世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


11月 4, 2013

TOP500は進化すべき

HPCwire Japan

Tiffany Trader

世界の最速スーパーコンピュータを列挙したTOP500リストは、20年以上前の1993年6月に、Berkley研究所の科学者Erich Stohmaier氏と教授のHans Muer氏によって考案され、公開された。Jack Dongarrra氏によって開発されたLinpackベンチマークを使って、極めて有名なリストが作成されている。唯一の尺度であるLinpackベンチマークの妥当性が継続しているか疑問視されたが、広く認められた測定基準と価値ある歴史の記録としての、年2回のリストの影響は否定できない。

近年では、Berkley研究所でFuture Technology Groupを率いるShohmaier博士は、TOP500の進化についての洞察を合衆国エネルギー省のウェブサイトにおいて、HPCの将来とQ&Aと共に公開した。

Berklayにおいて、Stormaier教授のチームは、科学者がアプリケーションの最大のパフォーマンス向上を得られるような、ハードとソフトのシステムの設計、開発を調査している。TOP500の共同創設者である教授は、アプリケーション側だけでなく、コンピュータの自然な継続をもたらす物理学を研究した。博士の仕事は、素粒子物理学に数値解析的手法を導入することだった。計算集約型(訳注:I/Oや通信よりも演算速度が性能を決める)アプリケーションは、その時点で利用可能な最大のシステムだけで実行可能なので、科学者にとってHPCへの移行は「自然な進歩」であった。

TOP500は、科学者のコミュニティーに対して、単純だが意味がある判断基準を提供するために開発された。1980年代には、明らかにベクトルコンピュータがスーパーコンピュータだった。そのようなシステムにおいては、計算速度を数えれば計算の限界が解った。しかし、1990年代になると、「普通のコンピュータ」とスーパーコンピュータすなわちベクトルコンピュータの境界がぼやけ始めた。と、博士は指摘する。さらにまた、並列プロセッサコンピュータについては、ベクトルコンピュータを評価するための「古い方法」がもはや有効でなかった。

これが、TOP500をとりまく状況であったが、TOP500はより重要になった。博士によると、「測定できない物は、検討もできないし、改善もできない。」「スーパーコンピュータの進歩について議論したいならば、性能を定義する必要がある。性能を定義して測定するために、ベンチマーク結果は重要である。」

リストがその有用性よりも過大評価されているという意見に対して、少なくとも性能評価のひとつの方法ではあると、博士は考える。何人かの科学界のリーダー、例えばBlue Waters ProjectディレクターのBill Kramer氏は、ベンチマークとして、性能を維持できる実アプリケーションを求めている

「利用される様々な種類のプログラムを本当に代表できる、ひとつの測定基準またはベンチマークは存在しない。」と、Storhmaier博士は認める。

「異なる目的、異なる利用者、異なる状況のために、異なるベンチマークを定める必要がある。すなわち、進化する必要がある。」

Linpackベンチマークの父であるJack Dongara氏も、類似した展望を持っている。

「Linpackベンチマークは、HPCコミュニティーにとって、信じられないほど成功した測定基準である。」とDongarraは述べた。「それが示す傾向、そのために最適化する努力、そして宣伝効果は、非常に重要である。しかしながら、実アプリケーションの代用としてのLinpackの妥当性は非常に低くなり、代わりのものが必要になっている。」

「代わりのものの必要性」のために、Tennessee大学計算機科学教授のDongarra氏、New Mexico AlbuquerqueにあるSandia国立研究所の同僚Michael Heroux氏が、新しいベンチマークを開発している。2013年11月のSC13において発表されるであろう。

Strohmaier氏へのインタビューには、他の話題もある。Berkleyの科学者らの議論によると、TOP500の20年間に渡る傾向が、Exa-FOPSスーパーコンピュータを実現するために解決すべき障害と、その次の1000倍の重要性が解る。

先進のコンピューティングを目指す学生に対して、Stohmaier氏は、強力な基礎的能力を勧めている。「科学を学びたいならば、同様に、計算機科学を学ぶ必要がある。そして、HPCのハードウェアとソフトウェア環境の素早い変化に対応するために、勉強し、自分も変化し続ける必要がある。」