世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


7月 24, 2017

HPCの歩み50年(第129回)-2006年(e)-

小柳 義夫 (高度情報科学技術研究機構)

東京工業大学のTSUBAMEが、まずOpteronで地球シミュレータを抜いて日本最高速のコンピュータとなった。続いてClearSpeedを入れて性能を向上。筑波大学ではPACS-CSが完成した。理研では分子動力学専用計算機MDGRAPE-3が稼動した。T2K構想が始まった。

日本の学界の動き

1) HPCS 2006
HPCS2006(2006年 ハイパフォーマンスコンピューティングと計算科学シンポジウム )は、2006年1月19日-20日に東京大学 武田先端知ビル6F 武田ホールで開始された。主催は情報処理学会 ハイパフォーマンスコンピューティング研究会 、協賛は情報処理学会 計算機アーキテクチャ研究会、日本応用数理学会、日本化学会情報化学部会、日本計算工学会、日本シミュレーション学会、日本物理学会、日本機械学会 計算力学部門、グリッド協議会、PCクラスタコンソーシアム、電気学会、情報計算化学生物学会である。参加人数は135名であった。

基調講演は清水 茂則(日本IBM )による「Cell及びBlue GeneのアーキテクチャとHPCへの発展」、招待講演は池上 努(産総研)による「光合成タンパク質の全電子計算 — 20,000原子を超えて」であった。プログラムはwebに記録されている。

2) Hokke 2006
Hokke 2006(第13回「ハイパフォーマンスコンピューティングとアーキテクチャの評価」に関する北海道ワークショップ)は、2006年2月27日~3月1日に北海道大学 学術交流会館で開催された。これは第159回計算機アーキテクチャと第105回ハイパフォーマンスコンピューティングの合同研究発表会である。39件の講演が行われた。28日にはキリンビール園スペースクラフトで懇親会が行われた。

3) SACSIS 2006
SACSIS 2006(先進的計算基盤システムシンポジウム )は、2006年5月22日(月~24日(水)に大阪国際会議場(グランキューブ大阪)で開催された。SACSISとして4回目である。主催は、情報処理学会の計算機アーキテクチャ研究会 (ARC)、システムソフトウェアとオペレーティングシステム研究会 (OS)、ハイパフォーマンスコンピューティング研究会 (HPC)、プログラミング研究会 (PRO)、アルゴリズム研究会 (AL) 、および電子情報通信学会・ コンピュータシステム研究専門委員会 (CPSY)とIEEE Computer Society Japan Chapterであった。協賛は、情報処理学会の数理モデル化と問題解決研究会 (MPS)、組込みシステム研究会 (EMB)、および電子情報通信学会のディペンダブルコンピューティング研究専門委員会 (DC) 、リコンフィギュラブルシステム研究専門委員会 (RECONF)である。組織委員長は後藤厚宏(NTT)、プログラム委員長は朴 泰祐 (筑波大学)であった。

基調講演は、”Opportunities and Challenges for Future Generation Grid Research“ (Dennis Gannon, Indiana University)、招待講演は「品質向上から機能安全へパラダイムシフトする組込みソフトウェア」 (田丸 喜一郎 IPA/SEC)であった。チュートリアルは3件。昨年に続いてGrid Challenge 2006が行われた。

4) 数値解析シンポジウム
第35回数値解析シンポジウムNAS2006は、2006年6月13日~15日、パナヒルズ大阪(松下電器の保養所)で開催された。幹事代表は大阪大学都田艶子。

5) NGArch 2006
九州大学、(財)九州システム情報技術研究所、(財)福岡県産業・科学技術振興財団は、2006年7月19日、東京の学術総合センターにおいて、NGArch (Next Generation Architecture) Forum 2006を開催した。コンピュータアーキテクチャのCOEを目指すプロジェクトの研究成果を発表した。

●「科学技術計算専用ロジック組込み型シミュレーションに関する研究」、文部科学 省科学技術振興調整費総合研究、平成12年度~平成16年度
●「次世代システムLSIアーキテクチャの開発」、文部科学省知的クラスター創成事業、平成14年度~平成18年度
●「ペタスケール・システムインターコネクト技術の開発」、文部科学省次世代IT基盤構築のための研究開発「将来のスーパーコンピューティングのための要素技術の研 究開発」、平成17年度~平成19年度

