Frontier、スパコン首位をキープ、Nvidia「H100」が初登場

Tiffany Trader

テキサス州ダラスで開催中のSC22で発表された第60回Top500リストでは、前回と同じシステムが多数紹介されており、Frontierは1.102エクサフロップスを記録した初の公式Linpackエクサスケーラとして、依然として首位の座を維持している。オークリッジ国立研究所に設置されたFrontierは、DOE、HPE、AMDのコラボレーションにより、74台のHPE Cray EXキャビネットと9,408台のノードで構成され、それぞれにAMD Milan “Trento” Epyc CPUとAMD Instinct MI250X GPUが1つずつ搭載されている。

また、Frontier は HPL-MxP ベンチマークで 7.9エクサフロップスを記録し、最高スコアを 達成している。HPL-MxPは、Top500に付随するベンチマークで、以前はHPL-AIとして知られていたものです。このベンチマークは、「最新のハードウェアを活用した斬新な混合精度アルゴリズムを使用して連立方程式を解くことにより、機械学習と深層学習をベースとしたHPCと人工知能（AI）のワークロードの収束を強調しようとする」（バッカーズ）ものだそうだ。

	Top500の「トップ10」スライド

Lumi（Top500第3位システム）のHPL-MxPは2.2エクサフロップスで第2位、次いで「富岳」スパコン（Top500では依然として第2位）が2.0エクサフロップスで前回第1位から第3位に浮上した。

「富岳」はピーク性能比3％の16ペタフロップスで、HPCGの1位をキープ。2 位の Frontier は 14 ペタフロップスで、ピークの 0.8%にとどまった。

Top500の共同執筆者でHigh Performance Linpackベンチマークの考案者であるジャック・ドンガラ氏は、HPCwireのインタビューで、「ピークに対するこの低い効率は、マシンが浮動小数点に比べデータ移動に苦戦していることを示している」と述べている。

「HPLが計算集約型であるのに対し、HPCGはデータ移動型のベンチマークです。これは3次元偏微分方程式に関する何かを捉えようとしているのです」とドンガラ氏は語る。「これらのシステムは、データ移動があまり上手ではありません。これらのマシンの弱点を浮き彫りにし、その情報を次世代マシンの設計に生かすことができると思います。」

彼は、HPCGプロジェクトに参加しているプロジェクトに謝意を表している。「これは、レースカーに例えることができます。時速200マイルで走れるレースカーがあったとして、それが時速2マイルになったとしたら、その速度にはあまり満足できないでしょう。」

上位10位までのコーホートには、新規参入者は1社のみとなっている：EuroHPC のスーパーコンピュータ Leonardo は、理論ピーク演算性能 255.75 ペタフロップスのうち、174.70 Linpack ペタフロップスを記録し、4 位にランクインしている。CINECAに設置され、Atosが構築したこのイタリアのシステムは、3,000台以上のNvidia HGXノード、それぞれに4つのNvidia A100 GPU（40GBタイプ）、単一のIntel Ice Lake CPUで構成されている。水冷式のノードは、Nvidia Mellanox HDR 200Gb/s InfiniBandネットワーキングで接続されている。

Leonardoは、6番目のEuroHPCシステムとして立ち上げられたものだ。2つが傑出している。ポルトガルに設置される富士通とArmのシステム「Decalion」は今年中に、バルセロナ・スーパーコンピューティングセンターとLenovo-Atosのコラボレーションによる「MareNostrum-5」は来年になると言われていたものである。

フィンランドのスーパーコンピュータLumiは、予想通り、計算能力を大幅に向上させ、前回の151.9ペタフロップスから倍増の309.1 Linpackペタフロップスを達成した。Lumiは、100%再生可能エネルギー（水力発電）を使用したグリーンデータセンターであることが特徴だ。その廃熱は、ホストタウンが年間に必要とする地域暖房の約20%に利用され、その結果、年間13,500トンのCO2換算によるネットマイナスカーボンフットプリントを実現している。

