世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


6月 4, 2025

新HPCの歩み(第236回)-2006年(b)-

小柳 義夫 (高度情報科学技術研究機構)

次世代スーパーコンピュータ概念設計が短時間のうちにまとめられ、F案とNH案に集約された。ターゲットアプリケーションとの適合性が検討され、案ごとの性能予測が行われた。すでに“co-design”が行われていた。次世代スーパーコンピュータ共用ワーキンググループでは、施設の共用の議論が行われた。

次世代スーパーコンピュータ開発(続き)

5) 概念設計
2007年3月27日の第2回会議の資料2-2によると、アーキテクチャの概念設計は、汎用システムとアクセラレータに分けて議論された。アプリケーション検討部会のところで述べたように、計算機仕様検討チームとターゲットアプリケーション検討チームとの合同検討会が何回か行われた。また、文部科学省では、5月、7月、9月にプロジェクト進捗会議が開かれている。また2006年7月には前年から始まっている要素技術開発プロジェクトの進捗評価を行った。システム候補は以下のように集約された。

 

6) システム案の概要
2006年6月末時点でのシステム案の概要は下図の通り。文字が小さくて読めないが、アクセラレータ部の消費電力については、以下のような「平成24年6月公開時の注意書き」がある。それによると「消費電力については、10 MW以下、10-20 MW、20 MW-30 MWの範囲でまとめたもの。提案は、ホスト部を除いて、0.68 MW(案1[国立天文台])、0.88 MW(案2[東京大学])であった。」とある。しかし0.xx MWを10 MW以下という区分にまとめるというのは非常識であるが、我々が見せられたときはアクセラレータ案が却下された後なので、気づかなかった。

 

汎用システムでは、NECと日立の案が統合され、筑波大の超並列システムの提案は実現可能性が乏しいとして外された。アクセラレータでは国立天文台の案と東大の案が統合された。2006年7~9月段階では、汎用システム2案とアクセラレータ1案に絞り込まれ、それぞれから概念設計報告書がまとめられた。

アクセラレータ案についてどのような議論が行われたかは明らかでないが、二者のシステム構成により、目標性能達成の見込みが確認できたため9月までの間に候補から外されたようである。

2006年9月19日から2007年2月28日の期間に、NEC+日立チーム(NH) と富士通(F)の二者が、概念設計を実施した。主要な要求仕様は、「ピーク性能10 PFlops以上、メモリ容量2.5 PB以上、消費電力30 MW以下(周辺機器、空調機器を含む)、設置面積3,200㎡以下(周辺機器を含む)」であった。2005年のイメージでは、アクセラレータ(専用計算機)で10 PFlopsを実現することになっていたが、この段階では、ベクトルまたはスカラという汎用的なアーキテクチャで10 PFlopsを実現することに変わっている点が大きな変更であった。

7) システム案の公表
この概要は「次世代スーパーコンピューティング・シンポジウム2006」(後述)が開かれた9月19日に理研から発表され、一般紙にも「次世代スーパーコンは富士通、NEC+日立の2案を比較検討へ」(日本経済新聞2006年9月20日 11時46分)(ITpro 2006/9/19)などと報じられた。日経エレクトロニクスの野澤哲生氏は「なお、これまで候補となっていたシステム構成は4案あった。今回の決定でこれを二つに絞った。『単純に四つから二つ選んだというよりは、各案の良いところをピックアップして再構成した』(理研)」と報じている。

東洋経済2006年9月23日号 pp.102-104掲載のインタビューで、佐藤哲也・地球シミュレータセンター長が「半導体技術は行き詰まっているので国費を出して10 PFlopsのコンピュータを開発する意味はない。あくまでも民間がやるべき。」と述べている。Linpackで世界一になっても意味がない、とか言うならともかく、地球シミュレータを超えるコンピュータだからといって何もそこまで言わなくとも。そもそも地球シミュレータは民間が開発したのだろうか。「手の届かないブドウは酸っぱい」ということか?

