世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


1月 23, 2023

富士通、スペインCESGAに量子コンピュータを提供

HPCwire Japan

Oliver Peckham オリジナル記事

スペイン北西部に位置するガリシア・スーパーコンピューティング・センター(CESGA)は、富士通から1400万ユーロ(約15億円)の量子コンピュータを導入すると発表した。CESGAによると、このシステムは今年中に設置される予定だ。

このシステムは、「柔軟な」量子コンピュータ、高性能コンピュータ、量子アルゴリズムエミュレータ、および前述のコンポーネントから得られるデータを取り込むストレージシステムの4つの主要要素から構成される。このシステムは、Xunta de Galicia(ガリシア州の統治機関)のGalician Innovation Agencyと欧州連合が共同で資金を提供している。EuroHPCではなく、REACT-EUプログラムを通じて、Covid-19の影響を受けて「危機修復能力を育成し、グリーン、デジタル、レジリエントな経済の回復に貢献する投資プロジェクトを支援する」ものである。

CESGA は、昨年 FinisTerrae III を発表し、従来の HPC の能力を更新したばかりだ。このシステムは、Atos 製で Intel と Nvidia を搭載し、約 4.4 ピークペタフロップスを実現するものだ。 しかし、同センターは量子力学の分野でも非常に積極的に活動している。CESGA は昨夏、ガリシア量子技術ポールを設立し、3000 万ユーロの資金提供を皮切りに、2030 年までにガリシアを「量子コンピューティングと通信における欧州および国際ベンチマーク」として、学術・研究面およびビジネス面の両方で確立することを目指している。

しかし、量子テクノロジー・ポール以前にも、アトスは「世界最高性能の商用量子シミュレーター」と謳う量子学習マシン(QLM)をCESGAに納め、CESGAはQLMをFinisTerrae IIIに導入している。また、CESGAは、「スペイン初の量子コンピューティングインフラを構築する」ための機関を統括する「量子スペイン」プロジェクトや、スペイン政府とガリシア州などの各自治体が協力して量子通信インフラの開発を行う「量子通信補完計画」に参加していることも紹介している。

富士通のハードウェアの取得は、CESGAの量子分野への投資をさらに加速させるものである。そのハードウェアの詳細についてはまだ不明だが、今回の発表と、昨年8月に富士通が理研と組んで2023年に量子コンピュータの販売を開始するというニュースは、容易に線引きできるだろう。その時の報道では、富士通は今年から64量子ビットの量子コンピュータを販売し、製薬、材料、金融の研究に携わる顧客に提供する意向だそうだ。

その他、欧州連合では、EuroHPC Joint Undertakingが最近、多様な量子技術やアーキテクチャをホストする6つのサイトをEU全域で選定した。詳しくはこちらを参照ください。