11日 「コンピュータ科学に関する報告書(案)」に関する議論

 

この期のPITACは「ITによる医療の革新」(2004年6月)、「サイバーセキュリティ:優先順位付けの危機」(2005年2月)、「コンピュータ科学:アメリカの競争力を確保するために」(2005年6月)の3件の報告書を公開している。いずれもPITACのページからリンクされている。

2005年7月1日にBush大統領はPITACを消滅させた。計算科学がまさに花開こうとしている時点でのPITACの消滅に、サイエンティストからは批判の声が上がった。

2) The Council on Competitiveness
U.S. Council on Competitivenessは、企業のCEO、大学の学長、労働界のリーター、国立研究所の所長などからなるNPOであり、日本やドイツが勃興してアメリカの優位性を脅かし始めた1986年に創立された。2004年7月にはWashington DCで“the High Performance Computing Users Conference: Supercharging U.S. Innovation & Competitiveness”を開催し、200人以上の高いレベルの参加者を集めた。その報告書が2005年1月に公表された。

これによると、ビジネスの97%にとってHPCは不可欠であり、HPCの利用により製品開発サイクルの加速と市場展開への時間短縮により競争力が強化される。しかし、HPCへの投資によって得られる利益を正確に定量化できないという問題のために、HPCの推進が妨げられている。古いソフトウェアを更新するというような技術的また教育的障壁を乗り越え、計算科学者のプールを増やすには、政府、産業界、アカデミアのより協力な協力関係が必要である、と述べている。

次のHPC Users Conferenceは、2005年7月13日にWashington, DCで開催される。

3) High-Performance Computing Revitalization Act of 2005
2004年には“H.R.4516 – Department of Energy High-End Computing Revitalization Act of 2004”が提出され、11月30日に成立した。これはDOEに限った法案であった。2005年にはJudy Biggert下院議員(共和党、Illinois州)が“H.R. 28, High-Performance Computing Revitalization Act of 2005”を提出した。これは、“the High-Performance Computing Act of 1991”を修正するもので、大統領にHPC研究開発プログラムの導入を指示している。ただし、新しい予算の増額は入っていない。他の4法案(地球に衝突する小惑星の発見、アメリカ鉄工業のエネルギー効率の向上、アフリカ系アメリカ人女性の科学上の貢献の称揚、メタンフェタミン中毒治療)とともに下院に提出され、下院の科学委員会の審議に掛けられた。この法案は、ホワイトハウス科学技術政策局(OSTP)に、

(1) 連邦政府のHPC研究開発やネットワーキング他の活動に対する目標および優先事項の設定;
(2) こうした目標を実施するプログラム別構成分野(Program Component Area)の設置およびプログラムで取り上げるべきグランドチャレンジの確認;
(3) HPCシステムのロードマップの策定等を行うよう義務付ける

ほか、HPCに関する基礎研究や応用研究を実施するNSF、NAS、DOE、NIST、NOAA、およびEPAの責任に関する条項をも改定する(NEDOワシントン事務所:デイリーレポート)。

この法案は3月17日に下院の科学委員会を通過し、4月下旬に下院本会議でも可決されたが、上院は通っていない(らしい)。

例の辛口のコメンテータHigh-End Crusaderは、NSFはPACIを2004年9月末に終了させた後、計算科学への計算資源提供が十分でないこと、DARPAも基礎科学研究予算を減らしていることなど、政府がHPCへの投資に熱心でないことを批判している。

4) INCITE
2004年のところに記したように、公募制の資源提供プログラムINCITE (the Innovative and Novel Computational Impact on Theory and Experiment)は昨年6月から第2期の募集を行っていた。23件の応募があり、要求資源は2842万ノード時間であった。このうち65%はアメリカ国内の大学からのものであった。分野としては11の分野にまたがる。48%はDOE以外の機関から研究資金を得ていた。 2005年1月、DOE長官Spencer Abrahamは、この中から3件の科学研究プロジェクトに合計650万ノード時間を提供すると述べた。使う資源はNERSCのIBMのマシンである。NERSCのストレージも提供される。採択されたプロジェクトは以下の通り。

