世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


7月 15, 2019

HPCの歩み50年(第205回)-2011年(q)-

小柳 義夫 (高度情報科学技術研究機構)

NVIDIA社は、ARMを搭載したTegraを発表した。GPUが本当にHPCの将来を担うのか、批判する意見も出てきた。カナダのD-Wave社は、128 qubitsの商用機D-Wave Oneを発表し、これを米国の航空宇宙企業であるLockheed-Martin社に販売した。量子ゲートではないが、量子コンピュータもいよいよ商品化か?

アメリカの企業の動き(続き)

17) NVIDIA社(Project Denver)
以上述べたように、IntelとAMDが、CPUにGPUを吸収する路線を公表したが、今度はNVIDIAがCPU (ARM core)をGPUに吸収する路線を出した。3社はいわば同じ土俵で競争をすることになったが、さてこの結末は? そしてHPCへの影響は?

NVIDIA社のJen-Hsun Huang CEOは、Las Vegasで開催されるInternational CES (Consumer Electronics Show)を前に、2011年1月5日、The Venetian Hotelで報道関係者向けに説明会を開催し、ARM社とパートナーシップ締結し、ARMをベースとした64ビットCPUコアを自社で開発する権利を獲得したと発表した。この契約をベースに、PC,サーバ、WS、スーパーコンピュータなどの非モバイル系を包括するCPUを開発する計画(コード名Project Denver)を発表した。高性能なARM CPUコアの演算性能と同社の並列GPUコアの演算を組み合わせ、高い処理能力を実現した次世代のプロセッサの開発を目指すというものである。Huang CEOは、この計画をNVIDIAの歴史上もっとも戦略的な計画だと表現した。同時に、Microsoft社のSteven Ballmer CEOは、次期WindowsはARMにも対応することを表明したので、Project Denverのプロセッサ上でも走ることになる。NVIDIA社ははたしてグラフィックチップベンダからコンピュータの会社に変身するのか。

また、NVIDIA社は、ARMが提供しているプロセッサコアCortex-A15(32ビット)をモバイルプロセッサTegraの次世代版に搭載する契約を締結したことも発表した。

18) NVIDIA社(Tegra)
NVIDIAは、2011年11月12日~18日にSeattleで開催されているSC2011(SC11)の直前の11月8日に、コード名“Kal-El”として開発を進めてきたTegra 3を正式に発表した。また、台湾のASUS社のEee Pad Transformer PrimeがTegra 3を採用することを明らかにした。すでに、NVIDIAは、Kal-ELの概要について、2011年の9月に公開している。これは汎用のARM Cortex-A9 MPCore CPUを4個搭載するが、これに加えて5番目のcompanion coreを搭載し、ARM Cortex-A9ではあるが特別な低電力シリコンプロセスを使っている。電力消費を減少させたいときは、汎用の4コアは止め、companion coreだけで動く。また、有効なコア数を制御することもできる。これをNVIDIAは“variable SMP architecture”と呼んでいる。また、駆動電圧に合わせて動作クロックを変更する“Dynamic Voltage and Frequency”(DVFS)を導入する。

今回公開された概要によると、動作クロックは、汎用のsingle core動作時で最大1.4 GHz、quad core動作時で最大1.3 GHz、そして、companion core動作時で最大500 MHzとなる。また、システムメモリでは、DDR-3L-1500、LPDDR2-1066をサポートする。

NVIDIAはSC2011の最中の1月14日、Mont-Blancプロジェクトを進めているBarcelona Supercomputing Center(BSC)が、ARMアーキテクチャベースのエネルギー効率に優れたTegraプロセッサをNVIDIA製GPUと組み合わせた初のハイブリッドスーパーコンピュータを開発すると発表した。現時点で効率とパフォーマンスが高いとされるコンピューティングシステムより2~5倍エネルギー効率に優れたシステムになるとのことである。

19) NVIDIA社(Tesla)
2011年5月、NVIDIA社は、GPGPUのTesla Fermiの改良版M2090を発表した。コア数も増え、クロックも上がっている。従来のM2070との比較を示す。

 

M2070

M2090

CUDA Cores Count

448

512

Mem. Bandwidth (GB/s)

150

178

Single Prc. Perf. (GFlops)

1030

1330

Double Prc. Perf. (GFlops)

515

665

Memory Size (GB)

6

6

 

コア数は当初から512を計画していたが、TSMCの40 nmテクノロジでは電力制限から448が限界であった。そこで設計をやりなおし、製造プロセスを最適化することにより、512コアを実現できた。

