世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


5月 13, 2019

HPCの歩み50年(第197回)-2011年(i)-

小柳 義夫 (高度情報科学技術研究機構)

2011年は、数値風洞や地球シミュレータの開発の中心的役割を担った旧航空宇宙研究所の三好甫氏が亡くなられてちょうど10年になることから、「三好没後10年記念シンポジウム」(仮称)構想が浮かび上がった。筆者も巻き込まれ、実行委員長に祭り上げられた。

国内会議

1) HPCS2011
HPCS2011「2011年ハイパフォーマンスコンピューティングと計算科学シンポジウム」は、2011年1月18日~19日に産業技術総合研究所 共用講堂で開催された。主催は、情報処理学会HPC研究会。

オーガナイズドセッション 「次世代ものづくり」において、2件の招待講演が行われた。

加藤 千幸(東大)

「ものづくり分野におけるマルチフィジックス大規模シミュレーションに 対する期待と課題」

青木 尊之(東工大)

「TSUBAMEのGPUによる大規模ステンシル・アプリケーション」

2) グリッド協議会
2011年3月10日(大震災の前日)、秋葉原のUDXにおいて、「サイエンスクラウド」と題し、第32回ワークショップが行われた。プログラムは以下の通り。

13:30

オープニング

AIST/グリッド協議会会長 関口智嗣

13:35

「A Quick Introduction to the Open Cloud Consortium’s Open Science Data Cloud and Open Cloud Testbed」

University of Chicago, Robert Grossman

14:20

「学んで試せる学術用クラウド: edubase Cloud」

国立情報学研究所 吉岡信和

14:50

「インタークラウドのユースケースと機能要件」

NTT情報流通プラットフォーム研究所 坂井博

15:20

コーヒーブレイク

 

15:45

「NICTサイエンスクラウド」

情報通信研究機構 村田健史

16:15

「GEO Gridからサイエンスクラウドへ」

AIST小島 功

16:45

ラップアップ

AIST田中良夫

17:00

懇親会

 

 

2011年8月22日には大阪科学技術センターで大阪セミナー「クラウドで解決する課題」が開催された。筆者も参加した。プログラムは以下の通り。

13:30

オープニング

AIST/グリッド協議会会長 関口智嗣

13:35

「クラウドコンピューティングと『所有から利用へ』の流れ」

野村総合研究所・京都大学 横澤 誠

14:10

「大スマートデバイス時代に向けたクラウド基盤のあり方」

ファーストサーバ株式会社 磯部眞人

14:50

「サントリーでのプライベートクラウド構築事例」

サントリービジネスエキスパート株式会社 武知 栄治、株式会社サンモアテック 渡邉 英樹

15:30

コーヒーブレイク

 

15:50

「仮想デスクトップ先進事例のご紹介」

パナソニック電工インフォメーションシステムズ株式会社 山田勉

16:30

「データセンターのあるべき姿~クラウドコンピューティングに最適化した石狩データセンターのご紹介~」

さくらインターネット株式会社 田中  邦裕

17:10

タウンホールおよびラップアップ

モデレータ:関口 智嗣(AIST)

18:00

懇談会

 

 

2011年12月21日には、秋葉原ダイビルにおいて、第33回ワークショップ「プライベートクラウドとOSS」が開催された。プログラムは以下の通り。

13:30

「革新的なOpenStackクラウドの実現に向けて」

デル株式会社 増月 孝信

14:10

「産総研におけるプライベートクラウドへの取り組み」

AIST 高野 了成

14:50

「北海道大学アカデミッククラウドの構築と運用について」

北海道大学 棟朝雅晴

15:30

コーヒーブレイク

 

15:50

「アライアンス・クラウドの活動紹介」

株式会社大和総研 伊藤慶昭

16:30

「RightScaleの事例から見たハイブリッドクラウド対応への手法」

クラウド利用促進機構 荒井康宏

17:10

ラップアップ

モデレータ:田中良夫  (AIST)/小名木弘次(デル株式会社)

