世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


4月 17, 2023

新HPCの歩み(第136回)-1996年(b)-

小柳 義夫 (高度情報科学技術研究機構)

1992年に始まった科学研究費重点領域研究「超並列原理に基づく情報処理体系」(代表田中英彦)は、1996年3月終了し、最終報告会を開催するとともに、産学連携の並列・分散コンソーシアム(PDC)の活動を進めた。3回目となるJSPP並列ソフトウェア・コンテスト(PSC 96)は、2冪、5冪の因数を含む個数の複素データのフーリエ変換を出題した。

日本の学界の動き

 
   

1) 筑波大学CP-PACSプロジェクト
CP-PACS (1024 PU, memory 64 MB/PU)は1996年3月25日完成設置され(記念写真)、4月8日に稼働を開始し、5月21日に完成披露式が行われた。なお、1ラックほどのシステムは2月中から稼働していた。

東京大学大型計算機センターには、2月、日立の商用版SR2201 (1024 PU, memory 256 MB/PU)が納入され、3月1日に稼働開始した。LINPACKベンチマークで220.4 GFlopsを達成し、6月のTop500の首位を占めた。この時点の筑波大学のCP-PACS (1024)は出さなかったが、メモリが小さい(64 MB/PU)のでLINPACK性能はこれには及ばなかったものと思われる。筑波大の目玉は、1993年に学術情報処理センターに設置したVPP500/30で27位であった。

このとき某新聞社科学部が、「NECのSX-4は1 TFlopsだから、その方が高性能だ。CP-PACSはチャンピオンではない。」などと珍奇なことを言い出した。カタログ性能と実機で実現した性能を比較しても意味ない、と強く反論したのだが、1996年5月29日付けA紙夕刊は「どちらがチャンプ」とかいう間の抜けた記事(写真。名誉のため新聞名は伏せた)を載せていた。「筑波大は300 GFlopsだが実際に稼働」、他方「メーカ3社は1000 GFlops、ただし出荷ゼロ」、「どちらがチャンプ?」なんてよく恥ずかしげもなくこんな記事を書いたものである。筆者の自宅にも当該新聞社から電話があったが、さる懇親会で酔っ払っていて不在だったので、相手をしないですんだ。

 

関係者の尽力により追加の予算を獲得していただき、CP-PACSはPU数を増強し、2048 PUのシステムが9月18日に完成設置された。9月27日にLINPACKベンチマークで368.2 GFlopsを達成し、10月4日から運用が行われた。11月18日付けのTop500の首位を獲得し、11月19日には完成記者会見を行った。写真はTop500の賞状。表彰式の話はSC96の項で述べる。ちなみに、2位は航技研のNWT (229.7 GFlops)、3位は前回首位の東大大型センターのSR2201 (220.4 GFlops)であった。なお、計算物理学研究センター長としてこのプロジェクトを牽引し、後に筑波大学長を務めた岩崎洋一教授は、2023年2月2日に亡くなられた。

 
   

12月8日~14日にはPDG(素粒子データグループ)の共同研究でLBNLに行く計画があったので、SC96においてNERSCのHorst Simonにそのことを話したら、適当な時間に彼のグループでCP-PACSの疑似ベクトル機構についてセミナーをやってくれということになった。内容は中村宏らがICS93などで講演した範囲にとどめたが、Simonは興味深そうに聞いていた。その後、NERSCの施設、特にESnet (Energy Science Research Net)関連の施設を案内していただいた。

CP-PACSは2005年9月29日にシャットダウンするまで2813日間稼動(Power-on)した。このころ日本で話題になった研究用超並列機としては、他にRWCPのRWC-1と科研費超並列のJUMP-1があったが、実用機として何年も動き続け実応用に利用されたのはCP-PACSだけであった。もちろん、目的が違うので一概に比較はできないが。

