世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


1月 13, 2020

HPCの歩み50年(第216回)-2012年(j)-

小柳 義夫 (高度情報科学技術研究機構)

神戸では「京」の稼働を機にVECPAR 2012とCCP 2012が開催された。CCP 2012では最終日に「計算科学は人類の課題を解決しうるか」と題したパネル討論会をマスコミに公開して日英両語で行った。

国際会議(続)

10) ICCS 2012
第12回目となるICCS 2012 (International Conference on Computational Science)は、2012年6月4日~6日にネブラスカ州のOmahaで開催された。テーマは”Empowering Science through Computing”であった。5件の基調講演が行われた。

Global Participatory Computing for Our Complex World

Dirk Helbing, ETH Zurich

New Frontiers through Computer and Information Science

Frederica Darema, Air Force Office of Scientific Research

Supercomputing Goes Data-Intensive

Michael L. Norman, SDSC

Challenges and Advances on Graph Mining

Philip S. Yu, U. of Illinois, Chicago

Brain Science and Informatics

Nin Zhong, 前橋工科大学

会議録はElsevierから発行されている。

11) ISCA 2012
第39回目となるISCA 2012 (39th International Symposium on Computer Architecture)は、2012年6月9日~13日にオレゴン州Portlandで開催された。主催はACM SIGARCHとIEEE/CS TCCAである。会議録は、IEEE XploreIEEE/CS Digital Libraryにある。

12) IWOMP 2012
第8回目となるIWOMP 2012 (8th International Workshop on OpenMP)は、2011年6月11日~13日にイタリアのRomeで“OpenMP in a Heterogenous World”のタイトルで開催された。会議録はSpringer社からLNCS 7312として出版されている。

13) ISC12
6月16日(土)~23日(土)にドイツのHamburgで開催された ISC12については別に記す。

14) HPDC’12
第21回となるHPDC’12 (The 21st International ACM Symposium on High-Performance Parallel and Distributed Computing)は、2011年6月18日~22日にオランダのDelft工科大学で開催された。Ian FosterにAchievement Awardが与えられた。受賞講演および基調講演は以下の通り。

Reflections on 20 Years of Grid Computing

Ian Foster, ANL

Putting “Big-data” to Good Use: Building Kinect

Mihai Budiu, Microsoft Research

Leveraging Renewable Energy in Data Centers: Present and Future

Ricardo Bianchini, Rutgers U.

会議録はACM Digital Libraryから発行されている。Workshopの会議録も2冊発行されている。

15) ICS 2012
第26回目となるICS 2012 (the international conference on Supercomputing)は、2012年6月25日~29日にイタリアのVeniceのSan Servolo島で開催された。以下の基調講演が行われた。

High performance supercomputers: should the individual processor be more than a brick?

Yale N. Patt

Blue Gene/Q: design for sustained multi-petaflop computing

Michael Gschwind

会議録はACM Digital Libraryにある。

16) VECPAR 2012
VECPAR 2012 (10th International Meeting on High-Performance Computing for Computational Science)は、2012年7月17日~20日に理研計算科学研究機構および神戸大学統合研究拠点で開催された。 招待講演は以下の通り。

Barriers to Exascale Computing

Horst D. Simon

Toward a Theory of Algorithm-Architecture Co-design

Richard Vuduc, Kenneth Czechowski

Visualization of Strong Ground Motion from the 2011 Off Tohoku, Japan (Mw=9.0) Earthquake Obtained from Dense Nation-Wide Seismic Network and Large-Scale Parallel FDM Simulation

Takashi Furumura

Grand Challenge in Life Science on K Computer

Ryutaro Himeno

HPC/PF – High Performance Computing Platform: An Environment That Accelerates Large-Scale Simulations

Kenji Ono, Tomohiro Kawanabe, Toshio Hatada

 

この時Horst Simonは、「コンピュータの名前の付いた駅はめずらしい」と言って、「京コンピュータ前」駅の看板をカメラに収めていた。併設されたiWAPT 2012を含む会議録は、Springer社からLNCS 7851として出版されている。

17) Hot Chips 24
第24回目となるHot Chips 2012は、2011年8月27日~29日、カリフォルニア州CuperinoのFlint Center of Performing Artsで開催された。いつものStanford大学の講堂は改装中で使えないとのことである。基調講演は以下の通り

The Surround Computing Era

Mark Papermaster, CTO of AMD

The Future of Wireless Networking,

Marcus Weldon, CTO of Alcatel-Lucent

Cloud Transforms IT, Big Data Transforms Business

Pat Gelsinger, COO Infrastructure Products, EMC

 

AMDのPapermasterは基調講演において、28nmプロセスのパフォーマンスコアSteamrollerについて明らかにしたほか、セッションでは28nmプロセスの省電力コア「Jaguar(ジャギュア)」の概要も明らかにした。また、現在のGPUコアで、来年(2013年)のAPUに統合されるGCN(Graphics Core Next)アーキテクチャについても講演があった。さらに、現在のAPUTrinityについても、これまでより詳しくアーキテクチャを説明し存在感を示した。(後藤弘茂のWeekly海外ニュースによる)