 

3) SACSIS 2011
第9回目となるSACSIS 2011 – 先進的計算基盤システムシンポジウムは、2011年5月25日(水)~27日(金)に、 秋葉原コンベンションホール(秋葉原クロスフィールド ダイビル)において開催された。招待講演とチュートリアルは以下の通り。

基調講演

計算科学研究機構/理化学研究所

米澤 明憲 氏

「計算機科学と計算科学の協業によるポストペタスケールHPCに向けて」

招待講演

東京大学大学院情報学環総合防災情報研究センター/地震研究所

古村 孝志 氏

「地震津波シミュレーションの現状と課題:東北地方太平洋沖地震発生を受けて」

 

チュートリアル

「近接ワイヤレス接続が創る3次元集積計算システム」

慶應大学 黒田 忠広

「HPC用の高生産並列プログラミング言語」

東京大学 田浦 健次朗

「新ネットワーク制御技術 OpenFlow とその利用方法」

NECシステムプラットフォーム研究所 菅原 智義

 
   

 

招待講演は、震災をうけて地震津波のシミュレーションの第一人者である古村孝志氏に変更された。写真はプログラムから。

SACSISは、JSPPを引き継いで2003年から開催されているが、国際化の必要が議論されていた。HPCのような基盤技術はグローバル化されているので、査読付き論文発表を日本語でやる意義はなくなった、むしろ,アジアのアカデミアにおける中心的地位を戦略的に確保するため,アジア太平洋諸国を巻き込んで英語で開催することが好ましい、とする意見がある一方、英語化に抵抗を感じる研究者もいた。

4) SWoPP鹿児島2011
24回目となる、2011年並列/分散/協調処理に関する『鹿児島』サマー・ワークショップ(SWoPP鹿児島2011)は、2011年7月27日~29日に鹿児島市のかごしま県民交流センターで開催された。参加研究会は、電子情報通信学会からCPSYとDC、情報処理学会からARC、PRO、HPC、OS、EVA、日本応用数理学会からMEPAである。2件のBoFセッションが企画された。

「社会科学から自分の仕事をみつめてみませんか?」

長谷部 弘道(一橋大学)、三好健文(電気通信大学)

「スクラッチからシステムを作ろう-チップからOSまで-」

天野 英晴(慶應義塾大学)

 

ポスト「京」のところで述べたように、前日の7月26日に、第5回SDHPC Workshopが鹿児島県 天文館ビジョンホールで開催された。

5) 三好甫記念計算科学シンポジウム

 
   

2011年は、数値風洞や地球シミュレータの開発の中心的役割を担った旧航空宇宙研究所の三好甫氏が亡くなられてちょうど10年になる。そこで、3月ごろ、JAXAや理研や海洋研究開発機構の関係者から、「三好没後10年(記念)シンポジウム」(仮称)構想が浮かび上がった。「シルバー世代が、心ある後輩にエールを送る」というスタンスであった。筆者も巻き込まれ、実行委員長に祭り上げられた。3回ほどの実行委員会を経て、2011年9月10日(土)に工学院大学アーバンテックホールにおいて、「三好甫記念計算科学シンポジウム」を開催する運びとなった。会場前のホワイエには展示コーナーを設け、終了後は学内の学生食堂で懇親会を開いた。講演会参加者は308名、懇親会参加者は163名であった。プログラムは以下の通り。写真は、基調講演を行う山本卓眞氏(報告書から)。

10:00

主催者挨拶

小柳義夫(実行委員長、神戸大)

10:15

数値風洞

松尾裕一(JAXA)

10:50

CP-PACS プロジェクトについて~ 計算科学専用計算機開発における物理屋の役割 ~

金谷 和至(筑波大)

11:25

三好流地球シミュレータ開発プロジェクトから学んだこと- 三好的”風林火山” -

谷 啓二(日本アドバンストテクノロジー)

