ソフトバンク、320億ドルでARMを買収。新たなHPCベンダとなるのか？

John Russell

ARM社が日本の技術企業であるソフトバンク社に320億ドルで買収されることを両社が認めた。ARMベースのチップはすでにモバイル・コンピューティング市場において支配的なプレーヤーであり、最近ではHPCを含んだサーバにARMプロセッサを押し込む取り組みが勢いを得てきている。例えば、日本の次期フラグシップ・スーパーコンピュータであるポスト京コンピュータはARMベースで富士通が構築する。

詳細はまだ不明だが、ARM社のCEOであるSimon Segarsは、この取引が株主のために良いことであり(最近の株価の上に約43パーセントのプレミアがついている)、ソフトバンク社はARM技術のロードマップとエコシステムのグローバルな展開に、より多額の投資ができるようになると述べている。あるオブザーバーは、イギリスのEU脱退に関連する通貨や株価の変動がこの取引を急がせたのではないかと考えている。市場ウオッチャーのIDCは初期の評価を提供している。

「ソフトバンク社が述べているARM社買収の根拠は、モバイル技術市場におけるARMの強力な立場を利用して、草創期のIoT市場において先行することであるとしています。しかし、ARMは最近HPC領域に対して強力にプッシュする意向を示しており、そしてHPCがIoTにおいて重要な役目を演じることが明確なのです。ですから、ソフトバンク社がそれを理解しているかいないかに関わらず、同社はHPCベンダーになることになるのです。この買収がARMベースとなる予定の日本のポスト京コンピュータに影響するかどうかを見極めるのは早急過ぎます。」とIDCのHPC/HPDA担当リサーチ・バイスプレジデントであるSteve Conwayは述べている。

ARM v8 64ビットプロセッサには多くのファンがいるが、サーバ市場のいくつかの大手販売業者だけである。高度なARMプロセッサの入手先はCavium (ThunderX)およびApplied Micro (X-Gene)が生産を行っており、着実に成長している。HPEも当然のことながらデータセンターサーバのMoonshotライン用にARMカートリッジを持っている。Penguin ComputingもまたよりハイエンドなARMベースの製品を持っている。それでも、サーバ市場においてインテルを受け流すARMの能力については疑問視されている。

この早春に、ARMのDarren CepulisはHPCwireに次のように語っていた。「基本的にシステムベンダーはすでに開発プラットフォームと製品を持つことに十分に自信を持っていますし、投資やコンセプトパイロットの証明、およびこの技術の適合性と利点を評価する潜在的な顧客への展開プロセスを経ていく製品の最中であり、数十の取り組みが現在行われています。」

あるARMのチップメーカーがHPCwireに語ったところによると、ARMのコアは弱いとよく批判されてきたが、これは変わるだろう。「現在ARMのコアは仕様と速度の面でインテルのコアと同じではありません。時間が掛かるのです。今はギャップがあります。自分のARMのコアの仕様や速度がBroadwellやHaswellやPhiより良いと言う人は誰もいません。しかし、今から2年先に同じ会話をする時には、ものごとが変わるでしょう。」

バルセロナ・スーパーコンピュータセンターの研究者でEUのMont-BlancプロジェクトのリーダーであるFilippo MantovaniはスーパーコンピューティングにおけるARMの利用を探求しており、次のように語っている。「HPCに厳密に関連して、結論を推測するのはまだ時期尚早だと思います。ARMベースのHPCチップを開発している企業のほとんどは単にARMのISAを利用しているだけで、自分たち独自のコアを設計しています。この意味においては、ソフトバンク社が急激にIoTの方向に舵を切ることを決めたとしても、HPCには大きな影響はないと思います。もし、この”新ARM”がHPCソフトウェア・エコシステムの開発の取り組みをリサイズすることを決めた場合には長期的な影響が発生するかもしれません。より少ない取り組みにおいてはHPCにいける代替品としてのARMの確立にダメージを与え、より大きな取り組みの場合にはもちろん大きなメリットがあるのです。」

MontavaniのグループはMont-Blanシステムのパイロットを6月に立ち上げている。（HPCwireの記事を参照、Filippo Mantovani on What’s Next for Mont-Blanc and ARM） Bull Atosが大規模Mont-Blancマシンの契約者である。

HPCwireではより明確になり次第、本記事に関するアップデートを行います。