この会議では、Intel社がこれまでKNC (Knights Corner)のコード名で開発してきたMIC (Many Integrated Cores)のXeon Phiが製品として初めて正式に発表された。Intelはこれをコプロセッサと位置付けており、その点ではNVIDIAのGPUと同じであるが、KNCはLinux OSをサポートできるということが発表された。ただ、KNCだけでシステムを構成することはできない。(Hisa Ando氏の記事による)

18) ICPP 2012
第41回目となるICPP 2012 (41st International Conference on Parallel Processing)は、2012年9月10日~13日にペンシルバニア州Pittsburghで開催された。主催はIACC (The International Association for Computers and Communications)、共催はThe University of Pittsurghである。会議録はIEEE XploreとIEEE/CSのDigital Libraryに置かれている。

19) IEEE eScience 2012
IEEE eScience 2012は、2012年10月8日~12日にアメリカのシカゴで開催された。参加者は約250名。Microsfot eSceince workshopやOGF36などを併設していた。 4件の基調講演が行われた。

“Mythbusting  Knowledge  Transfer  with  nanoHUB.org:  A  software as a service cloud focused on end-to-end application users, application developers, and 24/7 service”

Gerhard  Klimeck

“Dark  Matter,  Public  Health,  and  Scientific  Computing”

Gregory  Wilson

“The  Reality  of  Reproducibility  of  Computational  Science”

Carole  Goble

“Predictability  and  Understanding  of  Our  Climate  Risk:   Approximations,  Bugs  and  Insight”

Leonard  Smith

 

詳細は、2012年11月30日の第36回グリッド協議会ワークショップでの高野了成氏の報告にある。

20) CCP 2012
CCP 2012 (24th IUPAP Conference on Computational Physics)は、2012年10月14日~18日に、理化学研究所計算科学研究機構や神戸大学統合研究拠点に程近いニチイ学館で開催された。IUPAP(純粋応用物理学会国際連合)のC20(計算物理部会)は毎年、欧州・アフリカ、南北アメリカ、アジア・オセアニアと3極順送りで国際会議「Conference on Computational Phyiscs(CCP)」を開催してきたが、今度はアジアの番ということで、スパコン「京」が6月に世界最速となり、2012年からは一般利用も開始するのを機に誘致した。委員長は、大阪大学レーザーエネルギー研の高部英明教授。筆者も国内委員を務めた。37か国から404名が参加した。写真は会場のスナップショット。会議録は、Journal of Physics: Conference Series, Volume 454, conference 1として出版されている。

 

最終日の18日(木)11時から12時半に、「計算科学は人類の課題を解決しうるか」と題したパネル討論会を行った。阪大本部の広報が20社ほどのマスコミに招待状を配信した。司会は高部とLuca Baiottiが行った。朝日新聞の辻篤子・論説委員が基調講演「計算科学への要望と期待」を行い、同時通訳付きで参加者と1時間の討論を行った。科学技術の自主開発が問題になったので、筆者がフロアから、「日本の原子力は、湯川先生が原子力委員として自主開発を主張したが、政府は手っ取り早い技術導入の道を選択した。今回の福島の原発事故の原因の一つは、アメリカの砂漠にあった原発のコピーであったことで、津波が想定されていなかったためと言われている。自主開発は重要である。」と述べた。あるアメリカ人の参加者が私の耳元で、「アメリカを責めないで」とささやいたので笑ってしまった。

 
   

16日(火)に、隣接する花鳥園(現:神戸どうぶつ王国)でBanquetが行われた。筆者は、歓迎の辞を頼まれたので、「神戸は清盛の時代から国際都市であり、エキゾチックなものにあふれている」というようなことを述べた。写真は鏡割り。左から、筆者、Luca Baiotti、平尾、高部。沢の鶴の関係者が、長々と日本酒の講釈をしたが、日本語で通訳もなかったので、外人はつまらなそうにしていた。

21) SoCC12
SoCC12(3rd ACM Symposium on Cloud Computing)は、2012年10月14日~17日にカリフォルニア州San Joseで開催された。第1回はSIGMODに併設、第2回はSOSPに併設で、第3回の今年から独立した。小川宏高氏の報告による。

22) SC12
11月11日(日)~18日(日)にSalt Lake Cityで開催されたSC12については別に記す。

23) Teraflops workshop
第16回目となる、Workshop on Sustained Simulation Performance(旧Teraflop Workshop)は、3月の仙台に続いて、12月10日~11日にドイツStuttgart大学HLRSで開催された。詳細はwebを参照。

24) ICPADS 2012
18回目となるICPADS 2012 (2012 IEEE 18th International Conference on Parallel and Distributed Systems)は、2012年12月17日~19日にSingaporeのNanyang Executive Centreで開催された。3件の基調講演が行われた。

Mobile cloud and crowd computing and sensing

Ivan Stojmenovic

Exascale computing and the democratisation of HPC

 

Distributed processing in wireless ad hoc and sensor networks

 

会議録は、IEEE Xploreから出版されている。

次回はHamburgで開催されたISC12である。想定通り「京」は2位に下がった。

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