世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


3月 4, 2024

新HPCの歩み(第176回)-2001年(a)-

小柳 義夫 (高度情報科学技術研究機構)

21世紀の最初の年となったが、9.11で世界が変わった一年であった。1999年頃から始まったITバブルは弾けた。地球シミュレータの本体製作が始まり、年内には全筐体の搬入が完了して調整が始まる。中央省庁の再編が行われ、総合科学技術会議が発足する。

社会の動き

 
   

2001年(平成13年)は日米ともIT業界の不況が深刻であった。社会の動きとしては、1/1ギリシャがユーロを導入、1/6中央省庁再編、1/6筋弛緩剤点滴事件、1/7インドネシアで、味の素現地法人社長ら逮捕、1/13エルサルバドル大地震(M7.8)、1/20 J.W.ブッシュ(子)米大統領就任、1/20アロヨがフィリピン大統領に就任、1/21西東京市誕生、1/23額賀福志郎経済財政政策担当大臣が、KSD事件をめぐり辞任、1/26JR山手線新大久保駅乗客転落事故、1/26インド西部地震(M7.7)、1/30中内功、ダイエー会長を辞任、2/9宇和島水産高校の「えひめ丸」、米軍原潜急浮上により沈没、2/19宮崎のシーガイア倒産、2/20米英がイラク空爆、2/22コロンビア邦人副社長誘拐事件、3/1 JR西日本にユニバーサルシティ駅開業、3/1村上正邦元労働大臣がKSD事件で逮捕、3/12アフガニスタン中部バーミアンの大仏2体がタリバンによって破壊されたと、UNESCOが確認、3/19森・ブッシュ会談、3/24芸予地震(M6.8)、3/28安部英に一審無罪判決、3/29法の華三法行に破産宣告、3/31 USJ開園、4/1情報公開法施行、4/1三井住友銀行誕生、4/1海南島事件(米海軍電子偵察機EP-3Eと中国戦闘機が南シナ海上空で衝突)、4/6カリフォルニア電力危機のため、PG&E社が連邦破産法第11章適用を申請、破綻、4/13 DV防止法公布(10/13施行)、4/26小泉純一郎内閣発足、竹中平蔵、経済財政担当大臣、5/1マイライン(通信事業者優先接続)開始、5/1金正男とみられる男性が成田空港で拘束され、4日強制退去、5/8武富士強盗殺人放火事件、5/8田中真紀子外相が、アーミテージ米国務副長官との会談をドタキャン、5/11田中真紀子外相が、「外務省は伏魔殿」と発言、5/23小泉首相、熊本地裁でのハンセン病訴訟で控訴断念を決定、6/1ネパール王族殺害事件、6/8池田小児童殺傷事件、6/11 Timothy McVeigh処刑、7/13大阪市、2008年夏季オリンピックに落選、7/20-22第27回サミット(ジェノバ)、20万人の反グローバリゼーションデモ起こる、7/20 『千と千尋の神隠し』日本で公開、7/21明石の歩道橋で花火大会の見物客が将棋倒し、7/29参議院議員選挙、8/13小泉首相、靖国神社参拝、9/1新宿歌舞伎町ビル火災、9/4東京ディズニーシー開園、9/10千葉県の牛で日本初のBSE感染疑惑(9/21に確認)、9/11米、同時多発テロ事件、9/19小泉首相、後方支援のため自衛隊派遣を発表、9/30長嶋茂雄、巨人監督勇退、10/1佐賀市から60kHzの標準電波送信開始、10/4シベリア航空機撃墜事件、10/5米、炭疽菌事件、 10/7米軍、アフガニスタン爆撃開始、10/13 DV防止法施行、10/17 Wall Street Journalがエンロン社の不正会計疑惑を報道(12/2に連邦破産法11章適用を申請、破産へ)、10/18 JR東日本Suicaサービス開始、10/29田中真紀子外相が、人事課に2時間立てこもる、11/1田中外相が指輪を紛失と大騒ぎ、11/2石原知事、ホテル税実施を表明、11/10中国WTO加盟可決、11/12スーパーカミオカンデで大規模破損事故、光電子増倍管の70%を損失、11/12アメリカン航空機、ニューヨーク東部のクィーンズに墜落、11/16ハリーポッターシリーズ初の映画『賢者の石』公開、11/25アメリカに国土安全保障省発足、11/25テロ対策特措法に基づき、3隻の自衛艦がインド洋に派遣、11/30日本の高速道路においてETCの一般利用が開始される、12/1皇太子に愛子内親王誕生、12/1湘南新宿ライン運転開始、12/2エンロン社、連邦破産法第11章適用を申請、倒産、12/4筋弛緩剤点滴事件で容疑者逮捕、12/5野村沙知代、脱税で逮捕、12/11中国WTO加盟発効、12/17青森県住宅供給公社巨額横領事件の経理担当職員千田郁司逮捕(アニータ事件)、12/22日本、不審船を銃撃自沈。写真は神戸のポートアイランドにある、神戸開港150周年を記念する150本のO2 HIMAWARIの一つ。筆者撮影。