20) NVIDIA社(GeForce)
NVIDIA社は2011年3月、dual GPU構成のGeForce GTX590を発表した。GF110世代2チップを1枚のグラフィックスカードに搭載した。従来のFermi世代GeForceと同様に、DirectX 11をサポートするほか、CUDA環境に最適化され、PhysX、3D Vision、3D Vision Surroundに対応する。現在の最上位モデルである。

GeForce GXT 590を採用したグラフィックスカードは、日本市場向けとしてMSIとZOTEC、EVGAに限って出荷される予定である。流通関係者によると、そのほかのPCパーツベンダーでも日本市場向けに製品を用意していたが、NVIDIAの指示によって発表直前に日本市場に出荷できるのが上記3ベンダーに制限されたと証言している。日本で出荷を予定している製品の実売価格は、8万円台から9万5000円前後と予想されている。

21) NVIDIA社(Intel社との訴訟)
Intel社は、2011年1月10日、NVIDIAとの間で係争中の訴訟を取り下げ、同社と新たなクロスライセンス契約を結んだことを明らかにした。新たなクロスライセンス合意により、Intel社はNVIDIA社のビジュアルおよび並列コンピューティング技術へのアクセスが可能になる。このほかクロスライセンス契約に関する係争中の問題について、すべてを引き下げることで2社は合意した。

NVIDIA社がIntel社から受けていたチップセットのライセンスが、CPUにメモリ・コントローラを統合したNehalemマイクロアーキテクチャのIntel Core i7プロセッサに適用されると主張していたが、Intel社は適応されないと主張した。既存の契約は2011年3月31日に期限を迎える。そこで、Intel社は、2009年2月にNVIDIA社を提訴していた。

CNETの記事によると、NVIDIA社は事実上、Core 2 Duoより後の世代のプロセッサに対し、Intel互換のチップセットを開発することを禁じられていた。例えば、Appleの第2世代MacBook Airは、NVIDIAチップセットをIntelのCore 2 Duoプロセッサと併用している。しかし、NVIDIAは、新しい世代の「Core i3」「Core i5」「Core i7」プロセッサ向けのチップセットを開発することはできなかった。これにより事実上Appleは、同社がNVIDIAのチップセットを合法的に使用するためには、Intelの古い世代のプロセッサであるCore 2 DuoをMacBook Airで利用し続けるしかなかった。

2011年1月10日、「NVIDIA は本日、Intel社との間に、新たな6年間の技術クロスライセンス契約を締結した」と声明を発表した。「新たな契約の下、Intel社 は NVIDIA社 の所有するすべての特許を継続して利用できる。それと引き換えに、NVIDIA社 は計15億ドル(約1300億円)のライセンス料を受け取り (中略) また Intel社 の特許の利用権を保持する。ただし、利用できる特許には、Intel 社のプロプライエタリなプロセッサ、フラッシュメモリ、およびIntel プラットフォーム向けの一部チップセットは含まれない」と声明には記してある。NVIDIAはすでにGPU内蔵チップセット事業から撤退する方向に進んでおり、今回のクロスライセンス契約はGPU統合型CPUの流れに配慮した内容になったと言える。訴えたIntel社側が15億ドルのライセンス料を払う、ということで驚いた。NVIDIA社側の3DやGPU技術などに関する特許がよっぽど欲しかったのであろうか。「このライセンス料は、5年の年賦で支払うことが可能で、その期間は2011年1月18日より始まる」と発表されている。

22) NVIDIA社(Steve Scott)
2011年8月8日付のHPCwireによれば、CrayのCTOとしてT3EやX1, XT, XE, Cascadeなどを19年間引っ張ってきたSteve ScottがCray社を辞職するということである。この記事では行き先は不明とあった。2005年7月にもScottはCray CTOを辞任と騒いでいたが、そのときは結局辞任しなかったようである。

2011年8月11日、NVIDIA社は、Steve ScottをTesla部門のCTOに迎えたと発表した。

その後、2012年8月6日にScottはNVIDIAを辞してGoogleのchief engineerとなった。そして、2014年10月6日、なんと古巣のCrayのCTOに戻った。

「Googleはすごかった、ですが時間が経つと私の心がHPCにあることがわかったのです。科学と社会におけるすべての種類の重要な問題についてHPCが持っているインパクトを私は愛しているのです。」なんて恰好付けすぎ(?)

