世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


2月 13, 2018

HPCの歩み50年(第150回)-2008年(c)-

小柳 義夫 (神戸大学 特命教授)

次世代スーパーコンピュータ計画が進む中、日本独自の素子を用いたコンピュータ「パラメトロン」の50周年記念のシンポジウムがあった。SACSIS 2008では去年に続いて「Cellスピードチャレンジ2008」が開催された。

国内会議

1) HPCS2008
情報処理学会HPC研究会主催、ARC研究会等が協賛するHPC2008(2008年 ハイパフォーマンスコンピューティングと計算科学シンポジウム)は、2008年1月17日~18日に東京工業大学 大岡山キャンパス 西9号館 ディジタル多目的ホールで開催された。アドバイザリ委員長は三浦謙一(NII)、副委員長は横川三津夫(理研)、プログラム委員長は建部修見(筑波大)、副委員長は岩下武史(京大)と片桐孝洋(東大)、実行委員長は朴泰祐(筑波大)、副委員長は高木亮治(JAXA)であった。招待講演「超大規模量子計算が拓く強相関フェルミ原子ガスの新たな世界」(町田昌彦、日本原子力研究開発機構)や、パネルセッション「次世代スーパーコンピュータの利用に関する提言」(モデレータ:朴泰祐、パネリスト:佐藤三久、寒川光、須田礼仁、関口智嗣、松岡聡)が行われた。松岡は、「『ペタコン』も片意地張らず『みんなのスパコン』でダーウィンしようね–」と堤言した。

2) Windows クラスタ講習会
同志社大学およびWindows HPCコンソーシアムは、2008年2月28日、同志社大学の東京オフィスにおいて、並列処理,PCクラスタの基礎的な事項をまなび, Windows CCSによるクラスタの構築方法,プログラムの作成などを学ぶ表記の講習会を開催した。プログラムは以下の通り。

10:00 廣安 知之(同志社大学) 開会あいさつ
10:05 廣安 知之(同志社大学) 並列処理とPCクラスタの基礎
11:00 古賀 正章(マイクロソフト) Windows Compute Cluster Server 2003の概要とインストール
12:00 休憩
13:30 柴田 直樹(マイクロソフト) Windows CCSの使い方とVisual Studio 2008 によるMPIプログラミングおよびデバッグ
15:30 休憩
15:45 古賀 正章(マイクロソフト) Windows HPC Server 2008 のご紹介
16:45 Q and A

 

3) Golub追悼研究会
2007年11月16日に亡くなられた数値解析の大家Gene Howard Golub教授(Stanford大学)を忍んで、彼の誕生日の2008年2月29日(金)に世界中で追悼研究集会が催されたが、日本でも筑波大学総合B0112で開催された。存命中も、4年に1度、このうるう日に彼を囲む研究会が行われていた。

4) 科研費 特定領域 「情報爆発IT基盤」平成19年度成果報告会
喜連川優(東大生産研)が提案した科研費特定領域「情報爆発時代に向けた新しいIT基盤技術の研究」は2007年に採択され、2010年度までの6年間進められる。2008年3月3日~4日、秋葉原コンベンションホールにおいて表記の報告会が開催された。プログラムは以下の通り。

3月3日

10:00 安達 淳 (国立情報学研究所) 開会挨拶
10:10 喜連川 優 (東京大学/ 領域代表) 領域活動報告
10:30 宮原 秀夫 (情報通信研究機構) 基調講演:総合デザイン力の涵養
11:10 研究項目成果報告 (A01,A02,A03,B01)
12:10 休憩
13:30 イノベーション共有プラットフォーム
SlothLib マイサーチエンジン
Tsubaki 深い言語処理によるサーチエンジン
InTrigger広域大規模分散ソフトウエア開発環境
Xsense 100ノードセンサーテストベッド
15:00 デモ・コーヒーブレーク
16:30 井上(Yahoo), 田中(京大),喜連川(東大) 産学連携2.0 鼎談
18:00 懇親会 「東京フードシアター 5+1」

 

3月4日

各研究項目 パラレルセッション

情報管理・検索・融合
大規模システム技術
コミュニケーションダイナミクス
情報ガバナンス

 

5) HOKKE-2008
第15回「ハイパフォーマンスコンピューティングとアーキテクチャの評価」 に関する北海道ワークショップ(HOKKE-2008)は、2008年3月5日(水)~3月6日(木)に北海道大学学術交流会館第一会議室及び小講堂で開催された。当時のメールには第14回と誤記されている。第169回 計算機アーキテクチャ研究会および第114回 ハイパフォーマンスコンピューティング研究の合同開催である。36件の講演が行われた。懇親会はキリンビール園本館中島公園店で開催された。