PG&E社やエンロン社の破産は、電力自由化を進める日本にとっても他山の石とすべき事件であった。流行語・話題語としては、「コメ百俵」「聖域なき改革」「Show the flag」「ガングロ」「ヤマンバ」「自民党をぶっ壊す」「失われた10年」「ジハード」など。

チューリング賞は、プログラミング言語 Simula I と Simula 67 の設計を通してオブジェクト指向プログラミングの基本的なアイデアを生み出したことに対してOle-Johan Dahl(Oslo大学)とKristen Nygaard(Oslo大学)に授与された。

エッカート・モークリー賞は、MIPS Computer社の創立者兼主任アーキテクトであり、MIPS R2000マイクロプロセッサを開発したJohn LeRoy Hennessy(Stanford University)に授与された。Hennessyは2017年にはチューリング賞を受賞する。2000年から2016年までStanford大学学長。

ノーベル化学賞は、不斉触媒による水素化反応の研究に対しWilliam S. Knowlesと野依良治に、不斉触媒による酸素反応の研究に対しKarl B. Sharplessに授与された。ノーベル化学賞は日本人が昨年の白川英樹に続き連続受賞。物理学賞は、アルカリ金属原子の希薄気体でのボース=アインシュタイン凝縮の実現、および凝縮体の性質に関する基礎的研究に対し、Eric A. Cornell、Wolfgang Ketterle、Carl E. Wiemanの3名に授与された。生理学・医学賞は、細胞周期における主要な制御因子の発見に対し、Leland H. Hartwell、Tim Hunt、Paul M. Nurseの3名に授与された。

個人的には2001年初頭から自宅がJCOMでインターネットにつながり、家でも仕事ができてしまうことになった。苦労の始まりかもしれない。案の定11月にはMTXウィルスに感染してしまった。2001年9月18日22時ごろから、日本国内のWindows系のPCやserverにNimda wormの感染が始まった。多くの感染手段を持ち、世界中に急速に感染が広がった。アメリカの同時多発テロの直後であった。

地球シミュレータ計画

1) 本体製作

 
   

2000年3月から地球シミュレータの本体製作が始まった。2001年1月から5月にかけてノード間ケーブルの搬入敷設が行われた。5月には地球シミュレータ研究開発センターが海洋科学技術センター横浜研究所に移転した。6月からは機器の搬入が始まり、7月には最初の計算ノード2筐体(4ノード)が搬入された。こうして2001年12月末にはようやく全筐体の搬入が完了し、最終調整に入った。床下のケーブルの写真は『地球シミュレータ開発史』p.8より。

2) ソフトウェア
2001年12月から、地球シミュレータ運用に向けて開発・チューニングが進められてきた応用ソフトウェアAFESとOFESを使用した性能確認が開始された。12月中旬、7ノードを使用したOFESによって、初めて全球10 kmメッシュの海洋大循環の処理結果が出された。またAFESの全球10 km メッシュの結果では高精密な雲(や降水量)の分布画像が得られ、あたかも衛星写真かと見まがうほどであった。