当初KKRホテル東京を会場に予定していたが、参加者が100名を越えたので学術総合センターに変更した。懇親会はKKRホテル東京。

6) SWoPP 2006
SWoPP高知2006(2006年並列/分散/協調処理に関する『高知』サマー・ワークショップ)は、2006年7月31日(月)~ 8月2日(水)に高知商工会館で開催された。主催は、電子情報通信学会 のコンピュータシステム研究会 (CPSY)、ディペンダブルコンピューティング研究会 (DC)、および情報処理学会の計算機アーキテクチャ研究会 (ARC)、システムソフトウェアとオペレーティングシステム研究会 (OS)、ハイパフォーマンスコンピューティング研究会 (HPC)、プログラミング研究会 (PRO)、システム評価研究会 (EVA)、共催はIEEE Computer Society Japan Chapteである。

お楽しみセッションとして、パネルディスカッション「PFLOPSの先:私ならこう作る!あなたなら?」が飲み物付きで開催された。パネリストは 平木敬(東大)、中村宏(東大)、松岡聡(東工大)、佐藤三久(筑波大)、石川裕(東大)、モデレータは朴泰祐(筑波大)であった。

7) 数理解析研究所
京都大学数理解析研究所では1969年から毎年数値解析関係の研究集会を行っている。2006年は38回目で、11月27日~29日に「数値シミュレーションを支える応用数理」という課題で開催された。代表者は土屋卓也(愛媛大)。講演内容は講究録 No. 1573に収録されている。

8) 筑波大学
筑波大学計算科学研究センターは、第二回「計算科学による新たな知の発見・統合・創出」シンポジウム 『計算科学の戦略と次世代スーパーコンピュータ』を2006年4月4日~5日につくば国際会議場(エポカルつくば)で開催した。講演資料などは現在でも見ることができる。

9) IPAB
IPAB(並列生物情報処理イニシアティブ)では第6回IPABシンポジウム「バイオナノの可能性を探る」を2006年2月10日日本科学未来館「みらいCANホール」で開催した。デモンストレーションも行われた。プログラムの大略は次の通り。

10:15 理事長小長谷明彦 開会のご挨拶とIPAB活動報告
10:30 甲南大学杉本直己 基調講演:「バイオナノ素子としてのDNA」
11:30 奈良先端浦岡行治 「バイオナノプロセスの現状と今後」
12:15   lunch break
13:30 東北大学川添良幸 「常識を破る-ナノテクで錬金術-」
14:30 東京大学陶山明 「DNAコンピューティングの最近の展開」
15:15   coffee break
15:45 座長:小長谷明彦
浦岡行治、川添良幸、陶山明・鬼塚健太郎
パネルディスカッション:
「バイオナノはシリコンコンピュータを越えられるか!」
17:50   懇親会

 

12月11日には、産総研臨海副都心センター別館で第7回並列生物情報処理イニシアティブ(IPAB )シンポジウムが開催された。プログラムの大略は以下の通り。

10:00 IPAB理事長小長谷明彦 ご挨拶
10:20 工学院大学小柳義夫 基調講演1「HPCの方向性“Future Direction of HPC」
11:00 Ying-Ta Wu, PhD 基調講演2「Grid-Enable in silico High-Througthput compound screening against Influenza A Neuraminidase」
12:00   休憩(ランチ)、展示
13:30 九州大学久原哲 基調講演3「マイクロアレイデータからのクラス分類とその応用」
14:20 北海道大学大学西村紳一郎 基調講演4「臨床グライコミクスとバイオマーカー探索」
15:10   休憩
15:20 秋田県立大学小西智一 研究発表1「新しい標準化方法によるDNAチップデータの改定と効果」
15;50 国立がんセンター水島洋 研究発表2「バイオインフォマティクスを活用した個人化健康管理」
16:20   休憩(コーヒー)+舞台替え
16:30 座長小長谷明彦
長嶋雲兵・原田義則・土肥俊・小倉誠・馬屋原善典・梶谷浩一
パネルディスカッション
「バイオインフォマティクスはビジネスになるか? Part2」
17:30   懇親会

 

10) JAXA
6月23日、JAXAは航空宇宙数値シミュレーション技術シンポジウム2006を如水会館で開催した。筆者は招待講演「スーパーコンピュータの歩み」を行った。