HPCwire紙も、日米のペタフロップス競争を取り上げ、理研のこの発表やシンポジウムを報じている。理研次世代スーパーコンピュータ開発実施本部のアプリケーション開発チームの花村光泰チームリーダのBonnでの基調講演を引用して、ベクトル、スカラ、専用機の性能、電力、ソフトウェアを比較している。日本はアメリカと違い、核兵器維持の重荷がないので、純粋にシミュレーション科学に専心できるので有利だ、と述べている。(HPCwire 2006/10/9)

辛口の論評でHPCwire誌にしばしば登場していた匿名の論客High-End Crusaderは、翌年であるが、“Heterogeneous Processing In The Age Of Nanocore (Part I)”と題し、あまり正確でない情報に基づいて日本の計画を論評している(HPCwire 2007/8/24)。3回にわたってということであるが、第2回、第3回は出版されず、この論者の投稿もこれが最後となった。いったい誰だったのか?

朝日新聞11月24日号の時時刻刻には、「スパコン最速、奪還せよ 「5年で世界一」へ」という記事があり、「ノーベル賞学者の野依良治・理研理事長が開発実施本部長に就任、陣頭指揮を執る。12年度までに1154億円を投じ、11年度中に世界最速を達成するのが目標だ。「毛細血管レベルで人体を流れる血液のシミュレーションをする」「地震が心配される地域についてビルや交通に及ぼす被害を計算し、どの対策が最も有効かを選ぶ」など、基礎研究に限らず、様々な用途に使える汎用スパコンを目指す。」どうもこれでは「世界一」が第一目標で、役に立つかどうかは二の次、と言っているようで、心配になった。

また、立地調査に全国15地域の自治体が手を挙げたことも報じている。「巨額の事業費や経済波及効果への期待も大きい。」とまるで公共事業と見ているのもうんざりした。ただ、記事の最後に「10ペタの達成は工学の問題だが、世界一を達成できるかはアメリカ次第」との指摘もあり、その後の動きを考えると意味深長である。

8) システム構成と性能予測
2006年12月1日、2社から「システム構成、ソフトウェア・スタックと機能概要、ベンチマーク・テストによる性能予測結果(SimFold, GAMESS, Modylas, RSDFT, NICAM, LatticeQCD, LANS, HPL, NPB-FT)を受領した。最終報告書の期限は2007年2月28日である。両者の提案の概要は以下の通り。詳細なデータは元資料を参照のこと。

最終的なシステムの構成案としては、以下の二つが考えられる。

(a) 二者のいずれかを選択(二者択一)。
(b) 二者の案をベースに共同開発。

後者の場合は共同開発のシステム構成の方が単独開発のシステムより、性能が上がること、また共同開発により、将来の我が国のスパコン開発の技術力、国際競争力、ビジネス展開力等の向上に一層貢献すること、および開発予算の範囲内で、共同開発システムが構築できることが条件である。この点は次の年に大きな議論となる。

9) NH案
日本電気・日立製作所の案は quad-coreのベクトルプロセッサを中心し、Fat treeで相互接続したシステムである。CPUチップ当たりピーク256 GFlopsであり、日本電気が7年後の2013年11月15日に発表するNEC SX-ACEと似ている。ただし、後者は28 nmのテクノロジーを使い、クロック1 GHzでベクトルパイプを2倍持っている。

 

10) F案
富士通案はocta-coreのスカラプロセッサを中心とするシステムで、ToFu (Torus-connected Full-connection)ネットワークなど建設された。「京」と多少似たところもあるが、違いも大きい。このToFuは、18プロセッサを完全結合し、それを3次元トーラスで接続するのに対し、「京」のTofu (Torus Fusion)は2×3×2×24×18×16(+1)の6次元接続である。(+1)はI/Oノード。I/Oノードを除いて82944というノード数は共通である。