3) 三好甫氏死去
2001年4月、地球シミュレータの運用を海洋科学技術センターが一元的に行うことが決まった。このため海洋科学技術センターでは地球シミュレータセンターの体制づくりが開始された。しかし、1998年から日本原子力研究所地球シミュレータ開発特別チームリーダーを務めていた三好甫(はじめ)氏は、2001年5月に風邪をこじらせて肺炎を患い、長期の入院を余儀なくされた。

 
   

三好氏は、2001年7月10日、海洋科学技術センター地球シミュレータセンターの初代センター長に就任した。病床にありながらも電話やFAXで報告を受け、さらには地球シミュレータ研究開発センターの職員を入院先に呼んで指示を出すなど、地球シミュレータ開発の状況を熱心に見守り、その運用に向けた準備に取り組んだ。この時すでに技術者らに声をかけ、地球シミュレータの次に開発すべき次世代計算機の構想を練り始めていた。写真は「三好甫先生記念計算科学シンポジウム」より。

10月22日、検査の結果、病状がやや好転したこともあり、退院して自宅療養となった。三好氏は「週に1回程度は出勤したい」と述べるなど、仕事への意欲を持ち続けた。実際に10月29日には地球シミュレータの設置工事が進む横浜へ出勤し、執務室で予算や人事案件などのヒアリング、採用委員会の面接などの業務をこなした。しかし体調は万全とはいえず、職員の勧めにもかかわらず、この日は隣接する地球シミュレータ棟を見学することはなかった。

その3日後、三好氏は再び肺炎を起こして入院し、11月17日、入院先の病院で死去された。そのころ地球シミュレータ棟に計算機筐体が続々搬入されてフロアに並んでいたが、三好氏はその姿を一度も目にすることなく他界された。ご無念はいかばかりかと察せられる。そして、地球シミュレータに続くペタスケールのスーパーコンピュータを2009年ころに完成させたいと願う三好氏の構想も、氏の逝去とともに消えることとなった。三好先生の「地球シミュレータ」の後継機構想」の概略を「京」と比較すると以下の通り。

 

時期

テクノロジ

プロセッサ P

ノード

システム性能

三好構想

2009年3月

50 nm

256 GFlops (8 GHz)

32 P (8 TB)

8-12 PFlops (8-12 PB)

「京」

2011年11月

45 nm

128 GFlops (2 GHz)

1 P (16 GB)

11.28 PFlops (1.4 PB)

 

12月、核融合科学研究所の佐藤哲也が地球シミュレータセンター長に就任し、日本原子力研究所理事の浅井清が地球シミュレータ研究開発センター長に就任した。(『地球シミュレータ開発史』(p.82-83)参照)

4) 真鍋淑郎氏帰米
1997年に地球温暖化研究プログラムの領域長としてアメリカから招聘した真鍋淑郎氏は、2001年11月末に地球シミュレータの完成を見ることなくアメリカに帰ることになり、関係者はがっかりした。7月28日付朝日新聞夕刊では、「多額の税金で作った以上、使いこなす責任がある。だが、日本の縦割り行政の中で、研究所などが協力して使いこなす体制をつくるのは並大抵なことではない。研究者としてやってきたし、長く米国にいた私は適役ではない」と、辞任を決めた理由を話している。「縦割り」というところにヒントがあるようである。

理由の一つは、地球シミュレータセンターが、「大気海洋」「固体地球」以外への資源提供について非常に否定的だったからではないかと思われる。筆者もこのころ、さる関係者と会食したとき、「地球シミュレータの大部分の資源を地球科学が利用するのは当然であるが、世界トップの計算資源なのだから、一定の部分は広く他の分野に提供するべきではないか」と申し上げたところ、猛烈な反発を食らったことがある。縦割りの縄張り意識なのか、会計検査で目的外利用と指摘されることを恐れていたのかはわからない。実際には2003年の共同プロジェクト募集から、地球科学以外の「計算機科学分野」と「先進・創出分野」が設定されている。