11) 東北大学
11月20日~21日、東北大学はStuttgart大学HLRSと共催で「第5回 テラフロップ ワークショップ」を東北大学青葉山キャンパスで開催した。日本電気が後援。招待講演は以下の通り。

講演者 題目
Michael Resch (HLRS) Overview of the Teraflop Workbench
姫野龍太郎(理研) Development of the Next Generation Supercomputer and its Application
坪井誠司(JAMSTEC) A Sustained Performance of 10+ Teraflop/s in Simulation on Earth Evolution Using 507 nodes of the Earth Simulator
中橋和博(東北大) Current Capability of Unstructured-Grid CFD and a Consideration for the Next Step
岩崎俊樹(東北大) Cloud resolving simulation of tropical cyclones
山本悟(東北大) Supercomputing of Flows with Complex Physics and the Future Progress

 

12) PCクラスタコンソーシアム
経済産業省RWCPの活動を中核としてPCクラスタ市場育成を目指して2001年10月4日に発足したPCクラスタコンソーシアムは、第1 回 PC クラスタワークショップ「ここまできたクラスタシステム」を2006年9月22日、NEC本社ビルで開催した。プログラムは以下の通り。

講演者 題目
石川 裕 (東京大学) 会長挨拶
朴 泰祐 (筑波大学) 科学技術計算用超並列クラスタPACS-CSの実装・評価・運用
秋葉 博 (アライドエンジニアリング) 大規模構造解析システム ADVC の運用事例
大下文則 (日本総研) PCクラスタでのLS-DYNAの実行環境の構築
田井 秀人 (メカログ ジャパン) 構造流体解析プログラムRADIOSSの並列計算性能に関して
西克也 (ベストシステムズ) パネル「PCクラスタが抱える現状」(講演者によるパネル)

 

13) 東京工業大学
東京工業大学のTSUBAMEが、地球シミュレータを抜いて日本最高速のコンピュータとなった。昨年のISC2005やSC|05で予告されていたように、東京工業大学は4月3日、スーパーコンピュータ「TSUBAME(Tokyo-tech Supercomputer and UBiquitously Accessible Mass-storage Environment)」を稼働した。これはAMD Opteron(2.4GHz/2.6GHz)のデュアルコア・モデル880/885を8基搭載するSun Fire X460サーバ655ノード(10480コア)を結合し、ピーク性能は50 TFlopsである。ClearSpeedのCSX600は各ノードに2個搭載され、これを含めれば85 TFlopsである。メモリ容量は21.4 TB、ディスク容量は1.1 PBを搭載している。ノード間の接続はVoltaireのInfinibandスイッチが使われるほか、ストレージはSunの「Thumper」(1PB)とNECの「iStorage S1800AT」(0.1PB)が組み合わされた。システム統合は日本電気である。

Linpack性能は日々向上していたが、5月3日に36.36 TFlops(ピークの72.91%)を達成し、地球シミュレータ(35.86 TFlops)を抜いただけでなく、SNLのCray XT3 (36.19 TFlops)も凌駕した。この性能はOpteronのみで達成した。
さらにチューニングを進め、2006年6月のTop500では、38.18 TFlopsで7位に入った。アジアでの最高性能である。ちなみに地球シミュレータは10位、筑波大学のPACS-CSは10.3 TFlopsで34位であった。

7月3日東京工業大学ではTSUBAMEの披露を行った。TSUBAMEは東工大のスーパーコンピュータとしては4台目。その名前は校章にあしらわれた「窓つばめ」と同じである。新入生でも使える「みんなのスパコン」がコンセプトで、「スーパーコンピュータの新しい利用モデルを確立したい」と表明した。

主契約は日本電気であるが、TSUBAMEの成果はAMDとSunにとってもHPC分野での大きな実績となった。Scott McNealy会長らSunのトップも「プロジェクトに注目していたとのことである。今後ClearSpeedを稼動させるとともに、2008年にはQuad-Coreへのアップグレードを計画している。

HPCwireには「サンは東から昇る」と題した松岡聡のインタビューがでた。「日出る処の天子、日没する処の天子に書を致す。つつがなきや。」(「日出處天子致書日沒處天子無恙云云」)。

