世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


6月 10, 2014

RSC、PetaStreamをXeon Phiで1.2 Petaflopsに

HPCwire Japan

Timothy Prickett Morgan

ロシアのスーパーコンピュータメーカーRSCグループは、再び極端な計算密度の限界を推し進めている。同社は、昨年のSC13カンファレンスでデビューしたPetaStreamシステムをIntelのXeon Phi X86コプロセッサの新しい機種でアップグレードした。

そのアップグレードでRSCは、PetaStreamシステムの単一ラックのピーク理論性能を20%、1.2Petaflopsまで押し上げることができるようになった。浮動小数点処理能力の増加は、 Intelがひっそりと3月に出荷したトップエンドのXeon Phi 7120Dコプロセッサへ移行することによって可能となった。RSCは、同社がこのデバイスを手に入れた最初のスーパーコンピュータメーカーであると言う。

RCSが独自のPetaStreamマシン で展開したXeon Phi 5120Dは、それ自身、昨年6月のISC13スーパーコンピューティングイベントで発表され、そしてファンや冷却用ヒートシンクを持たないXeon Phiカードの簡易版である。むしろ、過熱からそれを維持するために埋め込まれたシステムのパッケージングと冷却に関係している。これは、グラフィックスカード、 GPUコプロセッサおよび他のXeon Phiカードと共に一般の能動的な冷却パッケージングを使うことで可能になるよりも多くの部品をより緊密に詰め込むことをRSCのような企業に可能とした。D称号を持つXeon Phiカードは、高密度のためであり、一方、Xモデルは、ベアボーンデバイスでありながらも、物理的にわずかに大きい。P称号のカードは、受動冷却機構(ヒートシンクと筐体)を持ち、そしてAの称号がついたものは能動冷却機構(ヒートシンク、筐体とファン)を持っている。

Xeon Phi 5120Dコプロセッサは、 1.053 GHzで動作する60のPentium型コアを持ち、加えて352GB/秒の最大メモリバンド幅をもつ8GBのGDDR5メモリを持つ。このコプロセッサは、 245ワットを消費し、毎秒1.011Teraflopsの倍精度浮動小数点演算を提供する。 PetaStreamマシンは、計算モジュールを構成するために8基のXeon Phiコプロセッサと単一の10コアXeon E5- 2690 v2プロセッサとを組み合わせて3GHzで動作し、筐体の内部の全てのコンポーネントのために液体冷却を持ち、これらのコンポーネントから400キロワットの発散エネルギーを引き出すように設計されている。PetaStreamラックは、128台の計算モジュールで合計1,024基のXeon Phiコプロセッサを持ち、そしてそれは高さ7.2フィート、幅が実測で3.28フィートのラックに詰め込まれ、結果的に61,440コアで245,760スレッドとなる。

ちょうど第一四半期に出荷を開始した7120DにアップグレードされたPetaStreamシステムに埋込まれたXeon Phiは、ダイで使用可能な全61コアがあり、これらは1.238 GHzで動作する。それは、カードあたり1.208Teraflopsの倍精度演算を産み出し、そしてマシンはメモリ制約のあるアプリケーションに対しても、16GBのGDDRメモリを持っており、これは使い易いだろう(しかし、メモリバンド幅は352GB/秒のままだが)。このデバイスはまた、 270ワットで定格されており、より多くの電力を消費し、より多くの熱を発生させる。

もし、Intelからの定価が判断基準であるならば、性能の20%増しは、価格に反映されるかも知れない。 Xeon Phi 5120Dは、2759ドルのエンドユーザ向け希望小売価格があり、一方、7120Dはそれぞれ4235ドルのコストである。それは、純粋な浮動小数点演算性能の20%向上に対するコプロセッサのコスト増分が53.5パーセントの増加である。これは、顧客が支払うことになるだろうプレミアムとして必要ではない。しかし、その後また、Xeon Phiコプロセッサでの計算コストは、Xeon CPU(勿論、ワークロードに依存する)に対してかなり低くすることができるこの一流の性能を求める顧客があるかもしれない。ポイントは、RSCが彼らに選択肢を与え、そしてもっと重要なのは、2つのXeon Phiカード間の価格差が一度限りの定価が示すほど大きくないかも知れないことである。

RSCの広報担当者、Oleg Gorbachovは、同社はまだペースを介してPetaStreamマシンを設置し、様々なワークロードでベンチマークテストを実行していることを電子メールでHPCwireに伝える。これらは、スウェーデンの王立技術研究所とUppsala大学によって維持されているGROMACS分子動力学シミュレータ、サンディア国立研究所から出たLAMMPS分子動力学シミュレータとノックスビルのテネシー大学から出たMAGMA線形代数ライブラリが含まれている。 RSCは、6月にドイツのLeipzigでのISC14カンファレンスでこれらのテスト結果を示したいと考えている。

顧客のためとして、Gorbachovは、RSCが今潜在的なPetaStreamの顧客と協力し、今年最初の契約を発表したいと考えていると語った。