23) GPUには将来がない10の理由
2011年6月9日付のHPCwireの記事で、Stone Ridge Technologyの創立者社長であるVincent Natoliは、“Top 10 Objections to GPU Computing Reconsidered”と題して、GPUには将来がないと論じている。簡単に紹介する。

(1) CUDAや新しい言語で私のプログラムを書き換えたくない。
(2) 性能の予測がつかない
(3) PCIeのバンド幅が小さすぎる
(4) Amdahl’s lawからどう逃れるか?
(5) もしNVIDIA社がなくなったら、どうする?
(6) GPUボードのメイン・メモリは私の問題には小さすぎる
(7) コア数の多いCPU(例えばKNC)が出てくるまで待とう
(8) 会社独自の言語なんて嫌だ
(9) CPUからGPUへの自動変換ソフトが出てくるまで待とう
(10) 限られたIT予算で、どこまでGPU付きのノードにするか?

まあ、しまらない議論だが、流行だからと言ってGPUに飛びつくな、ということのようである。

24) Hitachi Data Systems
日立製作所の子会社Hitachi Data Systems社(1989年創業、本社Santa Clara)は、2011年9月7日、ネットワークストレージの会社BlueArc社を買収した。ビッグデータ時代を狙ったと思われる。

25) Cavium社
Cavium Networks社は、2011年6月17日に社名をCavium社に変更した。

同社は、2001年、Syed B. Ali と M. Raghib Hussainは、ArmベースやMIPSベースのプロセッサに特化したファブレスの半導体企業として、San JoseでCavium Networks社を創立した。初期は、ルータ、スイッチ、セキュリティ製品などのネットワーク装置を製造した。2002年に発表したOCTEONシリーズはMIPS64アーキテクチャのプロセッサである。2007年5月にはNASDAQに上場した。2014年には、最大48個のARMv8 coreを搭載したThunderXを発表した。製造はGLOBALFOUNDRIESで、テクノロジは28 nmである。2016年には最大54個のARMコアを搭載したThunderX2を発表した。SNLのAstra (Apollo 70)は28コアのThunderX2を搭載しており、2018年11月のTop500で204位にランクしている。Top500での初めてのARMである。また、Cray XC50には、ThunderX2を搭載するARM Optionがある。

2017年11月にMarvell Technology Groupに$6Bで買収されることに決まり、2018年7月6日に買収が完了した。

26) Microsoft社
Microsoft社のSteve Ballmer CEOは、2011年1月6日~9日にLas Vegasで開催されるInternational CES (Consumer Electronics Show) 開幕前日の基調講演において、Microsoftは次世代Windows(コード名 Windows 8)ではx86に加えてARMアーキテクチャをサポートすると発表した。SnapdragonやTegra 2で動作するWindowsとIE9、MS Officeが披露された模様である。

5月21日、Microsoft社は、次期ホームサーバー用OS Microsoft Windows Home Server 2011をリリースした。

2011年5月、Microsoft社は$8.5BでSkype社を買収することで合意し、10月に手続きが完了した。

その他の企業

1) D-Wave Systems社
カナダのブリティッシュコロンビア州のD-Wave Systems社は、2011年5月11日、128 qubitの商用機D-Wave Oneを発表し、これを米国の航空宇宙企業であるLockheed-Martin社に販売したと発表した。購入したLockheed-Martin社は南カリフォルニア大学とQuantum Computing Centerという研究機関を作り、使い方の研究を進めているとのことである。なんと、商品として売れたのである。さすが、アメリカはベンチャーの国である。システム全体では、設置面積は約200 ft2 (約18 m2)で、消費電力は7.5kWである。この消費電力の大部分は冷却ポンプの電力であり、将来の512 qubitのプロセサでも消費電力は変わらないという。

このD-wave Systems社と南カリフォルニア大学が共同で、11月12日から18日にかけてシアトルで開催されたSC11で発表を行った。このマシンは、「量子Isingモデル」の物理的実現であり、スピンの上下は超伝導の磁束量子の向きで実現されている。当然、20 mKの極低温で動作している。重要なことは、スピン間の相互作用を、小さなJosephson素子で制御できることである。多くの離散的最適化問題は、Isingモデルに写像できるので、絶対0度近くでIsingモデルが基底状態になれば、それが最適解である。最適化問題では、最小でない極小解に引っかかりやすく、simulated annealingではそれを熱的な揺らぎで回避しようとするが、量子系ではトンネル効果があるため極小解は安定でなく、原理的には真の最小値に存在する確率が最大になるはずである。ただ、このマシンは近接結合なので、長距離結合をもつ問題を解くには工夫がいる。

