世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


11月 29, 2013

F1チーム、HPCで勝利のための手法を探索

HPCwire Japan

Tiffany Trader

Formula1レースは時間短縮が全てである。指定された数のラップを最短の時間でゴールしたチームがトロフィーを手にする。今日ではサーキットでの勝利はデータセンターから始まっている。

究極のレーシングカーを作るためには、ひとつひとつのパーツ全てが性能向上のために最適化されていなければならない。設計上の改善がラップタイムを10分の1秒縮めるかもしれない。実際それの積み重ねが納得のいくものになってきた。科学の側面からすると、レースは空力的操作でいかに抵抗を減らすかにある。スーパーコンピュータを唯一政府研究機関が所有していた頃は、設計作業はモックアップ作成と空洞実験の繰り返しであった。それは時間と経費のかかる作業であった。現在ではそれらの多くの部分は高性能計算クラスタを使って処理されるようになった。それはより速くしかもより正確なやり方だ。

Caterham F1チームのレーシングカー設計はDell HPCクラスタに依存している。英国のOxfordshireにあるLeafield Technology Centreのクラスタは最近の機能強化により、約12時間で100億回の演算を実行できるとCaterham ITインフラマネージャーのWilliam Morrison氏は述べている。家庭にあるパソコンでは、同様の計算を行うのに4〜 5カ月はかかるだろう。

風洞実験と並行して計算流体力学(CFD)を駆使するのが現在のF1チームでは一般的なやり方になっている。CFDではメッシュ化と呼ばれる手法で、車の表面をグリッドあるいは微小平面に分割して、車の仮想モデルを作成する。計算機による風洞シミュレーターはエンジニアにグリッド毎の温度、圧力、乱流と速度などの詳細情報を提供する。

コンピュータ化されたテストプロセスでは、チームのエンジニアが物理的な部品を作成することなく、数百または数千の仮想部品を試してみることができ、大幅な時間短縮が可能になっている。そして最適な候補部品のみが、実際に製造される。

The Caterham F1のエンジニアリングチームは、モデルと計算手法の改良により典型的なジョブの実行時間を約17時間から12時間へと短縮する方法を見つけ出した。この5時間を削るのに、モデルを解体し再構築する作業に数ヶ月を費やした。「我々は、処理時間改善のために三人ほどの専任小グループを持っている。」と、Morrison氏は述べている。

各ジョブは約8億件のデータを生成する。さらにそれらは処理されて8本のビデオ、いくつかのグラフや数百の写真を含むファイルに変換される。

仮想プロトタイピングに対してある程度の懐疑はもともとあったが、 HPCが示す結果は懐疑を抱く連中をどんどん改宗してきた。現在では、デジタル設計プロセスはF1レースの中核技術であり、そしてそれは間違いなくCaterham F1チームの運営にも当てはまる。Dell HPCクラスタがなければ、彼らの設計と開発は停止してしまうだろう。チームのエンジニアがそのHPCクラスタを24時間365日稼働させているが、10から20の処理待ちジョブが常にキューに存在している。

ダウンタイムを防止するために安全機構と電源のバックアップが設置されている。 このHPCシステムは一日に二度チェックされ、個々のノードは他のジョブに影響を与えずにオフラインにすることができる。

Caterham F1チームにとって、彼らのHPCシステムは重要すぎて、トラブルが起こす事はできない。「もはや止める事は許されないんだよ。」とMorrison氏は冗談っぽく語った。