Top500に最後に載ったのは2003年6月で312位であった。14回Top500リストに登場し続けたマシンは多くないのではないか。上位のマシンはある間隔で更新されることが多く、下位のマシンは足切りで姿を消す。14回は多い方であろう。まあ、筑波大学計算物理学研究センターが、次のマシンの予算獲得に時間が掛かったということであるが。ちなみに、NWT(数値風洞)は、1993年11月からシャットダウン直前の2002年6月(240位)まで、ノード増設やチューニングなどを行いつつ18回登場している。これはもっとすごい。

2) 北陸先端科学技術大学院大学(nCUBE3)
同大学は、CM-5(64プロセッサ、1993年3月)やnCUBE2(256プロセッサ、1993年3月)やParsytec GC Powerplus(64ノード、1994年3月)など高並列コンピュータを積極的に導入してきたが、1996年3月、256プロセッサのnCUBE3を購入した。

 
   

3) Gordon-Bell Prize
今年も SC’96 で Gordon Bell Awards が発表された。日本関係では、性能部門でNAL NWT (Simulation of 3-Dimensional Cascade Flow (in jet engines) with a Numerical Wind Tunnel)、 専用計算機部門でGRAPE-4 (N-body Simulation of Galaxy Formation on a Grape-4 Special-Purpose Computer)が受賞した。写真はNWTの賞状。詳細はSC’96の章で。

4) 科研費重点領域「超並列」
1992年に始まった文部科学省科学研究費重点領域研究「超並列原理に基づく情報処理体系」(代表田中英彦)は、1995年度が最終年度で、その最終の重点総括班の会議を、1996年1月5日~6日に愛媛県松山市のKKR道後 泉南荘で開催し、最終報告や、今後の計画などについて相談を行った。年始のUターンラッシュと重なり、帰りの航空券が取れず、最終便となった。

1996年3月21日~22日には、東京大学工学部11号館14号館において、重点領域研究の最終成果報告公開シンポジウムを開催し、成果のデモンストレーションを行った。

5) 並列・分散コンソーシアム(PDC)
1995年10月に発足したPDCは、上記重点領域シンポジウムに引き続き、3月22日午後、PDC賛助会員企業の方およびPDC研究推進会員を対象に、非公開の成果報告会およびデモンストレーションを行った。成果といっても今後の活動方針の提示で、デモも科研費「超並列」の成果が中心であった。企業3社からの発表もあった。

6) JAHPF準備会
(財)高度情報科学技術研究機構(RIST)の三好甫副理事長の発案により、富士通、日立製作所、 日本電気の3社の言語・コンパイラ有識者が集まり、「HPF合同検討会 (準備会)」を1996年7月から12月まで開催した。その結果、1997年1月に「HPF合同検討会(JAHPF)」が発足する。

7) 産業基盤ソフトウェアフォーラム(SIF)
大学、国立研究所、企業の研究部門などにおいて、さまざまな応用ソフトウェアが開発され、成果が上がっているが、それが産業の基盤として機能するためには、幅広くユーザが利用し改良を重ねる必要がある。そのため、産官学が協調して実用的段階まで育成する場をつくるために、産業基本ソフトウェアフォーラム(SIF, Software Infrastructure Forum)を設立した。富士総合研究所の協力を得て、3月25日に第1回設立準備会を開催し、関口智嗣(電総研)を中心に数回の準備会を経て、8月2日に設立総会を行った。

最初、法人会員14社、個人会員15名で発足したが、最終的には法人会員16社、個人会員31名となった。代表は筆者、副代表は小林朋文(日立)が務めた。企画総務幹事は関口智嗣(電総研)、調査研究部会幹事は山田和夫(富士総研)、提案支援部会幹事は佐藤三久(新情報処理開発機構)、育成支援部会幹事は土肥俊(日本電気)、普及支援部会幹事は小池修一(三菱総研)、監査は高橋亮一(東工大)と井舎英生(CRC総研、現岸和田市議)であった。

設立総会の記念講演として、「ソフウェア技術の研究開発のあり方」(情報処理振興事業協会理事 棟上(とうじょう)昭男)および「産業技術インフラとしてのソフトウェア基盤~コンピュータ ケミストリーの推進を通じて~」(昭和電工 荒井康全)を行った。