(1) 燃焼シミュレーション
“Direct Numerical Simulation of Turbulent Non-premixed Combustion – Fundamental Insights towards Predictive Modeling,” by Jacqueline Chen and Evatt Hawkes of Sandia National Laboratories in Livermore, Calif.(LLNLの隣にあるSNL第2キャンパス)
計算時間 250万ノード時間
(2) 天体物理
“Magneto-rotational instability and turbulent angular momentum transport,” by Fausto Cattaneo, University of Chicago.
計算時間 200万ノード時間
(3) 生命科学
“Molecular Dynameomics” by Valerie Daggett of the University of Washington
計算時間 200万ノード時間

8月にANLとIBMは、IBMのT.J. Watson Research Center (Yorktown Heights, N.Y.)のBlueGene (BGW)をINCITEに提供する協定を結んだと発表した。

DOEは、U.S. Council on Competitivenessの勧告に従い、2006年のINCITE募集において、企業からの提案も受け付けると発表した。

5) ESnet
ESnet (Energy Science Network)はDOEが運営するエネルギー科学のためのネットワークで、DOEの研究所同士のみならず他のネットワークや機関をつないである。2005年3月、DOEは、ESnetのバックボーンとしてNLR (National LambdaRail) を採用することを決定したと発表した。

2005年7月、Internet2はNLRと合併する協議を始めたとの報道があったが、Wikipediaによると2004-2006に合併の可能性について踏み込んだ協議を行ったが、2007年秋には方針の違いから合併できないとの結論になったとのことである。

6) LLNL (BlueGene/L)
LLNL (Lawrence Livermore National Laboratory)のBlueGene/Lは、2004年11月のTop500で、地球シミュレータとNASAのColumbiaを抜いてRmax=70.720 TFlopsでトップの座に輝いた。その後、BlueGene/Lの規模を16ラックから32ラックに倍増したところ、2005年3月23日(米国時間)、135.5 TFlopsのLinpack性能を記録したと発表した。これは驚かなかったが、Car-Parrinello第一原理分子動力学が動いているというニュースには感心した。後述するように、2005年6月のTop500ではRmax=136.8 TFlopsで堂々の1位を獲得した。

BlueGene/Lはラックに1024個のプロセッサが搭載され、各プロセッサはdual coreである。通常は一方のコアは通信やI/Oなどを専用に司るが、Linpack測定では両方とも計算に用いている。

10月27日(米国時間)に、LLNLとIBMはフル構成の(64ラック)BlueGene/LがRmax=280.6 TFlopsの性能を出したと発表した。

7) LLNL (ASC Purple)
1995年に始まったDOEのASCI (Accelerated Strategic Computing Initiative)計画は、ASCI Red, ASCI Blue Pacific/Mountain, ASCI White, ASCI Q, ASCI Red Stormと開発されたが、当初予定の10年間が経過した2004年にASC (Advanced Simulation and Computing Program)と名称変更されて継続された。

100 TFlops超級を目指すASC Purpleは、IBMがPOWER5(1.9 GHz)×8からなるIBM eServer p5-p575がノードで、全体は1280ノードの設計であった。IBMは7月22日(米国時間)に、8月納入を前にしてIBM社内で事前テストを行い111 teraFlopsを達成したと発表した。数字が合わないと思っていたら、このteraFlopsなる指標は、ピーク速度とその30%以上のtwo Marquee codesの実アプリの性能とを足したもののようである。これで101を越えることが条件であった。8月にLLNLに設置、10月に検収テストを行う。

2005年11月のTop500では、Rmax=63.4 TFlops、Rpeak=77.8 TFlopsで3位となった。デモしたのは1280ノードのシステムであるが、250ノードはLLNLの機密エリアに、108ノードは公開エリアに設置してあるとのことである。