Green500、「Henri」を迎える

一方、「Green500」では、Frontierスタイルのシステムがさらに大きな存在感を示している。5月のGreen500では、Frontier TDS（Frontierのテスト開発システム）、Frontier本体、EuroHPCのLUMIシステム、GENCIのAdastraシステムの4つが1位から4位までを占めた。これら 4 つの HPE 製システムはすべて、同じ構成で AMD Epyc「Milan」CPU、AMD Instinct MI250X GPU、Slingshot 11 ネットワーキングを使用している。

今年は、この4つのシステムに、同様のアーキテクチャを採用したPawseyのSetonixシステムのGPUパーティションと、KTHのDardelシステムのGPUパーティションが加わった。これらのシステムをまとめると、順にFrontier TDS、Adastra、Setonix GPU、Dardel GPU、Frontier、LUMIとなり、2022年11月のGreen500リストで2位から7位を占めるようになりました。

フランスのシステムAdastra（HPE-AMDのシステム）は、エネルギー効率を1ワットあたり58.02ギガフロップスに高め、1ランクアップして3位となった。Adastraは、Linpackスコア46.10ペタフロップスで、新しいTop500リストで11位にランクインしている。

1位はNvidiaのH100 GPUで、ニューヨークのFlatiron InstituteにあるHenriという小さなシステムが獲得した。Henriは、Top500の405位にランクインしている。Henriは、理論ピーク5.42ペタフロップスのうち、わずか2.04ペタフロップスのLinpackを提供し、37.6%という異常に低いLinpack効率を実現している。

また、1Wあたりの演算性能は65.1GFlopsと、フロンティアTDSの62.7GFlopsを上回り、圧倒的な性能を誇っている。Nvidiaは、Frontierスタイルのノードが登場したときに、Green500の上位数カ所から完全に脱落していたため、この結果は興味深いものだ。

Henriは、LenovoのThinkSystem SR670 V2プラットフォームをベースに、Intel Xeon Platinum 8362 2800Mhz（32コア）、前述のH100 80GB PCIeカードとInfiniBand HDRを搭載している。

ジャック・ドンガラ氏はインタビューに答えて、「これはテストに合格するために急いだように見えます」と語った。「マシンは通常、ピーク時の70〜85％を獲得するもので、HPLとしては立派なものです。だから、これだけスコアが低いと、何かが間違っている。しかし、さらなる最適化の余地は残されているはずです。」

このH100が古いIce Lakeチップと組まれていることも重要だ。PCIe Gen5とCXLをサポートするSapphire RapidsまたはGenoaチップと組み合わせるまでは、このプラットフォームの全能力を利用することはできないだろう。

その他の傾向

このリストには41の新しいシステムが含まれており、27がLenovoの製品である。そのほとんどは（Flatironシステム3つを除けば、そのうちの1つについては後述）、総リストを最適化するために巧妙に切り分けられたクラウド/ハイパースケールシステムである。

ドンガラ氏は、すべてのシステムが科学技術計算に使用されているわけではないことを認めた上で、真のHPCマシンをよりよく理解するための1つの方法は、リストの上位100または200のシステムを見ることであると述べている。エリック・ストローマイヤー氏は、Top500 BOFの講演（火曜日に開催）で、この区分けをうまく表面化させ、研究グループと商業グループの分析を行っている。

このリストには、Lenovo製で中国国外にある中国製システムが2台含まれている。9つのシステムがリストから外れた結果、中国には合計162のシステムがあり、前回の173から減少している。また、昨年のゴードン・ベル賞の論文で高く評価されたエクサスケールシステムを少なくとも2台保有しているが、米中間の地政学的緊張が続いているため、リストから外れたと思われる。

このリストのエントリポイントは、現在1.73 Linpackペタフロップスで、現在500位のシステムは、前回（5月）のリストでは460位であった（ハンブルグのISCで詳細が発表された）。第60回Top500リストに掲載された全500システムのLinpack性能の合計は4.86エクサフロップスとなり、6ヶ月前の4.40エクサフロップス、12ヶ月前の3.06エクサフロップスから増加した。Top100のエントリ・ポイントは、6ヶ月前の5.39ペタフロップス、1年前の4.12ペタフロップスから、5.78ペタフロップスに増加した。