世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


10月 15, 2018

HPCの歩み50年(第181回)-2010年(g)-

小柳 義夫 (高度情報科学技術研究機構)

日本応用数理学会は、創立20周年を記念する年会を明治大学駿河台キャンバスリバティタワーで開催した。市民向けの講演が行われ、筆者は『なぜスパコンは世界一を目指さなければならないのか』と題して講演した。

国内会議

1) HPCS 2010
情報処理学会HPC研究会主催のHPCS2010「2010年ハイパフォーマンスコンピューティングと計算科学シンポジウム」は、2010年1月14日~15日に工学院大学アーバンテックホールで開催された。以下の基調講演と招待講演が行われた。

基調講演 「計算科学研究機構の構想について」 平尾公彦(理研/計算科学研究機構設立準備室)
招待講演 “Toward Exascale Computational Science with Heterogeneous Processing” Jeffrey Vetter (ORNL/GeorgiaTech)

 

2) 理研シンポジウム2009
2009年度の理研シンポジウム「理研におけるスーパーコンピュータの最新動向とHPCにおけるシステム性能評価の今後」は、2010年3月24日に理研和光本所鈴木梅太郎記念ホールで開催された。今回は、2009年8月から運用を開始したRICC (RIKEN Integrated Cluster of Clusters)についての利用状況や、理研で開発中の次世代スパコンの最新情報、さらにHPCにおけるベンチマーク・テストについて議論するためのパネルディスカッションなどを企画した。

3) SACSIS2010
2003年から始まった先進的計算基盤システムシンポジウムSACSIS (Symposium on Advanced Computing Systems and Infrastructures)は、8回目のSACSIS2010を2010年5月27日~28日に奈良県新公会堂で開催した。主催は、情報処理学会のARC、OS、HPC、PROの各研究会、電子情報通信学会のCPSY、DC、RECONFの各研究会およびIEEE/CS Japan Chapterである。1件の招待講演と2件のチュートリアルが行われた。

招待講演 “Hardware Technology Trends and Cloud Operating Systems: Toward the Next Generation of Distributed Systems” Jun Nakajima (System Software Division, Intel Corporation)
チュートリアル 「GPU スパコンにおける大規模 HPC アプリケーションのスケーラビリティ- 格子系流体計算 -」 青木 尊之(東京工業大学 学術国際情報センター)
チュートリアル 「クラウドの現状と展望」 中田 秀基(産業技術総合研究所 情報技術研究部門)

 

写真は基調講演風景(SACSISのページから)

4) 先端的大規模計算利用サービス 第4回シンポジウム
「先端的大規模計算利用サービス」は、文部科学省研究開発施設共用等 促進費補助金(先端研究施設共用促進事業)の支援を受けて、平成21年度から全国共同利用施設であるスーパーコンピュータを有する7大学が、 社会貢献の一環として、大学で開発された応用ソフトウェアとスーパーコンピュータの民間企業への提供を行っているプログラムである。平成20年度に、文部科学省先端研究施設共用イノベーション創出事業の支援を受けて実施した「先端的大規模計算シミュレーションプログラム利用サービス」よりも幅広い研究課題に対して、スーパーコンピュータの提供を実施している。

先端的大規模計算利用サービス 第4回シンポジウムは、2010年7月1日に東京の丸ビルホールで開催された。本シンポジウムでは、本取り組みによる課題の成果報告と、現在の 採択課題の中間報告を口頭発表、ポスター発表にて行った。プログラムは残っていない。

5) SS研HPCフォーラム
サイエンティフィック・システム研究会のHPCフォーラム2010(公開)は、「e-サイエンスのフロンティア」のテーマで2010年8月26日に汐留シティセンターで開催された。プログラムは以下の通り。