1999年3月までの約2年半に期間を限定し、成果をみてその先を考えるとしたが、実際には1年延長して2000年3月まで継続した。社会に向けての講演活動、調査活動、広報活動などを行った。様々なソフトウェアの実用化支援の可能性を探ったが、一番力を入れたのは、高田俊和(日本電気)らが開発したVRMS(バーチャル・リアリティ顕微鏡)の利用普及であった。これは非経験的方法による分子の電子状態の計算を行うソフトウェアである。評価版をSIF経由で配布し、講習会を行い、使用相談に応じる他、コンテストも行った。

8) ACM日本支部
ACM日本支部の1995-1996年次講演会(兼年次活動報告会)が、1996年6月25日、東大赤門横の学士会館分館(今はない)で開催された。プログラムは以下の通り。

10:00

開会

 

10:10

New Growth Opportunities in Theoretical Computer Science

P. Raghavan (IBM Almaden Research Center)

12:00

昼食

13:00

ゲノムサイエンスにおける知識発見の支援

宮野悟(東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター)

15:00

休息

15:15

ACM日本支部年次活動報告

 

15:45

閉会

 

 

9) PHASEプロジェクト
前年始まったPHASEプロジェクトは、手弁当なのであっという間にまとまった。第6回のミーティングは1月11日に開かれ、JCRN, Ninf, PSC、Moriplotなどを含むHPC関係の種々の情報の公開を行うことを検討した。いろいろトラブルはあったが、どうにかサーバが動くようになった。5月27日、Bell Labs.でnetlibの管理をしていた数値解析研究者Eric Grosseからのメールのとおり、netlibの正式ミラーサーバが稼動した。Grosseは、その後Google社に移り、2017年までGoogle社のセキュリティ・プライバシ技術担当副社長。

To: sekiguti@etl.go.jp, dongarra@….

Subject: welcome

content-length: 129

 

Dear Mr. Sekiguchi,

 

I’m adding phase.etl.go.jp to the various readme and mirror pages here.  Welcome aboard!

 

Best wishes, Eric

 

5月29日~31日に湯沢パークリゾートホテルで開催された第25回数値解析シンポジウムにおいて、初日に、長谷川秀彦(図情大)、関口 智嗣(電総研)「ソフトウェアライブラリ PHASE」という発表を行った。

10) 『円周率1000000桁表』
1996年3月18日、当時東京大学生産技術研究所にいた牧野貴樹(現Google勤務)は、『円周率1000000桁表』を「暗黒通信団」を発行所として出版した。3月18日は、円周率の逆数0.31830…に由来する。1ページに10000桁ずつ印刷している。最初30部のみ制作され、314円(税抜き)で販売された。3万部以上販売され、2022年3月18日には「第3.141592653589刷」(実質15刷)が発行される。本書は巻末に著作権を放棄すると宣言している。円周率の数字そのものには元来著作権はないが、印刷のデザインには版面権が存在する。

なお、翌年には金田康正と高橋大介が515億3960万桁まで計算する。1990年には、誰かがパソコンFM-TOWNSを用いて100万118桁まで計算する。

11) 日本物理学会(事務局電子化担当)
私事であるが、江澤洋会長に依頼されて、1995年9月から日本物理学会の事務局電子化担当の理事に就任していた。当時、学会事務局の電子化はまだどこも手探りであった。理事の任期は2年であったが、1996年9月からは次の米沢富美子会長に頼まれて労務担当理事となり、事務局の労働組合との団体交渉に神経を擦り減らすこととなった。このとき、ともに労務担当理事を務めていたのが西森秀稔東工大教授であったが、かれが「量子アニーリング」を発表したのは1998年なので、このころそんな研究をしていたと思われるが、残念ながらかれとは一度もその話はしなかった。

12) 大川出版賞
筑波大学定年後電気通信大学教授となった中澤喜三郎は、日立在職時以来の研究・開発体験に基づいて、1995年11月5日、朝倉書店から教科書『計算機アーキテクチャと構成方式』を上梓した。これが、1996年度の第5回大川出版賞を受賞した。筆者が推薦人を務めた。なお中澤先生は、2013年1月25日に亡くなられる。