8) LANL
LANL (Los Alamos National Laboratory)は、創設以来California大学が運営してきたが、これまでセキュリティー上の問題や不正疑惑不祥事が続いていた。1999年には、研究所の科学者だった台湾出身のWen Ho Lee(李文和)氏が中国のスパイではないかとの容疑で拘束されるという事件があり、政府とLANLを震撼させた。スパイ容疑は不十分なもので、Lee氏は機密情報の管理ミスで有罪を認め、連邦裁判官から謝罪を受けて釈放された。研究所は、ほかにもセキュリティー上の問題やクレジットカードの濫用、備品の盗難などといった管理の不手際が続出して揺れつづけた。

これを受けてDOEは63年前の研究所創設以来初めて、研究所の運営契約を入札で決めることとした。応札したのは、California大学とエンジニアリング大手のBechtel Corp.など4組織の連合と、Texas大学と軍需大手のLockheed Martin社の連合の2者であった。DOEは12月21日(米国時間)、LANLの運営権を前者に与えると発表した。7年の契約で$512Mであるが、最大20年まで延長できる。California大学が継続する形となったが、DOEのSamuel W. Bodman長官は「これは新しいチームとの新しい契約で、ロスアラモス国立研究所の運営に対する新しいアプローチだ。これまでの契約の単なる延長ではない」と強調した。

9) NERSC
NERSC (National Energy Research Scientific Computing Center)は、2005年8月、722プロセッサのLinux Networx社のEvolocityクラスタを導入しJacqardと命名した。ノードは2個のAMD Opteronプロセッサが搭載されたModel 248であり、722個のうち640個が計算に、残りはI/OやTSSサービスなどに用いられる。相互接続はInfinibandである。ピーク性能は3.1 TFlopsである。

10) TeraGrid
2005年1月、NCSA (the National Center for Supercomputing Applications, University of Illinois, Urbana-Champaign)は、SGI社のSMP (Symmetric Multi-Processor) Altixにより6.5 TFlopsの計算能力を増強したと発表した。このシステムはCobaltと名付けられ、Teragridにおける最大のSMPシステムである。Cobaltは1024個のItanium 2を搭載し、Linux OSで走る。すべてのプロセッサからアクセスできる3 TBのメモリを持ち、NCSAの他の計算資源からもアクセスできる370 TBのSGI InfiniteStorageファイルシステムを持つ。SMPは、AMF (adaptive mesh refinement)など規則性のない多くの科学技術計算にとって有利性があり、データマイニングや可視化にも有効である。3月からはユーザに公開される。

2005年4月、NSFはTeraGrid(正式名称はExtensible Terascale Facility)に対し、5年間で総計$150Mの予算を付けたことを発表した。このうち$48Mは、Charlie Catlett (TeraGridプロジェクトのリーダーであり、前GGF会長)の指導の下にシカゴ大学が担当し、全体的なアーキテクチャ、ソフトウェア統合、ユーザサポート調整などに使われる。残りの$100Mは、TereGridの8カ所の資源提供機関の運用管理やユーザサポートに使われる。

Catlettはこう述べている。「TeraGridはこれまでの経験から、信頼性が高く維持可能なサーバーインフラストラクチャを構築するには、計算資源を提供しグリッド技術によりアクセス可能にしている組織の間の密接な協力とともに、全体の運営に責任をもつ人の数があるクリティカル・マスを越えることが重要である。」

11) NCAR
2005年4月、NCAR (The National Center for Atmospheric Research)はColorado大学と協力して、大気海洋のシミュレーションのためにIBM BlueGene/Lを導入すると発表した。1ラック(5.7 TFlops)のようである。BlueGeneで気象のシミュレーションを行うということでビックリした。

次は、標準化と世界の学界の動き。

(タイトル画像:ASC Purple  出典:ローレンスリバモア国立研究所)

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