(a) ノード
プロセッサは2 GHz、8コアで、各コアは4 FMAのSIMDで 16 GFlops、合計128 GFlops。共通のL2 cacheが6 MB、メモリが32 GB。ノードは1プロセッサを搭載し、ボード上に2ノード。このSIMD演算器は、4命令同時発行、8命令同時ディスパッチのダイナミックスケジューリングによるアウトオブオーダ実行機能を備えたスーパースカラで、SIMD命令の2命令同時実行、非SIMD命令の4命令同時実行に加えて、SIMD命令1命令と非SIMD命令2命令を同時実行することができる。

(b) シャーシ
シャーシには9ボード18プロセッサを搭載、2.304 TFlops。ボード間は片方向2.5 GB/sのリンクで完全結合。各ボードから8本のリンクが出ているので合計180 GB/sということのようである。

(c) システム
4608個のシャーシを3次元トーラスで結合。ノード総数82944。リンクは片方向30 GB/sで6方向。推測だが、4608=16×24×12か? ノード総数82944、ピーク性能10.61 PFlops。このToFuのスイッチには、FX1のような演算機能が想定されていた。

 

11) アドバイザリーボード
文部科学省は、研究振興局スーパーコンピュータ整備推進本部に「最先端・高性能汎用スーパーコンピュータの開発利用」プロジェクト・アドバイザリーボードを設置した。発足時の委員は下記の通り。第3回会議で、日本自動車研究所の小林敏雄が追加された。

氏名

所属

(座長) 岩崎 洋一

筑波大学長

安西 祐一郎

慶応義塾長

郷 通子

お茶の水女子大学長

小宮山 宏

東京大学長

立花 隆

ノンフィクション作家、ジャーナリスト、評論家

中澤 喜三郎

元明星大学教授

中村 宏樹

分子科学研究所長

平木 敬

東京大学大学院情報理工学系研究科教授

 

下記の通り開催された。

 

日付

主な議題

第1回

2006年3月15日

運営案、プロジェクトの説明。(議事概要

第2回

2006年5月19日

事務局からプロジェクトの実施体制、概念設計のスケジュール、米国におけるスーパーコンピュータ開発の状況等について説明があった。(議事要旨

第3回

2006年7月28日

日本自動車研究所 小林敏雄所長がアドバイザリーボード委員に加わった。プロジェクトの実施体制、ターゲットアプリケーションによる性能評価、米国のスーパーコンピュータ開発状況、次世代ナノ統合シミュレーションソフトウェアの研究開発等について報告。(議事要旨

 

12) 次世代スーパーコンピュータ共用ワーキンググループ
文部科学省では、情報科学委員会のもとに「次世代スーパーコンピュータ共用ワーキンググループ」を設置した。その目的は、「次世代スーパーコンピュータは、計算科学技術の分野で比類なき性能を誇る我が国随一の施設となる予定であり、科学技術の広範な分野における多様な研究者等に活用されることにより、その価値が最大限に発揮されるものである。このようなことから、多くの研究者等による次世代スーパーコンピュータの共用を促進するため、当該施設の共用に係る基本的な考え方等について検討を行う。」とされている。委員は以下のとおり。

主査

福山 秀敏

東京理科大学理学部教授

専門委員

大島 まり

東京大学生産技術研究所 教授

 

大谷 泰昭

みずほ情報総研株式会社科学技術部 部長

 

大野 英雄

財団法人高輝度光科学研究センター 専務理事

 

岡本 祐幸

名古屋大学大学院理学研究科 教授

 

神谷 幸秀

高エネルギー加速器研究機構 理事 加速器研究施設長

 

佐藤 哲也

独立行政法人海洋研究開発機構地球シミュレータセンター センター長

 

下條 真司

大阪大学サイバーメディアセンター センター長

 

高棹 滋

旭化成株式会社基盤技術研究所 主席研究員

 

