ポスト京、富士通がARMを選択した理由
6月20日、フランクフルトで開催されたISC会場は中国の新しいスーパーコンピュータSUNWAY TaifuLightの話で持ちきりであった。そんな中、実は日本にとっては貴重な発表がなされたのだ。数ヶ月前に一部報道があった「ポスト京」に採用されるプロセッサがARMであることを富士通が公式に認めたのだ。

この発表はベンダーセッションのたった11分間の説明の中で行われた。今回採用されるARMはv8ベースにHPCエクステンションが付加されたものとなる。このHPCエクステションについてはこの夏に開催されるHot ChipsでARM社が詳細について説明する予定だ。富士通の開発統括責任者である次世代テクニカルコンピューティング開発本部第一システム開発統括部の清水俊幸氏のプレゼンテーションによると、このHPCエクステンションにはFMA(浮動小数点乗算加算機能)、数学関数の高速化などが含まれているとのことだ。インターコネクトには継続してTofuが使用される。
富士通はISA(Instruction Set Architecture)レベルでARMを採用することで、ARMが持つ幅広いコミュニティを取り込めると見込んでいる。いわゆるバイナリレベルでARMのソフトウェアが利用できることとなる。「京」でこれまで培われたアプリケーションなどのソフトウェア資産は富士通が提供するコンパイラで再コンパイルすることでそのまま利用可能となる予定だ。
清水氏は、「ARMはコミュティが大きくLinuxもかなり進んでいて利用者も多いです。ですが、HPCへの展開は遅れています。そこに富士通が持つHPC技術を投入することで展開を加速できるものと考えています。」と語っている。特にARMにおけるLinuxではソフトウェアツールが豊富だ。これからの資産をそのまま利用できることは富士通にとってもメリットがある。また、ARM社にとってはHPC市場への参入が可能となり、この協業は両社にとってメリットが大きいのだ。
このプレゼンテーションの最後に少し意地悪な質問をされる時間がある。一つ目はGPGPUなどの搭載の可能性についての質問だ。富士通にはいろいろな製品ラインがあり、実際に要件に応じてGPUのHPCシステムも出荷している、それは今後も変わらないと回答した。二つ目の質問はエクサフロップスはいつ実現すのかという質問であった。その質問に対し富士通は、現在いつでも実現できる技術レベルは持っていると回答した。
最後に、SPARCサーバはビジネス向けにまだ根強い需要があり、富士通は今後もSPARCサーバの開発を継続するとのことだ。また、先ごろ発表されたJCAHPC(東京大学と筑波大学のスーパーコンピュータ共同運用施設)用のIntel Knights Landing搭載サーバなどIntel x86アーキテクチャのサーバ製品も富士通は開発・提供を続けるとのことだ。