NECベクトル・エンジン、データプライバシーをターゲット

Doug Black

銀行、金融サービス、保険業界において、データガバナンスは永遠に困難な課題であり、現在、データ管理コンサルティング会社のVacoとNEC Xは、AIと高性能コンピューティングを統合して、BFSI組織が直面するPII (個人識別情報）の修正、GDPR、その他の複雑なデータプライバシーコンプライアンスのワークロードに取り組んでいる。

技術マーケティング/ビジネス開発のRobbert Emery氏によれば、NECの新技術を迅速に追跡する「イノベーションアクセラレータ」であるNEC Xは、SX-Aurora Tsubasa AIプラットフォームを共同参照設計しており、このプラットフォームは、ベクトル処理を使用して、コンパクトなPCIe x16カード上でHPCクラスの性能（2.45テラフロップス/秒のスループット）を提供している。

	NECのSX-AuroraベクトルエンジンPCIeカード

NEC X によれば、SX-Aurora Tsubasaは、1枚のカード用のワークステーションタワーから、複数のカード用のラックマウントサーバまでのハードウェア環境に対応しており、「VE(Vector Engine)」プロセッサは、1つのプロセッサに、1.2TB/sのメモリ帯域幅を提供するチッピオンウエハー・オン・サブストレート技術を使用した6つのHBM2メモリモジュールを初めて実装したものである。Emery氏は、このシステムは、カード間と、複数のサーバ間をInfiniBandによりMPIインターフェースを利用していると語った。

Vacoは、GDPR、CCPA、ISO/IEC 38500、またはその他の地域的なデータ保護規制のために構築されたアルゴリズムを備えたコグニティブ・コンピューティング・フレームワーク（CCF）を提供している。両社によると、大規模なデータセットをコンプライアンス・ワークロード用にリアルタイムで処理するために必要に応じてVEカード数だけ規模を拡大できるという。

コンサルティング業務や金融サービスの実務を率いるVacoパートナーのSudhir Sahu氏は、CCFソフトウェアはSX-Aurora Tsubasaの上に「PIIに特有のもの」として構築されており、機械学習やAIを利用したGDPRコンプライアンスルールを構築していると語った。データを保存するためにデータレークにプッシュする前に、電子メール、またはWordドキュメント、Excelスプレッドシート、PDF添付ファイルにある可能性のあるPIIデータを修正する。社会保障番号、クレジットカード番号、運転免許番号、誕生日などを送る人もいる。そして、連邦政府の銀行業界に対する要件に従い、コンプライアンス要件を満たすためにデータレイクに保存される前に、それらを再アクションしなければなりません」と述べている。

この課題を複雑にしているのは規模の大きさ-従来のサーバーの処理能力を超えたデータ量-だ、とSahu氏は述べた。銀行は一日何百万通ものメールを送受信するので、「NEC Xが構築したこのハードウェアの力と、このアプリケーションを作成しなければならない機械学習能力を組み合わせなければ、数秒以内に処理しなければならないデータ量を処理することはできないでしょう。」

Sahu氏によると、このプラットフォームは過去6カ月間で、初期の、非公開の2つの銀行によって採用されたという。統合の目的は、ソリューションを提供することであり、そのソリューションの「80%がこの枠組みからの導入に備える」ことであり、残りの20%は、顧客の特定の国のデータガバナンス規制に準拠するために必要なカスタムプログラミングである。このサービスは、金融規則やモデルの精度を向上させ、プライバシーや規制のニーズを満たす文書作成を加速させ、業界横断的な予測分析を可能にし、顧客の行動を解釈し、大量のストラクチャードおよび非ストラクチャード・データを生成・分析する能力を向上させることを目的としている。

「このパートナーシップは、当社の手頃な価格でスケーラブルなAIプラットフォームと、規制コンプライアンスのためのVacoのIT管理サービスやビッグデータソフトウェア開発における領域専門知識を組み合わせたものであり、企業は地域データ規制を順守するためのより安全な方法を提供します」と、NEC XのCEOであるIhara氏は述べている。「合わせると、IT部門が従来のハイパフォーマンス・コンピューティング（HPC）サーバに比べて10倍の設備投資コストで、20%の設置面積縮小で20倍の計算パワーを提供する一方で、実装時間をわずか1カ月程度にまで劇的に短縮することができます。」