高田 章

旭硝子株式会社中央研究所 主幹研究員

 

鷹野 景子

お茶の水女子大学大学院人間文化研究科複合領域科学専攻 助教授

 

田口 潤

株式会社日経BP 日経コンピュータ 編集長

 

寺倉 清之

北海道大学創成科学共同研究機構 教授

独立行政法人産業技術総合研究所 研究顧問

 

樋渡 保秋

金沢大学 名誉教授

 

朴 泰祐

筑波大学大学院システム情報工学研究科コンピュータサイエンス専攻 教授

 

牧野 淳一郎

東京大学理学系研究科 助教授

科学官

西尾 章治郎

大阪大学大学院 情報科学研究科長・教授

 

議事は以下のとおり。

 

日付

主な議事

第1回

2006年4月6日

先端大型研究施設の整備・運用に関する状況について、次世代スーパーコンピュータの共用に係る基本的考え方について

配付資料)(議事録

第2回

2006年4月27日

次世代スーパーコンピュータの共用に係る基本的考え方について(配付資料)(議事録

第3回

2006年5月15日

特定高速電子計算機施設の共用の促進に関する基本的な方針(案)について(配付資料)(議事録

第4回

2006年6月22日

特定高速電子計算機施設の共用の促進に関する基本的な方針(案)に関するパブリックコメントの結果について、次世代スーパーコンピュータの共用ワーキンググループにおける意見の整理について(配付資料)(議事録))

 

文部科学省は、2006年7月13日付けで、「特定高速電子計算機施設の共用の促進に関する基本的な方針に対する意見募集」を行い、17の組織から意見が出された。

13) 情報科学技術委員会 計算科学技術推進ワーキンググループ
計算科学推進ワーキンググループも「最先端・高性能汎用スーパーコンピュータの開発利用」プロジェクトなどについて、以下のように議論を進めた。

回数

日付

主な議事

第15回

2006年2月1日

プロジェクトの今後の進め方、アプリケーションソフトウェアの発展に向けて、ソフトウェアの普及方策について、次世代スーパーコンピュータの共用のあり方

配付資料)(議事録

第16回

2006年4月18日

計算科学技術推進ワーキンググループ報告書骨子について、

計算科学技術に関する研究開発の推進方策について、次世代スーパーコンピュータの共用について

配付資料)(議事録

第17回

2006年6月5日

情報科学技術に関する研究開発の推進方策について 、平成19年度に重点的に推進すべき研究開発について、計算科学技術推進ワーキンググループ報告書素案について

配付資料)(議事録)

第18回

(最終回)

2006年7月31日

計算科学技術推進ワーキンググループ報告書(案)について

配付資料)(議事録

 

14) 立地検討部会
2006年7月、改正供用法が施行され、理研がスーパーコンピュータの設置者と公式に規定されると同時に、理研は次世代スーパーコンピュータの立地選定の基本方針を決め、7月7日、立地候補地をリストアップするための立地調査を開始した。7月11日、立地検討部会を設置した。委員は以下の通り。

氏名

所属

(部会長) 黒川 清

内閣特別顧問(日本学術会議会長(設置当時))

(副部会長) 土居 範久

中央大学理工学部教授

今村 努

独立行政法人海洋研究開発機構理事

梶谷 文彦

川崎医療福祉大学教授

川本 要次

スーパーコンピューティング技術産業応用協議会スーパーコンピュータ部会長(三菱重工㈱高砂研究所次長)

高田 章

スーパーコンピューティング技術産業応用協議会運営小委員会委員長(旭硝子㈱中央研究所主幹研究員)