上記の新聞記事によると、関係者は慰留したが引き留められなかったとのことである。真鍋淑郎氏は、2021年ノーベル物理学賞を受賞する。

日本政府の動き

1) 中央省庁の再編
1月6日、1府22省庁は1府12省庁に再編された。文部省と科学技術庁は文部科学省に、通商産業省は経済産業省になった。科学技術・学術関係の6審議会「航空・電子等技術審議会」「海洋開発審議会」「資源調査会」「技術士審議会」「学術審議会」「測地学審議会」の機能を整理統合し、1月6日付けで「科学技術・学術審議会」が文部科学省に設置された。その下に情報科学技術委員会が設置された。第一期は2001年2月1日~2003年1月31日。ちなみに、「科学技術」は旧科学技術庁の用語、「学術」は旧文部省の用語である。旧科学技術庁は宇宙・原子力・新技術など最先端技術志向であるのに対し、旧文部省は広く平等に伸ばそうという方向なので、合併してうまく行くか心配であった。英語名は“Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology”と長たらしいものになった。略号をMECSSTではなくMextとしたのはちょっとしたアイデアであろうか。他の省庁の英語名も長ったらしく、お互いに笑い合っているのではないか、というオジンギャグを思いついた、「メクスト、鼻くそを笑う」。

筆者はこれまで新技術事業団(JSTの前身の一つ)、原子力研究所、理研、地球シミュレータなど科学技術庁系の組織とも関係が深かった。これを知っている文部省の役人からは「小柳さん、科技庁はいけません」とまるで「目のかたき」のように言われていた。日本中に満遍なく教育を行きわたらせることを基本とする文部省と、先端科学を推進する科学技術庁が合併して、果たしてうまくいくのか?

中央省庁再編に合わせて、旧通商産業省工業技術院および傘下の15研究所を統合再編し、4月1日に独立行政法人産業技術総合研究所(略称は産総研)が発足した。なお、2015年4月1日からは国立研究開発法人、2016年からは特定国立研究開発法人。

科学技術庁傘下の金属材料技術研究所と無機材質研究所は2001年4月に統合され、独立行政法人物質・材料研究機構として発足した。

2) 総合科学技術会議
中央省庁再編に伴い、内閣主導により行われる政府内の政策の企画立案・総合調整を補助するという目的で内閣府が新設された。1959年2月に設置された科学技術会議は廃止され、内閣府に総合科学技術会議が設置された。その後、2014年5月19日に「総合科学技術・イノベーション会議」と改称される。

総合科学技術会議には情報通信プロジェクトが設置され、桑原主査のもとで2002年度予算への方策が検討された。この段階では、ネットワークに重点が置かれ、高速コンピュータは視野に入っていなかった。

3) 新興分野人材養成
科学技術振興調整費(現在の科学技術イノベーション創出基盤構築事業)では、「新興分野人材養成」プログラムが2001年度から始まり、初年度は7課題が採択された。「生物情報科学学部教育特別ユニット」(東大)、「産総研生命情報科学人材養成コース」(産総研)、「システム生物学者育成プログラム」(慶応大)、「奈良先端大蛋白質機能予測学人材養成ユニット」(奈良先端大)、「戦略ソフトウェア創造」(東大)、「セキュリティ技術者養成センター」(早稲田大)、「セキュア・ネットワーク人材養成」(大阪大)の7件である。期間は5年間。採択は2005年まで。筆者は最初の2年間、基盤的ソフトウェアWG主査を務めた。もちろん自分の研究科の提案のときは席を外した。

4) 情報科学技術委員会
この委員会の第一期は2001年2月1日~2003年1月31日であったが、開催記録はweb上に残っていないようである。文部科学省のwebページには2004年からの議事が公開されている。

5) 理化学研究所(クラスタ)

 
   

理化学研究所横浜研究所・ゲノム科学総合研究センター(1998年10月1日発足)は、遺伝子配列解析のため大規模クラスタシステムを2台導入した。一つは日本電気製で、64ノード/128プロセッサでGigabit Ethernetで接続されている。もう1台はLinux Networx社製で64プロセッサを搭載し、ネットワークはMyrinet 2000である(写真)。納入はベストシステムズ。