10月頃、ClearSpeed社は声明を発表し、TSUBAMEに搭載されたCSX600をともに稼動させてLinpackを実行することに成功し、9 TFlopsの加速性能を実現したと発表した。東工大の遠藤氏ががんばったそうであるが、ロードバランスに相当苦労したものと思われる。同社は、アクセラレータを稼働させたにもかかわらず消費電力がほとんど増えなかったことを強調していた。11月のTop500では、47.38 TFlopsで9位を獲得した。性能は上昇したのに順位が下がったところが悲しい。

14) 筑波大学
筑波大学計算科学研究センターでは、PACS-CSが完成し、5/18 の DongarraらのLinpack Report にRmax = 10.35 TFLOPS で掲載された。国内マシンは TSUBAME の 38.18 TFLOPS が最高であるが、PACS-CS は 地球シミュレータに次いで第3位ということになった。6月のTop500においては34位。7月から運用を開始した。

梅村雅之らは、科学研究費補助金特別推進によりGRAPEと汎用プロセッサを結合させた宇宙計算用のFIRSTシミュレータを開発していたが、2004年度には16ノード(32CPU+16Blade-GRAPE)のFIRSTシミュレータ1号機を完成させていた。FIRSTシミュレータの構築に関しては、 ビジネスサーチテクノロジ(株)、住商エレクトロニクス(株)各社の協力を得た。2006年度には、計算機規模を拡大し256ノード (496CPU+240Blade-GRAPE)のFIRSTシミュレータを完成させた。このクラスタの各ノードはMulti-port Gbitスイッチにより 一様なネットワークで結合され、柔軟な並列処理環境が実現している。FIRSTシミュレータ256ノードのピーク性能は、専用機33 TFlops、 汎用機3.1 TFlopsである。「FIRSTシミュレータは、新世代の超高密度融合型並列計算機への 道を切り拓くものである。FIRSTクラスタにより、人類がいまだ見たことのない宇宙に生まれた最初の天体を直接計算できるようになる。」

15) 理研
理研の泰地真弘人らは、タンパク3000プロジェクトの一環として、分子動力学専用計算機MDGRAPE-3 (Protein Explorer)を計画し、2002年に開発を開始した。MDGRAPE-3チップは分子動力学の力の計算のためのLSIであり、130 nmのテクノロジ(日立HDL4N)を用い、250~300 MHzのクロックで20本のパイプラインを駆動する。クーロン力1対の計算を36演算とすると、1チップで180~216 GFlops相当の計算ができることになる。このチップは2004年8月に開発完了していた。このチップを24個搭載したユニット201台に、Xeonサーバ101台を接続したシステムである。日本SGI社とIntel社の協力により開発した。理研は2006年6月19日完成を発表した。全体では1 PFlops相当の性能があるとのことである。

16) GRAPE-7
牧野淳一郎(2006年から国立天文台所属)らは、日本学術振興会未来開拓学術研究「計算科学」(1997年~)により開発していたGRAPE-7が2006年に完成した。GRAPE-7 は PROGRAPE と GRAPE-5 の流れをくむ機種であり、内部回路を書き換え可能な FPGA を1 – 7個搭載している。ピーク性能は600 GFlopsであるが、最大構成モデルにこのパイプラインを実装した場合の動作は理論性能 364 GFlops 相当まで確認されている。2006年に宇宙論的構造形成の計算で 1GFlops 当たり $105 という価格性能比を達成し、同年のGordon Bell賞価格性能比部門ファイナリストに選出された。K&F Computing Research Co. より製品化されている。

18) GRAPE-DR
東京大学、情報通信研究機構、NTTコミュニケーションズ、国立天文台、理化学研究所による研究グループ(研究代表平木敬)は、2004年5月、「分散共有型研究データ利用基盤の整備」プロジェクトが2004年度科学技術振興調整費に採択され、「GRAPE-DRプロジェクト」に着手したと発表した。5年間の予定で

(a) 2008年に2 PFlopsの計算速度を実現することと、
(b) 40 Gbps ネットワークを高度利用した科学技術研究データ処理システムを構築すること

を目標としている。GRAPE-6は、天体の問題を解くための専門コンピュータだったが、GRAPE-DRは天体シミュレーション、分子動力学計算、ゲノムの解読など、幅広い分野で利用できるようにするとのことであった。従来のGRAPEシリーズとは異なり、重力相互作用計算に特化したパイプラインをLSIチップに集積するのではなく、多数の演算器を集積する設計であり、より汎用性がある、と述べていた。