13) 工学院大学
1994年のところに書いたように、その年開設された工学院大学工学研究科情報学専攻で、毎年前期に非常勤講師として「計算アルゴリズム論」の講義を行っていた。1996年は3年目であったが、教室に行ったら院生がだれもいない。受講登録は何人かいるので、このまま黙っていれば講師料をタダ取りすることになる。それも申し訳ないので、工学院のさる先生にそのことを伝えたら、「学部生でよければ生きのいいのがいますよ」と一人送り込んでくれた。それが関嶋政和君であった。一学期間、彼と一対一で計算アルゴリズムの講義を行った。彼は計算アルゴリズムに興味を持ち、翌年、東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命工学専攻に入学し清水謙多郎研究室でドッキング・シミュレーションにより博士号を取った。産総研生命情報科学研究センターを経て、現在東京工業大学で活躍している。

14) 三浦功先生死去
高エネルギー物理学研究所でも筑波大学でも上司としてお世話になった三浦功先生が、1996年7月24日にお亡くなりになり、27日に荒川沖で葬儀が執り行われた。三浦功先生自身、原子核実験や放射線計測のデータ処理などの関連でコンピュータ草創期のパイオニアの一人であるが、ご子息の三浦謙一氏もHPC分野のレジェンドであることは、言うまでもない。

国内会議

1) シンポジウム「21世紀の日本の産業を支える数学教育を考える」
日本応用数理学会は、表記のシンポジウムを1996年1月19日に中央大学駿河記念館で開催した。

挨拶

近藤次郎(東京大学名誉教授)

基調講演

茂木勇(筑波大学名誉教授)

高柳誠一(東芝常任顧問)

パネル討論

司会:伊理正夫(中央大学)

パネリスト:

 澤田利夫(国立教育研究所)

 島根袋助(都立三鷹高校)

 森正武(東京大学)

 田中豊喜(東レ)

 鈴木則久(ソニー)

 

2) HOKKE-96
第3回「ハイパフォーマンス・コンピューティングとアーキテクチャの評価」に関する北海道ワークショップ(HOKKE-96)は、この年も札幌ソフトウェア専門学校(2006年からは札幌情報未来専門学校に改称)を会場として3月4日(月)~5日(火)に開催された。4日はHPC研究会、5日は計算機アーキテクチャ研究会の連続研究会であった。4日の夜には、サッポロビール園で懇親会が開催された。

3) HAS研
HAS研(Hitachiアカデミックシステム研究会)は、1996年3月14日~15日、第9回研究会等を開催した。分科会以外は以下の通り。

第9回研究会(1996年3月14日)テーマ「ネットワークコンピューティング(NC)時代の幕開け」

マイクロソフトのインターネット戦略

マイクロソフト株式会社 徳武 信慈

Javaが実現するネットワーク・コンピューティング

日本サン・マイクロシステムズ株式会社 北野 敬介

ネットワークコンピューティング時代の寵児
-$500コンピューターで目指すもの―

日本オラクル株式会社 吉田 明充

Windows, PCはいらない?お茶の間からゲーム機で世界にアクセス

株式会社セガ・エンタープライゼス 村越 俊之

サイバー・コミュニケーション・ビジネスの展望

株式会社電通 田中 秀範

製品紹介(1996年3月15日)

VODとINTERNET連携システムの紹介

株式会社日立製作所 森田 政宏

特別講演(1996年3月15日)

SuperComputing’95報告

埼玉大学 井門 俊治 中島 裕二

 