6) SINET(SuperSINET)
学術情報ネットワーク(SINET, Science Information NETwork)は1992年4月から運用を開始していたが、これをさらに高度化するSuper SINET計画が始まった。その後も更新が続いているので、前者をSINET1、後者をSINET2と呼ぶこともある。2001年8月31日、学術総合センターにおいて第1回スーパーSINETシンポジウム「スーパーSINETの構築と活用」が開催され、ネットワークの構想とともに、種々の研究分野における活用事例の研究発表が行われた。SINETは、実際には教育研究のインフラであるのに、「大型計算機センター同士やセンターとユーザを接続する」という建前が語られ、違和感を覚えた。

2002年1月9日、学術総合センターにおいて「スーパーSINET開通式」が盛大に開催され、運用が始まる。開通式では、テープカットや加納文部科学大臣政務官や末松国立情報学研究所長などの挨拶があり、高エネルギー加速器研究機構とのネットワークを通して、菅原寛孝機構長の挨拶がハイビジョン映像で流れた。

7) 科研費特定領域(C)
2000年11月、文部省学術審議会に情報学部会が設置され、「大学等における情報学研究の推進について」を提言した。情報学部会の中に特定研究領域推進分科会を設置し、当面の具体的な推進方策について議論した。6つの重点分野を定めた。(新HPCの歩み(第168回)-2000年(a)-

1月29日には情報学部会の専門委員が集まって、当面の具体的な推進方策について議論した。3月1日、情報学部会は、推進すべき研究領域名を「ITの深化の基盤を拓く情報学研究」とし、領域代表者を安西祐一郎慶應義塾大学理工学部長とするとともに、当該領域研究の研究項目を次の六項目とすることを提言した。総予算は年間8億円である。

A01

「新しいソフトウェアの実現」

A02

「コンテンツの生産・活用に関する研究」

A03

「人間の情報処理の理解とその応用に関する研究」

A04

「情報セキュリティに関する総合的な研究」

A05

「最先端の情報通信システムを活用した新しい研究手法」

A06

「情報化と社会制度の構築に関する研究」

 

6つの重点分野のうち、何と!筆者が推進しようとした「超高速計算機システム」だけが外れ、「人間の情報処理」が加えられた。予算規模からみてやむをえないかもしれない。HPCや計算科学に一番近いのはA05である。

初年度には計画研究12件と公募研究88件が始まった。

8) ACT-JST(科学技術振興事業団)
1998年に始まったACT-JST(計算科学技術活用型特定研究開発推進事業)は今年が募集の最終年度で、以下の21課題が基本課題として採択された。期間は2004年までの3年間である。

物質・材料分野

大野 隆央(物質・材料研究機構 計算材料科学研究センター 副センター長)

ナノスケール触媒創成シミュレータの開発

尾形 修司(名古屋工業大学 しくみ領域 助教授)

並列計算グリッドを用いたハイブリッド量子/古典数値解析法の開発

押山 淳(筑波大学 物理学系 教授)

ナノ物質・量子シミュレーターの開発

蕪木 英雄(日本原子力研究所 東海研究所 主任研究員)

第一原理計算によるハイブリッド分子動力学シミュレーション

衣川 健一(奈良女子大学 理学部 助教授)

量子多分子系ダイナミクス・シミュレーションの確立と応用

田中 成典(神戸大学 大学院自然科学研究科 教授)

DNAのナノ領域ダイナミクスの第一原理的解析

生命・生体分野

池村 淑道(総合研究大学院大学 葉山高等研究センター 教授) 教授)

自己組織化地図によるゲノム情報の包括的視覚化

笹井 理生(名古屋大学 大学院人間情報学研究科 教授)

配列から機能への蛋白質ダイナミカルモデリング

山口 隆美(東北大学 大学院工学研究科 教授)

心臓血管臨床リスク評価生体力学シミュレータ

中馬 寛(徳島大学 大学院ヘルスバイオサイエンス研究部 教授)

