世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


2月 17, 2015

「Piz Dora」がスイスのスーパーコンピュータ「Piz Daint」をおんぶ

HPCwire Japan

Tiffany Trader

すでに世界でも最もエネルギー効率の高いペタスケール・スーパーコンピュータである「Piz Daint」- スイス国立スーパーコンピューティング・センター(CSCS)にインストールされているCray XC30システム – は、「Piz Dora」と呼ばれるマルチコア Cray XC40への拡張のお蔭でさらに強力になる。ローカルな命名規則に従って、これらの名前はスイスオルトラーアルプスの山々に触発されえとり、Piz Daintは「内側の山頂」でPiz Doraが「外側の山頂」だ。

エクストリーム・スケール計算、データ解析、プリ・ポスト処理だけでなく可視化を含む様々なハイエンド・コンピューティング・サービスを満足させるために、ヘテロなシステムが構築された。この追加のシステムは、この第一のスイス研究センターだけでなく、チューリッヒ大学やEPFLなどのパートナー研究機関の科学的ワークフローをより支援することである。

先日発表されたリリースでは、「利用者にさらに多くの計算資源を提供するために、2014年初頭にCSCSは既存の設備をCrayスーパーコンピュータ(マルチコアCray XC40)の購入で拡張することを決定したのです。」と、ETHチューリッヒの担当者であるAndrea Schmitsが書いている。

5月にETHチューリッヒの当局者が追加のインフラを許可し、チューリッヒ大学が資金提供に同意した。この新しいリソースは他のスイスの大学における科学的探究にも利用される。

「これはETHチューリッヒとチューリッヒ大学の協力をさらに強化するのです。」とETHチューリッヒの人事およびインフラの副学長であるRoman Boutellierは語っている。「彼らの関与のお蔭で、私達は固定経費をより大規模な計算量に広げることができ、一方でチューリッヒ大学は高価なインフラ自体にあまり投資をする必要はありません。私達はまた他の大学や応用科学の大学とパートナーシップを締結する可能性があります。」

Cray XC30マシンは単独で5,272台の演算ノード(Intel Xeon E5-2670とNVIDIA Tesla K20Xパーツを搭載)を搭載し、ノード当りの理論最大性能は、166.4ギガフロップス(E5-2670)と1311.0ギガフロップス(Tesla K20X)だ。合計で、Piz Daintは理論最大性能が7.787ペタフロップスに達する。ベンチマーク試験では、高温超電導のモデルをシミュレートする量子モンテカルロ・コードであるDCA++をPiz Daintで実行すると4.2ペタフロップスの性能を示している。

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拡張であるPiz Dora – Piz Daintを構成する3列のキャビネットの後ろに4列目を追加 – は、最大能力で1.258ペタフロップスだ。このCray XC40は1,256台の演算ノードを搭載し、各2個の12コアIntel Xeon E5-2690 v3 CPUを搭載している。ノード当り24コアで、トータルなコア数は30,144となり、ハイパースレッドを入れると60,288のトータル仮想コア数に跳ね上がる。1,192ノードは各64GBのRAMを搭載し、他の64台の「ファットノード」は128GBのRAMを各々搭載して、SLRUMのパーティションであるbigmemでアクセスできる。

この新CrayシステムをHPCの進化の状況の中で述べると、CSCSのディレクターであるThomas C. Schulthessは「変化するハイパフォーマンスコンピューティングの役割」を指摘しており、「HPCは今や科学にとって基本的なツールであり、応用数学のドメインに限られてほとんどが理解しない理論的な問題に数値的なソリューションを提供するよりも、全ての科学者が利用しているのです(良くも悪くも)。」

この新しいパラダイムを考えると、「科学的計算サービスを提供するプラットフォームについて、もはや個々のコンピュータを気にしてはならないのです。」とSchulthessは確信している。

この更新されたインフラはチューリッヒ大学のシュレディンガースーパーコンピュータを、CSCSで競争力のあるスーパーコンピュータのための新しいアルゴリズムのための合理化されたプロセスを使って、研究者によりサービスを提供できるようにリプレースする。

CSCSチームは11月始めから作業環境の準備を進めており、現在は試験的利用が許可されている。

「2015年1月より、システムはより幅広い利用者グループに利用されます。」とCSCSの広報担当のAngela Detjenはレポートしている。

完全な正常運用は2015年4月1日から予定されている。

関連ニュースではCSCSは最近、第一の科学センターであるCERNとスイス教育研究ネットワーク(SWITCH)との間で100ギガビット毎秒(Gbps)の接続を持ったスイスの最初の研究機関となった