11月27日~28日には、第8回シンポジウム及び第10回研究会を開催した。

第8回シンポジウム(1996年11月27日)テーマ「サイバーキャンパス」

慶応義塾大学藤沢湘南キャンパスの情報環境戦略

慶応義塾大学 徳田 英幸

会津大学における情報環境戦略と情報リテラシー教育

会津大学 林 隆史

立命館大学の情報基盤の成果と今後の計画

立命館大学 池田 秀人

第10回研究会(1996年11月28日)テーマ「PCの信頼性と教育現場」

PCネットワークの泣き所
―セキュリティ・信頼性・品質向上―

株式会社日立製作所 

高梨 勝也 梯 雅人

十文字学園に於けるPCネットワークによる教育実践の現状

十文字学園女子大学 井口 磯夫

PCネットワークの運用管理向上

株式会社日立製作所 水口 圭三

最北端は最先端・市民と楽しむJava~サマースクールin稚内

稚内北星学園短期大学 丸山 不二夫

報告(1996年11月28日)

米国ベンチャ企業での製品開発

株式会社日立製作所 木村 伊九夫

特別講演(1996年11月28日)

VR(バーチャルリアリティ)の医学応用

東京慈恵会医科大学 鈴木 直樹

 

4) IEEE (Tokyo Chapter)& ATIP合同セミナー
1995年2月にDavid Kahanerによって設立されたATIP (Asian Technology Information Program)は、IEEE (Tokyo Chapter)と共催で、1996年5月10日‟Artificial Life (A-LIFE)“に関する特別セミナーを岡田記念ホール(富士通研究所、川崎)において開催した。プログラムは以下の通り。

What is Artificial Life?  Concepts and Research Trends

Christopher Langton (The Santa Fe Institute)

Software Evolution in Cyberspace

Thomas Ray (Univ. of Delaware/ATR)

Applications of A-Life and Evolutionary Systems

Katsunori Shimohara (ATR)

 

これらの講師は、5月16日~18日に奈良の関西研究学園都市で開催されたALIFE 5の主要参加者であった。

5) NEC・HPC研究会
1996年5月28日、第3回NEC・HPC研究会がNEC本社ビルで開催された。筆者は基調講演を行った。

並列処理センター利用状況の案内

NEC並列処理センター

並列処理と並列言語

小柳義夫 東京大学

マイクロカーネル型並列OS:Cenju-3/DE

小長谷明彦 NEC

並列ベクトル計算機上でのQCD

中村純 山形大

On Line University Networkを通じた複数の並列計算機による有限要素法並列化

福盛秀雄 早稲田大

シリコン原子Molecular Dynamics並列計算

飯島智徳 NEC

Message-passing PAM-CRASH and the EUROPORT porting activities

G.Lonsdale NEC Europe

SX-4上での流体解析

姫野龍太郎 日産、

SX-4のためのリアルタイム可視化

土肥俊 NEC

統合メタコンピューティング環境SPIN(スパイン)について

寺内秀一 NEC

 

1996年12月17日に、NEC本社ビル地下1階講堂において、第4回NEC・HPC研究会が開催された。プログラムは以下の通り。

10:30

開会のあいさつ

後藤 敏 NEC C&C研究所

10:40

基調講演:Fluid-Mechanical Problems of Japan’s Future Launch Vehicle

Chul Park 東北大航空宇宙工学

11:40

並列処理を利用したクラスター集合体の計算

大西楢平 NEC基礎研

12:10

昼食

13:10

The MPI Message-Passing Standard and its Implementation on the NEC SX-4

Rolf Hempel  NEC Europe

13:50

FEELWEB:並列有限要素法シミュレーションのためのWEB環境

NEC C&C研究所  土肥 俊

14:20

Trends in Parallel Applications Development for            Manufacturing Industry by ISVs

Paresh G.Pattani NEC Systems Laboratory, Inc.