高橋 英明

㈱三菱総合研究所安全科学研究本部長

刀根 薫

政策研究大学院大学リサーチフェロー

中村 宏樹

自然科学研究機構分子科学研究所所長

福山 秀敏

東京理科大学理学部教授

三浦 謙一

情報・システム研究機構国立情報学研究所教授

矢川 元基

東洋大学教授/日本原子力研究開発機構システム計算科学センター長

渡邉 豊英

名古屋大学情報連携基盤センター長

渡邉 敏正

広島大学情報メディア教育研究センター長

 

理化学研究所は、次世代スーパーコンピュータ施設の立地候補地を選定するための調査を実施した。理化学研究所の各事業所及びこれまで次世代スーパーコンピュータ施設の誘致に関して要望等を出していた地方公共団体に対して行い、調査票を発出した。それ以外の地方公共団体からも受け付ける。締め切りは7月20日であった。候補地は北海道から九州まで15カ所であったが、議論の経緯は以下の通り。

日付

会議

主な議論

2006年7月25日

第1回立地検討部会

評価方法と手順の検討、評価項目設定の検討

2006年8月29日

第2回立地検討部会

評価項目、評価基準等の検討

2006年9月29日

第3回立地検討部会

評価項目、評価基準等の決定

 

第1回重み付けWG会合

 

 

第1回評点付けWG会合

 

2006年10月23日

第2回重み付けWG会合

 

2006年11月25/26日

誘致団体からのヒアリング

第2,3回評点付けWG会合開催

 

2006年11月27日

第4回立地検討部会開催

評価結果の中間とりまとめの検討

2006年12月28日

 

15の候補地を5地点に絞り込み

2007年1月29日~2月16日

委員による現地調査

 

2007年3月13日

第5回立地検討部会

評価結果及び報告書案の検討

2007年3月23日

 

報告書最終とりまとめ

 

2007年3月28日、理化学研究所は立地地点を神戸に決定したと公式発表する。

立地決定は誘致希望者も多く政治問題にもなりかねないので、客観的・科学的な観点から検討した経緯は「次世代スーパーコンピュータ施設立地評価報告書」にきわめて詳細に記録されている。

15) 次世代スーパーコンピューティング・シンポジウム2006
次世代スーパーコンピューティング・シンポジウム2006」が2006年9月19日~20日、丸の内にある明治安田生命ビルのMY PLAZAホールおよびMY PLAZA会議室で開催された。昨年に引き続き2回目であった。プログラムが公開されている。主催は理化学研究所、共催は文部科学省、国立情報学研究所、内閣府、経済産業省、日本学術会議、日本経済団体連合会、各学会等が後援。プログラムは以下の通り。

9月19日午前

10:00

開会挨拶

理化学研究所 野依 良治 理事長

文部科学省 河本 三郎 文部科学副大臣

国立情報学研究所 坂内 正夫 所長

10:15

来賓挨拶(紹介)

 

衆議院議員 尾身 幸次 スーパーコンピュータ推進議員連盟 会長

衆議院議員 渡海 紀三郎 科学技術立国調査会 会長

衆議院議員 後藤 茂之 スーパーコンピュータ推進議員連盟 事務局長

参議院議員 小林 温 経済産業大臣政務官

内閣府 清水 一治 大臣官房審議官(科学技術政策担当)

10:30

基調講演

「クルマの開発におけるCAEの役割と今後の可能性―計算スピードの飛躍的向上で何が変わるか―」

鈴木 盛雄 日産自動車株式会社 技術開発本部統合CAE部 部長

11:20

政策講演「スーパーコンピューティングの国家戦略」

藤木 完治 文部科学省 大臣官房審議官(研究振興局担当)スーパーコンピュ-タ整備推進本部長

12:00

昼  食     ※MY PLAZAホール・ホワイエにてデモ展示

 

19日午後および20日午前は分科会であった。前年とは異なり、6つの分科会が2つずつ並列で開催され、各分科会から出された提言をまとめて、シンポジウムとしての提言を発表した。各分科会のテーマとモデレータは下記の通り。

 

テーマ

モデレータ

分科会A(ライフサイエンス)