10:30 会長挨拶 村上 和彰 (九州大学情報基盤研究開発センター)
10:35 海外招待講演:“Extreme Computing: Challenges, Constraints and Opportunities” Prof. Anne Trefethen (Oxford University)
11:40 「HPCとともに進化する大規模データ同化」 樋口 知之(統計数理研究所)
12:40 デモ展示紹介    
12:50 休憩  
14:20 「10 PetaFLOPSは生命科学で何を実現できるか」 姫野 龍太郎(理化学研究所)
15:20 休憩、デモ展示  
15:40 「”計算科学”と”計算機科学”の連携による統計力学理論の超高並列化への挑戦」 吉田 紀生(分子科学研究所)
16:40 「富士通のHPCへの取り組み」 井上愛一郎(富士通(株))
17:20 閉会挨拶 松尾 裕一 (宇宙航空研究開発機構)

 

デモでは「京」コンピュータのウェファーや基板が展示されていた。

6) 日本応用数理学会
日本応用数理学会は、創立20周年にあたる2010年の年会を2010年9月6日~9日に明治大学駿河台キャンバスリバティタワーで開催した。7日には20周年記念行事として、一般公開で以下の行事が行われた。

11:00 基調講演『数値計算の信頼性評価–コンピュータを使った新しい解析学』 中尾充宏(佐世保工業高等専門学校)
13:30 市民講演『脳の仕組みと数理の世界』 甘利俊一(理化学研究所脳科学総合研究センター)
14:40 市民講演『なぜスパコンは世界一を目指さなければならないのか』 小柳義夫(工学院大学情報学部)
16:00 20周年式典  

 

筆者の講演では、「世界一を目指す技術開発は質が違う。二番三番でよければ、真似したり、買ってきたりしてもよい。」しかし、「次世代スパコン開発では、アメリカを出し抜いて半年早く完成して一瞬世界一になるためだけに、100億円増額を要求した。これを批判されたのは理解できる。」というようなことを述べた。本連載で縷々述べているとおりである。

7) IC2010
第15回目となるIC2010(インターネットコンファレンス2010)は、日本学術振興会産学協力研究委員会インターネット技術第163委員会 (ITRC)、日本ソフトウェア科学会インターネットテクノロジー研究会 (ITECH)、日本UNIXユーザ会 (jus)、WIDEプロジェクト (WIDE)の主催により、2010年10月25日~26日に東京大学弥生講堂で開催された。HPC研究会は主催からはずれ、協賛に移っている。プログラム委員長は小柏 伸夫 (共愛学園前橋国際大学)と島 慶一(IIJ)、実行委員長は川喜田 佑介 (電気通信大学)であった。2件の招待講演が行われた。

「エネルギーマネジメントセンサーネットワークによるGreen by IT」 西宏章(慶応大)
「Network RFIDとInternet of Things」 三次仁(慶応大)

8) HOKKE-18
HOKKE-18(第18回ハイパフォーマンスコンピューティングとアーキテクチャの評価に関する北海道ワークショップ 未来の情報処理基盤のためのハードとソフトの研究協力・共創へ向けて)は、2010年12月16日(木)~17日(金)に、北海道大学 学術交流会館で開催された。これは、第184回計算機アーキテクチャ・第128回ハイパフォーマンスコンピューティング合同研究発表会である。23件の発表が行われた。招待講演として、松岡聡(東工大)による「TSUBAME2.0 – 『みんなのスパコン』から『みんなでスパコン』」が行われた。懇親会はキリンビール園本館 中島公園店。

9) IPABセミナー
2010年7月2日に東京工業大学蔵前会館において、IPABセミナー / Gfarm Workshop 2010を開催した。展示会も併設された。プログラムは以下の通り。