6) 第7回つくばWANシンポジウム
2008年3月11日、筑波大学大学会館国際会議室において、「第7回つくばWANシンポジウム」が開催された。主催は財団法人国際科学振興財団(つくばWAN推進会議)であった。プログラムは以下の通り。

13:30 腰塚 武志(つくばWAN推進会議 委員長、筑波大学副学長) 主催者挨拶
13:40 佐藤 聡(つくばWAN NOCチームリーダー) NOCからの報告(年間活動報告等)
14:00 中尾 実(国立情報学研究所) 招待講演:未来を感じるSINET3
14:50 休憩
15:00 朴 泰祐(筑波大学) 講演Ⅰ:筑波大学次期スーパーコンピュータの概要とつくばWANを介した利用について
15:30 登大遊(つくばデータセンター準備会、筑波大学院生) 講演Ⅱ:つくばデータセンター設置計画
16:00 休憩
16:10 関根 秀太郎(防災科学技術研究所) 講演Ⅲ:高速ネットワーク網を用いた地震観測データの流通
16:40 並木 信和(三菱スペース・ソフトウエア) 講演Ⅳ:つくばWANを利用した農水省所管の研究機関との研究協力について
17:30 交流会

 

7) 理研シンポジウム
2007年度理研シンポジウムは、2008年3月13日~14日に理化学研究所 和光本所 鈴木梅太郎ホールにおいて、「ペタ超級のアプリケーション開発に向けて」をテーマに開催された。主催は情報基盤センターと次世代スーパーコンピュータ開発実施本部であった。プログラムは以下の通り。

3月13日

13:20 開会の挨拶
13:30 重谷隆之、情報基盤センター RSCCの運用報告とリプレース計画について
14:00 寺井優晃、情報基盤センター バイオ研究者向け支援サービス
14:30 RSCCユーザー賞表彰、BMTコンテスト表彰
15:30 休憩
16:00 泰岡顕治、慶應義塾大学 分子動力学シミュレーションによる相変化・界面に関する研究
16:30 沖田浩平、知的財産戦略センター VCADデータに基づく流体シミュレーション技術の開発
17:00 中茎隆、ゲノム科学総合研究センター 細胞システムのモデリングとパラメータ推定に関する研究
17:30 閉会の挨拶

 

3月14日

10:00 渡辺貞、次世代スーパーコンピュータ開発実施本部 次世代スーパーコンピュータプロジェクトの概要と進捗状況
10:30 Lali Chatterjee, SciDAC 【招待講演】Scientific Discovery through Advanced Computing – the U.S. Department of Energy’s SciDAC Program
12:00 昼食
13:30 Osni Marques,> LBNL 【招待講演】An Overview of the ACTS Collection
14:10 Steven Manos, University College London 【招待講演】Life or death decision-making: The medical case for large-scale patient-specific medical simulations
14:50 Adrian Wander, Daresbury Laboratory 【招待講演】The UK Collaborative Computational Projects
15:30 休憩
15:45 小野謙二、知的財産戦略センター 次世代スパコンにおける可視化環境
16:30 姫野龍太郎、情報基盤センター 次世代計算科学研究開発プログラム(次世代生命体統合シミュレーションソフトウェアの研究開発)について
17:15 閉会の挨拶

 

8) Parametron 50周年
2008年3月26日はパラメトロン完成の50周年ということで、当日のGoogleのロゴもパラメトロンになっていた[写真]。この日、神保町三井ビルにおいて17 階にある(株)インターネットイニシアティブの大会議室で、パラメトロン計算機PC-1完成50周年記念会が開催され、筆者も出席した。東大の小宮山総長が挨拶、続いて情報処理学会会長が挨拶したあと、以下の講演があった。

和田英一 あの頃の高橋研究室
中川圭介 パラメトロンの歴史
相馬嵩 PC-1 のハードウェア
石橋善弘 PC-1 のソフトウェア
田隅三生 PC-1 と分子分光学の発展
三浦謙一 フォンノイマン特許

 

出席者は90人ほどで、筆者でも若手のほうであった。会場の後ろには、いろんな昔の資料が展示されていた。橋爪宏達(NII)・前田泰成(グランドデザイン株式会社)両氏が、「現在の素子を使用したパラメトロンの再現」のデモを行った。当時の非線形磁性材料の入手は困難なので、非線形誘電体を使って、LではなくCを変化させる方式で作ったそうである。励振周波数4 MHzで、3相繰り返し周期は16μs、96個のパラメトロンを使って、高速桁上げ回路付き8ビット加算器で、加算時間は32μsとのことである。コントロールはパソコンであるが、プリンタが古いテレタイプで懐かしい音を立てていた。思えばパラメトロンは50年前当時のスーパーコンピュータであった。

