ハイペリオン、Linuxスーパーコンピュータの台頭と影響を追跡調査

John Russell オリジナル記事(2022/05/17)

スーパーコンピュータがインパクトのある永続的な価値を生み出すことは、HPC コミュニティの基本的な信条だ。この点をより明確にするために、ハイペリオンリサーチ社は、新しいレポート「Linux スーパーコンピュータの経済的・社会的利益」を発表した。ここでは、Linux を含めることが基本となっている。この強力なオープンソースのオペレーティングシステムは、HPC の世界に早くから受け入れられ、これらのシステムを非常に広く有用なものにしている巨大な HPC アプリケーションのエコシステムを生み出すのに貢献した。

(Linux 開発者のライナス トーバルズ氏と、初期のスーパーコンピューティングに Linux を導入したリーダーの一人であるニュージャージー工科大のデイビッド ベーダー氏に感謝します)

「スーパーコンピューターは、自動車や飛行機をより安全に、より燃費よく、より環境にやさしいものにしてくれました。スーパーコンピューターは、石油やガスの新しい資源を発見し、抽出し、代替エネルギー源を開発するための重要な支援となります。また、気象分野では、人命や財産を破壊しかねない暴風雨をより正確に予測することが可能になりました。金融サービスから医療、ヘルスケア、エンターテインメント、消費者製品、そして最近ではインターネット企業に至るまで、さまざまな産業でスーパーコンピュータが大いに活用されています。そして最近では、COVID-19の大流行にもスーパーコンピュータは役立っています」と、この報告書は主張している。

これは印象的なリストだ。この報告書の内容は新しいものでは無いが、HPCのパワー（と収益性）を改めて認識させる良い資料である。ハイペリオン社は、Linuxの歴史と、それが生み出した膨大なアプリケーション群、そしてスーパーコンピュータと組み合わせたときに、いかに良いことが起こるだけでなく、大きなことが起こりうるかを簡単に紹介している。

以下は、序文からの抜粋である。

「この特別調査では、Linux スーパーコンピュータが開発された初期の歴史と、スーパーコンピュータから得られる全体的な利益を、1）スーパーコンピュータの構築とサポートによる経済価値、2）スーパーコンピュータの使用による価値の両方について調査しています。さらに、本報告書では、スーパーコンピュータがどのように利益をもたらすかについて、いくつかの興味深い事例を紹介しています。」

「スーパーコンピュータを販売することで3,000億ドル以上の収益が得られています。これは相当な経済的利益を意味し、特にこれらのシステムの使用により、購入価格の少なくとも10倍以上の価値のある研究が生み出されたことになります。スーパーコンピュータが生み出した価値を完全に測定することは難しいですが、自動車、航空機、医薬品だけを見ても、スーパーコンピュータは過去25年間で100兆円を超える製品に貢献しています。また、ほとんどすべての分野で新しい科学的発見に多大な価値をもたらしていることは数え切れません。」

最も困難な国家的課題に対処し、企業の競争力を高めるためのHPC購入の一貫した高い成長率に基づき、次の5年間はさらに高い収益を生むと報告書は述べている。

「2022年だけを見ると、直接的な経済効果はサーバで160億ドル、サポートするインフラを含めると約300億ドルを超えると予測されます。2022年から2026年にかけてのLinuxコンピュータの販売による直接的な経済効果は、サーバーで900億ドルを超え、サポートするインフラストラクチャでさらに900億ドルを超えると予測されます。この結果、Linuxスーパーコンピュータの販売による収益は、わずか5年間で2,000億ドル近くとなります。特に、これらのLinuxシステムの使用は、購入価格の少なくとも10倍以上の価値のある研究を生み出すので、これは相当な額の経済的利益を意味します」と、この調査は述べている。

この調査では、Linuxの目覚しい発展を記している。「オープンソースの Linux OS を搭載したスーパーコンピュータは、2002 年から 2010 年の間に急速に普及し、その年の Top500 の 90% を占め、2010 年には全技術系サーバの 82% を占めるに至りました。その後、Top500のリストに掲載される唯一のOSとなりましたが、異なる要件や制限を持つ人々のために、豊富な多様性が存在します。特定のハードウェア、アプリケーション、データ、またはユーザのタイプに対するニーズは、LinuxベースのOS市場で提供されている数多くの製品で満たすことができます（図3に示すように）。図3は、Linux OSを販売しサポートするために多くの企業が設立されたことを示しています。」

ハイペリオンのレポートでは、175のプロジェクトの分野別平均財務的影響に基づいて、Linuxスーパーコンピュータの使用に対するROIも呼びかけている。「平均財務ROIは、HPCへの投資1ドルあたりの収益/売上で509.3ドル、HPCへの投資1ドルあたりの利益またはコスト削減で47.2ドルでした。さらに、これらのプロジェクトによって2,335の新規雇用が創出さ れました」と、ハイペリオン社は発表している。

この報告書は、スーパーコンピューティングの台頭と影響を示すために、歴史やデータポイントについて少し触れており、すぐに読むことができる。

研究へのリンク、https://davidbader.net/publication/2022-hyperionresearch/2022-HyperionResearch.pdf

画像イメージ：アルゴンヌ国立研究所にインストール中のAuroraエクサスケールスーパーコンピュータ

Hyperion Reportの執筆者。アール・ジョセフ（CEO）、メリッサ・リドル（アソシエイト・アナリスト）、トム・ソレンセン（アソシエイト・アナリスト）、スティーブ・コンウェイ（シニア・アドバイザー）