「生命科学の新たな可能性を拓く」

郷通子

分科会B(工学)

「シミュレーションが拓く知的モノづくりの夢」

小林敏雄

分科会C(ナノ・材料)

「量子シミュレーションが拓くナノの世界」

平尾公彦

分科会D(環境・防災)

「持続的発展と安全・安心な社会のために」

沖 大幹

分科会E(利用環境)

「サイバー・サイエンス・インフラストラクチャ(最先端学術情報基盤)の構築に向けて」

西尾章治郞

分科会F(物理・天文)

「理論・実験・観測と計算科学の展望」

小柳義夫

 

9月20日午後は全体セッションに戻った。

13:30

招待講演

「ペタコン時代の『知』の行方」

立花 隆 評論家

14:30

コーヒーブレイク ※MY PLAZAホール・ホワイエにてデモ展示

14:50

全体討議 「次世代スーパーコンピュータの利用と研究開発の新たな展開に向けて」

座長:土居 範久 中央大学理工学部 教授

参加者: 

沖 大幹 東京大学生産技術研究所 助教授

小柳 義夫 工学院大学情報学部長・教授

郷  通子 お茶の水女子大学 学長

小林 敏雄 (財)日本自動車研究所 所長

西尾 章治郎 大阪大学大学院情報科学研究科長・教授

平尾 公彦 東京大学大学院工学系研究科 教授

16:40

提言のとりまとめ(提言

16:50

閉会挨拶

坂田 東一 理化学研究所理事

 

16) 次世代スーパーコンピュータ開発実施本部開発グループ 客員研究員
理化学研究所次世代スーパーコンピュータ開発実施本部開発グループは、2006年9月、以下の客員研究員を委嘱した。

平山 俊雄

日本原子力研究開発機構 システム計算科学センター 次長

岩宮 俊幸

宇宙航空研究開発機構

宇川 彰

筑波大学 計算科学研究センター長 数理物質科学研究科教授

佐藤 三久

筑波大学 計算科学研究センター 教授

朴 泰祐

筑波大学 計算科学研究センター 教授

石川 裕

東京大学 教授

村上 和彰

九州大学 教授

 

開発実施本部で行われた客員研究員との意見交換会の日程は以下の通り。

第1回

2006年10月10日

第2回

2006年11月6日

第3回

2006年12月13日

第4回

2006年12月21日

第5回

2007年1月12日

第6回

2007年1月24日

第7回

2007年2月21日

第8回

2007年3月8日

第9回

2007年3月23日

 

内容は公表されていないが、次世代スーパーコンピュータの概念設計について議論していたと思われる。

17) 国立情報学研究所と基本協定締結
2006年10月19日、理化学研究所と国立情報学研究所は次世代スーパーコンピュータの利用及び先端的な情報基盤の構築のために基本協定を締結したことを発表した。情報学研究所は全国の大学・研究機関等を結ぶ学術情報ネットワーク(SINET サイネット/スーパーSINET)を運用し、広域分散型の大規模コンピュータ環境を実現するためのグリッドミドルウェア(NAREGI)をはじめとした、次世代の学術情報基盤としてのサイバー・サイエンス・インフラストラクチャ の構築に取り組んでいる。理研が次世代スーパーコンピュータに関して協定を結ぶのは、平成18 年6 月14 日に独立行政法人海洋研究開発機構(理事長:加藤康宏)、9 月7 日に国立大学法人筑波大学(学長:岩崎洋一)との締結に続いて、3 件目である。

18) 総合科学技術会議フォローアップ 
2006年5月26日に開催された、総合科学技術会議評価専門調査会(第55回)において、大規模研究開発の一つである「最先端・高性能汎用スーパーコンピュータの開発利用」について、事前評価のフォローアップを行うことがきまった。委員は以下の通り。

氏名

所属

柘植 綾夫

総合科学技術会議議員

伊澤 達夫

評価専門調査会専門委員

笠見 昭信

小林 麻理

土居 範久(座長)