1998年11月に、西森秀稔東京工業大学教授らは「量子アニーリング」のアイデアをアメリカ物理学会の論文誌Physical Review Eに発表した。このアイデアに基づき、1999年、Haig Farrisらは、カナダのブリティッシュコロンビア州Burnabyで量子アニーリングに基づく量子コンピュータを開発するためにD-Wave 社を創業した。FarrisはUBC (British Columbia大学)のビジネスコースの教授であった。名前の由来は、d-wave超伝導体を用いるからである。2003年には、1 qubitの素子を作ることに成功した。

同社は2007年2月13日に、カリフォルニア州MountainviewのComputer History MuseumでOrion Quantum Computerを披露し、3つの異なるアプリケーションを走らせた。同じ年、SC07において、企業展示にD-Wave Systems社が出展し、史上初の商用量子コンピュータと自称し、28 qubitを実現したと説明していた。実物はカナダ(ブリティッシュコロンビア)の本社にあり、ネットワークでつないでいるとのことであった。「あやしいなあ!」と皆で眉に唾を付けながら展示を見ていた記憶がある。筆者は当時、汎用のゲート型量子コンピュータとの違いを理解していなかった。

2008年1月31日には、$17M(おそらく米ドル)の投資資金を獲得したと発表した。この資金により、discrete optimization, pattern matching, machine learning and constrained search with preferencesのための量子コンピュータを開発する。2009年の早い時期にネットワーク経由で利用できるようになる予定である。着々とできているようである。その後も毎年出展している。

D-wave社は、2011年現在、Vesuviusという512 qubitのチップを開発している。火山のように大爆発を起こそうというのであろうか。

ヨーロッパの動き

1) EESI
ヨーロッパでは、EUファンドのEESI(European Exascale Software Initiative)と、3つの実行プロ ジェクト(MontBlanc、DEEP、CRESTA)が並行 して進行している。

EESIは2010年6月1日から18か月間に渡っ て実施されるプロジェクトである。EESIでは、ペタスケール、エクサスケールスーパーコンピュータ上での科学計算処理における諸 課題を明確にし、欧州としての研究開発の方向性 をロードマップとして策定することを目指した。 150人の専門家の参加により実施され、グランドチャレンジアプリケーションに対応する4つのWGと、エクサフロップを実現するコンピュータ技術に関する4つのWGを構成した。各WGは約15名の専門家から構成され、キーとなる科学的・技術的チャレンジを明らかにすることを目指している。特にヨーロッパの強さと弱さ、ヨーロッパにおける現在の協力関係、現在のプロジェクトの分析も行う。2011年10 月10日~11日にBarcelonaでFinal Conferenceを開催し、ビジョンとリコメンデーションを示した。

Final Conferenceでは、Bernd Mohrにより下記のようなターゲットが示されている。

 

 

EESI2は、2012年 9月1日から30か月間に渡るEESIの後継の活動であり、 EESIのロードマップ、ビジョン、リコメンデーショ ンに対し、モニタリング、更新そして新しい課題 に対応するため、数種類のワーキンググループを 編成し活動している。

3つの実行プロジェクト(MontBlanc、DEEP、 CRESTA)は共に3年間のプロジェクトである。2011年 1月にEU内の複数の参加国からなる3プロジェクトが選定され、 各々€8Mの支援を行うことになった。各プロジェクトの 名称を以下に示す。詳細は別項で説明する。

MontBlanc

European scalable and power efficient HPC platform based on low power embedded technology

DEEP

Dynamical Exascale Entry Platform、Hierarchical Concurrency Approach

CRESTA

Collaborative Research into Exascale Systemware, Tools and Applications

 

また、EUのFP7 (the Seventh Framework Programmes for Research and Technological Development, 2007-2013) の情報・通信(Information and Communication Technology: ICT)分野での研究公募の中にエクサスケールコンピューティング をめざしたEU-Call ICT-2011.9.13 がある。公募の正式名称は、Exascale computing, software and simulationであり、FP7の中で最初にエクサスケールテクノロジに特化した公募である。

エクサスケールを目指して開設された研究所およびパートナーシップ(野村稔の記事から)

名称

設置国

参加組織

Exascale Innovation Centre (EIC)

ドイツ

JRZ, IBM

ExaCluster Laboratory (ECL)