15:00

休憩

15:20

分散メモリ型並列計算機による2, 3, 5基底のFFTの実現と評価」

高橋大介 東京大

15:50

ATMネットワークの並列シミュレーション

守屋充雄 早稲田大

16:20

HPC/Ceによる空力解析システムの再構築

上司 正善 マツダ

16:50

統合プログラム開発環境PSUITEについて

藤井 等 NEC

17:30

懇親会

 

6) 数値解析シンポジウム
第25回数値解析シンポジウムは、1996年5月29日~31日に、新潟県の湯沢パークリゾート(ホテル)で開催された。担当は前回に引き続き東京大学工学部森正武・杉原正顯研究室であった。参加者99名。

7) JSPP 96
8回目の並列処理シンポジウムJSPP’96は、6月18日(火)~20日(木)に早稲田大学総合学術センター国際会議場を会場に開催された。情報処理学会の5研究会、電子情報通信学会の2研究会、人工知能学会の1研究会が主催、日本ソフトウェア科学会と日本応用数理学会が協賛であった。原著論文発表の他、以下のプログラムが企画された。

チュートリアル

「並列コンパイラ技術」本多 弘樹(山梨大)

「高性能相互結合網の動向」天野英晴(慶大)

基調講演

「ゲノム情報学」高木 利久(東大)

招待講演

“Architecture-Independent Parallel Programming in High Performance Fortran” Ken Kennedy (Rice University)

パネル討論

「シームレス環境」モデレータ:石川裕(新情報)

「WSクラスタはMPPを駆逐するのか?」モデレータ:松岡聡(東大)

 

続いて21日(金)には、同じ会場で国際ワークショップ HPMCC (High Performance Multimedia Computing and Communication)が開催された。

8) PSC 96
1994年に発足したJSPP並列ソフトウェア・コンテスト(PSC 96)は第3回を迎えた。使用できる並列コンピュータは、日本アイビーエムのSP2(統数研)、日本電気のCenju-3、日立製作所のSR2201、富士通のAP1000+の4種類であった。この年は筆者が委員長を務めた。日本クレイにはCS6400の提供をお願いしたが、もうすぐStarfireが出るので今年も見送るということで、例年通り委員だけを出してくださった。日本鋼管(Convex)にも声を掛けたが、ConvexはHP傘下に入ったばかりで今回マシンは提供できないが、将来の可能性を考えて、委員を出してくださった。両社とも副賞を提供してくださった。

問題はいろいろ議論した挙げ句、217 * 52 = 3,276,800個の1次元複素データの高速フーリエ変換および逆変換となった。精度は64ビット。3位までの入賞者がマシンごとに表彰された。4社合計の正味のチーム数は、エントリ103チーム、予選結果提出37チーム、予選通過27チーム、本選完走21チームであった。

マシン

AP1000+

SR2201

SP2

Cenju-3

エントリチーム

82

68

60

62

参加者数

163

125

117

137

予選結果提出

23

17

8

10

予選通過

15

14

7

8

本選完走

13

10

6

6

1位

牧野・長井・丹羽(東大理)

高橋大介(東大理)

高橋大介(東大理)

荒木・馬場・大内・辻(東大工)

2位

二上・植山・牧野(東大工)

富松・黒田・渡辺(東大理)

富松・黒田・渡辺(東大理)

黒田洋介(早稲田理工)

3位

富松・黒田・渡辺(東大理)

荒木・馬場・大内・辻(東大工)

荒木・馬場・大内・辻(東大工)

佐藤敦他13名(北陸先端・山形大)

 

9) インターネットコンファレンス’96
インターネットコンファレンス’96は、日本UNIXユーザ会、 WIDEプロジェクト、 および日本ソフトウェア科学会インターネットテクノロジ研究会の3組識の主催で、1996年7月9日~11日に品川のコクヨホールで開催された。後にICxxと呼ばれるシリーズの第1回である。

10) IBM HPC Forum
HPC Forum‘96がIBM箱崎で1996年7月24日に開催された。

10:00 – 10:30

Opening

川井Forum会長(東京理科大)

10:30 – 11:30

Keynote – パラレル・コンピューティングの最近の話題と今後について

小柳義夫(東大)

11:30 – 12:30

パラレル・プログラミングの実際

(1) MPIとHPFによるプログラミングの方法

寒川 光(IBM東京基礎研究所)

(2) 最高速FFTパラレル・プログラムはこうして開発した

(バラレルソフトウェア・コンテストIBM優勝者)高橋 大介

12:30 – 13:30

Lunch (自由)

13:30 – 14:30

SP事例の紹介

(1) SPによるパラレル流体シミュレーション

伊平 尚志、河村(東京理科大)