2006年11月6日、東京大学理学部7号館で記者会見を行い、GRAPE-DRの中核であるプロセッサチップ(開発コード名:SING)の開発に成功したとのべた。プロセッサは一つのシリコンチップに512個の要素プロセッサを集積し、単精度で512 GFlops、倍精度で384 GFlops のピーク性能をもつ。消費電力は最大60W、アイドル時30W。実装のための設計は台湾のファブレス企業のAlchip Technologies社、製造は台湾TSMCの90 nm CMOSプロセスと発表された。Alchip社の発表によると、「SING」プロセッサは、TSMCの90nm generic processとflip chip packaging technologyを使用して試作したが、60Mのロジックゲートを内蔵している上、チップ全体の動作周波数が500 MHzと、市販のEDAツールでの限界を超えていたため、アルチップは独自の設計手法である「分割統治法(divide-and-conquer)」を採用し、デザインを数百ものサブブロックに分割した上で3階層に配置したとのことである。C言語コンパイラも開発したが、実際には手のチューニングをしないと性能が出ないようである。

今後は2008年度までに、2 PFlopsの性能をもつシステムを構築する計画とのことであった。11月13日からのSC06で展示する。多くの一般紙で取り上げられたが、価格性能比やエネルギー効率の議論で、演算加速チップとSX-8などのコンピュータシステム全体とを混同している不勉強な記事が多く見られた。イギリスのChannel Register紙も取り上げたが平木氏のことをJapanese boffinと紹介していた。Boffinとは聞いたことのない英語であるが、辞書によると、 「(英古風)科学者, 専門的技術者;((略式))利口だが人気のない人」とあった。

19) T2Kオープンスパコン構想
2008年にスーパーコンピュータの入れ替え時期を迎える、筑波大学、東京大学、京都大学のセンター関係者の間では、2006年5月頃、次期スパコンの基本設計を3大学同で行うという構想が持ち上がった。正確にいうと東京大学情報基盤センターは当初2007年3月に並列コンピュータを入れ替える予定であったが諸般の事情で1年延期した。 その後協議が進められたと思われるが、詳細は明らかになっていない。

東京大学情報基盤センターは、2006年9月6日(水)に武田先端知ビルの武田ホールで「大学の知を支援するセンターマシン」ワークショップを開催した。ワークショップのプログラムの大略は以下の通り。

センター長挨拶 米澤明憲(東大)
第1部  
パネル討論「計算センターの新しい役割」 司会:坂内正夫(学術情報センター)
パネリスト:宇川彰(筑波大)、米澤明憲(東大)、美濃導彦(京大)
第2部  
3大学が共同で進めている次期センターマシンに関するfeasibility study中間報告 石川裕(東大)
パネル討論「次期センターマシンにもとめられるもの」 司会:佐藤三久(筑波大)
パネリスト:押山淳(筑波大)、淡路敏之(京大)、森下真一(東大)、重田育照(東大)、高田俊和(NEC)、朴泰祐(筑波大)、石川裕(東大)、中島浩(京大)

 

その前の晩に「3大学は次期スパコンの基本設計を共同で行う」とプレス発表するとともに、ワークショップの直前に記者会見を行った。目指す仕様は「オープンスパコン仕様」と命名し、パソコンと同じ半導体チップを効率的に使ってコスト削減をめざすとともに、基本ソフトもLinuxなどで有名なオープンソフトウエアを採用する。利用画面もインターネットの閲覧ソフト風に変えるなど、使いやすさを追求するなどと述べた。9月4日は堀江貴文の初公判、9月6日は秋篠宮家に男児が誕生するなどビッグニュースの中であったが、多くの一般紙が取り上げた。いつの頃からか、3大学の頭文字を取って、T2Kオープンスパコンと呼ばれるようになった。

20) 渕 一博
第5世代コンピュータ開発のリーダーであった渕 一博氏は、2006年8月13日になくなられた。享年70歳。告別式は18日であった。

次回は日本の企業の動きと標準化である。

(画像:TSUBAMEスーパーコンピュータ 出典:NVIDIA)

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