ドイツ

JRZ, Intel他

EX@TEC

フランス

CEA, GENCI, Intel他

Flanders ExaScience Lab

ベルギー

IMEC, Intel他

Exascale Stream Computing Collaboratory

アイルランド

Trinity College (Dublin), IBM他

Exascale Technology Centre

イギリス

Edinburgh大、Cray

 

2) CRESTA Project
CRESTAは、Software-codesignにフォーカスしたプロジェクトで2011年11月開始した。エジンバラのEPCCが主導し、パートナーは13。コストは€12Mで、ファンディングは€8.75Mである。

パートナーは、ヨーロッパの4つのHPCセンター(EPCC, HLRS, CSC and PDC)、HPCシステムのベンダ(Cray Europe)、7つのアプリケーション開発者(DLR, KTH, ABO, JYU, UCL, ECMWF and CRSA)、ツールの会社(Allinea)、性能分析組織(TUD)からなる。

3) Project Mont-Blanc
Mont-Blancは、組み込みの省電力テクノロジに基づいたエクサスケールプロジェクトで、2011年10月14日に開始した。BSC (Barcelona Supercomputing Centre)が主導する。予算€14.5M、プロトタイプの開発目標は7 MWで50 PFlops ARMのプロセッサとNVIDIAのGPUを使用する予定。コンソーシアムのメンバは、HPCシステムベンダのBull、組み込むHPCのリーダであるARM、インターコネクトの会社Gnodalの企業メンバと、Tier 0のスーパーコンピュータセンター:ドイツのForschungszentrum Jülich, BADW-LRZ、フランスのGENCI, CNRS、イタリアのItaly (CINECA)およびスペイン (BSC)である。

4) DEEP Project
DEEP Project (Dynamical Exascale Entry Platform)は、アーキテクチャの設計、ハード・ソフト開発を目標に、2011年12月1日に開始された。期間は45か月で、2015年8月31日まで。前予算は€ 18.5M、ECからのふぁんぢんぐは€ 8.3Mである。Intel社のXeon Phiを使用する予定。プトロタイプは500 TFlopsのマシンがJRZ (Julich Supercomputer Centre)で稼働した。必要なソフトウェアも開発した。

Jülichが主導し、8か国、16パートナー(Forschungszentrum Jülich、Intel Corporation、ParTec Cluster Competence Center、Leibniz-Rechenzentrum (LRZ)、Universität Heidelberg、German Research School for Simulation Sciences (GRS)、Eurotech, Italy、Barcelona Supercomputing Center (BSC)、Mellanox、École polytechnique fédérale de Lausanne (EPFL)、KU Leuven、CERFACS、The Cyprus Institute、CINECA、CGG, France)からなる。

5) DEISA PRACE Symposium 2011
DEISA (The Distributed European Infrastructure for Supercomputing Applications)は、DEISA1が2002年から始まり、FP6により2004年から2008年までECからの資金援助を受けた。後継プロジェクトであるDEISA2は、FP7により2011年まで資金が与えられている。

DEISA PRACE Symposium 2011 は、2011年4月13日~14日にHelsinkiのthe National Museum of Finlandで開催され、26か国から200人が参加した。プログラムは以下の通り。

4月13日

Welcome Address

Kimmo Koski, Managing Director, CSC –IT Center for Science Ltd., Finland

Finnish Science Policy and Research Infrastructures

Leena Vestala, Director, Division for Higher Education and Science, Ministry of Education, Culture and Science, Finland

The Future of High Performance Computing in Europe

Zoran Stancic, Deputy Director-General, Information Society and Media Directorate-General, European Commission, Belgium

Germany PRACE 2020 – a vision for a sustainable European HPC-Infrastructure

Achim Bachem, Chairman of the Board of Directors, Forschungszentrum Jьlich GmbH and Coordinator of PRACE

USA Sustained Petaflops from Blue Waters for Capacity Computing: preparing for the simulations

Thom Dunning, Director, National Center for Supercomputing Applications (NCSA) (UIUC)

China Supercomputing Applications in CAS

Xue-bin Chi, Computer Network Information Center (CNIC), Chinese Academy of Science (CAS)

The Exascale: Why an international campaign

David Keyes, (KAUST)

Russia Moscow State University and High Performance Computing

Vladimir Voevodin, Lomonosov Moscow State University,

Supernova Models Confronting Observations

Thomas Janka – Max Planck Institute for Astrophysics

the Netherlands Insights on Realistic Quantum Computing Devices from Simulation

Hans De Raedt – University of Groningen

Presentations from the PRACE User Forum

 