(2) 並列処理計算法の計算化学・理論化学分野での応用

橋本、紙本 哲也、東京都立大)

14:30 – 14:45

Coffee Break

14:45 – 15:45

仮想現実感(VR)とその将来、そしてSP

中村惟男(東北大)

15:45 – 16:45

米国での技術計算分野におけるSPの話題から

S. Clarke, Manager (IBM)

16:45 – 17:00

Closing

出沢(日本IBM RS/6000事業部長)

 

また、「計算分子科学パラレル分科会」も計画した。

11) 総合研究大学院大学
1996年8月11日~16日に、湘南国際村センターで、総合研究大学院大学主催の国際シンポジウムがあり、筆者は講演”Convergence of the MGCG Method”を行った。

 
   

12) SWoPP 秋田’96
1996年並列/分散/協調処理に関する『秋田』サマー・ワークショップ (SWoPP 秋田’96)は、1996年8月26日(月)~29日(木) に秋田県総合生活文化会館『アトリオン』(秋田県秋田市)で開催された(写真はWikipediaから)。第9回である。主催は、電子情報通信学会の2研究会、情報処理学会の5研究会である。発表件数は149(110件大学、21件企業、18件国立機関)、参加者数は219(31大学160名、20企業35名、3研究機関24名)であった。(『情報処理』第37巻8号(1996年8月)にプログラム)

13) 数理解析研究所
京都大学数理解析研究所は、昨年に続き三井斌友(名古屋大)を代表者として、研究集会「科学技術における数値計算の理論と応用 II」を11月13日~15日に開催した。報告は、講究録No.990に収録されている。

14) SS研
SS研(Scientific System研究会)は、昨年に引き続き第2回となるHPCミーティング’96を、1996年11月28日~29日に広島プリンスホテルで開催した。プログラムは以下の通り。合計150名ほど出席した。

挨拶

富士通(株) HPC本部 小坂義裕

【招待講演】『気象分野での並列計算機の利用事例』

Dr. David Dent (ECMWF)

「遺伝情報解析分野におけるスパコンの利用」

菅原秀明(国立遺伝学研究所)

「自動車産業におけるCAEの現状」

川口洋(トヨタ自動車株式会社)

「国立天文台VPPシステムの運用と開発支援ツールの試用・評価」

伊藤孝士(国立天文台)

「将来型可視化ツールの要求要件とその開発」

藤井孝藏(宇宙科学研究所)

「日本大学理工学部におけるスパコンの運用について」

斉藤茂(日本大学理工学部)

「VX / VPP300 / VPP700のエンハンスについて」

富士通(株)HPC本部 大空瞭

まとめ:

福田正大企画委員

 

15) INSAMシンポジウム
広島大学理学部大規模非線形数値実験室(Institute for Numerical Simulations and Applied Mathematics:INSAM)は、1996年12月21日、広島大学理学部において、INSAMシンポジウム’96(非線形科学におけるハイパフォーマンスコンピューティング)を開催した。プログラムは以下の通り。

13:00-13:05

あいさつ

 

13:05-14:05

『バクテリアコロニーパターンの多様性』ー数値シミュレーションの立場からー

三村 昌泰 (東京大学)

14:05-15:05

『最適化とタンパク質の立体構造予測シミュレーション』

岡本 祐幸 (分子科学研究所)

15:05-15:40

ポスターインデクシング

 

15:40-17:00

ポスターセッション(理学部E210)

17:00-18:00

ピアノ三重奏曲  第7番 変ロ長調 作品97 《大公》 (ベートーベン)

                                 ピアノ   草間 眞知子(広島大学助教授)

                                 バイオリン 本澤 和香 (広島大学)

                                 チェロ   猪原 和子 (広島大学)

18:00-20:00

懇親会

 

次回は、日本の企業の動き、標準化、性能評価、アメリカ政府の動きです。DOEはASCI計画を進めていたが、最初のOption Redの全容が明らかになる。Petaflopsへの動きも着々。

 

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