このあと、学士会館で懇親会があり、後藤英一氏の喜世子未亡人なども見えられた。

9) SACSIS 2008
SACSIS 2008 – 先進的計算基盤システムシンポジウム は、2008年6月11日(水)~6月13日(金)につくば国際会議場を会場として開催された。主催は、情報処理学会のARC研究会、OS研究会、HPC研究会、PRO研究会、電子情報通信学会のCPSY研究専門委員会、DC研究専門委員会、RECONF研究専門委員会、およびIEEE/CS Japan Chapterである。組織委員長は関口智嗣(産総研)、プログラム委員長は山名早人(早稲田大学)である。

以下の基調講演、招待講演が行われた。

基調講演 岸本光弘 (富士通研究所,NII) グリッドコンピューティングの現状と将来 -明日はクラウディなのか?-
招待講演 Doug Burger (Microsoft Research) Why Computer Architecture will Now Drive Computer Science

 

昨年と同様に、Cellスピードチャレンジ2008を行った。規定課題部門は密行列係数の連立一次方程式に求解であった。成果や順位は公開されている。

会議終了後に、希望者に対して、T2K-Tsukubaが動き出した筑波大学計算科学研究センターの見学が行われた。

10) 数値解析シンポジウム
第37回数値解析シンポジウムは、小澤一文(秋田県立大学)を実行委員会代表として、2008年6月12日~14日に秋田県仙北市たざわこ芸術村 温泉ゆぽぽで開催された。日程がSACSIS2008と重なってしまい筆者は出席できなかった。実行委員会も気づいてはいたが、変更できなかったとのことである。数値解析の領域とHPCの領域がだんだん疎遠になっていくような感じがして、残念であった。最終日の6月14日8時43分に岩手県内陸南部で、M7.2の「岩手・宮城内陸地震」が起こり、仙北市は震度4であった。東京でも緊急地震速報が出た。交通機関が乱れ、参加者は帰路で苦労した。数値解析シンポジウムは2007年から応用数理学会主催となっている。「応用数理」18巻(2008)3号に『第37回数値解析シンポジウム(NAS 2008)参加報告』(廣田千明)が掲載されている。

11) Grid World 2008
グリッド協議会の活動はイベント一覧に詳しく記録されている。大きなイベントとしては、2008年6月24日~25日に東京国際フォーラムでGridWorld 2008を開催した。主要なプログラムは以下の通り。

6月24日

関口 智嗣(産業技術総合研究所/グリッド協議会会長) 開幕挨拶
経済産業省(経済産業省) グリッド協議会 開幕記念講演「グリーンITが創り出す新たな情報経済社会」
合田 憲人(国立情報学研究所) GridWorld チュートリアル1「グリッド入門 〜パソコンユーザからグリッドユーザへ〜」
岸本 光弘(富士通研究所) GridWorld チュートリアル2「グリッドアーキテクチャとサービスアーキテクチャとしてのクラウドコンピューティング」
小島 功(産業技術総合研究所) GridWorld チュートリアル3「サービス基盤に基づく異種・分散データベース統合とその応用」
手塚 敬一(日立製作所) GridWorld チュートリアル4「ストレージの仮想化とGreen ITへの取り組み」

 

6月25日

駒形 康吉(三菱UFJ証券) グリッド協議会 基調講演「グリッドコンピューティングが変える金融ビジネス」
Dr. Craig A. Lee(Open Grid Forum) グリッド協議会 セッション「グリッド技術とグリッド市場における”進化の圧力” 〜Evolutionary Pressures on Grid Technology and Markets〜
田中 良夫(産業技術総合研究所) GridWorld チュートリアル5「グリッドミドルウェア入門」
伊藤 智(産業技術総合研究所) GridWorld チュートリアル6「グリッド技術を活用したデータセンタのユーティリティコンピューティングサービス」
中田 秀基(産業技術総合研究所) GridWorld チュートリアル7「データセンターの仮想化」
峯尾 真一(理化学研究所) GridWorld チュートリアル8「GridWorld チュートリアル8」

展示会場は昨年と大きく違って、データセンター関連の展示が多くグリッドは少数だったとのことである。6000人近い事前登録があった。

SWoPP2008など国内会議の続きは次回。

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