Sergi Girona

Florian Janezko

 

Jean-Philippe Nominé

 

Thomas Bönisch

 

Enkovaara

 

Richard Kenway

 

Giovanni Erbacci

 

4月14日

FinlandPLANCK Space Mission of ESA

Hannu Kurki-Suonio University of Helsinki,

What we will learn on turbulent combustion from simulations on the Exascale level

Thierry Poinsot – CNRS

Climate Research

Giovanni Aloisio – University of Salento

Italy Climate change challenges at exascale

Sandro Fiore CMCC

Simulations Driven Design of Correlated Quantum Matter- The Case of Spin-Liquids

Alejandro Muramatsu – University of Stuttgart

DEISA- Resumée

Stefan Heinzel, Hermann Lederer, (RZG)

eXtreme Digital

John Towns, (NCSA) (UIUC)

Trafficking of cholesterol

Ilpo Vattulainen – Tampere University of Technology

Convergence analysis of higher-order discontinuous Galerkin method for the direct numerical simulation of transitional flows

Koen Hillewaert – Cenaero ASBL

Combining computer simulations and experiments to study complex biological phenomena

Francesco Luigi Gervasio – Spanish National Cancer Research Centre

Parallel space-time Approach to Turbulence

Peter Coveney – University College London

Understanding the Strong Interactions via large scale simulations

Constantia Alexandrou – University of Cyprus

Effects of Quantum Nuclear Motion in an Enzyme employing Hydrogen Tunneling

Sergei Ivanov – University of Bochum

Large Scale High Resolution Blood Flow Simulations

Florian Janoschek- Eindhoven University of Technology

 

6) HLRS
ドイツのStuttgartにあるHLRS (The High Performance Computing Center)はPRACE Tier-0センターであるが、Cray XE6 (Opteron 6276 16C 2.30 GHz, Cray Gemini interconnect)を設置し、HERMITと命名した。2011年11月のTop500では、コア数113472、Rmax=831.4 TFlops、Rpeak=1043.9 TFlpsで112位にランクしている。ヨーロッパでは1位である。

7) ARM社
ARM社の起源は、1978年12月5日に創業したCPU社(Cambridge Processor Unit Ltd.)にさかのぼる。同社は6502ベースのマイクロコンピュータの開発に着手し、1979年1月、最初の製品をAcorn Computer Ltd社から発売した。1983年10月に、Acorn RISC Machineプロジェクトをスタートし、1985年4月26日、最初の試作ARMチップARM1が完成した。ただし開発は秘密裏に行われた。

1985年2月に経営がうまくいかず、オリベッティの子会社となった。1986年には32ビットの製品ARM2を完成した。アップル社は新しい機器のために新しいプロセッサを探していたが、ARMに目をつけ、アップル社とAcorn社は共同でARM開発を開始し、1990年11月そのための別会社ARM社(Advanced RISC Machine社)を設立した。PCの急激な低価格化でAcorn社は業績不振となり、1996年から98年にかけて、オリベッティ社はAcornグループを手放した。その後、ARMは順調に業績を伸ばし、1998年にはロンドン証券取引所とNASDAQのARM Limitedという社名で上場した。この時ARM6を開発し、その後ARM11まで開発した。2005年には、アプリケーションプロセッサ向けのCortex-A、リアルタイム制御向けのCortex-R、組み込みシステム向けであるCrotex-Mとに分類した。枝番がA、R、Mになっている。

さてこのARM Holding社であるが、創立者の一人で社長のTudor Brownは、2011年2月2日付のHPCwireによれば、MarketWatch reportにおいて、ARMの将来について語っている。「ARMはx86と違ってRISCであり、電力消費が少ない。数から言えば10倍も出荷している。今のところデスクトップ用の設計にはなっていないが、次世代のCortex-A15チップを見ておれ。ARMはx86を脅かすだろう。」「本質的には32ビットデザインであるが、倍精度演算や128ビットのSIMDをサポートし、1 TBのアドレス空間を持ち、ECC付きのキャッシュを持つ。4-wayの(将来は8-core, 16-coreの)cc-SMPを構成できる、」、と豪語している。登場は2012年だそうである。このときは「まさか」と思ったが。

なお、ARM社は2011年10月27日、ARMの64ビット拡張であるARMv8アーキテクチャを発表した。

次回は中国の動きとベンチャーの終焉など。

left-arrow   50history-bottom   right-arrow