GRIDテクノロジーを用いた創薬プラットフォームの構築

地球・環境分野

経塚 雄策(九州大学 大学院総合理工学研究院 教授)

マルチスケール海洋環境シミュレータの開発と実用化

纐纈 一起(東京大学 地震研究所 教授)

地震災害予測のための大都市圏強震動シミュレータの開発

藤田 英輔(防災科学技術研究所 固体地球研究部門 主任研究員)

火山熱流体シミュレーションと環境影響予測手法の開発

安岡 善文(東京大学 生産技術研究所 教授)

環境・災害監視のためのアジア衛星観測ネットワークの構築

情報通信分野

井上 克郎(大阪大学 大学院情報科学研究科 教授)

ソフトウェアプロダクトの収集・解析・検索システム

海部 宣男(国立天文台  台長)

4次元デジタル宇宙データの構築とその応用

松岡 聡(東京工業大学 学術国際情報センター 教授)

コモディティグリッド技術によるテラスケール大規模数理最適化

栗田 多喜夫(村木 茂)(産業技術総合研究所 脳神経情報研究部門)

広域ビジュアルコンピューティング技術

スーパーコンピュータネットワーク型

赤井 久純(大阪大学 大学院理学研究科 教授)

計算機ナノマテリアルデザイン手法の開発

小池 秀耀(アドバンスソフト株式会社  代表取締役社長)

蛋白質の量子化学反応解析システムの開発

関口 智嗣(産業技術総合研究所 グリッド研究センター センター長)

仮想スーパーコンピュータセンタ利用環境GridLibの構築

 

これでACT-JSTの募集は終了したが、4年間の課題の中には、後に地球シミュレータや「京」コンピュータでの研究に発展したものがいくつか見られる。

9) JST CREST「情報社会を支える新しい高性能情報処理技術」
JSTは、2001年、新しいCREST「情報社会を支える新しい高性能情報処理技術」(研究総括 田中英彦東大情報理工学系研究科長)を発足させた。目的は、量子効果、分子機能、並列処理等に基づく新たな高速大容量コンピューティング技術の創製であった。初年度には4つの課題が選定された。

代表者

研究課題名

伊藤公平(慶応大)

全シリコン量子コンピュータの実現

井上光輝(豊橋技科大)

超高速ペタバイト情報ストレージ

中島浩(豊橋技科大)

超低電力化技術によるディペンダブルメガスケールコンピューティング

萩谷昌己(東大)

多相的分子インタラクションに基づく大容量メモリの構築

 

10) 学振未来開拓研究事業「計算科学」
1997年から始まっている学振未来開拓研究事業「計算科学」の主催する第4回計算科学シンポジウムが2001年1月30日、岡崎コンファレンスセンターで開催された。フロリダ州立大学のBernd A. Bergが特別講演“Multicanonical Simulation Methods and Selected”を行った。

計算科学における異分野でのアルゴリズムの類似性を軸とした研究会を昨年から行ってきたが、第2回アルゴリズムワークショップを金田プロジェクト(名大)の世話で、6月28日~29日に名古屋大学VBLで開催した。今回のキーワードは「多階層性」。

3月5日(月)には、未来開拓学術推進研究事業「計算科学」次世代超並列計算機の開発の中の「連続体向け超並列計算機の開発」サブグループが、筑波大学計算物理学研究センターにおいて研究発表会を行った。スライド集が残っている。

7月13日(金)には、未来開拓プロジェクトの一環として、「世界最高速重力多体問題専用計算機GRAPE-6完成記念講演会――GRAPEで探る宇宙–月の形成から宇宙の大規模構造まで」が東大山上会館で開催され、GRAPE-1からGRAPE-6までの歴代の計算機の展示とデモを行った。

第3回アルゴリズムワークショップを12月14日~15日に東大物性研(柏)で開催した。テーマは「部分と統合」とした。

政府関係の動きの続きは次回に。ITBLが始まる。大学評価で、数学者が情報科学を数学の一分野にように思っていることに驚いた。

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