12:00

昼食、展示

 

13:30

(基調講演)三好 甫さんとHPC

山本 卓眞 (富士通(株)顧問)

14:10

休憩、展示

 

14:30

数値風洞 NWT の開発-1担当者の体験-

北村 俊明(広島市立大)

15:05

計算物理学計算機CP-PACSと三好甫先生の想い出

河辺 峻(明星大学)

15:40

地球シミュレータ開発

平野 哲 (海洋研究開発機構)

16:15

休憩、展示

 

16:30

私も一言

進行 福田正大(FOCUS)

 

開発に関わった方や会場の方に三好先生の想いをもとに,これからの HPC についての思いを語っていただく

 高村 守幸 ((株)富士通研究所)

 福井 義成 ((独)海洋研究開発機構)

 福田 正大 ((財)計算科学振興財団)

 松岡 浩 ((独)理化学研究所)

 そのほか会場から

17:15

閉会のあいさつ

田中輝雄(工学院大)

18:00

懇親会

 

 

基調講演をお引き受けくださった富士通(株)顧問 山本卓眞氏は、ほどなく2012年1月17日に逝去された。

6) IC2011
第16回目となるIC2011(インターネットコンファレンス2011)は、日本学術振興会産学協力研究委員会インターネット技術第163委員会 (ITRC)、日本ソフトウェア科学会インターネットテクノロジー研究会 (ITECH)、日本UNIXユーザ会 (jus)、WIDEプロジェクト (WIDE)の主催により、2011年10月27日~28日に九州産業大学で開催された。プログラム委員長は小柏 伸夫 (共愛学園前橋国際大学)と島 慶一(IIJ)、実行委員長は寺田 直美 (奈良先端科学技術大学院大学)であった。2件と招待講演とパネルが行われた。

招待講演

齋藤参郎 (福岡大学)

「マイダス・タッチ・エコノミー(Midas Touch Economy)ースペースエクイティ創発ビジネスとまちづくりー」

招待講演

曽根秀昭 (東北大学)

「大学及び地域の情報通信基盤における震災被害」

パネル

座長:小柏伸夫 (共愛学園前橋国際大学)

福岡市公共無線インターネットへのチャレンジ

 

7) HOKKE-19
第19回ハイパフォーマンス・コンピューティングとアーキテクチャの評価に関する北海道ワークショップ (HOKKE-19)「未来の情報処理基盤のためのハードとソフトの研究協力・共創へ向けて」は、2011年11月28日(月)~29日(火)に北海道大学学術交流会館で開催された。第189回計算機アーキテクチャ研究会と第132回ハイパフォーマンス・コンピューティング研究会の共同開催である。36件の発表が行われた。懇親会はサントリーズガーデン昊。

8) 多倍長精度計算フォーラム
2009年に始まった多倍長精度計算フォーラムは、第2回研究会を2011年12月10日(土)に工学院大学で開催した。プログラムは以下の通り。

10:30

はじめに  

石川 正(KEK)

10:40

精度保証付き多倍長演算の新手法  

松田望(電気通信大学)

11:30

多倍長精度演算の性能評価  

濱口信行(KEK)

12:00

昼食

 

13:30

BLAS/LAPACK準拠高精度線形代数演算ライブラリMPACK update  

中田真秀(理化学研究所)

14:20

GPU上における多倍長精度浮動小数点演算の実装  

中山空星(筑波大学)

15:10

休憩

 

15:30

四倍精度専用プロセッサGRAPE-MPの性能評価  

中里直人(会津大学)

16:20

GPU上の多倍長数値計算環境の構築とその応用  

眞鍋秀悟(京都大学)

17:10

おわりに

田中輝雄(工学院大学)

 

なお第3回は2013年3月8日、第4回は2014年3月7日に開催されている。

次回は、日本の企業の動き、および標準化関係について。富士通は「京」コンピュータの商用版であるFX10を発表した。

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