世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


1月 27, 2015

天文スーパーコンピュータがペタスケールを越える

HPCwire Japan

Tiffany Trader

エクサスケールコンピューティングに向かう容赦のない追い込みの最大のメリットのひとつは、より手頃なペタスケールシステムの到来である。世界中の科学センターがこの重要な障壁に達する傾向がすでに見られている。そうすることの最近の一例は日本の国立天文台(NAOJ)の天文シミュレーションプロジェクト(Center for Computational Astrophysics)であり、最近「アテルイ」と呼ばれるCray XC30システムへのアップグレードを発表した。
そのフードの下の強化されたインテルCPUを使ってアテルイの理論最大性能は502テラフロップスから1.058ペタフロップスの速度が倍に急上昇しており、研究者が宇宙と空間に関するさらに大きな問題に取り組むことができるようになった。

宇宙のパズルをシミュレートすることがアテルイの存在意義であり、ペタフロップス半分でもこの超並列スーパーコンピュータは天文シミュレーションにおける世界最高速のスーパーコンピュータであると考えられている。この活力を得たスーパーコンピュータは、センターの天文シミュレーションをさらに強化する。

アテルイはIntel Xeon E5-2670プロセッサから最新世代のIntel Xeon E5-2690 v3に切り替えのため、2014年9月11日から30日までオフラインにされた。主記憶も増強された:94.25テラバイトから135.6テラバイトに。8コアを12コアチップにリプレースすることで、ノード当たりの演算能力は332ギガフロップスから998ギガフロップスに上昇し、ノード数は減って:1,512から1,060に。実装密度の向上でアテルイのラック数は8台から6台に切り落とされた。合計コア数は少し上がって:24,192から25,440に。

「天文学研究のためのスーパーコンピュータは、望遠鏡が見ることができない天体物理現象を説明するので、”理論天文学用望遠鏡”と呼ばれています。新しいアテルイを使ったより現実的なシミュレーションで、これまで見たことがない宇宙の新しいビジョンが明かされるのです。」と、天文シミュレーションプロジェクトのプロジェクト長である小久保英一郎教授は述べている。

数値シミュレーションの重要性は、国立天文台によると、観測と理論天文学が一緒に住むことが天文学研究の第三節と現在みなされていることだ。研究室内で天文現象を再構築する能力を妨げている空間および時間のスケールがどのくらい莫大か考えてみる。理論天文学は方程式で宇宙を理解しようとするので、十分な大きさのスーパーコンピュータのパワーを必要とする。シミュレーション天文学者は宇宙の要素のモデルを作成し、実際の観測と比較することで精度を確認する。アテルイは国立天文台の4番目の主要な専用システムだが、天文学研究がスーパーコンピューティングの限界を押し続ける限り、規則的なアップグレードの必要性が強く残るだろう。

改良されたシステムは2014年10月1日にオンラインに戻り、国立天文台の127人の研究者と大学院生にすでに提供している。また国内外の他の日本人研究者も利用可能だ。アテルイが行うシミュレーションは、惑星の誕生、星の生成と崩壊、太陽活動、ブラックホール、および大規模な銀河現象まで拡大している。これら多くのシミュレーションは特に高エネルギー物理学が絡んだ際に巨大な計算能力を必要とする。新アテルイは、さらなる解像度でより複雑なシミュレーションに取り組むことを可能とするだろう。また、より小さいタイムステップの利用も可能となり、この驚くべき現象がさらに完全に明かされるだろう。それが星の動き、もしくは銀河の構造、または宇宙そのものかどうか、新アテルイは宇宙の最果ての鮮明な画像を提供するだろう。