世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


5月 27, 2014

現実空間と仮想空間の融合で新たなポスト処理を実現

HPCwire Japan

5月21日から横浜で開催された「人とくるまのテクノロジー展」はHPC技術の新たな展開を示唆した展示が行われた。製造業の分野ではスーパーコンピュータ周辺の技術はあまりHPCとは呼ばれずCAE技術と呼ばれる。CAE技術はスパコンのみならず図面設計から解析、製造技術までの広い分野を意味している。そのため、「人とくるまのテクノロジー展」のような展示会においてはスパコンという言葉は出てこない。しかし、そこにはスパコンで解析するための技術が多く含まれている。

日本CDH株式会社とキャノンITソリューションズ株式会社は共同で「MR」(Mixed Relality、複合現実感)と呼ばれる新しいポスト処理技術を展示した。「MR」は「VR」仮想現実と「AR」拡張現実とは違い、現実空間に仮想空間を合成する新たな技術だ。この展示ではキャノンが開発した「MREAL」と呼ばれるMRシステム上に、日本CDH社が販売するポスト処理ソフト「Animator4」を使った自動車の解析結果を表示していた。利用者は「MREAL」専用のゴーグル型ディスプレイを頭に装着することにより、目の前の現実空間に、解析結果の自動車があたかも存在するように投影される。体をその対象に近づければズームされるし、自動車の内部に頭を突っ込むことも可能だ。また、違う角度から対象物を見るために、体を回り込んで見ることができる。

「MREAL」ではHPCでは有名な大きな箱型の投影装置の内部に人が入って仮想現実を見るような大掛かりな装置を必要としない。このゴーグルと、天井に巡らされた動きを検知するためのセンサーのみで済むため、装置をいろいろな所に移動させることもできる。例えば、工場の中に持って行けば、建設予定のプラントがあたかも工場にあるように見る事ができるし、外に持ち出せば、建設予定のビルでさえ、環境の中にどのように建設されるかを確認することもできるのだ。

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アカデミックなHPC分野ではこのようなMRシステムはあまり普及していないが、解析結果を視覚的に見る事は重要であり、災害対策などに利用できる可能性がある。