浅田 邦博

東京大学大規模集積システム設計教育研究センター長・教授

天野 吉和

トヨタ自動車株式会社常務役員

小柳 義夫

工学院大学情報学部長

田中 英彦

情報セキュリティ大学院大学情報セキュリティ研究科長

森下 真一

東京大学大学院新領域創成科学研究科教授

 

会議は3回行われた。なお、第3回は「フォローアップ結果」には書かれていない。

日付

 

主な議事

2006年8月30日

第1回

検討会の調査・検討の進め方について、指摘事項への対応状況等の説明、質疑応答

2006年9月11日

第2回

文部科学省からの追加説明、質疑応答、討 議、フォローアップコメントの提出について

2006年10月3日

第3回

まとめ

 

2006年10月5日に開催された、第59回評価専門調査会に「最先端・高性能汎用コンピュータの開発利用」のフォローアップ結果(案)が提出された。評価結果の概要は以下の通り。

 平成17年度に実施した総合科学技術会議による事前評価で指摘された事項への対応状況について確認した結果、マネジメント体制の構築についてはメーカー、大学、研究所の三者による協力体制が確立され、ターゲットを明確にした開発の推進についてはターゲットアプリケーションが選定され、京速計算機システムの構成の最適化についてはシステム構成の練り直しが行われるなど、指摘に対応するべく積極的な取組が見られた。一方、一部の開発体制の確立、アーキテクチャ案の決定などについては作業の遅れが見られたため、取組結果を確認するには至らなかった。この検討作業の遅れは、フロントローディングの充実を図り、その一環としてシステム構成を基本に立ち返って検討し直すこととしたことによるものであり、文部科学省は、来春には概念設計を終了させるとともに、その後の開発スケジュールに遅れを生じさせないよう全力を挙げて取り組むべきである。

 なお、概念設計が終了した後速やかに、今回取組結果を確認できなかった項目についての対応状況の確認と併せ、評価を実施する。

 

19) スーパーコンピュータ産業応用協議会
前年発足したスーパーコンピュータ産業応用協議会は、2006年12月15日に東大の生産研で公開シンポジウムを開催し、筆者が記念講演「スーパーコンピュータと計算科学技術」を行ったほか、パネルディスカッションなどが行われた。

20) PSIシンポジウム2006
九州大学は、富士通、(財) 福岡県産業・科学技術振興財団、(財) 九州システム情報技術研究所とともに、研究開発領域「将来のスーパーコンピューティングのための要素技術の研究開発」研究開発課題「ペタスケール・システムインターコネクト技術の開発」(PSIプロジェクト)を実施していたが、2006年12月20日、理研の次世代スーパーコンピュータ開発実施本部のある明治安田生命ビルにおいて、前年に引き続きPSIシンポジウム2006を開催した。参加者165名。プログラムは以下の通り。

土居範久(中央大)

プログラムディレクターご挨拶

Denis Noble (Oxford)

基調講演:Computational modeling of the heart: from genes to the whole organ

村上和彰(九大)

プロジェクト全体概要

尾中 寛(富士通)

「光技術を用いた超高バンド幅スイッチング技術の開発」

石畑宏明(富士通)

「コレクティブ通信をサポートする高機能スイッチの開発」

南里豪志(九大)

「動的最適化を用いたMPI高速化技術の開発」

青柳 睦(九大)

「ペタスケール・システムインターコネクトの性能評価環境の構築」

朴泰祐(筑波大)

招待講演(全体総括)

三浦謙一(情報研)

プログラムオフィサーご挨拶(全体総括)

 

次回は、次世代スーパーコンピュータ以外の日本政府関係の動きを述べる。学術会議の会員を、学会でなく学術会議自体が決めることになり、学会との関係が微妙になった。その後の任命拒否問題にも関係する。

 

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