10:00 TSUBAME2.0のスカラー・ベクター混合型アーキテクチャによるマルチ・ ペタフロップス計算の可能性とバイオインフォマティックスへのインパクト 松岡聡(東工大)
11:00 NVIDIA(R) Tesla(TM) BioWorkbenchのご紹介 平野幸彦(NVIDIA)
11:40 Gfarmファイルシステム最新機能概要 建部修見(筑波大)
12:10 テクニカルセッション(1)「導入と運用事例」  
  初めてのGfarm — 初心者のためのGfarm 江波均(ベストシステムズ)
  GEO Gridにおける衛星データアーカイブの構築と運用 山本直孝(産総研)
12:50 昼食  
14:00 テクニカルセッション(2)「サービス共通基盤」  
  Gfarmを用いた分散ログ解析環境とその利用 村上直(KEK)
  ペタバイトスケール大規模データ処理にむけた東京工業大学の取り組み 佐藤仁,滝澤真一朗(東工大),松岡聡(東工大・NII)
  NICT(情報通信研究機構)のサイエンスクラウド 村田健史(NICT)
  JGN2plusとGfarmによるNICTサイエンスクラウド広域分散ストレージ 森川靖大(NICT),山本和憲(愛媛大),佐藤建,井上諭,坪内健(NICT),建部修見(筑波大),崔超遠,加藤久雄,亘慎一(NICT),木村映善(愛媛大), 村田健史(NICT)
  サービス共通基盤としてのGfarmの利用と課題 大岸智彦,西谷明彦,寺下雅人(KDDI研究所)
15:40 休憩  
15:50 ハンズオンセミナー (1)
Gfarmファイルシステム導入,設定,システム管理,ファイル複製管理,gfarm2fs,sambaでの利用
 
16:30 ハンズオンセミナー (2)
ワークフローエンジン,Hadoopによる分散並列処理
 
17:10 休憩  
17:20 パネル「皆が欲しいストレージクラウドとは」  
18:20 企業展示インデキシング  
18:30 企業展示 & 懇親会

 

また2010年10月1日には、那覇市内の沖縄かりゆしアーバンリゾート・ナハにおいて、沖縄ワークショップ”Seeds and Needs for Large Scale Computing 2010″「次世代シーケンサ:ITとバイオの融合を目指して」を開催した。プログラムは以下の通り。

13:00 ご挨拶  
13:10 日本のバイオインフォマティックスの問題点と対策 IT、バイオ、健康、医療をマージさせるには? 鎌谷 直之(理研)
14:00 ミラー ジョナサン(沖縄科学技術研究基盤整備機構)
14:50 休憩  
15:10 The custom service provider for Genome analysis by Next-generation sequencers 北川 正(タカラバイオ)
16:00 Infrastructure for Development of Codes in Scientific Computing on Post-Peta-Scale Systems 中島 研吾(東京大学)
16:50 休憩  
17:10 次世代シーケンサ 何が問題か?バイオインフォマティクスの視点から パネルディスカッション
18:30 懇親会  

 

2010年12月3日には、東工大蔵前会館において第11回IPABシンポジウム「スーパーコンピューティングが拓く先端的バイオ研究」を開催した。

10:30 開会のご挨拶 秋山 泰(IPAB理事長)
10:40 「京速コンピュータ「京」の概要とその利用について」 庄司文由(理化学研究所)
11:25 Dealing with Large-Scale Genomic Data: Open Data Infrastructure and Workflow Solutions for Genomics Research Robert Triendl (DDN Japan)
12:10 昼食  
13:30 FPGAによるバイオインフォマティクスのアクセラレーション 天野英晴(慶応義塾大学)
14:15 低侵襲高精度診断治療のための高速三次元画像処理技術開発 廖洪恩(東京大學)
15:00 コーヒーブレイク  
15:20 ゲノム情報の効率的な産業利用技術の開発 町田雅之(産業技術総合研究所)
16:05 分子動力学専用計算機mdgrape3を使用した化合物スクリーニング 沖本憲明(理化学研究所)
16:50 ブレイク  
17:00 企業発表  
17:45 閉会挨拶  
18:00 レセプション  

 

次回は日本の企業の動きと標準化関連。NECは独自方式のスーパーコンピュータ開発を継続する方針を固めたことが報じられた。

 

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